呪詛師になる?俺を見てまだそんなことが言えるのか? 作:Wi-Fi
病院のベットで自分の左腕を確認する。機能面では問題なく動くが、色が変色してしまっている。
「内側は問題ないが跡は消せなかった。スマン」
「謝るような事はないですよ。今回はかなりのイレギュラーだったと思いますし」
欠損や機能面に関わる後遺症とかじゃないだけ全然マシだ。むしろ肩とかガッツリ噛まれたけど、どうやって塞いだの? 穴空いてたじゃんか。
「その状態じゃ課題どころじゃないだろう。少なくとも夏休みの間は休みにしよう」
お、マジですか。感覚的には問題ないので気付かなかったが、思ったより重症らしい。考えが顔に出てたようで、痛み止めが切れたら死ぬぞと脅された。
「体鈍りますかね?」
「そればかりは仕方ないだろう。後からリハビリで戻すしかない」
まぁそりゃそうか。この期間はゴリラを捨て術式と呪力操作に集中するしかない。
「そういえば、あの辺に女の子っていませんでした?」
「なに?」
「いや、祓った後に会ったんですよ。俺の一、二個下くらいの茶髪の女の子」
「……今回帳を張る前、窓はなんと言っていた」
「はい、事前に下調べは終わってるから周辺に人はいないって」
今、冷静になって思い出すと帳の範囲を考えると最初から巻き込まれていた可能性が高い。女の子が一人で帰って行った事も考えると迷子でたまたまいたって線も薄い。
「事前情報のミス、非術師の巻き込み、重症の術師への対応の遅れ。今回の担当には、少し話をつけなければいけないらしい」
「あ、やっぱり遅れてたんですか。来るの遅いと思ったら」
呪術界では珍しいハズレに当たってしまったらしい。命に関わる界隈でそんな奴が存在していたとは、シンプルに怖いわ。
「とりあえず当分は休んでろ」
「あ、先生。呪力が流れやすい手袋って作れたりします? 術式の都合上、あんまり呪力を阻害しないヤツが良いんですけど」
「……白、いや汚れが目立つから黒の方が良いか」
「やった!!」
後日、めちゃめちゃ素材の良い手袋が何種類か届いた。先生張りきったな。
● ● ● ● ●
全快とまではいかないけれど、とりあえず退院は出来た。痛み止め切れるとマジでしんどかった。特に夜、痛みで寝れない。
結局夏休みもほぼ残っていないので遊びに行くとかは諦めた。元々遊びに興味があまりない。
とりあえず、怠けた体を戻したい。けど流石に夜蛾先生のブートキャンプはきついし、キックボクシングは無断で休みまくってるから戻りづらいんだよなぁ。
まぁちょっとくらい目をつぶってくれるだろ。
と思ってた時も俺にはありました。
「で、先輩。何か言うことがあるんじゃないですか?」
「ムダンデ ヤスンデ ゴメンナサイ」
コイツを忘れてたよ。え、何で笑顔なの? こっわ
いやね、忘れてたわけじゃないんですよ。コイツ忘れてたら何でお前戦っとるんや!! てなるじゃん? あれだよ、レベル上げに夢中になってメインクエスト忘れちゃうヤツ。
「あるあるだから許して」
「は?」
「ナンデモナイデス」
「何だよ、俺が全面的に悪いみたいなこと言いやがって」
「その通りだよ」
そんなに怒らなくていいじゃん。週3.4回通ってたクラブを急に連絡せずに1ヶ月休んだだけだよ? 俺が悪いわ。
「一応、形式上は心配してたんですよ」
「形式上って……」
見た目だけってことやないかい。別にいいけど
「けど、ほら無事帰ってきたじゃん」
「じゃあ手袋外してください」
「え?」
何でバレた? そんな要素なかったろ。もしかしてもう高専がアプローチをかけてる?
