多分絆ランク98くらいのホシノ   作:deko rice cake

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ホシノが勘違いしちゃうだけの話

朝、おじさんは先生のお仕事を手伝うための当番としてシャーレに訪れていた。無機質的白な廊下を歩きながらスマホの画面で時間を確認する。

……ちょっと早く着いちゃったかな。まあまた先生と雑談でもしとけばいっか。

 

ここ最近はなんでかな、当番の日だといつもより早く目が覚めちゃうんだよね。このままだとおじさんというかおじいちゃんを自称しないといけなくなっちゃいそうだ~

 

あ、そういえば今日の当番は私だけか……ということは先生を独り占め出来ちゃうのか~なんて……

 

「…………っ」

 

犬が水を跳ね飛ばすみたいに勢いよく首を左右に振る……小っ恥ずかしいなんて粋の考えじゃないね今の。

 

そうこうしてるうちに執務室の前まで来ていた私は無駄に熱くなってた体温が落ち着き平静さを取り戻す。そして僅かに開かれているその扉を完全に開けようとした…そのときだった。

 

「オジサンって滅茶苦茶可愛いよね」

 

「……うへ?」

 

電話か、それとも一人言か。とにかく予想外すぎる先生の言葉に叫び声を上げなかった自分を褒めてあげたいものだ。

 

……おじさんって、まさか、ね~?も、もうちょっと話を聞いてみよう…

 

私は少し開いた扉を左に、壁を背に耳をすませる…まさかこんな戦闘中みたいな体勢をシャーレでやることになるなんてね~……

 

「あの暖色系の色が良いんだよね…見ていて落ち着くっていうか…いや別に寒色が嫌ってわけじゃ……」

 

「……ピンクって暖色だよ…ね?」

 

自分の髪をいじりながら、小さく呟いてしまう。

 

……これってもしかして、私だったり、、?おじさんで、あったかい色で……そ、それに可愛いなんて…

 

「……っ」

 

――逸る鼓動が、熱くなってく体温が冷静な思考を奪っていく。先生は私に対してそんな風に思ってたという驚きと、不思議な嬉しさに頭が支配されてしまったのだ。もっと知りたい。先生がどう思ってるのか。面と向かってではなく陰でだからこその価値がある…隠し事だらけの私がそう望むのは虫のいい話かもしれないけれど。

 

「オジサンと暮らす生活……癒やされそうで良いと思うんだ」

 

「っ、!??、、?」

 

後ろからいきなり頭を殴られたかのような衝撃が私に襲いかかる。さっきまでの言葉とはわけが違う、明らかに常識のラインを超えてしまった先生の発言に目がチカチカするような感覚になってしまう。

 

きっと今の姿を昔の私が見れば軽蔑されちゃうだろうな。だって、大人としてどうなの?って咎めなくちゃいけない発言に私は……こんなにも――

 

「あれ?もう来てたんだね」

「え、な…」

「座り込んでるみたいだけど大丈夫?体調が不調なら、当番はなしにしても……」

「い、いや!靴紐を結んでただけだから平気だよ~…」

 

思考の渦に飲まれて漂っていたせいか、そこまで来ていた先生の存在に気づけなかった。

 

「ドアを閉めに行ったらホシノがいてちょっとびっくりしちゃったよ……」

 

先生はそうやって少し笑いながらマグカップを口につける。内心ぐちゃぐちゃな私とは正反対にとても穏やかな動きだったものだから、誰のせいでこんなって逆恨みしちゃいそうになっちゃう。…このわだかまりは早めに解消しちゃいたいな。

 

「先生さ……おじさんと暮らしたいってホント、なの?」

 

「ああ聞いてたんだね。うん…もっとも、色々と準備しなくちゃいけないけどね」

 

私が長時間いたことがバレるのなんだか恥ずかしいので、最後の先生の言葉を引用して質問する…まあこの聞いてること自体が今すぐ布団でドタバタしたいくらい恥ずかしいんだけど…

ああ今すぐにでも逃げ出したい気持ちだ。でも……それと同時にこの後の答えも聞きたいっていう、そんな矛盾した気持ちに襲われる。

 

裏腹な感情で脳内会議を幾重に繰り返してしまっている私とは違って、先生は驚くくらい、寧ろ怖いくらい普段通りだ。

 

「やっぱ気になるよね?ホシノも好きだろうし」

「へ?そりゃぁ……」

 

……好きって、これは、えっと…私が先生のことを…そんな、ストレートに―――

 

「なら今度一緒に行こっか、

 

 

 

 

 

 

 

 

観賞魚専門店」

「う……うん?」

 

え?どういう…え??

 

「観賞魚専門店?」

 

「そうそう。さっきアロ……ネットで調べてみたらそういう店で買えるらしくてね。オジサンってもっとレアだって勝手に思い込んでたから意外だったよ」

「へえ……」

 

「それで…ってホシノ?」

「…ごめん。コンビニで買うものあるの忘れてたよ~ちょっと行ってくるね」

 

つまらない嘘の返事を聞く前にゆらりと部屋を出て、ぐちゃぐちゃになって整理出来てない衝動を引っ張りながらゆっくりと廊下を歩く。

 

そりゃそうだよね。冷静に考えてみたら単純なことで、先生が私のこと『おじさん』って呼んだことないよね。判断材料も少ないのに、暖色だ~なんて勝手に勘違いして思いあがって、こんな………

 

「うぅっ……」

 

エレベーターの前まで行ったは良いものの力が抜かれるように膝を抱えて座り込む。そうしてると周りの音がシャットアウトされて、さっきの自分の失態が余計に浮き彫りなってきて顔が更に熱くなった。

 

……あまりに盲目過ぎたかなぁ…うん。過ぎたよねえ…でもさ

 

「こんなの初めてだからわかんないよ……」

 

私の小さな叫びは空気と混ざり合い、消えていった――

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