十一話 狐と呪い
あの件から魔無香とは、学校でよく話す仲になった。魔無香以外、話す相手が居ないってのもあるけど……。月夛さんも、私たちが学校にいる間は姿を隠して魔無香といるか、魔無香の家にいるか。まぁ、二人とはよく話すようになったということだ。
竜爺と莉音さんはたまに魔無香も、私と一緒に鍛えていた。とは言え、魔無香は能力が桁違いに強い。私はそこまで、能力によるダメージを与えられないから鍛えてもらってるけど、魔無香は簡単な護身術とその応用くらいだけだ。竜爺はしっかり鍛えようとしてるけど……。どちらかというと、莉音さんと能力を制御する練習をしている……かも。二人でよくいるのを見るし…。
魔無香が鍛え始めてから1週間ほど経った土曜日、インターホンが鳴った。家には私しか居なかった。
「はーい」
宅配?私……は頼んでないけど……竜爺?竜爺って宅配とかない頼むのかな?
「そこに置いといてくださーい」
一応、玄関前に置いてもらおう。何かわからないし。
……荷物は置いていってくれた……のかな?
何が届いたのだろうと思い、玄関に行く。
「んしょっ」
靴を履いて扉を横にスライドさせる。外に出て、太陽の日差しを浴びながら目線を下に向ける。だけど……
「あれ…?」
そこに置いていると思っていた荷物が、無かった。
「!!」
突然男の人の声が聞こえ、目線を上げる。声はさっきの宅配の人と同じだ。
腕を掴まれ、ぐいっと引き寄せられる。顔が近付いて、すぐにでも額がぶつかりそうな距離だ。金色の髪を片方で短いおさげにしていて、背が高い。近付くと、吸い込まれるかのようにも感じる紅い瞳のその人は、掴んだ腕を離し、こう言った。
ゴツンという音と共に、竜爺の声が聞こえた。
竜爺が殴ったであろう頭をさすりながら、男の人は竜爺に話しかける。竜爺はその言葉を無視し、玄関に入っていく。
手招きをして、家のリビングまで案内し、私と男の人を座らせた。
「この人……竜爺の知り合い……?」
男の人を指さして、竜爺に問いかける。
竜爺から返ってきたのははっきりとしない答えだった。頭にハテナを浮かべていると、男の人が自己紹介をし始めた。
「!」
莉音さんの部下?…部下がいるなんて、初めて聞いた……。驚いている私を置いて、孤月さんは続けた。
「九尾の狐……」
聞いたことはある。有名な妖怪だ。100年生きると一本尾が増える、と同時に妖力が蓄えられる……みたいな。
…莉音さんが……?
そこに、魔無香と特訓していた莉音さんが帰ってきた。リビングに来た莉音さんは座っている私を一瞥すると、私に疑問を投げかけた。
「えっ、……はい、そうですけど……」
そう、私たちはあともう少しで夏休みに入ろうとしていた。そういえば、もうそんな時期なのかと思いながら、莉音さんの横にいた魔無香と目を合わせた。そして、二人で、次の莉音さんの言葉に驚いた。
「………」
莉音さんからそんな話がされ1週間が経った。私たちは夏休みに入り、この前の話にあった、莉音さんたちの家に行くことになった。
「山の中にあるんですか…?」
魔無香と莉音さん、あと私を含めた3人は孤月さんが運転する車に乗っていた。車の窓から見える景色は田舎道……というか山だ。人の気配が全然ない。莉音さんが、私の質問に答えた。
「………私達はそこに行って何するの…?」
「ですよね……」
着いたのは山の中にポツンと立っている一軒家だった。全体的に白くて、屋根だけが黒い家だった。
「ここが…」
そんな事を家の前で話していたら、家から一人の女の子が出てきた。少しぼさっとしている黒色の髪膝まで伸びていて、顔にも、前髪が被っている。白衣?を着ていて身長は……私よりもちょっと大きい……かも?
少女がそう言うと、孤月さんが「ただいま」と言った。
「あの人は………?」
小さく、莉音さんに聞くと、すぐに答えが返ってきた。
………。……えっ?!
「双子?!」
と、後ろから孤月さんがドヤ顔をして言ってきた。孤月さんと怨華さんを交互に見る。………双子…??似て……ない、わけではないけど……雰囲気が違いすぎる…。
「!」
怨華さんが少し屈んで私たちの顔を前髪から覗く。………距離が…近い……。…なるほど、確かにこの2人は双子だ。初めて会ってする行動が2人とも同じだし……。怨華さんの顔は少し前髪がかかっていたが、目が大きくて、可愛い顔をしていた。そんな事を考えていると、莉音さんが怨華さんの問いに答える。
と私と魔無香のことを紹介する。
孤月さんが何か言おうとすると、莉音さんが孤月さんのお腹を思いっきり殴ってふっ飛ばした……。ひえ……。
私たちは家の中に入って、怨華さんの自己紹介を聞いていた。
疑問を孕んだ魔無香の声に怨華さんが答える。
そこで莉音さんが声を出す。
そう言って、莉音さんはフフッと笑った。