虹ヶ咲ヒーローorナイト&キング   作:コントラポストは全てを解決する

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17.私だけ茜色に染まってない

 なんか最近の同好会、めっちゃ色気立ってる気がする。私以外の全員が恋人さんに会いたくてとか言うわけじゃないし、そういう空気を出してるのは菜々さんとかすみちゃんと璃奈ちゃんだけ。けどその3人のオーラが部室覆っちゃってる。

 1番軽度なのは璃奈ちゃんかな?ずっとひまりちゃんに教えるゲームの話してるし。後はその教えるための予定を茜と相談して組んでるくらい。

 かすみちゃんに関してはなんだろう……最近少しづつ選ぶ化粧品にウケの良さを取り入れる様になってて、歌やダンスの練習より化粧品漁ってる時間の方が多くなって来てる。1番の変化は『何となく手抜きかもって言うプライドが邪魔してBBクリームに手が出せないんですよね……。ちゃんと古き良きメイクも忘れちゃ行けない的なこだわりがありまして……』って言ってたのに今はなんの躊躇もなく研究してる。

 かすみちゃんの求める可愛さに磨きがかかるのは嬉しいけど、表情に鬼迫が籠り過ぎてて誰に見せる化粧してるのかなってちょっと怖さを感じた。

 

 菜々さんに至ってはここ3日1日中ヘッドホンしてる。ひまりちゃんの曲を聴いてるのかなって思ってたけど、実際は音声ファイルらしかった。

 最初はアニメとかヒーローモノの決め台詞や名言集でやる気スイッチ入れるために聴いてるのかもって勝手に予想してたけど、明らかに女の子がしちゃいけない顔してて1回止めた事もある。

 おまけにすごい音量が大きくて手から音の振動が伝わって来るくらいには酷かった。ああ、これだけ音が大きかったら他の人の声も聞こえないねって。おかげで茜を召喚する事態になったし。ヘッドホンもノイキャン付き。

 

 いやまあ、なんとなくわかるよ?みんな茜が関係してるって。健全な女の子のフェチズム壊すためだけに生まれて来たような要素しかないし、3人とも男の子への印象がぐちゃぐちゃになってるんだろうなって。

 あの可愛さでワルな成分入れて来るから見た目のカッコ良さが無くても惹かれちゃうのだってよく分かる。ワル成分というかオレ様系かな……オレ様っていうより王様系って言った方がしっくり来るけど。

 国のためならいくらでも汚れるし自分の王族ブランドも下げに行く。国民と一緒に働いて現場の声を聞きながら交流と国家情勢の把握を同時にやる政策取ってそう。それで貿易とか戦争でも自国に利益があるなら悪役にさえなって敵を策略で落とす。多分国内からはめちゃくちゃ慕われてるけど他国からはすごい警戒されてるタイプの王様。

 けど王としては誰よりも正しいし敵に回すと厄介だから他の王様も友好的に貿易する。そんな王様。

 国民がひまりちゃんしかいないしヒーローキャラをやってるひまりちゃんの弟が悪役なのは少し考えなきゃいけない案件だけど。

 あと別に聖人ってわけじゃないからストレスを発散できるようにひまりちゃん以外の相性が良くて信頼出来る誰かが必要なんだよね。

 

 

 こんな感じで小さな王様キャラだし面倒見も良いから確かに仲良くなりたい気持ちは分かるよ。いつもニコニコ笑ってるけど、内側で警戒心燃やしすぎてるから威嚇してる子犬みたいで、でも子犬は子犬だから結局何してても可愛い。

 むしろちょっと拒絶される方が女の子は燃えるんだよね。あんまり熱くなりすぎると手に入った瞬間冷めちゃうから加減が必要だけど。

 

「あの……侑さん……少し相談したいことがあるのですがお時間よろしいでしょうか……」

「ど、どうしたの?もしかしてご両親と何かあった……?」

「いえ……その……茜君の事で……」

「あっ、うん」

 

