英雄cp妄想   作:あほうどり

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cp要素薄めの短編2本
ブイシーアール1救急隊とにじジーティーエーえびりむ


じてぃえ短編2本

ブレーキを限界までかけ、愛用のバイクで病院のベンチや壁へと突っ込む。 激しく散る火花と周囲に響く轟音、慣性に流され飛んでいく身体。

 

多少怪我はしたけど出血はしてない。 バイクも人を轢く事無く停止した。 完璧だ。

 

倒れたバイクを起こして服に着いた砂汚れを払い、被っていたヘルメットをシートの上に置く。

 

今日はギャングとしての仕事は特に無し。 昨日と一昨日出勤できなかった分、他の人達の倍は頑張らねば。

 

手持ちのタブレットを操作して救急隊に出勤。

後は仕事着に着替えるだけだ。

 

「きたきたきたきた! はいエビオ一緒行こうね〜」

 

「なになになになに!? らだーお!?」

 

病院の中へと繋がる自動ドアを抜けた途端、駆け寄ってきたらだおが急に俺を担架へ乗せた。

とんでもないの手際の良さに抵抗もできない。 というか、いきなり拘束を受ける意味が分からない。

 

一瞬ギャングの構成員として警察に売られるのかとも思ったけど、今更らだおがそんな事をするメリットが無いので思考から外す。

だがそうなると、いよいよ担架に乗せられた理由が思いつかない。

 

「おーい、離せー。 殺すぞー」

 

「大丈夫大丈夫。 一旦待って欲しい」

 

「何も大丈夫じゃないぞー」

 

身体が動かせないので文句を垂れるも、らだおは白々しく答えを引き伸ばすばかり。

というか……

 

「え? こっちであってる?」

 

「あってるよー」

 

担架を持ったらだおは何故か病院の外ではなく、普段は絶対に入ることの無い病院の奥へと進んでいく。

てっきり何処かへ連れていかれるものだと思っていたが、俺の考えているような要件とは全く違うらしい。

 

とりあえず現状出来ることがないのでされるがままにしていると、らだおは周囲を気にしながらロビーから離れた病室の扉を開いた。

 

「はい、お待たせ」

 

初めて入る病室の中で担架から解放される。

 

縛られていた腕を擦りつつ周囲を見回すと、使われる筈のない部屋にしてはやけに掃除が行き届いている。

どうやらこのためにわざわざ準備をしていたみたいだ。

 

「じゃあ一旦座ってもろて」

 

そう言いながら、らだおはベッド脇に置かれていたパイプの丸椅子を自分の方へと寄せる。

 

「……」

 

座ってもろてと言われたが、他に椅子は見当たらない。

 

目線でどこに座るのかと問いかければ、手で示されたのは病室に並ぶベッド。 俺の分の椅子は用意されていないみたいなので、仕方なくベッドに腰を下ろす。

布団の柔らかい感触とスプリングが軋む音。

 

俺が座ったのを確認したらだおが真剣な様子で口元で指を組む。

 

「単刀直入に聞くけどさ」

 

「おん」

 

他の人に聞かれたくないのだろう、俺だけに聞こえるくらいの小さな声。

釣られて俺の声も小さくなる。

 

 

 

 

「……デートってさ、どこに行けばいいと思う?」

 

 

 

 

部屋を満たすシンとした静寂。

 

病院のこれからに関わる何かしらの大事な話だと思っていたのに、いざ聞いて見れば真剣な声での恋愛相談。

一度ツッコミをいれるべきか、真面目に答えるべきか。 次に発する言葉が見つからない。

 

「ッスゥーー……、あぁ〜〜〜〜。 ね」

 

「ねぇまじで頼むエビオ今の若い子がどこ行きたいかとかおじさんにはわかんないんだって」

 

俺の答えがないことを不安に感じたのか、崩れ落ちるように椅子から離れて必死に縋りついてくるらだお。

本気で困っている事は伝わってくるが、正直なところ抱きつかれても嬉しくないし、俺より年上の大人に恋愛相談されても答え方が分からなくて困る。

 

「一応聞くけどとろさんよね? 相手」

 

「そう。 次の休みに一緒にデートしましょうって言われた」

 

「いやらだおが誘ったんじゃないんかい」

 

「俺から誘ったら気持ち悪いかもしれないじゃん。 なんか若い子に必死になってるみたいでさぁ〜」

 

らだお的にもそれなりに思うところがあるようで、視線を泳がせながらもにょもにょとそれらしい言い訳。

丸椅子に腰掛けたおっさん内股気味にモジモジしているのはあまり見れたものじゃない。

 

「これマジな話、とろさんはらだおが必死な方が絶対嬉しいぞ」

 

「でもさぁ、俺が必死にとろさんデートに誘うのキモくない?」

 

「そりゃ俺ら目線はちょっとキモイけど」

 

「キモイんかい」

 

「でも、とろさんは絶対嬉しいと思う」

 

ハッキリと言い切ると、少し面食らった様子で黙り込むらだお。

 

男女関係なく好きな相手から自分へのアピールは大抵嬉しいものだ。

らだおだって、とろさんからのデートの誘いが嬉しかったからこうやって悩んでいるわけだろうし。

 

