何故、忙しい時期に投稿したと思えるぐらいの評価、感想ありがとうございます。
本当は投稿頻度を上げられたらよかったのですが、叶いそうにないので閑話を挟もうと思います。
方針としては、閑話(日常話)を不定期に。
本編は一章分が書けたらまとめて投稿。
という形で行きたいと思います。
プロットなしで、まとまりのない話にならないようにするためです。
ご理解のほど、よろしくお願い致します。
返信を書くのが絶望的に苦手なので読むだけになっていますが、感想は全て読ませていただいています。ありがとうございます。
長文失礼しました。
それでは、どうぞ。
「…………何やってるの?」
「しー、静かに。今、滅茶苦茶良い所なんだから」
困惑の表情を見せるステラ。
呆れの目を向けられていることに気がついてはいるのだが、今この瞬間においてはそんなもの些事でしかない。
モンド城から少し離れた湖の前。
星落としの湖と呼ばれるその場所にて、俺は自分の身を茂みへと隠して彼女の勇姿を見守っていた。
赤ずきんを思わせる可愛らしい衣装に身を包んだ少女は、とてとてとソレを大事に抱えながら、湖の畔へ向かっていく。
周りをチラチラと確認してから、満面の笑みを浮かべて大きく頷いた。
せーの!
という声がこちらにも聞こえてくるかのような、勢いの良さで彼女はソレを湖へと元気よく投げ入れる。
「ドカーン!」
「……え?」
直後、爆発。
立ち昇る水飛沫。
唖然とするステラ。
ふわりと宙へ、魚肉が舞った。
「きちゃぁぁぁぁ!!!!」
「……ぇぇ?」
そして、歴史的瞬間を見届けられて、テンションぶち上がりの俺。
いや、こればかりは許してください。
やめろとか言われても無理です。
俺にオタクを辞めろと? 死ねと同義だぞ、それ。
「……何やってるの、あの子」
「魚獲り」
半瞬の沈黙。
或いは瞑目。
こめかみを抑えて、ステラは再度問う。
「……何やってるの、あの子」
「何故二回聞いてきたのかわからんけど、魚獲り」
「そろそろ、真剣に話してくれない?」
いや、見たらわかるだろ魚獲りだよ。
ごめん、嘘。見てもわからんけど、これで魚を獲ってるんだから魚獲りなんだよ。
少女ことクレーちゃんがお魚を確保しているんだから、誰がなんと言おうとこれは魚獲りなんだよ。
「いいか、よく聞け。湖に行くだろ。爆弾を用意する。そしてドカーンする。なんとびっくり、魚がぷかぷかと浮いてくるんだ」
『漁業舐めんな』
この説明には、流石のチートさんもキレる。
理性側の俺もそう思います。
まあ、オタク側の俺は徹底的に反論しますけどね!(洗脳済み)
……なんだこの精神構造、クソ面倒臭いな。
「……よくわからないけど、アレがモンドの文化ってこと?」
「別にそういうわけじゃないな。というか、あんなの皆がやってたらジンさんの胃が死ぬ」
「だよね、よかった。私、モンドのことが急にわからなくなる所だった」
ほっと胸を抑えるステラ。
まあ、自由の国だからね、モンドは。
魚の取り方だって、人それぞれ自由でいいんじゃないかなぁ…………流石に強引過ぎるか?
と、流石にここまで会話をしていると、例え茂みに隠れていたとしても、彼女は俺とステラの存在に気がついてしまう。
「え、あれ? お、お姉さんたちは、いつからそこに……」
「あんたがウキウキで爆弾を準備し始めたところからだけど」
「ええ!? うぅ……く、クレー、悪いことなんか全然してないよ! お魚さんをドカーンなんて、全くやってないもん!」
やだ、何この子超可愛い。
誤魔化そうとあわあわしている姿も、態々自分の悪戯を白状してしまう所も、何もかもが愛おしいほどに可愛らしい。
撫でたいし、愛でたいし、ほっぺたをムニムニしてみたい。
まあ、日本人男児たるものイエロリノータッチの精神を持ち合わせているので、そんな行動を取るはずがないのだが。
「……天華、顔すごいことになってる」
「え、マジで?」
「うん。緩みっぱなし」
表情筋がボイコット中なので仕方なし。
「……コホン、えっとクレーちゃん? でいいかな? そんなに慌てなくても大丈夫だよ」
「え、ほんと? ジン団長に告げ口しない?」
「しないから大丈夫……まぁ、ジンさんが相手だと、何も言わなくてもバレそうではあるけど」
不安気な表情が俺の言葉を聞いて満面の笑みに変わった。
お姉ちゃんは良い人! と喜ばれていたりする。はい、今日から俺はお姉さんです。
「……こうなったら、しばらく止まらないんだよね」
ステラが何やらボヤいているが気にしない。
それと、クレーちゃん? もう一度言っておくけど、バレないとは言ってないからね?
