作者渾身の新キャラだったのに、どうして感想欄の方々には正体が筒抜けだったのだろうか。ふしぎだなぁー(棒)
返信を考えるのが下手くそすぎて、見ることしかできないのがもどかしいですが、感想が来るたびに狂喜乱舞しております。
これからもこの作品をよろしくお願いします。
…………あ、天華くんの出番は諸事情により激減致しますが、悪しからず。
「…………私はカナタ。あのクソボケの親愛なる従者です」
それは透明感をまとっている少女だった。
どこか今にでも消え去ってしまいそうなぐらいの儚さを、彼女を前にして感じていた。
綺麗だと、ただただそう思った。
文脈からして、クソボケとは彼のことを指しているのだろう。
乱暴な物言いには微かな悪意も存在せず、親しみの念だけが伝わってくる。
彼が気を遣う必要のない相手。
彼に気を遣う必要のない相手。
私の知らない彼だけの友人。
一人だけ、心当たりがあった。
「……初めまして、でいいのかな」
「……はい。初めまして、ですね」
「
「安心してください。危険なことはしていませんよ。それにしても貴女は本当に
視線がぶつかる。
直感的に理解する。
彼そっくりの姿をした彼女とは、仲良くできそうになかった。
「……天華はどこ?」
「焦らずとも、あのクソボケなら私の中に居ますよ。現在の私はあの人の体を借り受けているに過ぎません……まあ、ムズムズしたので多少弄くり回しましたが」
主に胸とか、下の方とか。
そんなつぶやきと共に胸へと手を当てる彼女。
あの膨らみ、詰め物じゃないんだ。
やや驚きつつ、彼女の言葉を頭の中で整理する。
「普段、あんたは天華の脳内に棲みついているって聞いてるけど、それが逆転したって認識でいいの?」
「……まあ、概ねそんな感じですかね。詳しいことについては旅人やパイモンも集まった時に説明しますよ」
ロビーに向かいましょう。
鈴の音のような澄んだ冷たい声に促され、部屋を出る。
ふと、振り向いた。視界に映る開きっぱなしの窓の外は、未だに仄暗い早朝の世界が広がっているままだった
✳︎
「おおっ! お前が天華の言ってた『チートさん』なんだな! おいらはパイモン! 会えて嬉しいぜ」
「初めまして、パイモン。『チートさん』ことカナタです。いつもあのクソボケがお世話になっています」
「く、口が悪いのか、言葉遣いが丁寧なのか、よくわからない奴だな……」
朝、目が覚めて、ロビーへと向かうとそこには天華によく似たとびきりの美少女の姿があった。一瞬、卒倒しそうになったのはここだけの話にしておくとする。
隣で欠伸をしていたパイモンも彼女の姿を視界に入れた瞬間、眠気がどこかへ吹き飛んでいってしまったらしい。目をまん丸くして、少女の元へと飛んで行ったパイモンの姿は見ていてとても微笑ましいものだった。
常に無表情を保っている少女ことチートさん――名前をカナタというらしい――は、むにむにとパイモンの頬を摘んでは離してを繰り返し、小さな頷きを繰り返している。天華もやってたけど、あの人たちパイモンのこと好き過ぎじゃないかな?
