…………朝です。
ただ、相変わらずの曇天で実感は湧かないんだけどね。
「…………なんも寝れなかった」
数時間の仮眠のつもりが、ある理由からガッツリ6時間に近い睡眠休憩の時間になってしまった。
いや、ある理由とか含んだ感じに言ってみたけど、単純に膝上の蛍さんが熟睡しちゃっただけです。
ガッツリと腕に抱きつきながら、すやすやと眠りこける様はもうただの美少女。
どこぞのお姫様とか言われても信じちゃうレベル。
まあ、泣き疲れて眠った女の子を起こせるような性格はしていないので、こうなってしまったのも仕方ない。
というか、必死すぎてよく覚えてないんだけど、なんか昨夜の俺、すんごい恥ずかしい口説き文句みたいなの連発してなかった? 変なこと言ってないよね?
「…………ぅ、ぁ?」
「お、やっとお目覚めかな」
「…………てん、か?」
「ん、天華さんですよ?」
「………………ッ!?!?」
三秒ほど見つめ合ってから、蛍は一気に離れて距離を取った。
……あれ、もしかして避けられてる?
やっぱ、昨日地雷踏んだりしたか?
「て、天華…………その、あの……昨日は……」
「あー、昨日のこと? なんかいまいち覚えてないんだよね。大したことはしてないと思うんだけど」
とりあえず、素知らぬ顔しとこ。
うん、悪いことはしてないもの。多分。
「………………そ、そうだよね。うん、よく覚えてないよね……うん! …………あのさ……私も、よく覚えてないんだけど」
何この子。
顔真っ赤にして、慌てて、わたわたしてて…………え、何この子。鼻血出たんだけど。尊い。死ぬ。死んじゃうんだけど。え、死ぬ。
どこかモジモジしたような雰囲気と仕草を見せながら、彼女は小さな声で聞いてくる。
「……昨日のこと、本気にしていいの?」
「…………? なんのことかわからんけど、俺がお前に嘘なんて吐くわけないだろ」
「…………そっか……ふふ、そっか!」
満面の笑みで、何度も頷きを繰り返す蛍。
なんのことかは思い出せないけど、彼女が余りにも可愛いので何でもいいか、と俺は思考を放り投げた。
「とりあえず、元気が出たみたいで何よりだ。そんじゃ今日も捜索を始めよう……いい加減、そろそろ見つけてやらないと危ない気がするしな」
「それもそうだね」
現時点で、俺が誘拐されてから二日弱が経過していた。
二日程度でステラがどうこうなるとは思えないのだが、パイモンの方はわからない。
幸い無妄の丘はその特殊な環境により迷いやすい場所ではあるが、広大なエリアであるというわけではない。
マップを使用できる以上、迷う可能性がない俺にとってはそこまで悪い状況ではなかった。
『提:無妄の丘 周辺マップ』
ポンと脳内に浮かび上がったテイワット大陸の地図。
無妄の丘周辺をズームアップしているその地図には…………なんか、赤い点がいっぱい存在していた。
『提言:戦闘態勢への移行』
そーゆーのは、もっと早く言いなさい!
脳内でお説教をかましながら、俺は蛍の肩を叩いた。
「ひゃっ、えっと、な、何?」
「…………っ、付近に敵の気配。戦闘の準備ってできてる?」
「――――ッ、いつでも」
若干の赤面が、俺の話を聞いた直後に真剣な表情に切り替わる。
「天華、下がっていて」
「ひ、ひゃい」
「うん、いい子」
己は、ギャップ萌えの鬼か。
なんなの、ほんとに。
イケメン過ぎるだろ、メス堕ちするぞ?
……メス堕ちするぞ? ってどんな脅しだ?