 めちゃくちゃ気落ちしてるから親御さんにアイドルの事かアニメ好きがバレたのかと思った。予想が外れたのは嬉しいけど茜のことか……恋愛相談とかされたらどうしよう。私も経験ないんだけど。

 とりあえず2人きりになれる所に行こう。

 

「えっと……茜がどうしたの?」

「その……かすみさんと璃奈さんを見てて思ったのですが……2人とも茜君と繋がり深くて良いなって……」

「繋がりが深いというか茜の影響受けまくってるだけっていうか……もしかしてそれが仲良し判定になったりする?」

「今の茜君と友情結ぶとか絶対できないですし、考え方を茜君寄りにしてどれだけ話題合わせられるかぐらいしか判断基準が無くて……」

「な、なるほど……」

 

 男性ファンに話合わせれるようになるのが目的じゃなくて、茜色に染まりたい……ってことで良いのかな。

 確かに茜は口達者なところはあるけどそれに合わせて話すって中々難易度高いと思う。方便だけは達観して大人化してるのが茜だし。それ以外はほんとに見た目相応の子供だけど。

 とりあえず駅前のたい焼きかクレープを引き合いに出せば着いてくるくらいには子供。というか犬?雰囲気は猫だけど。

 奢ろうとすると着いて来なくなるからクーポン出すのが1番っていう罠ポイントはあるにせよ、そこさえ気をつければいくらでも一緒に出かけられる。子供の警戒心だからそれ以上の物を出せば結構簡単に引っ付いて来るんだよね。可愛い。

 

「それで……一応確認なんだけど菜々さんはまだ茜の影響を全然受けてないってことで良いんだよね?」

「はい……私が1番最初に出会ったはずなのですが……明らか2人の方が仲が良くて……。どこで道を間違えたのでしょうか……」

「でも、見方を変えれば菜々さんが菜々さんらしさを貫いてるって事にもなると思うよ。そのまま菜々さんらしさを茜にぶつけてみたらどう?」

「3ヶ月間ずっとそうやって来たのですが……結果は惨敗でして……。私このままじゃ推しバンドが武道館行ったファンみたいになっちゃいます……」

 

 心の距離が遠のいて行くって言いたいのかな?というかその言い方だと二人の仲の良さがバンドと1ファン程度しかないって事になるんじゃ?

 もしかしてだけど、私が思ってる以上に菜々さんから茜への気持ちって一方通行だったりする?茜が塩対応なのは知ってるけど落差酷いね。

 

「えっと、そもそもの話として、菜々さんってひまりちゃんのファンだったよね?ひまりちゃん追っかけてたら茜の事も知りたくなっちゃったとか?」

「いえ、茜君とは普通の友達になりたいんです。なりたいんですけど……色々事情があって警戒心抱かせちゃってまして。別にそのままでも仲良く出来るなら問題ないのですが、生憎……」

「警戒を解く鍵みたいなものってないの?鍵というか条件みたいな」

「私の口の硬さを証明するしか道がないです……。でも物的証拠とか用意できませんし、誰かに証言して貰えば良いと言うわけでもなく……」

「……それ詰みってやつだと思うんだけど……」

 

 残ってる手段が心の中を見せるぐらいしかないよねこれ。茜のペースに合わせるだけじゃ解決できないレベルの話。思ってた以上に解決が難しい……もう少し情報集めないと答えるどころかヒントも考えられない。

 

「茜の影響を受けた後ってどんな感じになるの?私から見ても変わったなって分かるけど、まだ細かくはわかってなくてさ」

「かすみさんって化粧の仕方変わったじゃないですか?あと少し物の考え方が現実寄りの理系になって、茜君タイプの面倒くささを持つようになりましたし。良い意味で自分の腹の黒さを活かし始めたというか。茜君で嫌われない可愛い女の子作りを学んでるらしいです。あと茜君に可愛いって言って貰いたいからって」

