ガンダム 粗製の魔女   作:みさりつ

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憎悪によって生まれた対立構造は道徳や倫理を奪い、自らが正義、対立者はすべて悪。
そのような2元論的な教育を当然と次世代の子供に勝利を託すように施してしまう。
それは根深く残り、種子となり争いの花として咲き誇るだろう。

宇宙と地球の対立は最早止まらない、

黄金をつかんでいる宇宙と石ころを掴むしかない地球では既に勝負は決していただろう。

弱いものは滅び、強者は生き残る、生き残った強者の中からまた弱者が生まれ、繰り返す。



客観的に見ても、ある少女の在り方は戦争犯罪の被害者の人生そのものだった。
そしていつかまた自分と同じような人間を創造するだろう地獄の種の一粒。
少女もまた自分がただの家畜であり、盲目に自身の死をいつか数える羊だと思っていた。








所詮、伝説は真実と虚偽によって編まれた脆弱な幻想だったのだろう。

伝説は世の中を変えることはない、いつだって世を変革するのは伝説を破壊する例外者。

不自由な世界で拘束されながらも自由を求めて運命や宿命を打ち破り、現在の秩序を破砕する混沌の可能性。

少女は世界に対し、興味すらなかった、今日に生きて明日に死を迎えるのだから。

まだこの時は。


閑話 真鍮の乙女

 

 

 

 

「理論的じゃありませんよ、この機体、今更、あまりにも人型にこだわり過ぎていませんか?」

 

「今のキメラ的な機体に比べればこいつは時代遅れの機体と?

 

いいや――これはGUND技術の最高傑作だよ。

 

パーメットは情報を伝達、共有する性質、人間の脳、体内の神経にすら作用する繊細緻密な素材。

 

こいつのせいで人体に対するナノマシン技術体系が忌避され成長しなかったとも言われる、これは馬鹿な話だと思わないか?」

 

「何がです?」

 

「なんでそんなやばいものを人体に加工しないでぶち込むんだ?」

 

「だからGUNDフォーマット技術は禁止されているのでは?」

 

「だからこいつはGUND技術であってGUNDフォーマットではない、人体に一切のパーメット粒子を作用させない仕組みで作ってみたからだ」

 

「GUNDフォーマットが存在しない…?それでは、GUND技術ではないのでは?」

 

 

体内のパーメットを介して機体と同調することでモビルスーツを自分の体のように扱うMS制御システム技術GUND―ARM。

 

人間を機械と同調させ酷似させる。

ゆえに人体では耐えきれないパーメットを介した情報粒子の嵐、データストームが人体を死に至らしめる猛毒となる。

 

ならば

 

 

「逆転の発想だ、そしてこれは究極の進化の選択だよ、人間ではなくArtificial Intelligence、つまりAIの進化ために莫大な情報量を持たせることが出来ないか、とね?」

 

「つまり機械を人間に可能な限り酷似させる?そのためにこの人型に拘りすぎた機体?しかも女性的な人型に拘りすぎた機体」

 

「女性的な造詣は趣味だ」

 

「はぁ」

 

機械を人間と酷似させる。

そのためにほぼ人体のような内部構造。

 

 

「そう、人間をMSにするGUNDフォーマットではなく、MSを人間にするGUNDフォーマットを開発した。これをSERENEシステムとでも言おうか」

 

「は?セレネ…月の女神ですか」

 

「そうだ、はるか昔、2009年6月11日に月の表側に制御落下して役目を終え、多くの人々に愛された娘、セレネ、私はあの子の人生の映像記録をみて科学者を夢見た」

 

「大昔の月面探査機かぐやですか、マニアックですね」

 

「どこまでも無垢なる無機物、私は彼女に聞きたかった、人は君を愛したが君は人をどう思ってたのか、とね、あんな孤独の世界に送り込んだ人類に対して…エモくない?」

 

「ああ、感動して擬人化したわけですね?」

 

「そういうことだ、私は、彼女に対して無垢で完璧なロボットな美少女性を見出して、勝手に妄想して恋をした、彼女をいつか月面から拾い上げて美少女アンドロイドとして生き返らせると誓ってな」

 

「は?何を…いや、わからなくもない、か」

 

「実はすでに彼女をあるオークションで買って、こいつの根幹パーツに流用してる、だからSERENEシステムだ」

 

「なにしてんすか」

 

「一応、意味はあるんだ、素粒子物理学的に記録物質のマテリアルとしてパーメットと結合させるには良い掘り出し物だった、まぁ結局、趣味だが」

 

「ああ、過去に膨大な情報を流動させていた素材として、ですか?」

 

「根幹パーツの素材をイチから買うより安く済んだというのもある…実は粗大ごみ扱いで安かったんだ」

 

「スぺ―シアンにとってアーシアンの過去の遺物…今時、そんなの買う金持ちいませんもんね」

 

「そうだ、悲しいことにパーメットの月面採掘に邪魔なヘイズ扱いということだ、だが考えてみろ、ヘイズだ」

 

「ヘイズ…ヘイズ、気象用語で乾いた微粒子の浮遊により視界が悪くなる煙霧…月面、つまり――百年以上パーメット粒子を浴びていた可能性が?」

 

「魂が宿っていてもおかしくはないと思わないか?運命を感じたよ、通常のマテリアルよりも数千万倍のパーメットの粒子が付着し蓄積していた」

 

「通常の数千万倍のパーメットを使用した、人間に模した電子頭脳が生まれたということですか?」

 

「ああ、こいつに人類すべての叡智を詰め込み、学習は済んでいる、つまり、こいつに体ができ次第、あとは電気を流せば理論上、こいつは生きていることになる、生命の起源とは生命の泉に落ちた一筋の稲妻だからな」

 

「ユーリー・ミラーの実験…機械にも窒素誘導体の形成がはじまるとでも?ただ機械が動くだけでは?」

 

「有機体ではないが、こいつの電子脳の未確認領域内にそういう情報粒子の波の発生は既に確認されたよ、まるで人間のような、ね。

正直、神か悪魔でも生まれてもおかしくはない、いや凄い素材だよパーメットは、逆を言えばこいつに人間200人の記憶をインストールをするくらいなら簡単にできる」

 

「オカルトすぎますよ、それは、パーメット自体オカルト素材なのは知ってますが」

 

「生命の起源の他説、地球外からのアミノ酸の飛来はこいつが原因という説もあるからな、何せ月でこいつは山ほど採れるんだ」

 

「ただでさえ人間をただのMSのパーツにするだけの紛い物のGUND―ARMにあれだけの力があった」

 

「機械と人との対話による真のGUND―ARMというわけだ、こいつの可能性は未知数だ。

しかし、魔法使いがいる、これに命を吹き込む炎の魔法のな、これだけだと、まだ多少、お利口さんな人の紛い物にしかならん」

 

「…魔法使い、ですか?」

 

「こいつを一人の人間として成長させられる、つまり魂、愛という奇跡の魔法を与えることができる存在が必要なのさ」

 

「ついにシェイクスピアみたいなこと言い出しましたね、あとですね、SERENEの綴りのEが足りなくないですか、あそこ」

 

「あ、いや、ね、塗装したときにヘイズという魔法が付着して」

 

「塗装失敗、これじゃあ、セレネじゃなくてセレンですよ」

 

「セレンヘイズか」

 

 




セレンさん好きだから書きました
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