「この暑い中手袋つけてたら不自然でしょ」
「確かに」
「それに、さっきから無意識に左手を守ってますよ。あと、やけに片手だけ握力落ちてるでしょ。動きが不自然ですよ」
「すげー」
すげー
「なにしたんですか……」
「怪我」
「喧嘩は買うよ」
どうしよう、良い言い訳が思い付かない。バレたときの事考えてなかった。火傷ってどんなときに出来る? それも他の傷もあるからちょっとした事故のレベルじゃない。
「見せて」
「グロいからやめとけ」
「……グロは慣れてるんだ」
チッ、コイツ呪術師の卵やった。確かにあれに比べたらマシだわこの傷。
「珍しくこっぴどくやられたみたいですね」
「うるせー」
「……」
傑の動きがピタリと止まる。なんで? 今どこにも地雷なかったろ。
「やっぱり誰かにやられたんですね」
「あ」
コイツ、カマかけやがった
「そいつの顔、身長、服装のタイプ教えてください」
「一応聞くけどそれを教えたらどうするの?」
「殺す」
「シンプル!! そんなキャラじゃないだろお前!!」
待て、そこまでの親密度上げた記憶ないぞおい!! いや、コイツお気に入りを傷つけられると切れるタイプだ。原作からもうっすら片鱗見えてた。
「少なくとも俺がやられた相手に勝てんのかお前」
「先輩に勝つなんて卑怯な事してないと無理でしょ。ならこっちにも考えがあります」
「何する気だてめー!!」
オイコラ止まれ。右手のメリケンをしまいやがれ、てかどっから出した!!
「わかった。何でも一個言うこと聞くから落ち着けバカ」
「先輩、近くに美味しい蕎麦屋知ってるんですよ」
「小学生の俺らじゃ無理だろ」
「先輩がまぁまぁ金持ちなの知ってるんですよ」
こなしている課題の報酬は、基本的に夜蛾先生と親が管理してくれてる。基本その一部を小遣いとして貰っている。小学生の小遣いのレベルじゃないけど。
「チッ、その代わりリハビリ手伝えよ」
「良いですよ、今なら勝ち越せますしね」
「舐めんな」
ギリギリ勝ち越した。
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「先輩は中学受験とか考えてるんですか?」
「ズズッ」
「いや先輩それなりに成績良いし行けるとこ少なくないでしょ」
「ザクッモグモグ」
「めんどくさいのはわかりますよ? けど、将来楽になりますよ」
「ズズッ」
「一回食べるのやめてくれませんか」
わざわざ高い店来たんだから食わせろよ
「ズズッ」
「その気持ちはわかりますけど、あと、ここそんなに何度もおかわりするようなタイプのお店じゃないでしょ」
だって、量が少なすぎだろ。こちとら育ち盛りだぞ。
「ザクッ」
「そのためにその天ぷらつけたんでしょ」
「ズズッ」オカワリ
「すみません、ざる2枚追加でお願いします」
「お前も食うのかよ」
てかコイツさっきからしゃべってないのに会話通じるんだけど、なに? テレパスなの?
「てかさ、受験とか言うけどお前はする気あんの?」
「あるわけないでしょ、めんどくさい」
「知ってた」
「じゃあ先輩は地元の中学ですか」
「いや東京行くけど」
「は?」
東京にいたほうが夜蛾先生の授業受けやすくなるし、中学に上がったら高専に行くことも増えるから何かと都合が良い。あ、ざる来た
「あざーす」
「なんで、急に」
「ん? 向こうに用があってな」
「キックボクシングは? やめるんですか?」
「どうだろうな、お前がいないと張り合いないし」
実戦で使えそうな所は学べたし他の競技でも良いかもしれない。
「パルクールとかも良いな」
「私は」
「ん?」
「中学生になって、先輩と公式戦で戦いたいです」
なるほど。俺は本当に気に入られているらしい。けどな、お前の親友は俺じゃないんだよ。
「俺とお前が戦うのはここじゃないよ」
「でもやめるって」
「俺たちが戦う日は来る」
少なくともちっちゃなリングの上じゃない
「それにな俺はライバルじゃない」
「は?」
「俺は先輩なんだ、追いかけに来い」
「屁理屈じゃないですかそれ」
「あ? 理屈なだけマシだろ」
「先輩、ホントにフィーリングとか嫌いですよね」
だってわからないものはわからないんだ。仕方ないだろう。
「なら、転けたりしないで前にいてくださいね」
「おうよ」
良い顔になったじゃねぇかよ
「とりあえず、そば食うぞ」
「すみません、ざる2枚追加でお願いします」
「遠慮ねぇなおい」
それっぽいこと言ってるけどかなり自分勝手なことしてますねコイツ。
作品の中で説明が足りない部分について、補足短編集の回を作ろうと思っています。ここどうなん?と思う場所があったら感想いただけると嬉しいです。