「ああ、化粧変えたのもやっぱり茜が1枚噛んでたんだね……。璃奈ちゃんは?」

「璃奈さんは影響というか、元々頭の中で考えが色々巡っていたらしいのですが、それを言うと空気が悪くなるからって今まで我慢してたらしいんですよ」

「それを茜が言ってくれる?」

「らしいです。璃奈さんが言うには、茜君って自分の可愛さと表情作りで誤魔化し効かしてるので『可愛いから図に乗ってる』みたいに見られる事で悪くなる空気を全部自分へのヘイトに変えて中和するって。だから璃奈さんが言うより気まずくならないですし、逆に恨み辛みで相手が結託するらしくて。茜君も嫉妬と憎悪と怒りは人の原動力ベストスリーだからここを刺激するのが1番手っ取り早いと言ってました。璃奈さんの方は茜君の補足係と中立担当になる事が多いって」

「いつか刺されそうな人の束ね方だね……」

 

 これは璃奈ちゃんを気遣って悪役買って出てるのか、それとも私の家に来た時みたいに自分の気に食わないことへの愚痴が漏れ出ただけなのか。とりあえず良くも悪くも汚れるのが得意なまっすぐキング過ぎる。

 

 ひまりちゃんが学校での茜を知ったらどんな反応するんだろう。大好きなお姉さんが心配するって茜ならわかってそうなのに。実はひまりちゃんも茜寄りだったりする?姉弟揃って『可愛いから調子乗ってる』みたいな事言われて来たのかな……?男の子でも言われる事あるんだ……。

 

「茜と璃奈ちゃんって結構考えること似通ったり?」

「その……お互いがお互いに無意識で正妻ポジ陣取るくらいには相性良くて……愛ってレベルの気持ちはないですけど既に以心伝心の領域に入ってます……。私の方が長く一緒にいたのに……!ご飯作って貰えるのずるい……!!!」

「あはは……。一応茜的にはひまりちゃんにゲーム教えてくれるお礼とかでお世話……っていうか色々してあげてるんでしょ?」

「どう見ても建前じゃないですかそれ……。私今月で茜君と出会って3ヶ月経つんですよ?それで璃奈さんは1ヵ月。理不尽じゃないですか?いくら璃奈さんが好みだからってこんな露骨に差を見せつけなくても……うっ……」

「で、でもさ、菜々さんの事もちゃんと見てくれてるって自覚してるんでしょ?とりあえず嫌われてはないんじゃないかな?ほら、この間とかすごい優しかったじゃん」

「それは分かってますよ……。以前にも『私が留学するなら止めますか』って聞いたら国際通話契約するって言ってくれましたし……。それだけで私の人生全部考慮してくれてるんだなって勝手に舞い上がりました。そもそも自分が悪い時はちゃんと謝ることができますし、別にプライド高くて謝罪ができないみたいな人間性が欠けてるわけでもないんです。だから冷たい人ってわけじゃなくて……倫理観はたまに消えますが。でも人に優しくしてる方が肩に力が入ってないように見えてしっくり来るくらいで……やっぱりもっと仲良くなりたいですし出来る事なら一から十まで全部則ったデートがしたい……!!!」

「そ、そっか……」

 

 物の見事に茜沼に沈んでる……。ひまりちゃんの話してる時はここまでときめいてないんだけどな……。完全にひまりちゃん<茜になっちゃってる。

 いやまぁ、ひまりちゃん似の顔とスタイルでワイルドに悪の道進んでる男の子とか見ちゃったらちょっと男の好み変わりそうだけどさ。そこは分かるよ。敵の倒し方とかで評判は別れるけどなんだかんだダークヒーローってかっこいいし。

 

 でも茜かぁ……。なんかこう見た目の良いクラスメイトで漫画書くみたいで気が引ける。権力?とは違うかもしれないけど確かに私達との立場は違うよ?そこはもう茜がひまりちゃんと一緒に頑張った証拠だからむしろ褒めるべき。

