呪詛師になる?俺を見てまだそんなことが言えるのか? 作:Wi-Fi
一週間以上に空けてすいませんでした。
「よっと!! こんなもんか?」
「事前報告だとあと一体…」
「マジか、日が暮れる前に終わらせるぞ」
今回は天野さんとペアで任務に来ています。帳のせいで日が出てるかわからないんだけどね。
「全然出てこねぇなぁ。式神に反応は?」
「ぼ、僕の式神は範囲狭いから索敵向きじゃないんだけど」
「ないよりマシだろ」
うぅ……術式使ってる天野さんはあんまり得意じゃないんだよなぁ。
「それに呪力を餌に釣る方法もあるって占星が言ってたろ」
「それはそうなんだけど、水にも限りがあるしあんまり使いたくないというか…」
「どうせ戦闘になったら私が前線なんだ、変にここで渋った方が生得領域に引き込まれたりしてめんどうな可能性もある」
ぐぅ……ど正論。索敵範囲広げるか……空気を変えたいし、なにか話をそらして誤魔化したい…
「…天野さんの術式って性格が変わっただけじゃなくて呪力出力も上がってる気がするんだけど、気のせいかな」
「アー気のせいじゃねーよ」
「私の術式が魂に干渉してるからなのか、普段より集中できるんだよ」
「魂?」
「こればっかりは感覚だから説明が難しいんだけどな」
魂か、授業で黒閃が決まると術師はゾーンに入るって習ったけどそんな感じかな? 黒閃を出したことないからわからないけど。今度占星くんにメールしてみよう。
「涙、来たぞ」
「え…」
「後ろ見ろ」
言われた通り後ろを振り替えるとさっきまで歩いていた道が消えていた。式神は消えていないので道そのものがなくなったわけではなさそう。
「空間そのものが歪んでる、生得領域?」
「多分な……上!!」
天野さんの声に合わせその場を避ける。さっきまで居た場所には綺麗なクレーターが生まれていた。術式というよりはただの呪力をぶつけたように感じる。
にしては威力がおかしいけど!!
「涙、あぶり出せ」
「う、うん」
呪霊は天井を移動しているのかこちらから姿が見えない。遠距離は僕しか使えないしそこまで範囲は広くない。無理矢理でも落としたいんだけど……
「速い!!」
式神が掠りもしない。それどころか弾幕のように呪力の弾を飛ばしてくる。
なんとか弾幕を回避し続けていたが、一弾だけ他よりも速い呪力弾が天野さんのサイドバックを貫く。たしかアレには鏡を収納してたはず。
「全然出てこねぇと思ったらずっと見張ってやがったな」
天野さんの呪力が落ちていく、術式の内容を探られていたのか。
「他の鏡は?」
「……動きづらいからまとめて持ってたせいで一緒に壊されてる」
「なら一度下がって、僕が時間を稼ぐ」
「でも……」
「いいから!!」
今の状態で天野さんに前線を任せるのは厳しい。なら天野さんをフリーにして何か活路を見つけもらったほうがいい。
もう脅威がいなくなったと判断したのか呪霊が落下してくる。式神を完全に回避してくるような奴だ、呪力消費を考えて戦える相手ではない。
「"式・水鯨沫"」
呪力を多く消費し式神の範囲を広げ防御に重点を置く。ここからは根比べだ。
● ● ● ● ●
私の術式は鏡ありきであり、なければ術式なしと全くかわりない。
生得領域のせいで鏡どころか窓すらない。鏡の破片では小さすぎて術式を発動するための呪力に耐えきれなかった。
「術式が使えない」
今の私では戦いに混ざっても邪魔になるだけ。でもこのまま涙くんを見殺しになんてできない。
かと言って鏡なしでは私の術式は発動できない。最悪鏡じゃなくていい、綺麗に反射するもの……アレなら!!
私は涙くんの邪魔にならないようにその場を移動する。さっき壊された式神の媒体が水溜まりとして残ってるはず!!
何とかバレないようその場を離れ、水溜まりにを覗く。
「だめだ、うまく反射しない」
領域のせいで光源がないし、血が滲んでいて綺麗に私の顔を映さない。一応試しに呪力を流してみたが、水面が揺れてしまいうまく映らない。
何か他に、何か、なんでもいい!! この領域内でも出来ることを!!
