ちょっと綺麗なグラ・バルカス帝国   作:松雨

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第八帝国の守護神

 グラ・バルカスの空母艦載機159機が空戦に完全勝利し、その彼らによる迎撃をすり抜けた飛空船やワイバーンロードも、艦隊が直衛機と濃密な対空砲火で全員撃破した日の翌朝、空母機動部隊46隻は飛空艦隊基地のある島から10㎞のところで停泊していた。

 

 無論、ここに至るまでにクルセイリース側の攻撃がなかった訳ではなく、合計数十隻の飛空艦隊や100騎を超えるワイバーンロード、海上警備用の戦列艦隊による攻撃は続いていた。

 

「ようやく止んだか。まあ、我々の敵ではなかったな。今のところは」

「そうですね。空飛ぶ戦列艦(飛空船)は少々驚きましたが、それ以外はむしろパーパルディアに及ばない程度……しかし、本国に強力な兵器を秘匿している可能性はあります」

「ああ。この世界は『魔法』と呼ばれる、我々には訳の分からん技術が幅を利かせている。試作段階の誘導弾(ミサイル)と同等、またはそれ以上の兵器があってもおかしくはない」

「古の魔法帝国……本当に存在するんですかね」

「分からん。だが少なくとも、何かしらの根拠はあるだろうな」

 

 しかし、グラ・バルカスの空母艦載機は飛空艦隊を圧倒、海上警備用の戦列艦に至っては艦砲射撃により、1発も撃つ事なく全艦が海の藻屑と化している。

 

 万が一を想定し、クルセイリース側の大砲の射程を優に超える距離からの攻撃を行っているため、旗艦のグレードアトラスター含めた殆んどの艦艇乗員は、緊張感が薄れてきていた。

 

 とは言え、未だに敵の全貌が明らかになっていない現状、油断丸出しの発言や提案をする者はいない。

 現に、本国から遠く離れている基地、いわゆる地方隊に所属する飛空船の対空砲火でさえ、被弾し修理必須となるアンタレス改やシリウス改が出てくる程なのだ。

 

 もしかしたら、戦列艦の大砲も射程はパーパルディアとほぼ同程度でも、戦艦にダメージを与え得る()()が隠されているかも知れない。

 何故かは不明だが、実は単に本気を出していないだけであり、本気を出されればかなり手こずる羽目になる可能性もある。

 

 艦隊司令官かつ、グラ・バルカス海軍内では神に等しい存在のカイザル、海軍の顔でもあるグレードアトラスターの艦長を長年勤め、その優秀な能力は帝国随一のラクスタル、彼ら2人がその考えでいる事が大きいだろう。

 

「そろそろ時間か……もう良いだろう。空母以外の全艦、艦砲射撃用意!!」

 

 警戒態勢を保ちつつ停泊する事3時間、カイザルがほぼ全ての艦艇に対して基地が存在する町への砲撃を命じると、空母以外の艦艇が主砲、および副砲を全砲門町へと向ける。

 

 言わずもがな、いきなり艦砲射撃を命じた訳ではない。民間人の避難を促すビラを偵察機のコメット数機やシリウス改10機に積み、射程に入る範囲全てにばらまいてはいた。

 

 全員が避難出来るかするとは考えていないが、少しでも巻き込まれてしまう非戦闘員の犠牲者を減らすため、確実に必要な行為だとグラ・バルカス内では見られている。

 

 そして、恐らく発生するであろう()()()()()の犠牲者に、心の中で謝罪する行為も各艦艇内で行われた。好き好んで非力な民間人を殺す外道軍人など、ここには存在していないのだから当然だ。

 

「準備が整いました。グレードアトラスター、いつでも撃てます」

『グレードユニヴァース、同じく準備完了!!』

『ラス・アルゲティおよびラス・セレナール、準備完了です』

「よし。では、全艦……撃てぇぇぇ!!」

 

 これらを含めた全ての準備が終わり、その報告が各艦艇より無線を通してなされてカイザルの指示が下った瞬間、空気を震わす轟音や発砲炎と共に、全砲門から大小様々な砲弾が飛んでいく。

 

「くっ……! やはり、凄まじい威力だな。地形が変わりそうだ」

「陸上の砲や爆撃では、ここまでの破壊力は出せませんからね。大口径を搭載出来る軍艦ならではです」

 

 当然、クルセイリース側にこれらを防ぐ手段も被害を軽減する手段もないため、全ての砲弾は射程距離内のありとあらゆる場所へと着弾、秘めたる破壊力を解放していった。

 

 特に、グレードアトラスター級戦艦2隻の主砲46cm3連装砲、ヘルクレス級戦艦3隻の41cm連装砲、オリオン級戦艦3隻の35.6cm連装砲の力は凄まじく、巡洋艦や駆逐艦の砲撃を遥かに凌ぐ破壊をもたらしている。

 

 港に備えられていた大砲、ほんの僅かに残っていた戦列艦や飛空船、他上陸戦に備えて用意されていた陸上魔獣や兵士も荒れ狂う鉄の嵐と爆風の威力に抗えず、あっさりと消滅していく。

 

 なお、懸念されていた民間人の犠牲者については、やはりと言うべきか生じてはしまっている。

 加えて、一部の良心ある者や占領する上で民間人を減らす事に反対した者除いた、グラ・バルカスから見れば救いようのない外道たちによる犠牲者も居た。

 

 ただ、見える位置に威圧感のある艦艇が停泊していたのと、事前にビラで知らされていた事もあり、大半はクルセイリース陸軍の統制を死にもの狂いで突破、何とか生存に成功していたが。

 

「撃ち方止め! 偵察機隊、一応上空からの攻撃効果確認を頼む」

『……壊滅です。軍事基地もろとも、この町は灰塵に帰しています。追加砲撃の必要性はありません』

「よし。これで、問題なくこの町を起点に出来るな。全員、後方190㎞を航行中の陸軍輸送船を含めた護衛艦隊が来るまで、警戒は怠るなよ!」

 

 この戦闘の結果、島周辺の制海権と制空権はグラ・バルカスが手に入れたため、陸戦での優位性を獲得した。

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