 だけどやっぱり生活の中でも特別扱いは違うと思うんだ。何となく茜ってそういうの嫌ってそうだし。前に言ってた『腰が低くておだてて来ながら甘い汁すすろうとする人』に会った時と似たような気持ち抱くんじゃないかなって。

 

「そうだなー……茜と同じ立場まで上り詰めて誰がどう見ても対等って思えるレベルになるとか。同じ目線になって茜の感じてる事が分かれば話も自然に合うしそのまま仲良くなれる……かも。って言っても茜のやってる事やれって無理強いだよね……。アイドルしながら曲作ったり色んなイベントに申し込んで予定管理とかやってたら普通に死んじゃうし」

「そうですよね!そうなんですよ……!そうなんですけど……なのですが……そのはずなのですが…………はぁ……」

「急に落ち着いたね」

 

 一瞬元気になったと思ったら1秒もかからずに冷静になって落ち込み出した。

 そういえば茜ってダンスの振り付けも考えてるし仮歌とかもやるはずだからステージに出ないアイドルみたいなものなんだよね。交流とかを除くとひまりちゃんとそんなに仕事量が変わらない。

 それに1曲作るのにだってすごい時間かけてるしそこに色んな仕事が入ったら休んでるのかなって心配にもなる。少なくとも私がそんなことしたら歩夢に止められるしきっと泣かせちゃうから絶対できない。

 

「ひまりちゃんって茜の事止めないのかな?自分のために頑張ってくれてるから止めにくいのはわかるけど、ちょっと度を超えてるし」

「多分諦めてるんだと思います。ひまりさんも一応ちょっとだけ作曲関連の知識があるらしくて、頼まなくても勝手に手伝ってくれるし自分の実力が足りない時は軽食作ったりして面倒見てくれるって言ってました」

「ああ……ひまりちゃんの手伝い込みであの忙しさなんだ……。仲良いのは安心できるけど、2人とも頑張り過ぎというか……情熱的過ぎてそれで倒れちゃったらだいぶ本末転倒だし……うーん、難しいなぁ……。そういえば菜々さんもひまりちゃんに会った事あるんだよね?」

「はい、ライブ中まんまの性格でした」

「ひまりちゃんってアニメとか好きだし、茜とセットでアニメ博物館とか声優さんの事務所見学とか誘ってみるのはどう?ひまりちゃんの許可さえ取れれば茜は絶対着いて来るでしょ?」

「なるほど……茜君とひまりさんを私の領域に引き込むと……合わせる事ばかりでそこら辺はまだ全然開拓してなかったので挑戦してみます」

「うん、頑張って」

 

 ひとまずこれで一旦落ち着くかな?

 話の所々で菜々さんの茜に対する何か大きな感情が見えたけど、やっぱりこれ茜のこと好きだよね。自覚はないから菜々さんは恋愛方面に疎そうって言う茜の言葉は当たってたのかも。

 だけど璃奈ちゃんもそこそこ特別な関係っぽいし、かすみちゃんも茜を意識してるらしいし。恋愛絡みの色々ってアイドルにもあるのかな……?バンドはたまに聞くけど。

 でもこういうのってだいたい女の子を巡って起こるものだし…………茜だからそういうテンプレートみたいなものは通じないか。もう現実でオタ何とかのお姫様状態が立場逆で進んでるし。

 これ、周りがフォローの仕方間違えたら地獄が待ってるってこと?茜の存在感すごいね……。

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 うんうん、最近はりなりーが楽しそうで愛さん嬉しいなー。やーっとりなりーの気持ちを分かってくれる男の子が出てきてくれた。まさかボード無しで全部読み取って来るとは思わなかったけど。

 女の子の気持ちって複雑だし結構気分で変わるから臨機応変が必要でねー。一言でいうと『面倒くさい』がしっくり来ちゃうからさ。アタシも女子って部分を結構頼っちゃったし。