「領域?」
そうだ、これなら媒体なしでも使える。うまく行けば生得領域に穴を開けられるかもしれない。
けど、この土壇場で使えるようになるほど簡単な術ではない。かといって今の私に出来ることは他に思いつかなかった。
「これしかない」
お荷物ではいられない。涙くんが今も一人で戦ってくれているこの時間を無駄にはできない。
戦闘の邪魔にならない距離まで離れ両手を地面と平行に重ね合わせる。この形があっているのかは正直わからない。ただ自分の直感にしたがって呪力を集める。
強い呪力に反応したのか呪霊が矛先をこちらに向けてくるが、涙くんの式神がそれを防ぐ。
「天野さん!? 何してるの!?」
「涙くん、時間稼ぎ頼めるかな」
「策があるの?」
「策というか、博打?」
策なんて呼べる代物じゃない。どうせこのままじゃジリ貧、出来ることをやるしかない。
「わかった、任せて」
「さぁ、大勝負ね」
「領域展開」
呪力を限界まで絞り出し、生得領域を押し出す。しかし今の状態ではただ呪力と結界で押しているだけ、簡易領域に近い。これでは意味がない。
「自分を延長するイメージ、魂を広げて、術式を押し出せ」
術式の影響でほんの少しだけ掴んだ生得領域の片鱗、それをそのまま広げる。正解なんてわからない、教えて貰ったことなんてない。でもなぜかいける気がしてる。
「天野さん!! 避けて!!」
流れ弾がこちらに飛んでくるが気にしてる余裕はない。もう少し、もう少しなんだ。
呪霊が目標をこちらにかえたらしく、接近いくつか攻撃が飛んでくる。体を掠り、肉を抉ってくる。ハイになっているのか痛みはないが足から力が抜けていく。
「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」
血と呪力が減って頭がガンガン痛み出したする。視界が霞むし地面が揺れてる、違う私が揺れてるのか。
意識が遠のいて体から離れるような感覚に陥る。今ならわかる、これが魂であり今一番必要なピースであると。
最後の呪力を込めてもう一度声を張り上げる。今なら出来る。
「"領域展開"」
自分を中心に足元が鏡張りのようになり、生得領域を押し始める。しかし、勢いは最初だけで押しきれていないし、範囲も狭い。いくら領域展開でも、初心者でカラカラの呪力の状態では勝負にはならなかった。
「勝てなくていい、逃げ道が出来れば」
さらになけなしの呪力を集中しようとした瞬間、視界が真っ暗に染まり強い衝撃を受ける。何か投げられた? そのまま勢いを殺せず、壁に叩きつけられ轟音とともに大きなヒビが生まれる。
「いっつ、涙くん!?」
ぶつけられたのは涙くんだった、脇腹から血が多く流れてる。間に合わなかった……
もう呪力はないし、術式も焼き切れてしまって領域は開けない。何とか涙くんだけでも逃がす方法を……
べキッ
背後から何かが砕ける音が聴こえる。最初はぶつかったときのヒビかと思ったけれど、もっと奥から聴こえる。
バキッ
何かがぶつかる音にも聴こえる。呪霊にも聴こえるのか警戒して距離を取ってる。てか段々近づいてない?
ビキビキビキ
音だけではなくヒビも広がり始めた。逆側から殴られてる?
ドゴッ
壁が砕けて緑色の腕が現れる。呪霊じゃない、カッパ?のぬいぐるみだ。それにこの呪力は……
「すまない、遅れた」
「夜蛾せんせー! どうやって?」
「領域内を探っていたら一瞬だけお前の呪力を感じてな、最短ルートで来た」
最短ルートって壁全部ぶち抜いてきたの? 教育者とは思えない脳筋プレーでビックリしてるよ。
「歩けるなら涙を連れて外へ離れてろ。あとは私がやる」
「わかりました。お願いします」
夜蛾先生が開けた穴をたどり進む。正直情けなくも悔しくもあったけど、それ以上に先生の背中があまりにも頼もしかった。
● ● ● ● ●
あの後、先生は無事に呪霊を祓い任務は終了した。涙くんの怪我も命に別状はなかった。これは後の話になるが、数ヶ月後に入ってくる後輩のおかげで入院期間が短くなったらしい。
「せんせー、今回私は何も出来なかった」
「そうかもな」
「慰めてくれたりしないんだ」
別に慰めてほしい訳ではないけれど冷たく返されるのはなんか違う。我ながらめんどくさい。
「戦いに置いては何も出来なかったかもしれないが、私が二人を見つけることが出来たのはお前の功績だ」
「はい」
「やれることは出来たんだ、ならもっと出来ることを増やすしかない」
「はい……」
「だから、下を向くより前を向け」
「ばぃ゛……」
必死に下唇を噛んで視線をあげる。もっと強くならないと、同期に置いてかれないように。
「私……強くなります……」
「あぁ」
次回、無駄に回りからの主人公の好感度を上げた理由回になります。
やっとここまで来ました。
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