転生男の娘vs悪ガキ(星)   作:桜ナメコ

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 更新頻度遅くて、すまない。
 どうでもいいけど……花粉に喉をやられて死んでます。

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 モチベになるので気軽によろしく!


17話

 

 

 

 

 

 蒼雷一閃。

 振り抜かれた金属バット。

 浅葱の髪がほんの微かにバットへ触れる。

 

「…………ッ!?」

 

 驚愕の表情を浮かべたのは、攻勢に出たステラの方だった。

 

「まったく、最初から本気で殴りかかってくるとか野蛮人ですか」

「……煽ったのは、そっちでしょ」

 

 表情一つを変えることなく、極小の回避動作でバットの一振りを凌いだカナタは、更に一歩後方へとステップを刻む。

 側方から、水の刃が迫っていたからだ。

 

「――おっと、これも避けられるとは……いいね、いいね。そう来なくては!」

「貴方の介入は、正直言って想定外なんですけどね……」

 

 ひらり、ふわりと。

 突風を受け流しながら散り行く花弁のように。

 どこか気品を感じさせる鮮やかな回避を繰り出し続けるカナタに周囲の観衆が皆湧き上がる。

 

「……誰だか知らないけど、邪魔!」

 

 タルタリヤの連撃を得物も無しに捌き続けていたカナタへと、脳筋で突っ込んできたステラが迫る。勢いを全てバットの一撃にのせ、タルタリヤもろともカナタへ叩き込む姿勢だ。

 背後に目でもついているかのような反応速度で回避行動へ移るタルタリヤ――の肩にカナタの手が置かれた。

 ほんの一瞬、コンマ1秒にも満たぬ僅かなその時間、タルタリヤの意識が自身から逸れた瞬間をカナタは見逃さない。

 タルタリヤの回避行動を封じるように彼の肩を押さえつけ、体重の支えを得た彼女は自身の体を宙へと躍らせる。

 

 結果として、横薙ぎに放たれたバットの一撃と直接防衛をすることしかできなくなったタルタリヤの双剣が衝突する。

 悠々と空を舞うカナタは武器を振り抜き無防備となったステラの顔面を遠慮なく蹴り飛ばして推進力を得る。

 

「……巧い――が、これでも逃げられるかな!」

 

 ステラの攻撃に吹き飛ばされながら、態勢を整えるタルタリヤは双剣から弓へと武器を切り替えた。そして、背を向けたカナタへと追撃が放たれる。

 完全な死角からの凶撃。

 タルタリヤが弓を扱うことすら知らないであろうカナタにとっては、初見殺しにも近い遠距離攻撃。

 

「…………ッ!」

 

 ここに来て初めて、彼女は表情を歪めた。

 嘆息し、ボソリとつぶやく。

 

「……流石に、これを隠し通せるほど甘くはありませんか」

 

 高密度の水元素がカナタの背を撃つ。

 その直前に、彼女の掌にソレは顕れた。

 

 紅の輝き。

 放たれたのは煌々と燃え盛る灼熱の炎。

 瞬間、蒸発反応により生じた白煙にカナタの身体が飲み込まれる。

 

 姿が掻き消えたのはほんの一瞬のこと。

 白煙は、紅の一閃により霧散した。

 

「………………()()()()()()()

「忘れ物をした、そう伝えたと思いますが」

 

 腕に纏った炎元素は粗雑な棒切れを模っていて、それはタルタリヤが得意とする元素力による武器の創造を真似したものだった。

 所詮は見様見真似の付け焼き刃。

 長時間の維持はコスパが悪いと考え、カナタは炎元素の発現を解除する。

 

「…………認めるよ。あんたのこと少し舐めてた」

「それは……光栄です」

 

 ばち、ばち、と。

 凄まじい密度に凝縮された◽️◽️のエネルギーがステラの全身に迸る。

 金色の瞳の奥底に輝きが灯る。

 

「ここから、私の本気」

 

 たった一度の瞬きを挟んだのちに、ステラの姿がカナタの視界から消えた。カナタは背筋に走った悪寒のみを頼りに後退する。

 

「『ルールは破るためにある』ッ!」

「……貴女はもう少し、手加減というものを学んだ方がいいですよ」

 

 身を屈め、地を這うようにカナタの懐へと飛び込んだステラはバットを下から上へと叩き上げるように振り抜く。

 先程までとは一線を画すほどの◽️◽️の力が込められた一撃に、カナタは炎元素を腕に纏って応戦する。

 概念的に◽️◽️を有するステラの攻撃をカナタは本能的に危険なものだと認識していた。

 