 女の子のノリとか動きとかずっと見てきて、それを全部活かしてやっとりなりーの助けになれた。でもやっぱり異性からの刺激って大事でさ。

 何とかこうにか上手いこと巡り合わせがないかなーって前から思ってたんだ。りなりーが怖がらないようにイケメンよりかはなるべく可愛い系の方が良くて、今はそれ以上のジェットロケットが一緒にいてくれる。やっぱり人って120点の答え出せるんだね。ありがたやー。

 

 ただ……その、ちょっとね?今月入ってから様子がおかしいっていうかさ。スマホの内カメ見ては溜め息ついて、手鏡見ては溜め息ついて。あとはホッカイロ持った手でほっぺたを何回もグリグリしてたり。その後また鏡を見て落ち込んで。

 

 表情の練習してるのはわかるんだけど、りなりーも弟君と一緒に頑張ってるし水を刺さないようにってアタシはノータッチを貫いてて……。

 弟君に相談した方が良いのかもしれないし、直接りなりーに聞いた方が良いのかもしれない。でも何となくだけどさ、こればっかりはどっちも教えてくれないと思うんだ。

 アタシやユウユに頼りっきりだったから自分の力で何とかしたいって思って、ネットのレクチャーサイトとか動画を見たり、講師探したりした結果が今の弟君との関係だからね。

 

 でもさ、やっぱりさ?アタシもりなりーと友達なわけじゃん?だから頼りすぎとか気にせず相談して欲しいし、思い詰めてる時こそもっと皆を頼って欲しい。

 ギブアンドテイク?みたいなのは無しで遠慮せず『助けて』って言って欲しい。みんな全力で応えるからさ。りなりーは真面目すぎるから心配なんだよ。

 

「あの……愛さん……あんまり見られると恥ずかしい……」

「へ?あっ!ごめんごめん!りなりーの真剣な顔可愛いなーって」

「そこまで変わってないと思う……」

「そう?今のりなりーはすっごく頑張ってる顔してるよ?ひまりーと弟君の事もたくさん大事にしてるってわかる」

「そ、そっか……ありがと……」

 

 あんまり昔をほじくり返すわけじゃないけど、りなりーもずっと前から笑ったり怒ったりを表情で見せたくて練習はしてたんだ。ちゃんと表情を出せるようになってたくさん友達を作りたいって。

 でも、その時はほんとに1人ぼっちでやっててネットにすら頼ってなかった。それでどんどん落ち込んでいって2週間後には諦めの感情が混じり始めてさ。

 一緒にやろうって言いたかったけど、りなりーにはよく『愛さんの笑ったりほっぺた膨らませたりした時の顔好き』って言われてたから、アタシが関わるといらないプレッシャーを押し付けちゃうと思ってヒヨってた。それにりなりー自身もアタシに頼らず頑張るのを目標にしてたし。

 だからもし口を出すなら本やネットで人の表情筋の動きを全部覚えてからじゃなきゃダメだって思った。だから今も前も色んな資料を読んで知識を覚えてる。りなりーの心を感じる時みたいに感覚でやったら絶対取り返しがつかないくらいに傷つけちゃうから。

 

 それでもやっぱり失敗したら……って怖さは抜けきれなくてね。アタシはアタシが思ってた以上にりなりーが大好きで過保護だったみたい。こんなにチキンになっちゃうのは初めてだなーって。

 

 何となくこの時からさ、もっともっとりなりーに踏み込める人の存在を期待し始めてた。

 アタシよりもっと頭が回って、人の気持ちを知り尽くした心理学のプロみたいな人。

 りなりーが先生とか講師として頼れて、迷惑とか頼りすぎとか考えなくて良いくらいの距離感でいれる人。

 それで、りなりーが初対面で怖がらない優しい人。人懐っこかったりすると良いなって。愛さんも出会った頃はすごく怖がらせちゃったし。

 

