ちょっと綺麗なグラ・バルカス帝国   作:松雨

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中継都市攻略戦

 クルセイリース大聖王国に侵略され、抵抗むなしく植民地とされてしまったシルカーク王国。

 

 グラ・バルカス帝国の掲げている占領政策と比べ、その質は実にお粗末であり、属領に住む自国人以外の多種多様な人々の生活など二の次、下手すればそれ以下の扱いとなっている事も珍しくはない。

 

 交流会に参加した帝国陸軍の将校が話を聞き、ひと昔前のパーパルディア皇国のようだと評するくらいには酷いものだったのである。

 

 一部に関しては、前世界での自国の行いを完全に棚に上げてでも、声をあげて批判する事が出来る程。

 

 だからこそ、グラ・バルカスは自国の安全と皇帝に対する殺害予告の報復と言った最大の理由のみならず、民衆の解放もクルセイリースとの戦争を始めた理由に追加している。

 

「4時の方向、敵兵団……ちぃ! 見た目だけなら200年前の軍隊なのに、魔法とやらは本当に厄介だな!」

「氷の矢に火の玉、雷の槍……開けた場所で選り取り見取りか畜生め!」

「おい、あれは魔獣『ケルベロス』じゃないか!? 5頭も居るぞ!」

「クソが、なんてデカさだ……ハウンドⅢを前に出しつつ、対戦車兵器などで援護せよ! 膂力もそうだが、奴の爪には強烈な(呪い)があるから気を付けろ! 生身ではかすっただけでも死ぬと思え!」

(呪い)!? 小銃が効きにくいあの体躯で搦め手は反則でしょ!?」

 

 しかし、今現在シルカーク王国へと派遣され、解放戦の一環として首都『タカク』へ続く、トーカより程近い中継都市『イナマス』を攻略中の帝国陸軍5500、及び最新鋭の装備を揃えた機械化師団は、海軍や空軍と違って技術力の差が戦果へ繋がり難くなっていた。

 

 魔法に対する理解力の乏しさ、環境や地の利が相手側にある事、戦車に相当する虎の子の魔獣の存在、他にも色々と大小様々な理由はあるが、それらが足枷になっているのである。

 

 旧日本軍が計画していた、超大型戦略爆撃機『富嶽』とほぼ同等のグティマウンによるものを含めた、航空機による空爆のみで戦争を終結させる事は不可能に近いと言うのもあるが。

 

「オォォアァァ……ッギァ!」

「グラ・バルカスの、地を這う鉄の竜(ハウンドⅢ)……凄まじい攻撃力と防御力! しかし、機動力はこちらに利がっ――」

「油断大敵だぜ、お前さん。まあこっちとしては、油断しきってくれた方が仲間の死傷者も減ってくれるから嬉しいがね」

 

 故に、ある程度の死傷者の発生は避けられていないものの、イナマス解放戦そのものはグラ・バルカスが優位に進めている。

 

 そういう星の下に生まれてきたからなのか、前世界のユグドはもとより、今世界でも何かしらの戦いに巻き込まれているグラ・バルカス。

 

 良くも悪くも実戦や植民地運営の経験が豊富であり、国力や物量も長期に渡り戦争を続けられる程度には豊富。それでいて技術力も高いので、足枷が多少あるくらいでは優位は揺らがない。

 

 加えて、今現在は次世代の科学技術が台頭し始めている時期かつ、戦時体制故にその国力が戦争に関わる技術などに多く向けられている。要は、技術力の向上速度が平時を凌駕しているのだ。

 

 亜音速ジェット戦闘機、イージス艦に相当する武器システムの搭載艦、誘導弾(ミサイル)や誘導魚雷、スラローム走行中でも砲撃を当てられる戦車等々、この世界ではどれもが最上位クラス。殆んどの国で幅を利かせている魔導技術の使用は、一切なしと言うおまけ付きである。

 

「おいおい見ろよ、冗談だろ?」

「汚ねえよあいつら……」

「……クソがぁ!」

 

 すると、街中でハウンドⅢや随伴歩兵の強さと威圧感に押され、怯んだ一部のクルセイリース陸軍の兵士が、火炎弾を連射をする魔法に焼かれて重傷なグラ・バルカスの兵士をどこからか連れてくると、人間の盾として使い始める暴挙に出てしまう。

 

 しかも、師団長の言う通り良く見てみたら、イナマスの住民と思わしきシルカーク人も、別のクルセイリース陸軍兵士に人質として数名が強制的に使われてしまっている。老若男女関係なく、目についた人間を連れてこれるだけ連れてきたと言う感じだ。

 

 当たり前だが、自分達の命が終わる可能性が極めて高くなったこの状況、軍人たる帝国陸軍兵士はまだしも、一般人にとっては耐え難いもの。涙を流したり、限界を振り切って虚無になったり、気を失ったりする人が出るのも何らおかしな話ではない。

 

「おい。秘密裏に狙撃手部隊に連絡しろ。あの人質の数と兵士ならば、同時射撃でカタがつく」

「了解しました。しかし、いかに優秀な彼ら彼女らとは言え、万が一と言う事もあり得ますが……」

「その時はその時だ。このまま何もせず、全員死ぬよりはマシだろう。責任なら俺が全て取るから伝えるんだ」

 

 ただ、イナマスの町を占領するクルセイリース軍兵士の中には、この作戦を良しとしない者も居るらしい。その表情は苦虫を噛み潰したとも、猛烈な刺激臭を嗅いでしまったとも言うような、何とも凄まじいものだった。

 

 勇敢か蛮勇か、イナマス占領の司令官にせめてそれは止めるべきではないかと進言した兵士の1人は、仲間を庇って戦死したと言う事になっている。

 

 無論、そんな事は相対しているグラ・バルカス側は当然として、人質として強制的に連れられた者たちにも知る由はないし、そもそもの話侵略行為をしているのなら、その相手がどんな思想を持っていても()

 

 恒久的な撤退か無条件降伏でもしない限り、皆殺ししてでも排除しなければならないのだから。

 

『……一応報告。全員始末完了』

「よし、良くやった……今だ! 早急に人質を保護しつつ、更に先へと進めぇー!」

「「おぉぉぉーーー!!!」」

 

 なお、グラ・バルカス側が切り札として用意していた、23人の優秀な者によって構成された狙撃手部隊の活躍により、人質とされた者たちは無事に助かる事となったのだった。




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