「あ、そうだ! 良い人なお姉ちゃんと背の高いお姉ちゃんに、クレー自己紹介するね!」
可愛い。もう可愛い以外の語彙がない。
あとドドコ、可愛い。
「クレーはね、クレーっていうの! 西風騎士団の火花騎士なんだよ! えっと、えっと……後は、なんだっけ」
「……西風騎士団には、あんたみたいな子供も居るんだね。それぐらいでいいよ、堅苦しい挨拶は好きじゃない」
うんうん、と頭を悩ましていたクレーにステラは片膝をついて近づくと、優しい笑顔を向ける。
何、あの聖母みたいな顔。
戦闘時とのギャップで、メス堕ちしそうになるからやめてくれる?
「私はステラ。モンドには、まだ来たばかりの旅人みたいなものかな」
「ステラお姉ちゃん……えへへ、良い名前だね!」
一瞬だけ、ステラの動きが完全に停止した。
クレーが「……?」と首を横に傾げた次の瞬間、ステラがクレーを抱きしめた。
「あうっ、す、ステラお姉ちゃん? いきなり、どうしたの?」
「……天華」
その声はいつになく真剣なもので、その眼差しはかつてないほどの強さの意志を孕んでいた。
「この子、うちの子にする」
「やめなさい、おバカ」
「……クレー、ありがとう。私も、この名前大好きなんだ」
「そうなんだ! クレーもね、クレーって名前が大好きなんだよ! だって、大好きなママがくれた名前だもん!」
なにこれ、尊い。
それはそれとして、顔洗ってこよ。
…………なんか、妙に暑いな今日は。
・
・
・
「おいこら、待て。なんでちょっと目を離したら、お前も加担してお魚ドカーン祭り再開しちゃってんの!? ステラはさっき否定してたじゃねえか! 意味がわからないって顔してたじゃん?」
「意味はわからなかったけど、楽しそうだったのも事実…………つまりは、興味本位?」
「クレー、ステラお姉ちゃんに良いこと教えてもらったんだ! えっとね『ルールは破るためにある』なんだって!」
「なぁ、ステラお姉ちゃんさん? ちょっと俺とお話ししようか」
「あ、目が本気だ……待って、後一回だけいい?」
✳︎
「…………まったく、クレーには困ったものだ」
「悪い。うちのステラが迷惑かけた」
「いや、大丈夫だ。クレーに付き合ってくれていたのだろう? それよりも貴方たちに怪我はなかったか?」
「そこは大丈夫。問題ないよ」
結局、星落としの湖にて魚をドカーンしていたことはあっさりジンにバレた。
巡回パトロールをしていた西風騎士団の方が、ハッスルしていたクレーとステラを現行犯で捕まえたのである。
「え、なんかいつもより一人多い!?」と驚愕の色を露わにしたモブさんには、悪いことをしたと思っている……いや、俺が悪いわけじゃないんだけどさ。
因みに。
「今日はステラお姉ちゃんが一緒だから、反省室もへっちゃらだもん!」
なんて可愛らしい捨て台詞を残して、今日も今日とてクレーちゃんは反省室へ篭りに行きました。
ステラが連れて行かれてしまったので、どうしたものかと悩んでいた所をジンさんに拾われたというのが、現在に至る経緯である。
ジンさんと対面するのは、これで二回目だ。
とはいえ、モンドに入国した翌日に簡単な挨拶をしたぐらいなので、実質これが初邂逅といっても過言ではない。
はぁ……美人。
何度見ても、どの角度から見ても、本当に美人さんだな、この人。
ワーカホリックという一点さえ除けば、欠点など見出すことのできないぐらいのハイスペック金髪美人。
原神世界でも屈指の人望の厚さを誇る団長代理様は、俺のような得体の知れない異邦人にも気を回してくれる寛大さを持ち合わせていた。
これで恋愛小説を読むのが大好きとかいう秘密を隠し持っているのだから、オタクとしてはたまったものではない。
凛々しさ、綺麗さの中に垣間見える可愛らしさ、そのいじらしさには悶え死にそうになるぐらいだ。
まぁ、それはおいといて。
「……ジンさん、流石にコーヒーを飲み過ぎじゃないですか?」