「あと、必死なとこ見せた方が浮気とかの余計な心配させなくて済む可能性もある」

 

「うわぁ、それは確かにありそ〜。 余計な心配かけたくないもんな」

 

小さな誤解からとろさんに詰められる想像でもしたのか、腕を組みながら納得したと頷くらだお。

とろさんがその辺りを心配するかどうかは怪しいが、らだおが積極的になる分には2人にとっても悪いことではないだろう。

 

よく知る2人なだけに、俺もできる限り2人がうまくいくよう協力はしていきたいところだ。

 

閑話休題。

 

「で、デートどこ行くかだっけ」

 

「そうそう。 その相談をエビオにしたかった」

 

脱線していた話を戻す。

らだおも思考を切りかえて俺へと向き直った。

 

とはいえ、俺から出せる答えなんて1つしか持ち合わせていない。

 

「ガチで答えるけど、とろさんに相談した方がいいと思うよ」

 

「え〜〜……? まじぃ?」

 

そうは思いませんと顔にデカデカと書いたらだおが怪訝な声を漏らす。 俺の答えに納得出来ないみたいだ。

 

だけど、俺もこの持論を曲げるつもりは無い。

らだおを説得する為の言葉を頭のなかで組み立てる。

 

「要するに、らだおは1人で決めて失敗したくないんよね? 」

 

「まぁそうね」

 

「だったら、カッコつけたい気持ちも分かるけど、とろさんに話して2人で行先決めたらほほほぼ失敗しない。 自信が無いなら、変にリスク犯すよりは堅実に行く方が絶対いい」

 

「それはそうなんだよなぁ」

 

自分でも薄々分かっていたのか、腕を組み天井を仰ぐらだお。

 

予想よりもちゃんと効いてるし、あと一押しっぽいな。

 

「てか、なんなら、2人で行先話し合うとこまで楽しめるからそっちのがお得まである。

旅行とかもそうだけど、こういうのってどこ行くかの話し合いが1番楽しいまであるし、よっぽど自信があるサプライズでも無ければ相談で良いと、思います」

 

言い切ると同時に、ペラペラと恋愛について語る自分に急に気恥ずかしさが湧いてきて小さく咳払い。

 

らだおの様子を伺うと、納得しましたとばかりに胸の前で小さく拍手していた。

 

「おぉ〜。 エビオにそう言われたらそうな気もしてきました」

 

「はい。 じゃあ暇な時にゆっくり話してください」

 

「まじでありがとう、恋愛マスターABO」

 

「はーい。 じゃあ仕事に行ってきます」

 

ベッドから立ち、丸椅子を片すらだおを背にドアノブに手をかける。

そうしてドアを押そうとする間際、らだおが思い出したように俺の方へと振り向いた。

 

「ちなみにエビオはどうなん?」

 

「なにが?」

 

「ひなーのとか良い感じじゃないのって」

 

「あーうるせえうるせえうるせえ。 仕事行ってきまーす」

 

流れが変わったので病室から撤退。 おじさんからの深掘りを受けるつもりは無い。

 

そのまま一直線に病院内を駆け抜けて、カウンターを飛び越えロッカールームに突入。

ロッカーで私服から着替えて仕事用の青い制服に袖を通す。

仕上げのキャップを被ると、仕事モードのスイッチが入った気がした。

 

「エビオ出勤しました〜」

 

無線に声を掛けながら受付のカウンターを再度飛び越えると、ちょうど件のとろさんが病院へと帰ってきているのが見えた。

駆け足のまますれ違いつつ、軽く声だけかけておく。

 

「とろさんおはよう〜」

 

「あ、エビオさん! ちょっといい?」

 

「はい! なんすか?」

 

車を出そうとしたところ、後を追いかけてきたとろさんに呼び止められて急ブレーキ。

昨日と一昨日で何かあったのか、もしくは知らない間に俺が何かやらかしたか。

 

「あのさ、ちょっと相談したいことがあって……」

 

頬を微かに赤らめながら病院の中へと視線を向けるとろさん。

視線の先を追えば、のそのそと病室から戻ってくるらだおの姿。

 

「あー……」

 

仕事を始めるのはもう少し後になりそうか。

 

 

 

 

★☆★

 

 

 

特にやることも無く、普段通り警察署の駐車場でチル。

優秀な部下達が無線で連絡を取りあっているのを聞きながら、スマホでウーバーイーツを眺める。

 

赴任初日はよちよち歩きだった皆も、今では街を守る立派な警察官となった。 その事実を実感する度、感慨深さやら頼もしさやら、色々な環状でちょっと泣きそうになる。

 

「あぶなーーーーい!!!!」

 

「ぎゃああああ」

 

聞こえる絶叫。 回る視界。 跳ねる身体。 飛び散る血液。

全身を襲う痛みを認識したのと同時に、吹き飛んだ身体がぐしゃりとコンクリートの地面に叩きつけられる。

 

何事かと顔を上げてみれば案の定、ピンクのパトカーが駐車場のど真ん中で横転していた。

 

「おいりりむ!」

 

