虹ヶ咲ヒーローorナイト&キング 作:コントラポストは全てを解決する
夕雲ひまり。今年の虹ヶ咲学園の入学式から4日後を境に突然現れたソロのスクールアイドル。現時点の6月までに35曲をライブイベント、YouTubeで公開し、人気街道を突っ走り中。
そしてソロというフットワークの軽さからイベント連番で知名度も上がり今では色んな場所で活躍する万能アイドルとなりました。
曲調がアニソン系のものが多くて私もよく聞き入ってます。電波系アニソン調の曲を歌うのですが、歌詞はスーパーヒーローが実在した際のヒーロー側の心情を描くものが多く、軽快な音と電波なリズムに乗って英雄の夢や希望を歌うのが基本。
しかし1曲だけやたら歌詞の重い曲を披露する時があり、その時の暗さと普段の明るさのギャップを楽しむと言うのが通の共通作法。
私イチオシのフレーズは『心に残ったヒーローに 笑っていられる平和はない 救済マシンは人じゃないから そんな機会は期待外』って部分。
自己犠牲でみんなを救うヒーローとは違うアプローチ。皆の幸せの中に自分の存在が入ってないタイプとは違う、自分の存在が入れて貰えないヒーローという展開に私は泣いた。
それにこれ歌ってる時のひまりさんはすごい悲しそうに笑うから心がぐちゃぐちゃになる。しかもなんかやけにリアルなんですよあの子。洗脳されて敵になった親友を平和のために殺して来たみたいな顔。
パフォーマンス前のトークではすごく明るいのに、これを歌い出すと明るさ残したまま悲しみや寂しさを見せるからファンはアベンジャーズのエンドゲーム見てる時の雰囲気になる。
それで、この一連の流れは『エンドロールヒーロー』って言う曲を歌う時に起こります。補足しておくと普段はちゃんと明るい曲とアイドルらしいリアクションでパフォーマンスをするのでいつも暗いわけではないです。
まあ、何が沼るってやっぱりギャップですよね。エンドロールヒーローを歌ってる時が本音なのか、普段の曲が好きでエンドロヒーローは気分転換なのか。
あとは夕雲ひまりっていう存在そのものが沼。
ダンスの振り付けもライブ中もトーク中も全てが理想の女の子。歩幅から表情、イベント中でのファンや司会陣への話の合わせ方とか肯定の仕方、全部が完璧。完璧過ぎて自然体を見てるのに虚像を見ているような……言うなればアニメキャラを見ている感じ。その現実と虚構をあやふやにさせる存在の仕方が沼。
あとフィクション感が増してる原因が、夕雲ひまりの日常が分からない──という現実。主な活動範囲が都内なのですが、有名なスクールアイドルを多数輩出するアイドル名門校はどこも『こんな生徒うちにはいない』と表明しています。突然現れリアル露出はアイドルイベントだけ。あとは配信サイトで曲を出すかSNSの呟き。それぐらいでしか情報が得られない。
そんな優木せつ菜以上にリアルの存在感が不確定なアイドル。これくらいのレベルで存在証明ができなくなると人によっては美少女キャラクターと同じ扱いになるらしく、扱いがほとんどアニメキャラじみて来ます。
イラストコミュニティ大手サイトPixultでは、ナマモノにも関わらず『#スクールアイドル+名前』でまとめた各アイドルのR18作品数をランキングにて4位という頭のおかしい順位にくい込みました。
デビューから2ヶ月でこれです。さらに言えば上位3人は引退したアイドルだからどう料理しても良い状態での参戦なので、現役スクールアイドルとしては実質1位という同人クイーン状態です。少なくても1部から栄誉ではない視線を向けられています。
えぇ、まあ。正直こういう危うい面もあってかハマる以上に正体を暴くのに奮闘した感は否めません。だってもしかしたら私と同じ境遇なのかなって思ったから。自分の素性隠さないとスクールアイドルができない人なのかなって思ったから。
