上層部からの命令を受け、クルセイリース大聖王国に裁きの鉄槌を与えるべく、大将カイザルが司令官となったグラ・バルカス帝国空母機動部隊46隻は、自国に最も近い場所にある飛空船基地を潰すべく、海上を突き進んでいた。
だが、自国の
その艦隊はレーダーか何かでこちらを発見しているのか、進行方向が空母機動部隊の方角だと言う報告が同時に行われているうえに、海上戦力として通常の戦列艦すら見当たらないため、最初は空母艦載機159機による飛空船やワイバーンへの攻撃が行われる事となっていた。
ワイバーンはともかく、魔法と言う不確定要素により飛んでいるであろう、空飛ぶ戦列艦を考慮に入れているため、海上戦力はなくてもアンタレス改と『シリウス改』は2対1の割合である。
「空飛ぶ戦列艦……少なくとも、パーパルディアよりは強そうだ」
『船として見るなら相当に速いらしい。ワイバーンも居るらしいから、数は我々以上となるのは間違いないか』
「ああ。下手すれば、本隊の方にある程度は向かうと見て良いだろうが……大丈夫だろ」
ただ、
故に無誘導ではあれど、シリウス改は武装を爆弾から『新型ロケット弾』に換装されていて、命中率を少しでも上げながら敵が鋼鉄製水上艦艇と同等の防御力だった場合でも、対処が出来るように備えられていた。
『確かにな。相手の数にもよるが、速度がパーパルディアのワイバーンオーバーロードと同じかそれ以下であれば、全く問題ないだろうよ。だが機銃ならともかく、無誘導ロケット弾の弾数には限りがあるから、耐久性が極端に高い奴らばかりだと困る』
「そりゃそうだ。こんな時、
なお、新型故に短期間で調達出来た数はあまり多くなく、シリウス改のパイロットも爆撃のスペシャリストではあれど、無誘導ロケット弾を扱う経験はあまりない者が多い。
それでも優秀なのは変わりなく、水平爆撃や急降下爆撃より命中率は上がると推定されるものの、総合的に見ればやはり高いとは言えなかった。
『敵ワイバーン、目測で200以上! その後方より飛空艦隊が見えます!』
「やはり多いな……全員、相手が木造船であっても油断せず、帝国と同格の敵を相手するつもりで襲いかかれ!」
『『了解っ!!』』
そんなこんなで、目標であるワイバーンと飛空船が遠目に見え始め、この編隊で最も優秀な戦闘機乗り『サン・リーアイア』が声かけをしたのをきっかけとして、異色の空戦の幕が開けられる。
『敵ワイバーン6頭、飛空船2隻撃墜! 火炎耐性はかなり高く、物理防御力は見た目以上に硬いものの、機関砲や機銃での撃墜は比較的容易に可能な模様! ワイバーンに関しては、ロード種と同等です!』
『また、対空兵装は低速火炎弾ないし様相不明の光弾、弾幕を張られさえしなければ回避は可能!』
『回転翼部分が弱点らしく、難易度は高くともここを突けば、撃墜も容易になるぞ!』
「ふむ……このまま行けるか? とにかく、俺も行かなければな」
しかし、魔法などで防御力などを強化していてすら、アンタレス改の20㎜機関砲の榴弾を耐え抜けず、12.7㎜機銃の弾でもある程度の命中で船体を貫通、魔導機関に致命傷を与える威力をまざまざと見せつけた。
ワイバーンロードは言わずもがな、12.7㎜機銃で翼近辺を穴だらけにして、20㎜機関砲の榴弾で容易に打ち砕く事が可能となっている。
攻撃方法も変わらないため、飛空船からの対空砲火と運悪く噛み合ったり、調子に乗りすぎて遊んだりしなければ、対処は決して難しいものではない。
「おっと……ちぃっ! このデカい奴は少々硬いな。効果は比較的あるみたいだが」
『敵大型飛空船、機関砲弾への耐性あり! 新型ロケット弾、もしくは爆弾による攻撃を推奨!』
「戦艦みたいな立ち位置に居るのか? ともかく、一部のアンタレス改はシリウス改の護衛、ロケット弾搭載のシリウス改は大型飛空船への攻撃を敢行せよ!」
そんな中、飛空艦隊に混じっていた大型の飛空船の防御力が高く、機銃ないし機関砲弾による撃墜がしづらくなってしまうと判明したため、新型ロケット弾による攻撃へと即座に移っていく。
『よし、大型飛空船全隻撃破!!』
『ぐあっ……対空砲火に被弾! すみません、離脱します!』
『こちら、ロケット弾および機銃弾を全て消費しましたので帰艦します』
流石に全弾命中とまでは行かなかったが、アンタレス改による妨害やロケット弾を搭載していない、ないし発射して身軽になった一部のシリウス改による機銃掃射、これらによってこの場で最も厄介であろう相手の撃破には成功した。
とは言え戦闘開始から40分、現在の空域にクルセイリースの飛行船はおよそ3割、ワイバーンロードは2割残っているため、気を抜くには至らない。
だが、グラ・バルカスの空母艦載機側はまぐれ当たりか、機体の故障により戦線離脱した者は居れど、この時点で死者は1人も出ていなかった。
そのため、ほんの僅かに楽勝ムードが漂い始めてしまうが、それもまぐれ当たりによる味方の被弾を目撃した事で、開戦時の空気へと元通りになっていく。
「ふぅ、ひとまずは決着か。しかし、艦隊の方に向かっていった奴らも居る……」
『そうですね。敵地まではまだ遠いですから、ここは早く戻って味方の援護をしなければ』
そこから更に20分弱、グラ・バルカスの空母艦載機側は残っていたクルセイリース飛空船、およびワイバーンロードを壊滅に追い込み、周辺空域の制空権の掌握を達成した。