「――っ、ここです」

「……!?」

 

 故にこそ、カナタは最善の防衛策を取る。

 

 地力のみでの出力勝負では相手の方に分があるとカナタは気づいていた。

 防ぐというよりは躱すに近い。けれど、確かにステラには"何か"を打ち抜いた感触があった。

 

「受け、流された!?」

 

 渾身の一撃を透かされ、ステラに生まれた隙をカナタは見過ごさない。

 

「――打ち抜け」

 

 多少の手加減を意識して、カナタはステラに炎の元素を叩き込む。

 爆発の勢いで吹っ飛んでいくステラを横目に、彼女は再び迎撃態勢をとった。

 

 曲射。

 物理法則を無視したかのように水平面に弧を描くのは、水元素によって作られた弾丸。

 

「……ッ!!」

 

 回避行動を取る――直前に、迫る水弾と逆方向から接近するタルタリヤの姿を視界の隅の方で捉えた。

 たった一人の相手に挟撃の場面を作り出されたことに、その神業に無表情のままカナタは冷や汗を流す。

 

 ……ちょっと私だけ狙われ過ぎじゃないですかね?

 

 なんて思考が彼女の脳裏に過ぎったのはここだけの話だ。

 

 思考は加速する。

 この攻撃を防ぎ切ることは可能だ。

 だが、()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 大人しく、一撃もらって終わりにしよう。

 

 カナタが最も被害を受けない負け方について考え始めたそのときだった。

 観衆の中から飛来した炎弾がタルタリヤの放った矢を撃ち落とし、カナタとタルタリヤの間に炎元素で形取られた巨大な印章が叩き落とされる。

 そして、観衆を掻き分けるようにして一人の少女が姿を現した。

 

「お前たち、それ以上この騒ぎを大きくするようなら、私の仕事が一つ増えることになるのだが……まだ続けるか? 正式な手続きを踏んだ上での騒ぎというなら、詳しい話を聞きたいところだがどうする?」

 

 

 

 

 

 

「…………忘れ物ってどれのことなの?」

「さて、どれだと思います?」

 

 埠頭でカナタたちを待っていた蛍は長い時間をかけて戻ってきた彼女たちを見て、頬を引き攣らせていた。

 

「やぁ、鍾離先生。今日はどうしたんだい? 何か厄介ごとかな」

「おや、旅人じゃないか。お前たちも旅人の知り合いだったのか?」

 

 見覚えのありすぎる茶髪の青年と、こちらも見覚えのある仙獣の血を引く法律家の少女。

 何故か二人を引き連れて「やっほー」と無表情のまま手を振ってやってきたカナタに、蛍は天華と同じ匂いを感じるのだった。

 

 

 

 

 ✳︎

 

 

 

 

 

「…………で、そのままの流れで若陀龍王を六人がかりでリンチしたと。可哀想に」

『正確に言えば、五人です。煙緋にモラクスの事情を説明するのは少々手間でしたので、彼女には洞窟内で発見された鉱夫の護送に回って貰いました』

「そりゃそうか。配慮ができる男はモテますぜい」

『女ですが?』

「遂に明言しやがったよ、コイツ」

 

 早朝、宿の自室でコーヒーを飲みながら、先日の出来事についてカナタから説明を受ける。

 平然と暴露された事実に関してはスルーの方向で行きましょう。今更、風呂トイレその他の配慮なんかできねーです。

 

 カナタが表に出ている間の話は俺にとって興味深いものばかりだった。

 鍾離の伝説任務第二幕。

 原神屈指の強敵である若陀龍王が週ボスとして解放される印象深いストーリーだ。

 断じてタルタリヤや煙緋が登場する話ではなかったはずなのだが、起こってしまったことは仕方ない。個人的な事情を考えるとタルタリヤとは親交を深めておきたい部分もあったので、嬉しい誤算と思っておくとしよう。

 

「というか、君、ステラとばちばちにやり合えるぐらいに強いのね」

『…………彼女は未だ自身の中に眠る力を解放しきれていません。潜在能力だけを見れば私と同等でしょう』

「謙遜してるようでしてないな……現状はそっちの方が上なのね」

『はい。事実ですから』

 

 わぁ、正直者。

 嘘しかつかないよりはいいけどさ。

 

「……さて、今日はどうするか」

『いい加減、働いたらどうです?』

「引きニートへの一言みたいなのやめて」

 