だから正体隠し系アイドルの仲間として1回話し合って見たかったんです。出来たらお友達にもなれないかなとかも色々考えました。
そうして捜索奮闘記が幕を開け、優木せつ菜とも中川菜々とも違う変装で街頭調査をし、都内に50店舗あるスクールアイドルのファンカフェを全て回り取材をして夕雲ひまりの正体を追っかけました。
その結果…………まさかの成果は0。さすがの私もこの時は受けたショックが大きすぎて3日間勉強に身が入らなかった。私と違って正体隠しが上手すぎる……と素直な感心もセットで入手。
その後いろいろ確執とか侑さんとのぶつかり合いもあってスクールアイドル同好会が復活し、よりアイドル活動に熱を入れる事になり忙しい身となりました。しかしその程度で推しアイドルの正体探りをやめるほどオタク魂は廃れてません。
ひとまず侑さんとアイドル研究に熱心なかすみさんに相談したんです。行き詰まったら人に聞くしかないので。
『夕雲ひまりちゃんの弟がこの学校通ってるし、ひまりちゃん連絡係やってるよ?』
『せつ菜先輩、調べものするならまず足元からだとかすみんは思うのです……』
なるほど。これが灯台もと暗し。その話を聞いたあと髪を直してメガネをかけて急いで生徒会室へ。一応夕雲ひまりさんは公開設定上の年齢は17歳なので、弟なら1つか2つほど年下なはずと踏んで一年組を捜索。
そして生徒名簿一覧から各クラスを全チェックして……見つけたんです。情報処理学科1年B組出席番号30番。名前も顔もちゃんと覚えていたのですが、まさか姉弟だったとは思わず結びつきませんでした。似ているのはそうですが雰囲気が真逆すぎる。
勢いで生徒会権限乱用しちゃったけど、便宜上は夕雲ひまりさんの学園登校に関してって事にしたから問題はないです。やってる事汚い政治家そのものですけどね。
まあ、そうして色々やったんですよ。優木せつ菜として一緒にライブしませんかってツイドリのDMに凸り、学校では中川菜々として話しかけに行って。最初の方は夕雲茜の体力試験データに不備が出てたかもって適当な嘘ついて近づきました。
そうしてなんやかんやあってライブはうやむやにされたけど、まあ……はい、結果わかったことがいくつか。
「菜々ちゃん先輩。JKが嘘発見器持ってることって有り得ると思います?」
「そうですね……まあ、情報処理学科の生徒には数年に1度おかしな発明をする程の工学マニアが男女問わず現れるので、メカやガジェットコレクションとして持ってる可能性はあるかと。絶対にないとは言いきれません」
「そっかー……」
「会ったんですか?嘘発見器を持つ女子高生に」
「多分……?結構不思議な子だった」
はい。こういう事です。無事関係を気づき夕雲ひまりの正体も判明。ミッションコンプリート──
いや…………まさか弟の夕雲茜があのフィクションヒーローアイドルの夕雲ひまり本人だとは思わないじゃないですか……。男……男の子がやってるって回答はさすがに意表を突き過ぎている……。
スクールアイドル=女子高生っていう暗黙の了解を逆手に取った大胆な正体。私も事実を認めるまでに1週間かかりました。
第1次アイドルブームにて性犯罪に走る男性アイドルがそこそこいたせいか確かに今季は男性の覇権が取りにくくなってます。
それに加えて純粋に名声も技術もゼロの無名アイドルなら女性の方がウケが良いので、必然的にその選択を取る人の比率も女性に寄って来る。男性アイドルは今じゃやるのも見るのも敷居が高いとよく言われますからね。それに一部の過激な方々には需要がないとまで言わせちゃってます。
ですが始める人がいなかっただけで男性スクールアイドルは禁止されているわけではありません。事実として今までいなかったってだけです。
それで現れたボーイズスクールアイドル第1号が優木せつ菜タイプっていう覆面パスワードと、おとこの娘属性って言うミスリードの2重セキュリティを持つなんか小さめの男児。もはや罠ですよこれ。誰が気づくんですか?
