璃月編と言ったな。
アレは嘘だ(ちょっと組織図その他調べることが多過ぎて書くまでに時間がかかりそうでっせ)
頭が酷く痛い。
世界にひび割れがはしっているような。
頭の中で何か軋みのようなものが鳴り響いているかのような。
そんな、最悪な気分。
『◽️◽️◽️? どうかしましたか?』
懐かしい誰かの声がする。
それが誰のものかが思い出せずに、頭を振った。
確か、それは◽️の何よりも大切な相手で。
◽️が最後に◽️った相手でもあって。
『◽️◽️◽️!? ◽️◽️◽️ッ!』
◽️が、最後に◽️かせた相手だった。
これは夢だ。
いつかも見た◽️の過去。
忘れるなと忠告をしているのか、それとも、
何にせよ、今の◽️には何一つとして関係のないただの夢だ。
だと言うのに。
「…………どーして、俺は……泣いてんだろーな」
目を覚ます。
見慣れぬ天井をしばし見つめてから、体を起こした。
「…………璃月、か」
道理で知らない天井のはずだ。
昨日、宿を変えたばかりなのだから。
外はまだ薄暗く、朝の冷たい空気に満ちていた。室内にある鏡の前へ立ち、顔色を見る。
「…………まるで、死人だな」
乾いた笑いが後に続く。
まるで、ではないか。
とっくに俺は――
「……………………笑えねー冗談だ」
つぶやき、装備を変えて外に出る。
『………………』
「どしたよ、そんなダンマリ決めて」
『…………』
「ま、別にいいけど」
散歩ぐらいには付き合って欲しいものだ。
そう言うと脳内同居人は小さな声で「はい」とだけ、つぶやいた。
・
・
・
「ふざけてるの、天華?」
「危機感が足りないよ、天華」
「ごめんなさい」
あらやだこの子たち怖い。
そんなに蔑みの目を向けられちゃうとお兄さんゾクゾクしちゃうかも。
『一回死んだらどう?』
笑えない冗談やめて。
朝っぱらから何故俺が土下座なんてものを披露しているかと申しますと、朝の散歩なるものを一人で行なっていたことがバレたから、の一文に尽きます。
危機感が足りないが半分、私も連れてけがもう半分の感情を占めていそうなステラに対して、前者の割合が120%を占めていそうな蛍ちゃんが怖いです。なんか、気を抜いていたら生活の全てを管理されそうな危うさを覚える。
……いや、流石に無いよね?
蛍ちゃんといえば、クール&ドライを地でいく言葉数少なめの主人公だし。サバサバしていそうな雰囲気あるし。わざわざ俺なんかに執着する理由も思いつかないしな。蛍ちゃんがデレるのはパイモン相手だけだって、俺は知ってますから。ふっ、理論武装に死角なし。
「……ねぇ、余計なこと、考えてない?」
「ひゃっ、ぃ……!?」
心の中でドヤ顔を決め込んでいたら、耳元から蛍の囁き声がダイレクトに脳へと打ち込まれた。え、何これ麻薬? 麻薬卵とかいう概念があるなら、聞く麻薬とかいう概念があってもいいのでは?
『それ、催眠音声って別称だったりしません?』
エッチなやつですね、わかります。
『セクハラで訴えますよ』
ごめんなさい。
いやでも、蛍ちゃんの囁き声は大分エッチだよ。我ながらよく理性を保っていると思いますね。意識は保てていませんが。
「お、おい? 天華! しっかりしろよー!」
「……はっ! 蛍に囁かれるとかいう垂涎ものの夢を見てたわ。おはよーさん、パイモン」
「お、おう。おはよう……ゆ、夢じゃないんだけどな」
ウリウリと、ぷかぷかと浮かんでいたパイモンのほっぺたを揉みながら、挨拶をすると彼女は少し照れながら「えへへっ」とらしい笑みを返してくれる。
ほんっと、かぁーいぃなぁー! コイツ!
全く愛いやつめ、そんなに可愛くしてもモラぐらいしか出ないぞ?
「ねえ、天華? 今、説教中なんだけど」
「あ、はい。ごめんなさい」
パイモンといちゃついていると、ステラがジト目で逃げるなと伝えてきた。蛍と言えば、何やら鼻血を抑えるような仕草をしながら、顔を真っ赤にしているので問題ない。え、あの子、大丈夫?
「……悪かったよ。ちょっと気分転換したかっただけだ」
「…………独りで行っちゃダメ」
「……いや、本当にそんな心配しなくても大丈夫なんだけど。いざとなったらワープがあるのを知ってるだろ?」
幾ら誘拐をされたという前科があっても、過剰反応が過ぎやしないか? と視線で問えば、ステラは珍しく頬を赤くして目を逸らす。
「……違う」
「……? 何がだよ?」
「………わたし、が……独りにされたくない、から…………行っちゃ、ダメ」
「――――――――」
なんだコイツ、可愛いな。偽物か?