「そう、だな。つい癖で。リサにもよく言われるんだ……ああ、リサというのはこの騎士団の図書館司書をしている者でな、この時間なら暇をしているはずだが――」
「いやいや、態々俺なんかに時間を使ってもらう必要はありませんから」
「そうなのか? クレーに巻き込まれたばかりに、貴方の友人を拘束してしまったからな……私が時間潰しの相手をしようと考えたのだが」
「いや、アレはステラの自業自得なんでお気なさらず……うん、本当に」
後半とかクレーに負けず劣らず、嬉々として爆弾投げまくってたからなあのバカ。
申し訳なさそうに、ジンはチラリと執務室の机の上に積まれている書類の山を見る。
これ全部が仕事とか普通に死ねるんだけど。
「あー、じゃあ……なんかやること貰えますか? 身体能力には期待しないで欲しいですけど、誰でもできるような雑用ぐらいなら暇つぶしがてらに任せてもらって良いですよ」
「それは流石に貴方に悪い。これは騎士団が引き受けた仕事だ。貴方に迷惑はかけられない」
うん、そう言うと思った。
だから、次は少し意地悪な言い方で頼んでみる。
「じゃあ、ジンさんが個人的に引き受けた仕事を手伝いますよ。話していてなんとなく想像がついたんですけど、ジンさんって本来の仕事以外にも、頼まれごとを引き受けちゃうタイプですよね?」
こんな少しの会話で相手の本質を見極められるほどの観察眼など、当たり前だが持ち合わせていない。
かなり強引な押しだが、ゲーム知識を使うときは、多少の不自然さが出てしまうのも仕方がないだろう。
「それは確かに……だが、私が引き受けた仕事ならば、責任を持って私が最後までやり抜くというのが礼儀というものだろう。私のことは心配しないで大丈夫だ」
もうやだこの頑固ちゃん、好き。
――っと、危ない危ない。
トリップすんな、俺。
「厚意を受け取るってのも、上に立つ者としての役割だと思うよ。俺が言うことじゃないとは思うけどね」
「…………そう言われると弱いな。では、幾つか私用を頼まれてくれるか? これぐらいで勘弁してくれ」
「おう。任せなさいな」
笑顔を浮かべ、ぽんと胸を叩いてそう答えると、何故かジンさんは気の抜けたような表情を見せる。
どしたのさ、と視線で問う。
「…………いや、なんでもない。詳細についての話に移ろうか」
頭を振って話題を変えたジンさんが、ボソッと溢した呟きを俺が聞き逃すことはなかった。
「…………私なんかよりずっと
あの、男だからね?
あと、どう考えてもジンさんの方が女の子らしくて可愛いからね?
……この身体、色々と業が深いような気がしてきたぞぅ。
✳︎
ジンさんから頼まれたお仕事及び暇つぶしは、二つ。
一つは伝説任務でも取り上げられていた猫探し……やはり、あのときが初犯というわけではなかったようだ。
もう一つは落とし物の持ち主を見つけて欲しいというものだ。まあ、こちらは運が良ければ程度で考えて欲しい、とのことだったので、全力を費やす必要はないらしい。
「……ま、全力で行かせてもらうけどね」
俺の努力で推しの労力が減る?
なにそのご褒美。
いや、どうせジンさんなら減った労力を別の仕事に回すんだろうけど、それはそれ。
多少なりとも、助けにはなるはずだ。
「というわけで、サーチよろしく」
『感知:唐突の無茶振り』
「え、できないの?」
『できますけど?』
「さっすがチートさん。頼りになるっ!」
はい、そこ。
他力本願寺とか言わない。
俺単体で何かを為せるとか、思わないで頂きたい。どんな思い上がりだよ。
マップを開くと二箇所に青色のクエストマークがついていた。
本当にわかりやすくて、助かる。
さて、ちゃっちゃと終わらせてやりますか。
「なんて思っていた時代もありましたよ、此畜生め!」
ぜぇ、はぁ、ぜぇ、はぁ、と荒い息を吐く。
汗だくになり、膝を手について呼吸を繰り返す俺を「にゃー」という無慈悲な鳴き声が嘲笑う。
冷静に考えて、猫捕まえるとか無理では?
