星野アイ生まれかわりもの   作:ヤンデレ好き

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とりあえず2話まで投稿します。


星野アイ生まれかわり②

 

 

「どうしちゃったんだろう私」

 

アクアくんと別れてから自宅に帰ってきた私は、正気に戻って頭を抱えていた。

 

一応それなりの社交性を備えているつもりだが、それにしても今日の自分はおかしかった。

初対面の隣のクラスの男子を買い物に誘って、しかもそのあと自宅へ連れて行こうとしたのだ。性別が逆だったらチャラ男なんてレベルじゃないし…いや、女でもヤバいか。

 

「(尻軽な女だと思われたらどうしよう)」

 

本当に今日は変だ。アクアくんを一目見てから胸の奥がざわざわして興奮が収まらない。一緒に買い物している時や、お話ししている間は常にハイテンションだった。あんなの私のキャラじゃない。

 

「(だ、だめだ。とっとと晩御飯食べてお風呂入って寝よう 今日のことは、明日アクアくんに事情を話して謝ろう)」

 

………

 

お風呂から上がって、火照った体を冷ましているころには、私はいつも通りの自分に戻っていた。

 

「(今日はもう寝ちゃおう)」

 

出来るだけ今日のことを思い起こさないよう、明日の授業のことを考えながら眠りに落ちた。

 

 

 

お腹が痛い…痛い…痛い……熱い…寒い…

手足の感覚がなくなっていく…目が見えない…耳が聞こえない…

 

薄れていく意識の中で、涙を流しながら縋り付く子供の顔が見えた気がした

 

 

 

そこで私は目を覚ました

ゆっくりと体を起こした私は体の感覚や痛みの発生源であるお腹を確認するが、特に何もおかしなところはない。

 

「(久々に見たなぁ今までで一番強烈かも)」

 

実のところ、私は今までも何度か似たような経験をしている。

お腹の痛みから始まって、激痛を感じながら体中が熱くなり、そのあとは感覚の喪失とともに体中が冷えていく。最後に視界に映るのは泣きじゃくる子供の顔…まるで自分が死んでしまうみたいで、私にとっては最悪の悪夢だ。

ここ最近は見なくなったから気が抜けていた

 

最初の頃は両親が慌てて病院に連れて行ってくれたけど、体のどこにも異常はなかった。

精神的なものかもしれないが、特にそういう治療が必要となるような体験もしていないし、我ながら恵まれた環境で暮らしてきた。自覚できる範囲では精神的にも問題はない…はず。

 

「(…まぁいいか。さっさと準備して学校行かなきゃ。アクアくんにも謝らないと)」

 

少し憂鬱になりながらも、私は顔を洗うべく洗面所に向かった。

 

「(そういえば、最後に映る子供の顔…前見た時よりはっきりと見えた気がする…)」

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

「失礼しまーす」

 

1限目の休み時間。

アクアが教室でクラスメートと雑談していると、一人の女子生徒が教室に入ってきた。

 

「うわ可愛い」

「芸能科の人かな?」

 

入ってきたのは、昨日の帰りにアクアと買い物した月宮逢だった。

 

「あ、アクアくんおはよう」

「おはよう」

「朝からごめんね…昨日のこと謝りたくて」

「謝る?」

 

謝罪に来たという少女に、アクアは不思議な顔をしながら話を聞く。

 

「いやぁ昨日はいろいろと失礼なことしちゃったなぁと思って…いつもは私、あんなんじゃないからね」

「そうなのか」

「うん…昨日はなんだかテンションがおかしくなっちゃって」

「いや、いいよ気にしてない」

「本当にごめんね。何かお詫びが出来たらいいんだけど…」

 

お詫びがしたいという少女に、アクアは少し考え込んだ様子を見せてから、真剣な顔で答えた。

 

「お詫びか…なら、連絡先教えてくれないか」

「え、うんいいけど」

「昨日のことはいったん水に流すとして、今後は普通の友達として付き合っていきたい…だめか?」

「いいよ!全然いい!こちらこそ今後ともよろしくね」

 

連絡先を交換した後、またね~と手を振りながら隣の教室に戻っていく逢をアクアは見送った。

 

逢について問い詰めてくる周りのクラスメートをてきとうにあしらいながら、アクアは昨日ルビーと相談したことについて考えていた。

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

「ママに似た人がいた?」

「あぁ…姿かたち、声、特徴的なアイの雰囲気…すべてが生前のアイそのままだった」

「…ただのそっくりさんでしょ…だって、ママはもう…」

 

ルビーの言う通りだ。

自分たちの母親、星野アイは13年前にストーカーだった厄介ファンに殺害され、この世を去っている。アイが死んだことは間違いない。アクアはアイが死んでからもしばらくはアイの腕の中にいたのだ。体が冷たくなっていくのを直に感じたし、それを今でも思い出すことが出来る。

