魔無香を救う方法。正直に言ってそんな物、一つも思いついていない。そもそもだ。私は魔無香と同じ苦しみを味わったわけでは無いのだから、魔無香の気持ちを完璧に理解する、なんて、出来るわけがないのだ。ならどうするか。
「…一つ質問」
気になったことを一つ、質問する。この答えによって私が魔無香を救えるかがわかる。
「魔無香の心は、"壊れている"の?それとも、"閉ざしている"の?」
ギリギリで壊れていないだけってわけか。なら……。救う……とはまた違うのかもしれないけど……。
「魔無香は、表に出てこれるの?」
「じゃあお願い」
「あと、魔無香が以前みたいに戻れれば、救い方は何でもいい?」
「……分かった」
そう言って、ベルゼブブは目を閉じた。
目が開いた。ベルゼブブの様な圧は無く、生気を感じられない。それはまるで人形の様で、本当に心が壊れているのかと思わせるほどだった。
「貴女が、…魔無香?」
「!」
返事が返ってきた。本当に壊れていないのか。「ふぅー」と息を吐き、言葉を紡ぐ。
「掘り起こすようで悪いけど…、貴女は自分の能力を暴走させて周りを殺した、ってことで…合ってる?」
魔無香は俯き、何も答えない。
「自分のせいだと…思ってる…?」
「…正直、魔無香からしたら『貴女のせいじゃない』なんて言葉、何とも思えないかも知れないけど……私は………貴女のせいではないと思う」
「貴女がどうこうしたから起きたことじゃない」
ふと、魔無香を見ると…彼女は涙を流していた。そんな魔無香に、私は少し、厳しい言葉をかける。
「……魔無香…」
「貴女は逃げ続けるの?」
「…逃げる事が間違いか、なんてそんな事は思ってないよ。でも…たとえ間接的だとしても、自分の手で殺した命から目を背けて…全て投げ出して、……魔無香は…そうやって生きたい?」
魔無香からは何の言葉も返ってこない。
「……私さ、この前、人を殺したんだ…」
それから、私は今までのことを全て、魔無香に話した。親に捨てられたこと、孤児院で育ち虐待といじめを受けたこと、そんな地獄からとある夫婦が助けてくれたこと、その夫婦が殺されたこと、そして、復讐しようとしてること。
「私はこの前、妹に虐待する兄を、襲ってきたから………殺した。」
「でも、その事を後悔はしてない」
「殺した事で
この話を魔無香にしたところで、ほとんど意味なんてないと思う。だって、私は…
「魔無香……貴女はこれからも後悔しないといけない。でもそれは、逃げてはいけないわけではない、たまには逃げてもいいと思う。ただ……最後は前を向いて生きないといけない。決して心を閉じたり、自分を殺すようなことはしちゃダメだ。それは……自分が殺した…命の冒涜だ。」
魔無香は涙を浮かべ、弱々しい声で聞いてきた。
「…魔無香は……どうしたいの?」
その、近くに居ないとわからないほど小さな泣き声を出す少女を、私は……優しく抱きしめる。
「大丈夫……大丈夫…。」
「全部が全部、貴女が悪いわけじゃない。」
そうだ。実際、あの話に魔無香が悪い所なんて、一切ないのだ。ただ、運悪く、自分の能力が強大で、運悪く、その能力が暴走した。魔無香がどうこうして防げたものではない。
10分程、魔無香は私に抱きついて泣いていた。
「落ち着いた?」
「別に…いいよ」
落ち着いた魔無香に、再度、これからどうしたいかを聞く。
「……2つ」
魔無香が俯いた顔を少し上げる。
「魔無香が何をしたいかわからないなら、2つだけ、といっても大雑把な物だけど」
「1つ、これからも普通に学生として生きる。でも、閉じこもるのはダメ」
「もう1つが………」
「…私と一緒に………あいつに復讐する…」
ベルゼブブから能力暴走について聞いた時、その黒幕が
「…え?」
予想外の質問に、困惑する。
!!
「…うん……!」
こうして、魔無香が私達の仲間になった。