星野アイ生まれかわりもの   作:ヤンデレ好き

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サクサクふわふわって感じ。
原作沿いだとそれなりに書きやすい気がします。



星野アイ生まれかわり⑥

 

 

ルビーと二人で下校中。私たちは少し寄り道をしていて、買ったアイスをベンチに座って食べていた。

 

「ねぇ逢ちゃん」

「どしたのルビー?難しい顔して」

「ほら、今お兄ちゃんが出てる『今ガチ』あるでしょ?」

「あ~あれね…」

 

『今からガチ恋始めます』…略して『今ガチ』。いわゆる恋リアってやつだ。

アクアが出ているのは芸能活動をしている高校生をメインメンバーとして、色んなイベントを通して互いに交流を深め、カップルが成立するかどうか…みたいな感じのドラマを楽しむ番組だ。

 

「私はあの中なら鷲見ゆきがいいんじゃないかって思ったんだけどさ、お兄ちゃんは『お前は見る目ない』とか言うんだよ?ひどいよね!妹がせっかく助言してあげようってのに!」

「よしよし、ルビーはお兄ちゃん想いのいい子だねぇ」

「わーいよしよしだぁ」

 

ルビーは私より少し背が高いけど、こうして撫でていると小さい子を相手にしているみたいで可愛い。

いやルビーはいつでも可愛いんだけど、私といる時はいつもより幼くなるんだよね。

 

『ママよしよしして~』

 

…また頭痛と一緒に記憶が蘇る。順調に昔に戻りつつあるからか、頭痛がしても周囲に気取られないように、何でもない風を装うことが出来るようになった。前の私は嘘つきだったからね。こういうのは得意なんだ。

 

「(そっか、ルビーは昔から甘えん坊だったね)」

「逢ちゃんは誰がいいと思う?」

「う~んそうだねぇ」

 

私は今ガチのメンバーを思い浮かべつつ、ルビーに答えた。

 

「誰でもいいんじゃないかな」

「えっ?」

「一番大切なのは、アクアの幸せだから。誰とくっついても、アクアが幸せになれるなら、私は誰でもいいかな」

「…そっか」

 

それからしばらく二人で取り留めのない話をしていたけど…なんだかルビーが眠そうにしているに気づいた。

腰あたりにあったルビーの頭をそのまま膝に乗せる。

 

「よいしょ」

「わっ…逢ちゃん?」

「ルビー、お昼寝の時間ですよ~」

「…ママ」

 

ゆっくりとルビーの頭を撫でていると、だんだんルビーの瞼が落ちて来る。

 

「ママ」

「なぁに?」

 

眠りに落ちる寸前、ルビーは泣きそうな声でぽつりと呟いた。

 

「どこにもいかないで…」

「…ママはここにいるから。ずっとず~っと」

「ん…」

 

眠ったルビーを眺めながら、私はこれからのことを考えていた。

 

もう以前の私…B小町のアイドルにして双子の母親、『星野アイ』としての記憶はほとんど戻っている。私の中にある記憶はすでに今世より前世の方が割合が多く、前世の自分と今世の自分を同一視している状態だ。

 

「(私は星野アイ…でも、月宮逢として生きて来たし、その自覚もある)」

 

これは予感だが、たとえ前世の記憶をすべて思い出したとしても、私が完全に『星野アイ』に戻ることは出来ないだろう。

前世の私は人を愛することも、愛されることがどういうことかもわからず、常に自分自身を嘘で塗り固めて生きていた。たとえ嘘でも『愛してる』と言い続ければそれが本当になると信じ、死の間際になってようやく本当の『愛してる』を子供たちに伝えることが出来た。

 

でも今世の自分は違う。

今の両親は自分を本当に愛してくれているし、私も両親を心の底から愛している。

中学生の頃は恋愛なんかもした…まぁ付き合うところまでは行かなかったけどね。後輩の女の子に告白されたときはびっくりしたなぁ。

結局その子達とは違う高校になったけど、今でもたまに連絡を取り合っている。友達だからね。

 

それに私は嘘はつかない…つきたくないと思っている人間だ。自分が言ってることが嘘なのか本当なのかわからないような前世の私とは違う。きちんと嘘と本当を自覚することが出来ている。