 まあ、そんな都合の良い人いないよねって思ってたんだけどさ、いたんだ。すごいピッタリな人。

 ちっちゃいからりなりーも怖がらなくて、表情も人の心も何でも知ってて、男の子だから距離感も良い感じになる。

 それでりなりーがやりたがってたスクールアイドルにも詳しい。

 

 アタシが考える『りなりーと相性の良い理想のパートナー』を余裕で超えて来た子。必要な要素てんこ盛りでめちゃくちゃ運命感じて勝手にはしゃいでた。

 実際りなりーもすっごく積極的に仲良くなってさ。やっぱりこういうのは仲のいい女友達より自分だけの王子様に頼るのが1番良いんだよね。

 

 あとは愛さんの欲の話になってきちゃうんだけど、出来ればひまりーと弟君に会って色々話したいなーって。前に会おうと思ってりなりーに予定聞いた時はあんまりにミチミチなスケジュールに一瞬固まっちゃったもん。弟君とか寝てる時間が平均3時間で笑えないジョークだなって。

 

 本人に言わなきゃ意味無いんだけどさ、りなりーがものすごい心配してるからもうちょっと休んで欲しいな。今までで1番顔に気持ちが出てたから相当だしめちゃくちゃ弟君に入れ込んでる。

 なんというか友達とか家族とは別の、マジのマジで守りたいものが出来た顔してた。入れ込んでるどころか惚れ込んじゃったんだなーって。

 ひまりーはもう日が出てる内は学校行ってる暇がないほど忙しいから会えないらしくて、表情練習は弟君が基本だって言ってた。りなりーが言うには弟君も表情作りが上手いらしい。あとはひまりーにゲーム教えたり弟君と遊んだり色々。

 

 アタシの希望全部叶えてくれて、しかもその子はりなりーがセッツーと同じくらい好きになったアイドルとその弟。まだまだこの世界も捨てたもんじゃないね。

 

 だからアタシも必死になれるんだよ。

 

「もしかして弟君と喧嘩しちゃった?練習スケジュールで揉めちゃったとか」

「ううん……茜くんはずっと私のために無理してくれてる……。一ヶ月もずっと……でも、私の顔……全然成長してなくて……ずっとこのままだったら、茜くんになんて思われるんだろうって……思っちゃって……ちょっと不安で……」

「そっか。りなりーは弟君と一緒にいたいんだ」

「愛さん……なんで嬉しそうなの……?」

「うーん、そうだねー。りなりーがアイドルとか同好会以外の大切なもの、見つけてくれたからかなー。友達とも違う絶対無くしたくないもの、見つけてくれたから」

「そ、そういうのじゃない……」

 

 確かに成長具合に申し訳なさは感じてる。迷惑かけてるかもって言う気持ちもある。

 だけど前のりなりーだったら迷惑かけてるって感じた時にはもう理由なく今までの頑張りも全部捨てて離れて行ってた。ほんとに真面目過ぎるんだよね、りなりーは。

 

 でも今は違う。迷惑かけた先の嫌われちゃうかもって未来まで見てて、さらにそこから『茜くんから離れたくない』って自分の願いを押し通そうとしてる。ほんとに相性良いんだなー、弟君とりなりー。

 

「弟君との予定だと1ヶ月でどれくらい進む予定だったの?」

「予定よりだいぶ早く育ってるって茜くんは言ってた……けど、私の感覚だとあんまり違いが分からなくて……もしかしたら変な気遣い、させたのかもって……」

「……そっか。弟君の気持ち察するの、難しい?」

「ううん……普通の生活で考える事なら何でもわかる……。茜くんも私のこと見てくれる……でも、1番大事な事を茜くんは奥の奥に隠してて……見せてくれなくて……私も自分の不安を言えてないから……お互い様だけど、でも……それが、すごく嫌……。頼って欲しい……もっといっぱい……それに、貰ってばっかりは嫌……」