宙より剣を抜き、彼女は俺を背後に置いて臨戦体勢を整える。
そして現れたのは。
「ひぃぃぃっ、お、お助けをぉぉ! やめ、やめてく――――へぶっ」
「くるな、くるなぁぁぁ! わかっているのか、我らファデュイに歯向かうということの意味を! ひっ、や、やめ――ほげ」
「も、もうやだ、お家帰るぅぅぅぅぅ!!!」
何かから必死に逃げている複数人のファデュイ戦闘員だった。
現在進行形で吹き飛ばされていく彼らを見て、蛍は一度剣を下ろした。
ほどなくして、嵐のような勢いでファデュイを吹き飛ばしていた誰かの動きが止まった。
その人は、身につけていた仮面を外してこちらに近づいてきた。
「お前たち、こんな場所で何をしている?」
鍛え抜かれた肉体を惜しげもなく晒し、その声からは、不器用さの中に溢れる優しさが伝わってくる。
降魔大聖、護法夜叉大将などの二つ名をもつ夜叉一族の一人――魈がそこにいた。
彼はつまらなそうな顔で横たわったファデュイたちを一瞥している。
所詮はこの程度か、なんて言葉が聞こえてくるようだった。
「魈、来てくれたんだ」
「…………お前だけでも充分だとは思っていたが、我の想定よりも少し遅かったな」
「それは、ごめん……ありがとう」
「気にすることはない……それよりもお前の仲間は既に我が見つけた」
うわぁ、仕事はっや。
流石できる人。
原神世界の男性キャラはスペック高すぎて、劣等感すらわかないんだよな。
「え、本当!? パイモンは今どこに?」
「軽策荘に預けてある……我の仕事はこれで終わりだ。ここからはお前たちの好きにしろ」
そう言ってサラッと帰宅しようとする魈に思わず、声をかけた。
「待ってくれ、魈……さん?」
「…………何だ?」
「他に、この付近で迷子の女性を見なかったか? 灰色の髪で、背丈の高い――」
「あの者のことか。お前の知り合いか?」
一瞬、魈の表情が翳ったのがわかった。
途端に嫌な予感。
冷や汗が流れ始める。
「……ッ! 見たんだな? そいつは今どこに――」
「…………あの女は今頃軽策荘で治療を受けているだろう。只人には重い怪我を幾つも負っていた。後悔をしたくないのであれば、急いだほうがいい」
その言葉の意味を理解した瞬間。
「――は?」
自分のものとは思えないほどの掠れた声が口から零れた。
「…………我の仕事はここまでだ」
「え、あっ、魈! もう行っちゃった…………天華?」
視界の外で誰かの声が聞こえた気がしたが、今はそれどころじゃない。
「…………っ、はぁ……はぁ」
動悸は不規則に。
呼吸のリズムが乱れていく。
音が遠くなり、世界の色が薄れる。
一度、前世で経験したことのある貧血の症状にも似たふらつき。
「……天華!?」
「……っ、悪い、蛍」
肩を抱き留められた感触で、ようやく意識が現実に回帰した。
「大丈夫。ゆっくり呼吸して」
「……はぁ……っ……わかってる」
急げ。
こんなことをしている場合じゃないだろう。
これ以上、無様を晒すな。
吸って、吐いて。
吸って、吐いて。
最後にパンッと頰を両の手で張る。
「…………軽策荘まで最短距離で」
「ちょっと、待って。すぐに――」
「いや、蛍じゃない…………聞いてるだろ?」
首を横に振ると、蛍はきょとんとした表情でこちらを見てくる。
だが一々、説明をしている暇はない。
『応答:聞こえてます 提案:ワープを利用しましょう』
チートさんの声に首を傾げる。
俺は行ったことのあるワープポイントしか使えないんじゃ――いや、そういうことか。
「蛍、軽策荘にワープは可能か?」
「できるけど、私のワープは…………そういうこと?」
「わかったなら、話が早い。手を貸してくれ」
目を見合わせたのちに、さっそく行動開始。
まずはチートさんの転移で石門のワープポイントへと戻り、次に蛍の転移で軽策荘のワープポイントへと移動する。
少しズルい気はするが、そんなことに構っているほどの余裕はない。
若干失礼かもしれないが、軽策荘は冗談でも大きな街とは言い難い小さな山村だ。
見慣れぬ怪我人が運び込まれたとなれば、村民の多くの者がそのことを知っている可能性が高い。
「…………ッ、すいません! 軽策荘に怪我人が運び込まれたと聞いたのですが、どなたか詳しい情報を知っている人はいませんか?」
ワープして早々に、大きな声で呼びかける。
突然現れた俺に不審そうな目を向ける者、村人同士で顔を見合わせ様子を伺う者、様々な反応をする者がいる中で、
「…………パイモン?」
「……ん? んー? お前、誰だ? おいらとどこかで会ったことが――っていやいや、今そんなことをしてる場合じゃないんだ。話があるなら、また今度にしてくれよな」
ふわふわと浮かぶパイモンの手には、水の入った桶が抱えられていた。
よいしょ、と少しフラフラしながらも彼女はそれを運んで行こうとして――
「……パイモンっ!」
「うわぁっ!? 急に何するんだ――って、旅人じゃないか!?」
俺の後ろからすっ飛んできた蛍のハグを受けて、その桶を地面へとひっくり返してしまった。
「ごめんね、一人にさせて。無事でよかった」
「そ、それはこっちのセリフだぞ! どこ行ってたんだよ、お前! すっっごく心配したんだからな!」
オタク思考の俺ならば、こんな光景を邪魔することなどできないだろう。
でも、今はそんなことを言ってられる精神状況じゃないわけでありまして。
「感動の再会をしてるところ悪い。パイモンでいいんだよな? ここ最近、軽策荘に怪我人が運び込まれたって聞いたんだが、何か知らないか?」
「怪我人ってステラのことか? もしそうなら、おいらが案内してやるぞ! …………って、おいら、ヨォーヨってやつに綺麗な水を運んでくるように頼まれてたんだった!」
ねえ、その桶ひっくり返してたけど大丈夫?