思わず、口から飛び出しそうになった失礼すぎる言葉を呑み込んだ。ステラの言葉を聞いたパイモンが真っ赤になるくらい、ど直球の好意。
そういや、コイツ誕生して間もないんだよな、と恐らく見当違いの予想が脳裏を過る。え、無いよね? 人間に刷り込みとか嘘だよな?
「…………ステラ」
「…………何?」
「……んー、おいで?」
「は?」
試しに両腕を広げてみたが、何してんだコイツの目を向けられた。
やっぱそうだよね、流石に俺がバカでし――
「………………!」
「痛い痛い痛い痛い! 肋骨ミシミシいってるから、力抜けぇぇえええッッ!!!」
直後「まあ、なんでもいいや」の目をした彼女に、全力で抱きしめられた。完全に捕食者の目をしてたぞ、コイツ。凄まじく痛い。
結局、彼女のハグは蛍が再起動するまで容赦なく続いた。
いや、復活して数分は蛍も一緒になって俺を後ろから抱きしめてきたりもしてたけど、あの子やっぱりノリがいいよなぁ。
まあ、それはさておき、いい加減に本題へと入ろう。
長い時間がかかったが、ついにジンさんからの依頼を完了する時が来たのである。
「……そういえば、天華たちは魔神オセルの被害に対する復興物資を運搬するために璃月までやってきたんだったよな?」
「いぐざくとりー」
「いぐ……?」
「その通りってこと。物資といってもモンド民が有志で集めたものだから結構ごちゃごちゃしてるけどね」
「……誰に渡すかは聞いてる?」
「一応はな。俺たちの仕事は物資の整理と運搬だけって聞いてる。詳細は総務司の幹事さんにってことだったけど……知り合いだったりしない?」
「総務司の幹事……シャオユウの所かな」
シャオユウ、シャオユウ……聞き覚えがあるような、無いような……行けば絶対にわかるんだけど。
こっちだよ、とナチュラルに俺の手を取り歩き始める蛍。そんな慈愛の微笑みで「段差が多いから気をつけてね」なんて言われると幼児退行しそうになるのでやめてほしい。
……あ、おい、ステラ! ゴミ箱に吸い寄せられてんじゃない。まったく幼児退行してる暇もないじゃないか。
少し回り道にはなったが合成台のある広場のワープポイントに寄りつつ、万民堂や冒険者協会の前を通り過ぎて港へと向かう。
鍛冶屋を過ぎて階段を下る途中、左側に倉庫のような区画が見えてくる。
「ここだよ」
「……ここって、確か」
正直、余りいい思い出はない。
だってこの場所は。
「……シャオユウ、今いい?」
「あっ、旅人! 今日はどうしたの? 仕事を探しているなら、新しいのがあるよ!」
――璃月の評判任務を受ける場所だ。
「今日は違う。仕事の手伝いって意味ではおなじだけど」
「……? あなたが手を引いてるその子に関係する話かな? いいよ、今なら時間は空いてるから」
前世での苦行のトラウマを思い出しつつも、俺はそれを上回るほどの感動を味わっていた。
シャオユウ……シャオユウさん!
思い出した。
モブNPCとしてかなりの隠れ人気を持っていた声がめちゃめちゃ可愛い美人さんだ! 何で今まで忘れていたのだろうか。
「…………っ!!!」
「なんだか私、この子に凄いキラキラした目で見られてない?」
「…………ステラが言ってた『誰にでもデレデレする』ってこれのこと?」
「うん。サラとかティミーとかに向ける目だよ」
「何でそこにティミーが入ってるんだよ!?」
パイモンのツッコミも今は耳に届かない。
いいよなぁ。優しそうで元気の良い爽やかな美人さんとか、普通にお嫁に欲しいです。
今度、プロポーズでもしてみようか。
『バカ言ってないで仕事しろ』
わってるよ。冗談だって。
「…………コホンッ、じゃあ仕事の方の話に入らせて貰います」
「うん、わかったわ」
「声可愛いですね」
「え、あ、ありがとう?」
「「…………天華?」」
何でもないです、黙ります。
✳︎
「ジーンちゃーん、お仕事終わったよー」
「……っ、ステラと天華に……旅人とパイモン? 貴方たちは知り合いだったのか?」
「私の陽気な挨拶は無視するの?」
「お前が急にフレンドリーに突っ込むからだろうが……何考えてんだよ」
「え、ジンが恋愛小説好きってことを聞いたから、乙女だなと思って。陽気に声をかけてみた」
「乙女だなと思って。から後の文に繋がる理由がわからねぇ……!」
その日の夕刻。
璃月料理をお持ち帰りで包んで貰った俺は、それをお土産に仕事の終わりを報告するため、西風騎士団本部へとやってきていた。
璃月風のピザとか、案外ジンさんが喜ぶのでは? なんて思っていたのだが、早速ステラがやらかした。
「ちょ、ちょっと待ってくれ。わ、私は、別に恋愛小説なんて……そんなこと、誰が」
「天華が言ってたけど」
「ちょ、おいっ! ステラさん!?」
「……天華、後で少し話がある」
「……ぁ、真剣な声と顔、沁みるぅ」