「りなりーは弟君に何かしてあげたいの?お礼とか」

「多分……そう……。何あげたら良いのかとか、女の子はお姉さん以外興味無いって言ってたから……そもそも私から何か貰って、嬉しいのかなって……」

 

 おぉー……だいぶ複雑な関係だ……。弟君ってシスコンなんだね……あの見た目の弟に懐かれるひまりー、ちょっと羨ましいかも。

 それにしても、普通に暮らすだけなら言葉がいらないくらいのコンビネーション取れるんだ。弟君はわかるとして、りなりーが出会って一ヶ月の男の子の心を感じ取ってるのは予想外。

 

「表情は一旦置いといてさ、相手が心の中で感じてる事がわかるようになったのは良い事だと思うよ。とりあえず相手の気持ちに合わせた表情が選べるようなった訳だしね」

「ううん……茜くんの気持ちしか分からないから、他の人には活かせない……。何となく、私と考えてる事が似てるから……私の考え方を茜くんの行動心理に合わせると、感情とやりたい事が大雑把にわかる……本当に何となくだけど……」

「なら弟君と相性バッチリってことだし、そんなに仲が良いなら嫌われるかもって不安になることもないと思うよ?弟君もりなりーの事考えてくれてるしさ?」

「でも、私……菜々さんとかすみさんに比べると、全然茜くんと仲良くないから……。もしも茜くんがみんなと縁切るってなったら、最初に疎遠になるのは私……」

「えっ、そうなの?」

 

 むしろ1番仲が良さそうに見えたけど。こう……かすかすとセッツーは友達って感じで、りなりーの時はすごい穏やかなカップルみたいな雰囲気。アタシから見ると大事にされてる感じなんだけどな。

 

「理由聞いても良い?」

「単純に出会ってからの時間と……菜々さんとかすみさんの前だと、フランクに軽口言い合ってて……。私の時だけ茜くんの気遣いをいっぱい感じるから……もっとラフにして欲しくて……。菜々さんとかすみさんだけ良いなって……思っちゃうから……」

「そっか、傷物扱いみたいで嫌なんだね。もっとノリで騒げるぐらいの関係になりたい?」

「うん……ちゃんと、友達になりたい……」

 

 多分弟君はりなりーを1番良く想っててお姫様扱いになってるんだけなんだろうけど、りなりーには腫れ物や傷物扱いに見えちゃってる。

 うーん……弟君はりなりーの事かなり好きだよって言いたいけど、言って良いのかなーこれ。アタシも告られた事は何度かあるけど恋愛自体は経験ないからなー……。

 でも弟君からすればまだ友達ですらないらしいし、だとするとなんて思ってるのかな?さすがに無関心ってわけじゃないはず。

 興味無い人に出せる距離感じゃなかったから、少なくとも大切だとは思っててる……とは思う。

 

「弟君と友達になれたら何したい?」

「いっぱいゲームしたい……教室でも話したい……茜くんもちょっとだけ電子工作できるから、色んなもの作って……一緒にコードとかUnityいじって……たくさん一緒に……お母さんとお父さんにも会わせたい……お泊まり会とかも……してみたい……表情以外にも、たくさん教えて貰いたい……私も教えたいこと、いっぱいある……茜くんの家にも行ってみたい……。小さい頃の事とか、お姉さんの事も一緒に……。だから、まだお別れしたくない……。茜くんにもお姉さんにも、何も返せてないから……」

「そっか。ひまりーと弟君にお返し出来ると良いね。でも焦ったらダメだよ?りなりーが今できる精一杯以上の無理はしないこと。ここは約束ね?」

「うん……約束……」

 

 少し心配だし、きっと今までで1番辛い経験になる事もわかってる。

 でも今のりなりーにはアタシだけじゃなくてユウユに弟君もいる。それに皆みんなりなりーのことが大好き。

 だから、りなりーも思いっきりやって欲しい。この学校の人全員と友達になっちゃうくらい全力で走って欲しいな。

 

 よーし、愛さんも気合い入れちゃうぞー。

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