そこはグラウンドで使う体育用具を入れる倉庫と、それと並ぶようにして武道館があり、その後ろは裏山と学校の敷地を仕切る背の高いフェンスが張り巡らされていた。
「倉庫の中には居ないようだな……」
中を覗き込み、智代が呟く。
「じゃあ、もうここには居ないんじゃない」
武道館の方も鍵が掛かっていて誰も居なかったし。
と、頭の後ろで両手を組み、春原がつまらなそうに言った。
春原は面白そうだとすぐに首を突っ込みたがるが、飽きるのも早い。
そこへ、倉庫の裏手を見に行った渚の声が聞こえてきた。
「皆さん、ちょっと来てみてください」
「どうした、渚」
「これを見てください」
倉庫裏に回って見ると、渚は俺達にフェンスの一角を指差してみせた。
そこは裏山に出入りできるように扉が取り付けられていた。
非常用のやつでいつもは鍵が掛かって開かないのだが、今は鍵が掛かっていないのか、微かに扉が開いていた。
「まさか幸村のヤツ、ここから外に出たのか?」
「そのまさかのようだな」
扉から裏山へと、地面に微かに足跡が続いていた。本来なら誰も立ち入る事ができない、当然人の足跡などあるはずのない地面に。
「ジジィ、なんでこんなトコに……」
脱力し、春原は思いっ切り嫌な顔をした。
確かに裏山捜すくらいなら、校庭を捜した方が遙かにマシだ。
「仕方ない。手分けして捜すか」
嘆息し、俺は三人を見回して言った。
「けど、あまり奥の方には行くなよ。戻って来れなくなるとマズイし、幸村だってそう奥までは行かないだろう」
「ジジィ、もう戻る気が無かったりして」
歳も歳だしねぇと、慎重な俺に肩をすくめて春原が茶化すと、全員が一斉に睨み返し、すかさず智代と渚が非難の声を上げた。
「春原、不謹慎だろう」
「そうです、春原さん。言って良い事と悪い事があります」
ちょっと冗談で言っただけなのに本気で怒られ、狼狽した春原は助けを求めるように俺を見た。
「春原、おまえが戻らなくても、俺は一向に構わないぞ」
「構ってくださいっ」
俺にまで冷たくあしらわれ、春原は涙ながらにひしっと俺の足にへばり付いた。
うっとうしくそれを邪険に蹴り倒し、俺は智代と渚を見た。
「時間を決めて捜そう。幸村が見つからなくても時間になったら一旦ここに戻ってくる。いいな」
「わかった」
「はいっ」
頷き、俺達は時計を合わせて時間を決めると、それぞれ幸村を捜して裏山の雑木林の中に入って行った。
「ま、待てよ。僕も行くよっ」
一人残された春原も慌ててその後を追い、雑木林の中に駆け込んだ。