 自力でお金は稼いでるから。

 確かに最近蛍が「お小遣い要る? 遠慮しないで大丈夫だよ?」って割とガチめな顔と声音で提案してくるけど、ちゃんと断ってますから。うん、俺超偉い。「ヒモになりたい」とか冗談でも口にしたら快諾されそうで怖いんだよね。

 

 インベントリを開く。

 手持ちのモラは30万ほど。

 しばらくは働かなくても大丈夫という状況に変わりはないのだが……流石に資金に余裕があるから遊んでも問題ないという考え方は、ステラの教育上良くないかもしれない。

 

『誰目線です?』

「保護者目線。実質ママみたいなもんだろ」

『せめてパパにしてください』

「それは本当にそう。まあ、何でもいいんだけど……適当に依頼でも受けるか」

 

 この前、蛍たちに付き添う形で璃月の冒険者協会を訪れたことがあるのだが、比較的簡単そうな納品依頼――ゲーム時代では探索派遣と呼ばれる形の素材採集に関する依頼なんかが複数あった。その他にもデイリー任務の盗賊退治なんかがあったが、好き好んで対人戦闘をするほど頭タルタリヤではないのだ。

 

「そうと決まれば、特産品の採取ポイントでも確認しときますかね……表示いける?」

『児戯です』

「さっすが」

 

 視界の真ん中へ浮き上がるホログラムを眺めつつ、少しぬるくなったコーヒーを口に含んだ。

 

「…………ふぁ…………ん……」

『盛大な欠伸ですね』

「…………デリカシーに欠けるぞ」

『貴方、いつから乙女になったんです?』

 

 雑談を挟みながら、ゲーム時代の最速ルートなんかを頭の中にぼんやりと浮かべる。

 

「依頼にあったのは確か……」

『……そのルートはヴィシャップの遭遇率が高いかと』

「……あー、確かに。あのモグラマジロは避けときたいなぁ。シールド張れる人がいるならまた別だけど」

『………ですかねー』

 

 ローテンポな話し合いは日が上り、ステラが俺を呼びに来るまで続くのだった。

 

 

 ✳︎

 

 

 

 

 若陀龍王の怒りを鎮め、意識を失っていた鉱夫たちの回復を待つその間の時間。

 タルタリヤとパイモンがそれぞれの道草話を語り合い旧交を温め、ステラと蛍、煙緋が応援として到着した鉱夫たちの対応をしているその最中。

 

 岩王帝君その人である鍾離は、若陀龍王との戦いで平然とした顔で()()()()()()()その少女に向かって問いを投げていた。

 

「カナタ殿は天華殿の別人格に近い存在だと説明を受けたが……()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?」

 

 浅葱の髪をくるくると指先で弄ぶのをやめたカナタは、何のことやらと首を傾げ太々しいほどの無表情で返答する。

 

「……自身が神の瞳を手にした理由を認識している方はそう少なくはありませんが――乙女の胸の内を覗き込むのは無粋というもの。その質問に答える義理はないかと」

 

 ぶつかる視線。

 鍾離は無表情を保つ彼女の瞳の奥底に、ある懐かしさを見つけた。

 

「…………従者という者の性、なのだろうな」

 

 頑な、という言葉がよく似合う。

 決して曲がらず、歪むことなく折れることのない確かな敬愛を含んだその意志の輝きは、彼が幾度となくその身で受け続けてきたものだった。

 

「……わかった。では、言葉を変えるとしよう」

 

 どこか穏やかな面持ちになった鍾離にカナタは疑問符を浮かべながらも、大人しく彼の言葉を待った。

 元神からのお言葉だ。

 金言とも言えるような素晴らしい助言が得られるかもしれない、という打算が彼女の中にあったことは事実である。

 

「天華殿は幸せ者だな」

「ぶちのめしますよ」

 

 直後、その期待はあっさりと打ち砕かれた。

 

 惚気を聞いたような顔をする鍾離にカナタが拳を構えると、その様子を見た元岩神は堪えきれずに、といった具合で破顔する。

 

「……きっと、こういった主従像もあったのだろうな」

「そろそろ本気で拳が出ますが、変な勘違いはやめてくれますかね? 何悟ったような顔してくれてるんですか? 殴りますよ」

 

 無表情のまま早口になる少女を横目に、鍾離はしばらくの間感慨に耽るのだった。

 

 

 

 

 






 自分で何話がどの話かわからなくなるので話ごとに題名をつけようか検討中です。センスが試されるよなぁ、と足踏みする気持ちもあって半々な感じ。
 

原神とスタレ 本作読者の履修状況確認用

  • 両方やってる!
  • 原神だけ!
  • スタレだけ!
  • どっちも知らんが読んでやろう!
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