ちょっと綺麗なグラ・バルカス帝国   作:松雨

5 / 6
次なる作戦

 敵飛空艦隊やワイバーンロードを一蹴し、鉄の暴風雨が如き艦砲射撃や陸戦兵器群により港町の敵陸軍も壊滅させた日から2ヵ月と少し、グラ・バルカス帝国軍は復興・占領政策の一環として、民間(シルカーク)人との交流会を執り行っていた。

 

 色々と致し方ない理由があり、元凶がクルセイリース大聖王国の宣戦布告だったとは言え、結果として全く無関係である他国の領土を第三者が横からかっさらい、理不尽な犠牲者を生み出す形となってしまっている。

 

 一定の悪感情を持たれている事を想定し、仮に罵詈雑言を浴びせられたとしても、武器を持って殺しに来た場合の反撃以外ではじっと耐えるか、言葉での説得に留めるように通達がされていた。

 

「ソイツは大変だったね。しっかし、ワイバーンより圧倒的に速い鉄竜なんて初めて見たよ。アンタらの国だとうじゃうじゃ居たりするのかい?」

「実はあれ、生き物じゃないんですよ。アンタレス改って言うんですが、えっと……人が造った金属の竜って解釈で大丈夫です」

「へぇ、あれを人が造ったと。凄いんだねぇ……まあ、海神が如き船を持っているんだ。あり得ない話ではないか」

 

 だが、最初に植民地としてきたクルセイリース側の役人、および兵士の立ち居振る舞いが実に酷かった事。

 

 グラ・バルカス側が、艦砲射撃の際に出来る限り民間人を巻き込まないための配慮をしてくれた事。

 

 そして、グラ・バルカスの兵士がトラブルを起こした時に一切贔屓せず、完全な第三者目線で対応に当たっていた点。

 

 他にも細やかな要素は沢山あるものの、それらのお陰でシルカーク王国最大の港町『トーカ』に住む人間からの心証は、予想していた程は悪くない。

 

「ねえねえ! お姉さんたちが住む国、グラ・バルカス帝国ってどんなところ? あんなお船を造るんだから、きっと凄いところなんだろうなぁ~」

「どんなところ……ここよりも大きな建物がいっぱいあって、沢山の人が住んでて、あんな感じの船とか車とかも大量に……いや、説明としてはこれで良いのかな? ラクスタル艦長。どう思う?」

「うーん、簡単な説明としては問題なさそうに思えます。後は、強いて言うなら文化とか生き物の説明でしょうか。異世界かつ異国の、それも子供相手ともなると、難しいですが」

「なるほど……まあともかく、君。もっと詳しい話を聞きたいかい?」

「うん!」

「よし、分かった。じゃあ……向こうに居る、顔は怖いけど子供には優しい()()()()()()()()に聞いてみて。私たちはこれから、向こうでお話しなきゃいけないから」

「分かった!」

 

 むしろ、基地の建設や町の復興がある程度進んだ時、軍部より派遣されてきた占領軍長官『シャノン・アルタイル』が非常に物腰が柔らかいのも相まって、全体で見れば比較的良好だと言えるだろう。

 

 しかし、当たり前だが全員が好意的な訳ではない。あくまでも、アイツら(クルセイリース)よりマシなだけで、どのような解釈をしようが侵略者なのは変わらんと考える者も居るのだ。

 

 実際、グラ・バルカスもシルカークを助けるためと言うよりは、自国への脅威を滅し、クルセイリースを攻撃し屈服させるための1つの基地として使おうとしていたので、あながち全てが間違いとも言い切れないのだが。

 

「シャノン長官! 本国より追加で、試験兵器搭載の艦艇が到着しました!」

「へぇ、随分早いのね。陸軍の方はどう?」

「こちらは最新鋭装備を身につけた兵士600人、例の戦車も来ております」

「陸軍も試験兵器を送ってきた訳と。こっちも、数は少ないでしょ?」

「はい。いざと言う時の補助程度の数ですね」

 

 そんなこんなで子供との話を上手い事切り上げ、ラクスタルとも別れた後にシャノンは占領軍司令部へと戻り、ずっと側で待っていた側近から報告を聞く。

 

 帝国の常識を覆し、今までの兵器とは一線を画す力を誇る試験的兵器が僅かだが、到着したと言うものだ。

 

 内訳としては、『デネブ級ミサイル駆逐艦(あまつかぜ擬き)』1隻、『AT-1 エクス(セイバー擬き)』3機、『アトラスⅠ(61式戦車擬き)』3輌となっている。

 

 超重爆撃機『グティマウン』を開発した時と同様、各々に携わる人間に天啓が舞い降りたとも噂される兵器群だが、派遣数や用意された試験兵装の数は極めて少ない。

 

 何なら、今後に影響しないギリギリのラインで無理をしていたくらいなので、本来の能力を発揮しない可能性も出ている程だ。

 

 仮に、次世代兵器や各種兵装の大量生産体制が整っていたのなら、最初から派遣艦隊に組み込まれ、最初に行われた戦闘から使用されていただろう。

 

「さてと。いい加減本腰入れて、シルカーク解放戦をやろう。本当は陸軍輸送船が到着してすぐやりたかったけど……」

「流石に、上からの要望ともあらば無視は出来ませんしね」

「本当だよ。まあ、不気味な位にクルセイリースに動きはないし、実戦を積んでおきたい気持ちも分かるから、今となっては文句も言う気はないけどね」

 

 これらの要素により、兵器や兵装そのものは一騎当千級の強さであっても、戦況を大きく引っ掻き回す程の力はない。

 今現在その役目を担うのは、今世界でも十分過ぎる活躍を見せている、地球で言うところの第二次世界大戦後期~終戦時級の兵器や兵装なのである。

 

 その性能もさる事ながら、過去に第3文明圏で最大規模を誇っていたパーパルディア皇国軍の総力を、大きく上回る程の数があるのだから当然だろう。

 

 無論、最新鋭のものだけではない。既に一線を退いた、旧式の各種兵器および兵装を含めた上の数なのだ。故に、命令が下ってすぐに動ける数ともなれば、ある程度は落ちるのだけど。

 

「よし。カイザル司令官と、陸軍司令も呼んで。最低でも3日以内には事を始めたいし」

「承知しました」

 

 報告を聞き、それ以外にも色々な話を側近と続ける事1時間と少し、次なる作戦を近日中に開始するため、海軍及び陸軍の司令官を交えた話し合いをすると決める。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。