小箱探しから幸村のジィさんの捜索に切り替えた俺達は、まず校内を手分けして捜す事にした。
「どうだった?」
落ち合う約束をした生徒玄関で、旧校舎を三階から一階まで全部見て回って先に来ていた俺は戻ってきた智代と渚に訊いた。
「中庭の方にはいらっしゃいませんでした」
「新校舎もだ。一応職員室や生徒指導室の中も覗いて見たんだが」
「そうか……」
「そういうおまえはどうなんだ?」
肩を落とす俺に、智代が訊き返す。
「こっちも同じだ。廊下歩いてるヤツ捕まえて訊いてもみたんだがな」
何処に行ったのか、幸村の足取りは
「まさか、もう帰ったんじゃないだろうな……」
「それはないと思います」
ポツリと漏らした俺の言葉を渚が否定した。
大切な小箱探しを生徒に頼んだまま自分だけ帰ってしまうなんて。そんな無責任な事を幸村先生がする筈がないと。
「けどジィさん。もう結構いい歳だからな。自分でも最近物忘れが激しいって言ってたし」
「でも、伊吹先生の事はよくご存じでした。前に伊吹先生がこの学校で結婚式を挙げたいと言ってた事も憶えていました」
「年寄りってのは、昔の事はよく憶えてるもんなんだよ」
でもその分、最近の事はすぐ忘れる。ボケてきた年寄りってのはそういうものだ。
「でも——」
「おい、岡崎っ、渚ちゃんっ!」
俺の言い分に納得できずに言いかけた渚の言葉を遮り、春原が声を張り上げながら駆けて来た。
春原には体育館の方を見に行ってもらったのだが、どうやら何かあったらしい。
自分達の前で立ち止まり、膝に手を付いて肩でゼイゼイ息をする春原に、少し身を乗り出して俺は訊いた。
「どうした? 幸村居たのか?」
「い、いや、居なかったんだけど……」
「なんだ、居なかったのか」
——期待させやがって。
と、思わずジト目になる俺に、春原はなんとか息を整えて口を開いた。
「居なかったんだけど、ジジィ見たヤツが居たんだよ」
「ホントかっ!?」
その言葉に、俺達は色めき立った。
「ああ、体育館にいた部活の一年が外歩いてるジジィを見たって」
「外って、校庭か?」
途端に俺はげんなりした。
——よりによって一番捜したくなかった所に……
それに春原は
「いや、校庭っていうより体育館の裏だよ。そいつ、体育館の横を通り過ぎて裏の方に歩いていくジジィを見たって」
「体育館裏か……」
——そんな所に、幸村のジィさんが立ち寄りそうなトコなんかあったか?
「それは何時頃の事だ?」
智代が一番肝心な事を訊いた。それが随分前の話なら、もうそこには居ない可能性がある。
「ついさっきって言ってたから、五分も経ってないんじゃないかな」
だから春原も急いで知らせに来たのだ。
「そうか、ではまだ間に合うかもしれんな」
頷き、智代が自分のクラスの下駄箱に向かう。
俺達もそれに倣い、靴を履き替えると外に出て体育館裏へと急いだ。