呪詛師になる?俺を見てまだそんなことが言えるのか?   作:Wi-Fi

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第22話

 

 空井くんがリュックから大きめのペットボトルを取り出し蓋を開け始める。

 

 この状況で舞は無理、けどある程度の移動は式神でなんとかなる。なら呪詞で位置がバレても平気。

 

「来るわよ、同時に左右に展開。生け垣で身を隠しながら式神で時間を稼ぐ」

「はい」

 

 呪霊が噴水に近づき壊しながら上に乗る。ヤバい、上からだと丸見えになる。

 

「今、噴水を崩して!」

「"式・解邪水魚(かいじゃすいぎょ)"」

 

 魚群のように現れた式神は呪霊が乗っている噴水を砕き、呪霊に巻き付くように皮膚を削っていく。

 

 有効打は生まれてない、削った側から再生される。けど、上手く身動きが取れないようで時間稼ぎは出来てる。

 

 そう思った矢先に呪霊は上を向き口を大きく開ける

 

「嘘でしょ……」

 

 口の中から小さな呪霊が大量に現れる。ポップコーンってそういこと? いや、このままだとマズイ。

 

 小さな呪霊が式神にぶつかり相殺されるように消えていく。本体に操られているのか自爆に躊躇がない。

 

 物量で勝てないんじゃこちらの長所がなくなる。どうする? だってこのままじゃ足止めなんて……

 

「先輩! 上!」

「え?」

 

 前を見ると呪霊がいない、上って? あれ? 

 

 思考が追いつかず軽いパニックなっていると空井くんが私の腕を引く。そのあと私の居た場所にさっきの呪霊が落ちてくる。

 

「な、なんで」

「式神が薄い真上から逃げられたんです。どうします、式神もかなり削られました」

 

 どうするって、元々出来ることなんてほとんどなかったのにそれが破られたんじゃどうしようもないじゃない

 

「と、とりあえず先輩走れます?」

 

 私を支えてくれてる空井くんは顔が真っ青であまり足も回ってない。体力も限界に近いんだ。ここは横に逃げ場のない売店が並ぶコーナー。もっと隠れやすい障害物がある場所まではまだ距離がある。

 

「も、もう無理よ」

 

 さっきの戦闘も一瞬で多分占星くんは気付いてない。かといって戦闘が出来るほど式神も残ってない。

 

 

「私の術式は戦闘向きじゃない、なのに式神が残ってないんじゃ無理よ」

「先輩、なら…」

 

 空井くんがこちらを向き覚悟を決めたような顔をする。何をする気? これ以上出来ることなんて何も

 

「ぼ、僕が時間を稼ぎます。だから先輩は占星くんを見つけて来てください……」

「な、無茶よアレ相手に時間稼ぎなんて」

「少なくとも奴を一瞬は止められます。それなら先輩を逃がすくらいの時間くらいなら」

 

 なんで、だってそんなことしたって私は間に合わない。居場所がわからない以上探すのにも時間がかかる。なのになんで……

 

「き、今日はずっと先輩に甘えてました、だから今度は僕が……」

 

 支えてる間もずっと震えてるし顔も真っ青でいつ吐いてもおかしくない顔をしてる。後輩がこんな顔をしているのに私はなんで諦めた? 

 

「ふざけないで」

「せ、先輩?」

「諦めようとした私も全部自分でやろうとした君もふざけてる」

「で、でも」

「確かに手はないわ、でもここで逃げるつもりはない」

 

 とまって後ろを振り向きく。鬼ごっこに飽きたのか止まった私たちを見て不気味な笑顔でこちらを見つめる。

 

 腕を地面にめり込ませクラウチングの体勢になる。一撃で決めに来るつもりだ。

 

「あれを躱せば隙が出来る。そのタイミング」

「む、無理ですよ!! さっき飛んだときめちゃめちゃ早かったですよ、それも横に逃げれないし!!」

「それしかないでしょーが!!」

 

 無理なのはわかってる、わかってるけどそれ以外の方法がないのも事実。むしろ向こうが接近してこないんだから最後のチャンスでもある。

 

「なら、先輩。ひとつだけ作戦があります」

「このタイミングで?」

「まだ未完成の技です。先輩の力を借りれば多分うまくいきます」

「まさか、それって」

「先輩、僕のこと信用してくれますか?」

 

