ちょっと綺麗なグラ・バルカス帝国   作:松雨

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プロローグ

 グラ・バルカス帝国……地球とは異なる世界(惑星)の中でも特異的な、文明圏の枠組みに囚われない列強相当の強国である。

 

 世界の中では非常に珍しく、かつ超少数派な純科学文明にも関わらず、大半の国々に幅を利かせている『魔導文明』国家に対抗するどころか、例外を除けば凌駕する。

 

 ロデニウス大陸南方515㎞の海上、本来であれば列強どころか文明圏内の国々にすら、技術力で全く追い付けないはずなのだ。

 

 しかし、かの国には『ユグド』と言う名の、これまた更なる別の世界にある惑星から、植民地(保護領)や属領ごと転移してきた経歴が存在していた。

 故に、この世界で一般的な常識に当てはまらなくとも、何らおかしな話ではない。

 

「して、例の未知なる国家……クルセイリース大聖王国と言ったか。どうだったんだ?」

「一言で表せば、()()ですね。クワ・トイネやクイラ、ロウリアや我が国の使者を下に見た挙げ句訳の分からない論理を振りかざし、初手で服属要求してきましたので」

「そうか。無論、断っただろうな?」

「当然です。ただ、結果として宣戦布告されましたので、海軍空軍を中心として備えるように指示は出しました」

「うむ、それで良い。ロデニウス大陸の国々は我が国の生命線の1つ、落とされては大損害を被る」

 

 そんな、独自の特異的文明圏を形成可能な国力と技術力を持ったグラ・バルカス帝国は、今現在ロデニウス大陸とその周辺の自国勢力圏の警戒網を、より強化する方針で動いていた。

 

 何故なら、『クルセイリース大聖王国』と呼ばれる、木造ではあれど飛空船を有する技術を持つ圏外文明国の使者から、服属要求からの宣戦布告を受けていたためである。

 

 クワ・トイネ公国やクイラ王国との友好的交流、ロウリア王国との局地紛争やパーパルディア皇国との大戦争を経て、魔法や魔導技術に対する理解は着々と重ねられていた。

 

 だが、技術系統の大きすぎる違いや接触国の技術力の低さ故に、重ねられたと言っても割合で見てみればあまり高くない。むしろ、非常に低いと言っても過言ではないのだ。

 

 もしかしたら、見た目が木造船でも鋼鉄製の戦艦と同等以上の防御力を誇るかも知れない。

 この世界で一般的に知られている古の魔法帝国が使ったと言う、誘導魔光弾やそれに類する兵器が存在するかも知れない。

 

 こう言った理由以外にも、SFや空想小説に登場するもはやデタラメな兵器ないし魔法が現存しそうで怖いと、なまじ否定出来ない理由で警戒する上層部や軍関係者も居る。

 

「しかし、本部長。グレードアトラスター級戦艦2隻を出撃させるのは、いささか過剰ではないのですか? あれは我が国の最大かつ最強の戦艦、もしもトラブルなどがあっては……」

「いや、あれくらいで良いだろう。それに、かの国は皇帝陛下(グラ・ルークス)を下劣な言葉や態度で侮辱した挙げ句、殺害予告まで行っているのだ。つまり、それに対する我が国の意思表示も兼ねてる訳だしな」

「確かに……本部長、皇帝陛下、皆様も大変失礼しました。どうやら私は、魔法と言うものを過剰に恐れすぎていたようです」

「問題ない。お前の気持ちは理解出来るし、我も少なからず憂いがある」

「ご厚意、感謝致します」

 

 更に言えば、クルセイリースの使者が見せた下劣で下品な、一国の代表とも言える大使として相応しくないどころか、逆鱗に触れる程の愚かな立ち居振舞いの件もあり、グラ・バルカスは全力で対峙する事を決めていた。

 

 260mを超える船体を誇る、同国最強の戦艦『グレードアトラスター』と『グレードユニヴァース』他ヘルクレス級戦艦とオリオン級戦艦、ペガスス級空母4隻や他最新鋭巡洋艦や駆逐艦を含めた空母機動部隊の出撃が決定する程の本気度である。

 

 加えて、万が一これで苦戦するような大変な事態に陥った場合も想定し、試作段階とは言え次世代兵器搭載の航空機ないし艦艇を用意し、向かわせる事さえ予定されているのだ。

 

 とは言え、試作段階故に攻撃へ向けられる数は非常に少なく、ある程度の回数稼働試験を行ってはいるが、まだまだ完璧とは言い難い。

 

 なお、試作兵器には各種艦艇はもとより第1世代ジェット戦闘機、黎明期の誘導弾(ミサイル)にチャフやフレア、電波妨害耐性を大きく上げたレーダー、他にも様々な装備が存在している。

 

「しかし、我が国が言えた義理はないが、この世界は何とも酷いですな」

「今のところ、まともなのがクワ・トイネとクイラだけですしね。ガハラはともかく、フェンは……まあ、要検討ですが」

「ああ。しかも、この世界では列強らしいパーパルディア皇国に至っては、理不尽に我が国の民の殺害を行っている。そう考えると、クルセイリースの大使と対峙した際、何もされなかったのは幸運だったと言えるだろう」

「ええ、違いないでしょう」

 

 前世界の惑星ユグドにて、ケイン神王国含む数多もの国家との戦争に明け暮れていたグラ・バルカスではあったが、下劣で下品な立ち居振舞いをしたり、初手で最後通牒を突き付け服従を迫ったり、攻撃の意を示さない民間人を殺したりだとはしていなかった。

 

 下が暴走した事による事件は時折発生したものの、その度に厳しい軍規に乗っ取った処罰を下している。それ故に、今世界の国々が見せる狂犬ぶりに衝撃を受けていた訳だが、無理もないだろう。

 

「それにしても、パーパルディアとの戦争が終わったと思えばまた戦争……全く、魔導文明国とやらは好戦的な奴らばかりで、勘弁して欲しいですな」

「全くです。今後の国交樹立も、ムー国以外は取り敢えず無視で良いかもしれませんよ」

 

 そんなこんなで話が進み、クルセイリースに対する会議に一旦区切りがつくと、今後のグラ・バルカスの立ち居振舞いについての話が始まる事となった。

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