というか、屋根を登ることすら不可能な身体スペックしてるんだぞ。
無理。しんどい、超疲れた。
路地裏の日陰に入って、一休み。
家の壁を背もたれに、インベントリから飲み物を取り出して水分補給を行う。
落とし物の方は問題ない。
何の苦労もなく、チートさんに導かれるまま、お届けすることができた。
財布は落としちゃいけねーぜ、スタンレーさんよ……あの様子じゃ、風神の伝説任務はまだ終わってない感じかな。
「……ふぅ、よし。ちょっとは休めた」
『提言:協力の要請。一人での目標達成は不可能と判断』
「…………もうちょい頑張る。ありがとな」
『…………了承。なら頑張れ』
うっし、気合い入った。
チートさんにも、いつかお礼をしてやりたいところ……量産型のチートものみたいに擬人化とかしてくれないものだろうか。
『応答:現スペックでは不可。将来的な期待を推奨』
「マジで言ってますっ!?」
それは割と期待して待ってます。
『肯定:いつになるかは不明。提言:故に過度な期待は厳禁』
「りょーかいです」
さあ、休憩はこのくらいにして、猫捕獲へと戻るとしよう。
ゲームじゃ魚肉を利用して捕獲していたけど……上手くいく気がしねぇな。
「あ、そうだ」
猫捕獲。
確かジンさんのイベント以外にも、そんなミッションを課せられた記憶があったような。
ということで。
「やってきました、キャッツテール。うわ、やっべ、内装まんまじゃねえか、興奮してきた」
「い、いきなり、不躾なことを言う客ね、あなた!?」
はぁ、可愛い。
もうやだ、モフりたい。
「な、にゃによ、その目は!? そ、そんな目で見ても、あたしの耳と尻尾は絶対に触らせてあげないんだからね!」
「うんうん、わかってるわかってる」
「無性にイラってくる笑顔を向けないでくれる!?」
あぁこのツンツン感、たまらねぇ。
「……もう、あなたみたいな子供まで、酒場に入ってくるなんてぇ……やっぱり、早くあたしがモンドの酒造業を破壊しないと」
「あ、俺はお酒飲んだことないよ? 今日、ここに来たのも、酒が飲みたかったからじゃないし」
「……ぇ? そ、そう、なの? へぇ、そう……まあ偶々、本当に偶然だけど、今のあたしは暇だから、あんたの話に付き合ってあげてもいいわよ?」
「可愛い」
「急に何言ってくるのよ!?」
やばいミスった漏れた。
危ない危ない。
ミスった相手がエウルアとかじゃなくてよかった。会ったことないけど。
「急にごめん。つい、口から本音が」
「べ、別に謝られることじゃないけど…………あ、あんただって、その……悪くないと思うわ」
「それはありがとう。まぁ、俺、男だけどね」
「絶対嘘にゃ……ぇ、嘘だよね?」
「…………」
「嘘にゃ!?!?」
かわいい。
また来よ。
「仕方ないから、ちょっと助けてあげる。代わりに、モンドでお酒は絶対に飲んじゃダメだからね!」
とのお言葉を受けて、最後に一つ料理の注文をしてからキャッツテールを出てきた。
ディオナから猫の遊び道具を借りることに成功したので、ようやく猫の捕獲に再挑戦というわけだ。
マップを開くと随分と猫は移動してしまったようで、教会前の広場にマークが表示されている。
丁度、巨大な風神像の足元ぐらいだろうか。
えっほ、えっほとマーク地点へと移動して、広場の入り口で立ち止まる。
これだけでも足がプルプルしてくることについては、諦めた。
度を超えたレベルで貧弱な身体なので仕方がない。
「…………なーんで、あんなとこにいんだよ」
マークされた場所をどれだけ凝視しても、猫の姿は見つからなかった。
右左と視線を飛ばして、途方に暮れそうになった所で、それを見つけた。
上である。
「グッドウィンのクエストを思い出すからやめて欲しいんだけど」
あのデイリー全く出なかったんだよなぁ。
風神像、その掌の上。
威風堂々といった調子で一匹の猫が、そこで胸を張るように座っていた。
「しゃーなし。流石に、ステラでも呼んでくるか」
踵を返そうとしたそのとき。
その猫と、視線があった気がした。
「にゃぁ」
「おい、笑ったぞ。あいつ、今、俺のこと見て笑ったぞ!?」
ぜってぇ、捕まえたるわ。
そこで待ってろ、ボケナス。
『清々しいほどのバカ。見ていて、いっそ心地良いです』
喧しいわ。
✳︎
私がクレーちゃんと反省室から出て来る頃には、外はもう夕暮れ時になっていた。
一人にさせてしまった天華には悪いことをしたかな、なんて思いながら騎士団を後にすると、なにやら広場の方が騒がしい。