 ● ● ● ● ●

 

 呪霊が地面に刺した腕をパチンコのように伸ばす。一方通行の道を利用して僕らを潰す気だ。

 

「始めるわよ」

「はい」

 

 歌姫先輩が舞を始める、未完成の術式を底上げしてもらって無理やり発動する。それしか思い付かなかった。

 

 発動タイミングは呪力が限界まで上がってから、速いと失敗するかもしれないが遅いと潰される。

 

 呪霊の動きが止まる。腕が伸びきったんだ。

 

「来ます!!」

 

 呪霊が地面を蹴る。

 まだ、腕をが縮む

 まだ、体が前に出る

 まだ、また地面を蹴り加速する

 まだ、呪霊目の前に来る

 

「"式・水鯨沫(すいぎょうまつ)"」

 

 術式の発動と共に地面から大きな鯨が現れ僕たちを真上に飛ばす。水鯨沫、風船のように中を空洞にした状態で水を式神にする拡張術式。

 

 水が薄くなるので強度が落ちるのでその分の呪力量が必要だが、今回は歌姫先輩にサポートしてもらうことでなんとか再現できた。

 

「ねぇ!! アンタ!!」

「は、はい!!」

「着地どうするの!!」

「あ」

 

 やばい考えてなかった。どうしよう、水を使いきったからクッションも作れないし、まずこの高さからじゃ水はクッションにならない。

 

「どうすんのよ!!」

「どうしましょう……」

「どうしようかねぇ」

 

 3人頭を悩ませてしまう。あんまり時間はないし、もしここに占星くんがいてくれれば……あれ? 

 

「占星!!」「占星くん!!」

「ごめん、遅れた」

「どどどどうしてここが?」

「水しぶきの音が聞こえて上見たら空から女の子が」

 

 え、僕は? それ歌姫先輩しか見えてなくない? 

 

「あれ? 落ちてない?」

「…ホントだ。う、浮いてます」

「引力で真上に引っ張ってます」

 

 さ、流石だ。術のレベルが高いと空も飛べるんだ。……よし、目標のひとつに空を飛ぶを追加しよう。

 

「んじゃあれをやればいいんですね」

「一人で大丈夫?」

 

 僕が反射的に聞いてしまうと、占星くんは空中で体勢を整え、ポケットに手を入れたまま簡単そうに答える。

 

「大丈夫だよ、俺強いらしいから」

 

 そう答えると重力を戻したのか占星くんだけそのまま落下した。

 

 ● ● ● ● ●

 

 ちょっとカッコつけ過ぎただろうか。なんだよ"らしい"って、もうちょいあったろ。

 

 いやね、あまりにそれっぽい登場が出来たからたまにはカッコつけたいなって。あと「僕、最強だから」に少しだけ憧れててさ、こんな場面に恵まれたら言いたくなるじゃん。

 

「まぁいいや。おい、ど◯もくんもどき」

 

 目の前の教育番組のキャラを限界までキモくしたみたいなアホヅラに声をかける。

 

「うちの先輩と同期に手を出したんだ、塵も残さねぇぞ」

 

 突進してきた呪霊を最大出力の水星で全身凍らせる。あるかわからない細胞のひとつまで凍らせて、熱したら全身が消えてしまうほど()てつかせる。

 

「"具現・恒星(シリウス)"」

 

 義眼を強化した際に同時に作り直した核を圧縮させることで生み出す今の俺の最大出力。

 

「ぶっ飛べ」

 

 恒星が呪霊を建物を地面を、あらゆる全て吹き飛ばす。

 

「試運転と思ったけど使えないなこれ……呪力バカみたいに食うし、それに」

 

 目の前のクレーターを見て思う。使う場面ねぇよこれ……

 

 

 

「アンタバカなの!!」

 

 あとで被害を見てた歌姫先輩にゲンコツを食らったので「そのセリフはツインテにしてから言ってください」って言ったらまたゲンコツを食らった。

 




シリウスはギリシャ語で「焼き焦がすもの」らしいので選びました。違ったらすいません

涙くんは主人公が転生してなかったらここで大怪我をして呪術師を引退しているという脳内設定があります

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