「……さてと、旅人にパイモンも集まったところで、現在の私と天華の状態についての説明を始めますね」
「うん。早くして」
「欲望に正直過ぎませんかね……」
ステラの催促に嘆息をもらすカナタ。
やれやれといった雰囲気を器用にも無表情のまま引き出しながら、彼女は落ち着いた口調で話し始める。
「まず、前提として私は『身体を持たない知的生命体』という概念を保持する存在として設計されています。そのため、私は一人では独立した個体として現界することができません」
設計された、という言葉に疑問符が浮かぶ。
視線を投げる。首を横に振られた。
「誰に」という疑問については回答する気がないらしい。言いたくないというよりは、言ったところで意味をなさないといったニュアンスに近い否定に見えた。
淡々と一定のテンポのまま、説明は続く。
「現在、私はこのクソボケの身体を借り受けることで先の制約を乗り越えています。身体を借りる際の都合上、クソボケは私の代わりに一時的な意識体になっているというわけです。彼なら今も私の頭の中でギャーギャーと騒ぎ立てていますよ。『クソボケってなんだ、クソボケって!?』とのことです」
カナタは意地でも彼の名前を呼ぶつもりがないようだ。脳内天華は、現在その態度に猛抗議中と。
非常に想像に易い場面である。
「……なら、天華は私たちの話を聞いているってことでいいの?」
「…………いえ、完璧にではないでしょう。そもそもそうあるべきと創られた私と違い、クソボケさんは意識体としての適性があまり高くありません。今も半分睡眠、半分お寝ぼけ状態、といった具合でしょう。ですので、私がカナタとして存在している際は、あのクソボケは居ないものと扱うことを推奨します」
「…………わかった。で、いつ天華に戻るの?」
「歯に衣着せぬ物言いは嫌いではありませんよ」
ステラの依存にも近い天華への執着に、カナタは薄らと笑みを浮かべたようにも見えた。
「ですが、一度入れ替わると睡眠をとるまで戻りませんので、ご不満でしょうけれど本日は私がお相手をします」
「……………………わかった」
「顔に出すぎだろ!」
余りにもわかりやすいステラの態度に、パイモンが思わずツッコミを入れる。
それを無表情で、けれど確かに穏やかな表情で眺めていたカナタと目が合った。
「貴女もそれで良いでしょうか、旅人」
「…………うん」
「貴女も大概ですね」
はぁ、と息を落とすカナタ。
彼女の真っ直ぐな視線を受けて、言葉が出て来なかったと説明する前に横目のパイモンが私を見る。
「お前までそんなこと思ってたのかよ!」
「……誤解だよ。改めてよろしく、カナタ」
「ええ」
差し出した私の手を包む彼女の手は、心地の良い冷たさをしていた。
「それで皆様は本日どのような予定があるのでしょう?」
「……私は決まってない」
「知ってます」
「…………嫌なやつ」
「私は貴女のこと嫌いじゃないですよ」
「…………ッ」
にこやかなカナタと仏頂面のステラ。
うわぁ、ギスギスしてる。
パイモンとアイコンタクトを取る。
思考がシンクロしたのがよくわかった。
「え、えっと……おいらたちはいつも通り、冒険者協会の方に行く予定だったよな?」
「うん。カナタたちも来る?」
この二人をこのまま残しておくのは危ういような気がする。そう考えた私の提案にカナタは少し考え込むような素振りを見せて、小さく頷く。
「なら、そうしましょうか。ステラ、貴女はどうします?」
「……私も行く」
「らしいです。二名追加ですね」
自分の提案に乗ってくれた彼女らを前に安心したような、けれど無駄に面倒事を背負い込んでしまったような複雑な感情を覚えることになってしまった。
「……どうなることやら」
「き、きっと、大丈夫だぞ!」
さて、そろそろ切り替えて本日の雑用処理と参るとしよう。
気分を入れ替え、私たちは冒険者協会へと向かうことにした。
キャサリンから伝えられた依頼を受けた私たちは依頼主がいるという埠頭へとやってきていた。
依頼主は載という名の鉱夫の男で、現在、彼の言葉にパイモンが噛みついたところである。
「世界で一番岩石に詳しいやつは絶対にアイツだろ? おいらたちが連れてきて、載の言ってることが間違いだって教えてやろうぜ!」
「……なんか性格悪そうなことを言うんだね、パイモン」
「う、うぇ!? そ、そんなことないだろ!?」
そんなことないよな!? と私の方を見るパイモンに、言葉を返さず笑みを返すと彼女は面白いくらいに狼狽始める。
性格が悪い、というのは言い過ぎかもしれないが、変な意地を張りたがるのは彼女の癖だ。それも可愛らしいところではあると思うけれど。
「……カナタはどうしたの?」
「…………」
「えっと、カナタ?」
何やらぼうっとしている氷のような少女に目をやる。眉間に皺を寄せているようにも見えた彼女は、暫くの間、俯いていた。