 

「(私が星野アイになれないって知ったら、アクアとルビーは悲しむかな…)」

 

それとも、今の私を受け入れてくれるだろうか。

 

ルビーの寝顔を眺めながら、私は考えに耽っていた。

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

いつもの学校の昼休み。

今日は久しぶりに逢と二人きりで過ごしていた。

 

「アクアってさぁ」

「?」

「男の子が好きなの?」

「ぐっっ!?」

 

突然の衝撃発言に思わず昼のから揚げが喉に詰まってしまった。

 

「はいお茶」

「んぐんぐ……はぁ。いきなりなんなんだ?」

「ほら、今ガチでは誰ともくっつこうとしてないでしょ?」

「あぁ…俺は空気でいいんだよ。誰とも恋人になるつもりはない」

 

俺が今ガチに出演しているのは鏑木Pから情報を引き出すためだ。そうでなければこんな企画に参加しようとは思わない。若者と青春を送るには俺の精神年齢では結構キツイ。

 

「この前先輩から聞いたんだけどさ、相手の男の子が女の子みたいな顔してるって聞いたから今日あまに出たんでしょ?」

「それは誤解だ…(何言ってんだあいつは)」

 

逢は少し残念そうにしながらも口元には笑みを浮かべている。わかっていて楽しんでいるな…

 

「なんだ誤解かー…まぁそうだろうとは思ってたけど。アクアは女の子が好きだもんね」

「間違ってないがその言い方はやめてくれ…」

「じゃあ気になってる子はいないの?」

「俺が気になってるのは…」

「?」

 

目の前の少女を見る。

俺が推している人は、今も昔も一人だけだ。

 

「いや…一人いるな」

「おっ?だれだれ?」

「気になってるっていうか…ヤバそうなのはいるかな」

 

微笑ましいものを見るように、逢は目を細めた。

 

「その子が心配なんだ?」

「…」

「アクアは昔から優しい子だったね」

 

席を立ちながら、優しく頭を撫でて来る。

 

「頑張ってね」

「…あぁ」

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

「頑張ってねとは言ったけどさ…」

「…」

「頑張りすぎだよ…大丈夫?」

 

アクアが危惧していた通り、今ガチでは大きな問題が起きた。

キャストの一人である黒川あかねが、自身の出番が少ないことに焦った結果、鷲見ゆきの顔に傷をつけてしまたのだ。

ネットでは炎上が続き、真面目過ぎる性格ゆえにネット上での辛辣な意見をすべて受け止めてしまった黒川あかねは、精神的に追い詰められて自殺する寸前までいった。

 

「すまん…今は寝かせてくれ」

「仕方ないなぁ…よしよし」

 

逢が頭を撫でているのを感じながら、アクアは昼休みの貴重な時間を睡眠に費やした。

 

あえて自殺未遂の件を公表することで注目度を高め、アクアが主導で作っている『今ガチメンバーの仲良し動画』をアップすることで黒川あかね擁護派を増やし、炎上を収束させると共に番組の人気も高めようという起死回生の一手。

動画は今ガチメンバー全員で作っているが、映像編集などはアクアが一手に引き受けているのでここ最近は徹夜が続いていてアクアは疲弊していた。

 

「(目の下に隈が出来ちゃってる…疲れてるんだね)」

 

今日はお昼を早めにすませて図書室にいる。

せめて少しでも睡眠時間を稼ごうと思って来たのだ。

 

「(私に出来ることは…いや、アクアがやる気なんだし、下手に手を出すのはやめておこう)」

 

逢は静かに寝息をたてるアクアの頭を、昼休みが終わるギリギリまで撫で続けていた。

 

 

 




月宮逢
 もう隠す気がない一般転生女子生徒。
かつての星野アイに戻ることは出来ないが、星野アイになることは出来る。
その場合は多くの代償を支払うし、バッドエンドまっしぐら。たぶんアクアが二度目のアイの死を見ることになって精神が死ぬ。
アクアが幸せになれるなら、アクアの相手が男の子でも受け入れる。別に腐ってはいない。

MEMちょは一応、公には高校生ってことでいいんですかね
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