天華の姿も見えないので、とりあえず、私は広場の方へと向かうことにした。
何か、イベントが行われているのなら、天華もその場にいるかもしれないと思ったからだ。
階段を登って、広場に入る。
騒ぎの中心は風神像の方のようだ。
普段からは考えられないほど多くの人が、風神像を囲み、そして見上げて何やらを叫んでいる。
「…………?」
その集団に近づいていくと、人々が尋常ではないほどの熱量を放っていることに気がついたら。
「そこだっ! 行けっ!」
「違う、そうじゃない! 腕だ、腕を伸ばせ!」
「耐えろ! そこを超えればゴールだぞ!」
「頑張れ、頑張ってくれ!」
なんか、圧が凄い。
「……これ、何の騒ぎ?」
集団を少し遠巻きに見ていた変わった雰囲気の男の子に、今の状況を尋ねる。
彼は、一度私を見て驚いたような顔をしてから、笑顔で一点を指差した。
「空? いや、風神像の手?」
「そう。確か、彼は君の連れだよね」
「……彼?」
もう一度、よくしっかりと風神像の方を見ると、なんだか見覚えのある誰かさんの姿が視界の中に入った。
「…………何やってるの、あの人」
しかも、あんな高い所に。
もし、落下でもしたら、無事じゃ済まない。
「……ッ!」
「待って、大丈夫だよ。彼は風に護られている」
「どういう意味? 大丈夫って何? 天華が怪我をしてもってこと?」
思わず、その男の子を睨みつけてしまった所で、風神像の方から歓声が上がった。
「……ぇ?」
「あははは、これぞ、感動のゴールだ! うん、本当は僕もここで演奏をするつもりだったんだけどね……こんな面白いことがあるなら、それも無粋ってものかな」
広場に集まった人々が笑顔で見ているのは、風神像の掌の上に胡座で座り、猫を頭の上に乗せた天華であり、彼の表情にも満面の笑みが浮かんでいる。
「…………はぁ」
確かに、この空気に水を差すというのは無粋の他にないだろう。
そして、同時に気がついた。
自分が、天華に対してかなりの過保護になりつつあるということを。
「…………ちゃんと、抑えないと」
だって、私は彼の行動を制限したいわけではないのだから。
大丈夫。
天華は何もできない子供じゃないのだ。
少し危なっかしい気はするけど、このぐらいのことだったら――
そんな思考をしたまさにそのタイミングで、彼は掌の上に立ち上がり……そして、あっさりバランスを崩した。
「……ほんっと、もう! 危なっかしいにも、程がある!」
人々が悲鳴を上げる。
落下し始めた彼はというと恐怖に顔を歪めるのではなく、頭の上に乗っけていたネコを腕の中に抱え込もうとしている。
本当に、どこまでいって天華は天華なのだ。
走り出す。
大勢の人々が壁のように見えた。
覚悟を決めた。
そして、全力で右足を踏み切り、宙へと跳ね上がる。
「……何やってるの?」
「サンキュー、ステラ……怒ってる?」
「見ればわかるよね」
空中で猫と天華を拾い上げて、下を見る。
人が詰めかけているせいで、着地場所が見当たらない。
最悪、怪我人が出るくらいの覚悟はしておかないと、とそう考えたところで、何故かあの男の子の発言が脳内でリフレインした。
『大丈夫だよ』
直後、突如として下から突風が起きた。
身体を包むように生み出された風域は、私たちの落下速度を急速に減速させる。
天華をお姫様抱っこした状態で、無事に地上に帰還した私の姿を見届けて、人々は遂に歓声を爆発させた。
ハッと、先ほどの男の子の姿を探すが、その姿は見つからない。
「……どうかした、ステラ?」
「……ん、何でもない。それより、天華はちゃんと反省して」
あの緑色の人、何者だったんだろう。
猫探しの顛末を聞いたジンは、胃を痛めたらしい。
因みにキャッツテールから好物のピザが届いて、天華への評価が上がった。
原神とスタレ 本作読者の履修状況確認用
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両方やってる!
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原神だけ!
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スタレだけ!
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どっちも知らんが読んでやろう!