包帯を巻いて自分の出血を止めながらパトカーに向かって大声を上げる。

すると、ひしゃげたドアからのそのそと運転手ことりりむが這い出てきた。

 

ボロボロになりながらも笑っているところを見るに、今の事故は随分と面白かったようだ。

 

「ごめぇん! 大丈夫?」

 

「俺は大丈夫だけど、お前の運転が大丈夫じゃないわ」

 

「いや、ちょっと失敗したわ」

 

「ちょっとの失敗でパトカーひっくり返さんでくれ?」

 

りりむへツッコミをいれつつ傷口に包帯を巻き終え、定位置に浮遊し直す。

やけに頑丈なスマホは今回も変わらず無傷。 俺の空腹を満たすためにもウーバーイーツの選定作業に戻らねば。

 

「なーにしてんのっ」

 

「ウーバー見てるよ」

 

「えーいいなー。 いいむもお腹空いたー」

 

パトカーをガレージへ仕舞い、俺の真横へ駆け寄ってきたりりむは、俺と同じようにスマホを取りだす。

 

「えびおこっち向いて」

 

「なに?」

 

パシャリ。

視線をスマホからりりむへと向けた瞬間、内カメになったりりむのスマホからシャッター音。

 

ウーバーを見てるかと思ったら違うんかい。

 

「かわいく撮れた?」

 

「うん、撮れた。 いい感じ」

 

「なんの写真?」

 

「ん? これ、今日の自撮り」

 

りりむの言葉と共にスマホに届く1件の通知。

日課の自撮りとやらは未だに毎日欠かすことなく投稿しているようだ。

 

TwiXでぱたさんを筆頭に数人から一瞬でいいねがつくあたり、りりむの愛され具合が伺える。

 

「ねー、他のみんなは?」

 

「仕事やね。 俺らと違って」

 

「あー……。 この話やめよっか」

 

勝手に始まった会話が一瞬で打ち切られる。

 

他のみんなはせっせこと街中で事件の対応中。 基本的に現場で動く署長にかわり、副署長の俺が署に残って全体の指揮を取っている。

最も、警察のみんなは大半がすっかり1人前に成長したので、大規模な犯罪でも起きない限りは俺が口を出すことはないのだが。

 

最近の俺の仕事は、ただひたすらに警察署の駐車場で時間を潰すか、パトロールという建前で街に遊びに行くくらいだ。

初日は殆どひよっこだった署員達の成長ぶりには少なからず心を揺らされるものがある。

 

それはそれとして、りりむは普通に仕事があるはずなのだが。

 

「えびおさ〜、パープルメンって呼べないの?」

 

「アイツもう死んだよ。 なんで?」

 

「また合コンしよっかなって」

 

「なんか生き返りそうかも」

 

適当に返した俺の返事に、りりむは楽しそうにケラケラと笑う。

何度かはっちゃけて遊んだ結果、姫は随分とパープルメンがお気に召したみたいだ。

 

「え〜、なんかやだなぁ。 女に誘われて生き返るの!」

 

「まぁまぁまぁ。 合コンすんの?」

 

「合コンはしたい!」

 

ちょっと待ってて、と言い残し、駐車場の端へと走っていくりりむ。

耳を澄ましてみると、微かに「合コンするんですけど……」なんて言葉が聞こえる。

 

あいつもう人集め始めてんのやばいだろ。 この後すぐやる気やん。

 

仕方が無いので手持ちにお着替えバッグがあるかを確認。

時間をかけると署長がまた拗ねるし、時短できるところは時短しなければ。

 

日中の駐車場で呑気にバッグを漁って蛍光パープルの衣装を探す。

 

不意に通知音が鳴り響いた。

 

【客船強盗】

 

「……客船起きたー。 行ける人無線2番ね。 俺ヘリ出します」

 

バッグ漁りを止め、駐車場の隅で誰かに電話するりりむにスライディング。

りりむは情けない声を上げながら面白いくらいに吹き飛んだ。

 

「客船行くぞー」

 

俺の端的な言葉をすぐに飲み込んだのか、りりむの声が少しだけ真面目になる。

 

「おっけー。 ごめん、事件起きたからまた電話するわ」

 

駆け足で警察署内を進み、エレベーターを使ってヘリポートへ。

 

続々と増えてくる無線の声を聞きながら、警察署に残っていた数台のヘリの中からサーマルヘリを出すと、俺の後ろを着いてきていたりりむが助手席に乗り込む。

 

「アーマー大丈夫?」

 

「大丈夫。 えびお事故んないでね?」

 

「お前にだけは言われたくない!?」

 

さっきパトカーで俺を轢いた人間にそんな事を言われるのは不服すぎる。

 

りりむに文句を言われないよう事故には気をつけながら客船へ向けてヘリを加速。

ウーバーを頼めなかったせいで存在を主張する空きっ腹には安いハンバーガーを詰め込んだ。

 

街の上空でチラリと助手席の様子を伺うと、りりむはいかにも気合十分といった面持ち。

シートベルトを握る手にもしっかりと力が入っていた。

 

「今日初仕事だ」

 

「いやもっと仕事してくれ?」

 

こいつパトカーで何してたん?

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