✳︎
歌塵浪市真君の最も幼き弟子であるヨォーヨは、師匠から与えられた休暇を利用して、両親の暮らしている軽策荘へと帰郷しているところであった。
正確にいえば、軽策荘から山を一つ挟んだ辺鄙な場所に両親は家を建て、そこで隠居生活を行っているのだが、そこは誤差である。
久々の帰郷に、彼女は両親との時間を思う存分に楽しんだ。
両親もまた、見るたびに確かな成長を見せてくれる我が子のことをたっぷりと甘やかしたりなどもした。
ヨォーヨがその日、朝早く起きたのは山菜を採って両親に料理を振る舞おうと考えたからだった。
慣れ親しんだ山へと入り、動物や昆虫たちの声を聞き、のんびりと彼女は山菜を探していく。
朝露が光を照り返し、爽やかな風が吹き抜けるその様は、ヨォーヨの心を踊らせるものであった。
少しして、ヨォーヨは山中の異変に気がついた。
人々からは無妄の丘と呼ばれている地域一帯の方向から、動物の気配が極端にしなかったのである。
何かあったのだろうか、と少しばかりの疑問を覚えたヨォーヨだったが、彼女は既に充分な量の山菜を採り終えていた。
大人しくその場を後にしようとしたそのときに、バシャッと何かが水の中に飛び込んだような音がどこからか聞こえた。
「…………? 一目見るだけなら、大丈夫だよね?」
その音は、ヨォーヨのすぐ近くからした。
ヨォーヨは静かに感じ取った気配の元へと近づいていく。
ある程度、進んでいくとヨォーヨは小川にぶつかった。
その場で耳を澄ませてみれば、上流の方からザァザァと滝の落ちる音が聞こえてくる。
好奇心を抑えられずに、ヨォーヨはその音の発生場所へと近づいていく。
そして、彼女を見つけたのだ。
その水の一部は紅に滲んでいた。
滝壺となった池の淵に、意識のない灰髪の女性の姿があった。
先程の音は、上流の方から流されてきた彼女がこの滝壺に落下した際のものなのだろう。
幸い滝の落ちる高さは大したものではない。
問題は、傍から見ただけでもわかる出血量の多さだった。
ヨォーヨは迷うことなく女性の元へと近づいていき、その容態を確認する。
冷たい身体。
失われた意識。
けれど、その胸は小さく上下に動いている。
呼吸があるのなら、息があるのなら、ヨォーヨに諦めるという選択肢などはなかった。
「……大丈夫っ! ヨォーヨが絶対に助けてあげますからね」
この場所からなら、自身の家よりも軽策荘の方が近い。
迷惑をかけることにはなってしまうかもしれないが、人の命には代えられない。
幸い、ヨォーヨは軽策荘の村長的役割を果たしている若心と面識がある。
きっと助けになってもらえるはずだと、小さな身体を必死に動かして、ヨォーヨは灰髪の女性の身体を運び始めた。
――そして。
その少女が灰髪の女性を助けるために奮闘する姿を、滝の上から一人の青年が眺めていた。
彼は視線を少女から外して、手にしていた槍を何人もの外敵たちに突きつける。
その背には崖。
或いは、二つの命か。
「……これより先の侵攻を、我は許さぬ。死にたい者からかかってこい」
それは魈が天華たちと出会う少し前の出来事。
魈とファデュイ戦闘員たちの争いもとい、蹂躙の幕開けだった。
✳︎
「…………もう! まだ起きちゃダメ! あなたは本当に酷い怪我をしていたのですよ?」
パイモンに案内されたのは、一軒の民家。
普段は村長が使っているというその家の一室から、特徴的な柔らかい声が聞こえてくる。
流石に間違えようがない。
パイモンが口にしていたプレイアブルキャラクター、ヨォーヨの声だ。