「お前ら、本当に変わってるよな」
パイモンに言われたら終わりだよ。
「…………コホンッ、まあ良い。仕事の報告というと、以前頼んだ支援物資の件だろうか?」
「うん。食材に衣服、酒までまとめて納品してきたよ。幹事さん、忙しくて大変だって言ってたけど、笑顔だった」
「それは何よりだ。モンドの民も喜ぶだろう」
そう言いながら、そっと口元を綻ばせるジンさんが美人過ぎてヤバい。惚れる。
「で、こっちはお土産の璃月料理です。熱々ですよ」
「…………ふふっ、これは、気を遣われてしまったかな。ありがとう、今ここにいる団員たちで頂くとしよう」
換気に関してはジンさんが居るので問題ないだろう、という読みである。
そんなことに神の目の力を使うな、という意見はごもっともだが、あるものは使うべきというのが俺の主義なので仕方なし。
部屋を比較的使う機会が少ないらしい応接室へ移して、持ち込んだ万民堂の料理を広げる。
香菱には会えなかったが、卯師匠には会えたので個人的には大満足だった。
ジン団長が声をかけると、ワラワラと食いたい盛りの騎士団員たちが押し寄せてくる。勢いよく食事をとる彼らの姿は、騎士団というより男子高校生の集まりにも見えて、少し微笑ましかった。
プレイアブルの方々には当然のような顔をして酒を持ち込んでいるガイア――「今日は非番だからな」じゃありません――に、チ虎魚焼きに齧り付くクレー――口元をステラが拭ってやっているが、アレは誰だ?――服に匂いがつかないといいけど、と心配そうにしているリサさん――それについてはゴメンとしか言いようがないです――なんかがいらっしゃる。
蛍やパイモンもそれなりに久しぶりの再会だったようで、近況報告に夢中になっていた。
クレーの面倒を見ているステラに「少しだけ外に出てくる」とだけ告げ、騎士団本部の外に出た。
すぅぅぅ、と息を大きく吸い込んで。
「……ノーエールーー!!」
と、大きな声でそう叫ぶ。
十数秒も経たずして、コツコツと石畳を叩く靴の音が近づいてきた。
「どうかしまし、たか――って、ええっ!? 天華さま! どうしてここに?」
「当然のように現れるの凄いね……今日は璃月に到着した報告をしに戻って来たんだ。璃月の料理を騎士団の皆用に沢山買ってきたんだけど、一緒に食べない?」
「そ、そんな、私なんかが皆様とお食事なんて――」
「なんか、とか言わないでよ。怒るよ、ノエル」
「……そう、でしたね…………はいっ! それでは、天華さまのお言葉に甘えたいと思います」
はぁぁぁぁ、めっっっっっかわ。
尊いマジ死ねる。
脳が溶けるんじゃぁぁ。
ワープとインベントリについては彼女も知っている。不審者と思われない程度の付き合いはあるのである。
「それじゃ、ちょっとした食事会を楽しんでね」
「天華さまも、ですよ?」
「……ぇ?」
「…………何だか少し顔色が悪いようでしたから」
「…………ん。楽しむよ、ちゃんとね」
「はいっ!」
もうヤダこの子。
気遣い上手で超優しくて超力持ちで健気で死ぬほど良い子で謙虚で美人で可愛くて声まで神とかなんなの、惚れるよ? 求婚するよ? 結婚してくれないかなぁ、責任とって?」
「………………っ!??!????!?」
「……ん、どしたの、ノエル?」
「……ぇ、ぁ……その、なんでも、ありません」
「そう? 調子悪かったら遠慮せずに言うようにな」
さて、後はジンさんにバーバラ様用の激辛料理を渡せば、大体の用事は完了かな。
急に俯いて黙ってしまったノエルが心配なんだけど、どうしたんだろう。
『このクソボケが』
君、それ好きよね。実は俺も嫌いじゃない。
サブヒロインをメインヒロインズよりも勢い良くぶん回すのマジでやめられない。ノエル可愛いよ。フリーナのおかげで、かかん→ファントムの希望が見えて嬉しいよぅ。本当にありがとう、フリーナ。
因みに旅人の章については本当にこれで終わりです。
(次の章の題名何にするかで悩んでるとか大っぴらには言えない)
評価者100人達成&10万文字突破記念の短編とか、気が向いたら書けたらなぁ、なんて思ったりしなかったり。
気が向いたら、評価感想その他諸々よろしくです。
原神とスタレ 本作読者の履修状況確認用
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両方やってる!
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原神だけ!
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スタレだけ!
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どっちも知らんが読んでやろう!