「…………まぁ…………仕方ない、ですかね」
ボソリと何やら一言こぼし、顔を上げた。
「旅人、宿に忘れ物をしたので少しの間だけ別行動をする許可を貰えますか?」
「忘れ物?」
「はい。大したものではありませんが、万全を期すためには必要なものです」
「……わかった。じゃあ、埠頭で待ってる」
「ええ、さして時間は取らせませんからご安心を」
そう言って宿の方へと向かうカナタの後ろを黙ってステラが追いかけていく。
カナタの中に天華が居るということもあるからだろうか、好き嫌いは別としてステラが彼女と行動を別にすることはないようだ。
「じゃあ、おいらたちは鍾離のやつを探しに行こうぜ!」
「うん。すぐに見つかるといいけど」
このときの私たちはまだわかっていなかった。特に気負うこともなく受けたこの依頼の先に、壮絶な戦いが待ち受けていることを。
✳︎
「…………忘れ物って何?」
「……おや、ついてきていたのですか」
「わかっていたことを言わないで」
「冷たいですねぇ」
宿へと戻るその道を、カナタと二人並んで歩いていく。
クスクスと表情を崩すことなく、笑っている彼女の真意がわからなくて疑問をぶつけた。
「……あんた、何を考えてるの?」
「…………何を、とは?」
二人の足が止まる。
真剣なその目にたじろぎそうになりながら、思うがままの意見をぶつけた。
「……あんたの感情がずっとわからない。でも、その目は知ってる。あんたのその目は、私を最初に見た
一度、天華に話したことはあっただろうか。
そもそもの話。
一番初めの物語。
私が彼に縋ったその理由。
私は◽️◽️◽️なかった存在だ。
だからこそ、理解ができる。
「あんたは、その目で
私の言葉を聞いたカナタは少しだけ意外なものを見たかのような驚いた顔をした。
「…………さぁ、何のことでしょうか」
「……」
けれど、その後に続く言葉は、弁明はない。
止めていた歩みを再開し、離れていく背中を眺める。少しだけ、追いかけるのをやめてしまおうかとも思った。
「…………結局ついてきたんですか?」
「……ッ、それは……天華のためだから」
「そうですか。あのクソボケは幸せ者ですね」
言葉はなかった。
賑やかな璃月の街中に似つかわしく無い雰囲気を撒き散らしながら、私たちは宿へと向かった。
宿へ着き、彼女が自室へと入る。
数十秒ほど待ったところで、カナタは部屋から帰ってきた。
「……忘れ物はあったの?」
「はい。問題ありません」
カナタの姿に目に見えて変化したところはないような気がした。
忘れ物とはなんだったのだろうか、と視線を投げるが無言の微笑みで躱される。
「行きますよ」と促され、釈然としないまま宿を出発する。
前を歩く彼女がボソリとつぶやいた。
「いいですか、ステラ。本日は、少々苛烈な戦いが起きるでしょう…………ただ、その際に私のことを気にするのはやめなさい」
「…………どうして?」
あんたの中には、天華が居るのに。
その言葉を口にする前に彼女は続けた。
「私があのクソボケと違って、貴女よりも強いから。他に理由はありませんよ」
カナタは彼女らしい意地悪さをよく感じさせる微笑を見せる。
「…………それは、冗談にしては面白く無いね」
安い挑発だと、そう思う。
思いながらもバッドを持ち上げた私に、カナタは正面から向き直った。
「気になるなら、少しぐらい手合わせをしても良いですよ」
大道芸、おもちゃ売りなんかが自由に使っている広場の方をカナタは指で示した。
少々ストレスの溜まっていた私は「後悔しても知らないから」と言い放って広場の方へ足を向けた。
「…………じゃあ、少しだけ。私が勝ったら、天華にデートに付き合ってもらう」
「私は特にご褒美は必要ありませんね。私が勝つのが目に見えているので」
「その余裕面、ぶっとばしてあげるよ」
広場にいた人々は私たちの話を聞くと、ノリノリでスペースを作り、私たちの組み手を囃し立て始める。
向き合った私たちの様子を見て、観衆の誰かが「始め」の号令をかけた瞬間だった。
「へぇ、何やら面白そうなことをしているみたいじゃないか。俺も仲間に混ぜてくれよ」
そう言って現れた茶髪の青年は、自身の名をタルタリヤと名乗るのだった。
原神とスタレ 本作読者の履修状況確認用
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両方やってる!
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原神だけ!
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スタレだけ!
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どっちも知らんが読んでやろう!