「……でも、自分でやった方が早い」
「ダメだよ。ちゃんと安静にしてなくちゃ。薬より養生、身体を休ませることが何よりも大切なんですから。大丈夫、あなたの代わりにヨォーヨがしっかり綺麗にしてあげますからね」
そして、微かに聞こえたのは――
「……ッ、ステラ!」
堪らず、部屋に飛び込んだ。
魈の言葉を聞いてから、何度も嫌な想像が脳裏を過っていた。
でも、よかった。
彼女の声をまた、耳にすることができた。
昂る感情のままに、彼女の名前を口にした。
その先に待っていたのは。
「…………天華」
ベッドに寝転んだ上半身裸のステラが、ヨォーヨにタオルで身体を拭かれている光景だった。
パイモンが水桶を運んでいた理由が判明した瞬間でもある。
「…………っ、お邪魔しました」
「別に邪魔じゃない」
余りにも目に毒なその光景に、躊躇うことなく回れ右。
というかステラさんってば、随分と着痩せするタイプなんですね……いや、何がとは言わないけど、想像より凄かった。
部屋から出ようとして、誰かに抱えられるように胸周りに腕を回された。
同時に、背中に感じる柔らかな感触。
……コイツ、一瞬でこの距離を詰めてきやがった。
「……何してんの? ねぇ、何してんの!?」
「…………充電?」
「人のこと電池扱いしないでくれます!?」
「もー! 起きちゃダメって言ったのに! どうしてそんなに元気なの!」
「ん、もう完全復活。元気出た」
「なんでもいいから早く服着てくれない!?」
三人でわちゃわちゃと騒いでいた所に、恐る恐るといった様子でパイモンが部屋を覗き込んできていた。
「……ヨォーヨ、おいら頼まれてた水を持ってきたんだけど…………取り込み中だったか?」
そしてパイモンが居るということは、同時にそこには彼女が居るということを意味するわけで――
「…………楽しそうだね、天華」
なんかめちゃくそに不機嫌じゃねーですか、蛍さんや。
いや、超笑顔だけど。
うん、笑顔だから怖いんだよね。
半裸のステラが何をしても俺を離さなかったので、諦めて目を閉じ続けること数分。
ステラの身体を拭き終わったヨォーヨは、俺たちがステラの関係者であることに安心したようで、一度帰宅して両親に事情を伝えてくると部屋から出て行った。
流石はしっかり者のおませさん。
とろけるような声に、甘やかしてくれるタイプの幼女。今にも、性癖がぶちこわされる音が聞こえてくるかのようである。
ちょっと落ち着いたら、オタクメンタルが帰還してきた模様。
ということで、部屋に残されたのは俺とステラ、そして何故か不機嫌な蛍と蛍の背中に引っ付いているパイモンということになった。
なーに、この空気。
『…………見てる分には面白いですね』
ぶっとばすぞ、お前。
服を着るために一度は回された腕を解かれた俺だが、依然としてその居場所はステラの膝の上である。
お前怪我人じゃなかったの? とジト目を向けると彼女は小首を傾げた後に再度抱きついてきた。
ダメだ、話が通じねぇ。
ただ俺を抱きしめるその腕にはほんの少しの、けれど確かに強張りがあって。
それに気づいてしまったからには、邪険にするのも憚れる。
…………別に嫌じゃないし。
「……勝手に離れて悪かったよ。会えてよかった。一人でよく頑張ったな」
「…………」
「無言で力強めるのやめ――おい待て加減しろ、だいぶ苦しいから」
こちらも腕を回し返して、ぽんぽんと頭を撫でてやると息ができないぐらいの強さの抱擁が返ってきました。
控えめに言って死んじゃう。
骨、ミシミシ言ってるんだけど?