 

「まさかお兄ちゃん…」

「あぁ。俺は彼女がアイの生まれ変わりなんじゃないかって思っている」

「私たちと同じってこと?」

 

真剣な表情で語る兄の顔を、ルビーは憐れみを浮かべた顔で見つめた。

 

「そんなわけないよ……だってそうでしょ?1年生ってことは私たちと同い年。ママが亡くなる前に産まれてるんだよ?」

 

そう、ルビーの言うことは極めて正しい。

アクアもルビーもお互いの前世のことを詳しく話してはいないが、それでも自分が間違いなく死んでから転生したことを自覚している。死んでいない状態で産まれ変わったとすれば、この世に同一人物がいることになる。

 

「お前の言うことはわかるよ。でも俺だって、ただ似てるってだけでこんなこと言ってるわけじゃない」

「証拠があるっていうの?」

「いや、明確な証拠はない…ただ、昨日の彼女の発言した内容から推察すると、かなり疑わしいんじゃないかとは思えるんだ」

 

アクアは事前に用意していたのだろう、何事かが書き込まれたコピー用紙を机に置いた。

 

「いいか、昨日彼女は日常生活のしょうもないことから自身の産まれ育ちまで、聞いてもないのにぺらぺらと話してくれた…」

 

アクアはボールペンでコピー用紙の一部を指し示しながら語っていった。

 

「まず家族構成…父親と母親がいて、彼女はその一人娘。しかし義理の両親であり、彼女が1歳の頃に親戚から引き取られたらしい。今の両親は本当の母親の実の姉なんだと」

 

「実の父親は彼女が産まれる半年前に事故で亡くなり、実の母親は彼女を産んですぐに死んでしまった。産まれてからは親戚の家で育てられることになったが…ここで問題が起きたそうだ」

 

アクアはボールペンで次の項目を指し示しながら続けた。

 

「彼女はまったく泣かない赤ちゃんだった。1歳になっても感情らしいものを見せず、ただ機械的に、最低限生きているだけの人形のようだったと…親戚の人からはかなり気味悪がられたらしい。まるで魂の入っていない抜け殻のようだと」

 

「抜け殻…」

 

少し考え込んでいる様子のルビーを一瞥しながらも、アクアは話を続ける。

 

「続けるぞ…姉夫婦が海外から戻ってからは彼らの元に預けられた。子供が出来なかった姉夫婦は喜び、普通ではない彼女を実の娘のように可愛がって育てた」

 

「そうして彼女が3歳の誕生日を迎えると同時に変化が訪れた。3歳になってからは今までの人形らしさは完全になくなり、よく笑い、よく泣く、子供らしい子供になった。あまりに唐突な変化で姉夫婦は驚いたが、それでも良いことだと受け入れ、彼女を今まで育て上げた…そして今がある」

 

「………」

 

考えをまとめているのか、ルビーは顔を伏せて黙ったままだ。

 

「趣味は料理とダンス…そして誕生日はアイと同じ」

 

ようやく考えがまとまったのか、ルビーは顔を上げた。

 

「こんなことある…?これ偶然なの…?」

「お前の気持ちはよくわかる。俺なんか直接話したからな…今のお前以上に衝撃を受けた」

 

そう話すアクアはどこか疲れた様子だった。

 

「とはいえ、現段階では疑わしいだけだ。それに、俺達とは違って明確に前世のことは覚えてないようだった…仕草や話し方なんかはアイそのままなんだがな」

「でも、記憶がない以外はママそのもの…ってことでしょ?」

「そうだ。とりあえず今後の方針としては、それとなく距離を詰めていこうと思うんだ。もしかしたら俺達と話していくことで記憶が戻るかもしれん」

 

そう話すアクアを見つめるルビーの顔は、どこか期待と不安が混ざり合った表情をしていた。

 

「わかった。私はどうすればいい?」

「俺は恋愛リアリティショーに出ることになるし、今後はあまり時間がとれなくなる。明日から早速行動しないとな」

「とりあえず俺は明日から一緒に帰れるように話してみるから、お前も帰りは出来る限り一緒にしてくれ。向こうも俺に興味があるようだし、たぶんうまくいくと思う。余裕があれば連絡先も手に入れる」

 

「ロリ先輩は誘わないの?」

「そうだな…あいつも短期間とはいえ、アイと共演していたことがあるからな。なにがきっかけになるかわからんし、一応誘っておこう」

 

「(とりあえずの方針はこんなところか。正直なところどうなるのか全く想像できないが…やる価値はあるはずだ)」

 

 

 




・月宮逢
 一般女子生徒。
設定としては原作でちょろっと出て来た『魂のない子供』みたいな感じ。
3歳の誕生日に魂がインストールされた。でも15歳までは普通の子供として育てられている。
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