どんな力してんのさ、お前。
「…………でて」
「……?」
ボソっと何やら呟かれた。
口元に耳を寄せる。
「……もっと、撫でて」
「………………ったく、いつから甘えたさんになったんですかね。うちのお姫様は」
少し見ないうちに随分と可愛げが増した彼女の髪を優しく撫でる。
満足げに目を細めるその様はまるで猫のようで、油断しているとこちらの頬まで緩んでしまいそうだった。
暫くの間、無言の時間が続く。
やがて、コホンという咳払いがどこかから聞こえた。
「え、えっと、その……おいらたち、もしかして邪魔だったか?」
「………………むぅ」
視線を向けると赤面して目を逸らしているパイモンと、これ以上ないってぐらいにほっぺたを膨らませている蛍の姿が――え、何その顔可愛い。
「…………完全に忘れてた」
「……なんで止めるの」
「逆になんでこの空気で続けると思ったんだよ!?」
「……天華、もうちょっと離れた方がいいと思うよ。ステラさん、怪我人なんだから」
「大丈夫。私もう元気だから」
「ステラさんは、無理しない方がいいと思うよ? ほら、ヨォーヨも安静にって言ってたでしょ」
「……無理なんかしてない。それより、あんた誰?」
「……私は蛍。パイモンを助けてくれてありがとう。天華にも
「そう。あんたが"旅人"って人か。
「「………………」」
おい、誰がお前の所有物だ。
素晴らしい笑顔をぶつけ合う二人。
その間で首を左右に忙しく振っているパイモンがとっても可愛いです(思考放棄)
『爆笑』
ホントにいい性格してんな、お前。
少しの時間をおいて、両者は深くため息を吐いた。
「……ステラでいい。あとお礼は本音。少なくとも、天華を連れてきてくれたのは事実みたいだし」
「私もあなたには蛍って呼んで欲しい……変に突っかかってごめん。ちょっと、冷静じゃなかった。あなたに身体を休めてほしいっていうのも、本音だよ。パイモンが凄く心配して、感謝してた。私からもありがとう。大切な仲間を守ってくれて」
お互いに何か共通する想いでもあったのだろうか。
二人してコチラにジト目を向けた後に、蛍とステラは握手を交わし、緊張の糸を緩めた。
俺としても、この二人には仲良くして欲しいところである。
テイワット大陸でもトップクラスに顔の広い蛍との繋がりは、きっといつかステラのことを助けてくれるはずだ。
その後、俺が真面目に「しっかりと休め」と伝えるとステラは驚くほど素直にベッドへ横になってくれた。
どうやら充電とやらは終わったようだ。
俺と合流できたことで気も緩んだのだろう。
パタンと横になり、すやすやと寝息を立て始めた彼女の姿は子供のようで、パイモンや蛍と目を見合わせて笑ってしまった。
ステラの寝顔を眺めているとすぐに、俺も欠伸をしてしまう。
よく見れば、パイモンもどことなく眠たそうな顔をしていた。
冷静に考えてみれば、この場にいる全員がそれなりの疲労を抱えているのだった。
……蛍さんは、まあ、ね?
あんだけ気持ちよさそうに眠れば、疲れも取れるよね! って感じではあるんだけどさ。
少し休憩をしようと、俺たちはそれぞれ休息の時間に入るのだった。
✳︎
「…………さて、本題を忘れかけてたが、そろそろ璃月港に向かわないとな。少し時間食っちまったが、全速力で行けば大丈夫だろ」
一夜明けて、早朝。
隣のステラにそう呼びかけると彼女は不自然な笑みで首を横に傾げた。
「…………怖いんだけど、何?」
「蛍に頼んでワープすればいい」
「…………そういや、そうだな。え、じゃあ今すぐにでも出発して――」
「つまり、時間に余裕はあるよね?」
割り込むようにして、ステラはそう確認を入れる。
頭の中で、ジンさんの依頼を受けてから今日までにかかった時間と、普通の行商人がモンド城から璃月港に行くまでの時間を比較する。
「…………まあ、確かに余裕はあるな」
補給や関所のチェック。
野営準備等の時間がない分、俺たちの進みはかなり早い。
「よかった。じゃあ、行こう」
ステラは俺の手を取って、軽策荘を離れる方向へと向かう。
その先の小さな門に、蛍とパイモンの姿があった。
「……蛍、時間は大丈夫だって」
「わかった。準備はできてる?」
「ん、問題ない……ちょっと節々が痛むけど」
「なら、無理はしないように」
「善処はする」
いまいち状況が飲み込めていない俺に、パイモンが悪戯な笑みを浮かべて近づいてくる。
「へへっ、何のことかわかんないって顔してるな!」
可愛すぎるって。
何、その笑い方ズルいでしょ。
「……っ、パイモンは何か知ってるのか?」
「おう! もちろんだぜ。といっても、今回のは、旅人とステラが何言っても止まらないって勢いで計画を練ってたんだけどな」
……計画?
なんか、やり残したことでもあったか?
「天華、私、これでも結構怒ってるんだよ」
「……ステラ?」
「同感かな。誰にでも手を出されたくないものってあるものだよね」
「蛍? え、何の話?」
ステラはバットを、蛍は剣をそれぞれ取り出して、素晴らしい笑顔で俺を見る。
「「天華を誘拐しておいて、何の罰もないなんて考えられないよねって話だよ」」
二人の視線は無妄の丘に突き刺さっていた。
「「……地獄を見せてやる」」
わー、負ける気がしねぇ。
原神とスタレ 本作読者の履修状況確認用
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両方やってる!
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原神だけ!
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スタレだけ!
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どっちも知らんが読んでやろう!