「それで、嘘発見器JKは何を目的にその機械を?夕雲ひまりの正体を掴むとか?」
「それがさぁ……初手貴様は夕雲ひまりだろって詰めて来てですね。嘘発見器で『ボクは夕雲ひまりじゃない』って言わせてジャッジしようと試みてました。勘が働く子なのか知らないですけど突拍子が無さすぎてボロが出そうになりましたよ」
「なかなかに鋭い子ですね……。なるほど、確かに茜君と夕雲ひまりが同一人物と仮定するなら嘘発見器で正体は見破れます。大丈夫だったんですか?」
「ぶっちゃけ危ないと思います。機械を偽物として扱って何とか話逸らしましたけど、多分あれ本物だし。ボクが非公認ってだけで向こうは80%確信してるはず」
うーん、ピンチ。そのうちストーカー行為などをして本格的に調査をやり始めそう。そもそも相手の目的は?茜君の正体バレをネタに脅して交際しようとかなら全力を以って潰しますが。ただの好奇心ならそれで良し。口封じの契約を結んでなかった事にします。
「やっぱり分かる子には分かりますし、茜君も私達の同好会入りませんか?そっちの方が安全ですよ?木を隠すなら森の中、覆面アイドルを隠すならアイドルの中」
「いや、あの部室めっちゃ女子高化してそうで嫌ですし、そもそも男女比1:9の時点で行く気が起きん。あと侑先輩いるから嫌」
「侑さんの何が嫌なんですか?スクールアイドルに脳を焼かれただけの女子高生ですよ?」
「スペックがおかしい。能力値おかしい人間は基本頭がおかしい。なのでシンプルに怖い。以上。Q.E.D」
「おかしいですか?」
「おかしいですよ。普通のJKは普通科から音楽科の転属試験なんて受かりませんしそもそも受けようとも思いません。いくらアイドルに協力したいからって普通そこまではしませんよ。加減しろ莫迦ってなります。受かったら受かったでその後に1週間で12曲作るなんて言う人外行動して来ますし。おまけに皆良曲。頭のネジが外れてるとしか思えない」
「そうでしょうか?」
確かに楽曲に関しては同感できる部分はありますが、普段の侑さんを見てても特段変な行動は取ってないですし。
たまにトキメキを求め過ぎて部室内を徘徊するトキメキゾンビになるのは私も怖いですけど。スキンシップが倍になるので。
「まあ、いきなり部活に入れは難しいですよね。それで確認として聞きたいのですが、そもそも先方の要望は?夕雲ひまりと茜君の関係を暴きたいのか、茜君を脅したいのか」
「おそらく脅すなんてことはしないかと。夕雲ひまりからアイドルの表現技法を学びたいって言ってました」
「……相手はスクールアイドル希望なんですか?」
「どんなライブがしたいかまでしっかり決めてる良い子でしたよ。まあ、それまでの詰め寄り方がマイナスポイントですが」
「なるほど……ガチのタイプと」
依頼を断られた時のために嘘発見器で正体掴んで交渉材料にするつもりだったのでしょうか。手っ取り早く取引に勝ちたいならお金か相手の弱み握るのが手っ取り早いですし。後の評価がダダ下がりですが。
「相手はなぜ夕雲ひまりを?表現は多種多様ですし、どれだけ指導を煮詰めても似たようなアイドルになるだけで全く同じアイドルにはなりません。何も無理して茜君を選ぶ必要はないと思うのですが。プロは他にもいますし」
「1番は表情……らしいです。夕雲ひまりみたいに笑いたいって言ってました」
「なるほど……確かに普通の笑顔もエンドロヒーローの笑顔も魅力的ですが。なかなかに強い夕雲ひまり愛」
「夕雲ひまりの笑った顔が好みとかなんとか。問題はあの子が自分の心全部さらけ出すソウルコネクトライブのためにそれをやろうとしてる事なんですよねー」
「なにか問題が?」
「いやぁ……そのー……夕雲ひまりの笑顔は姉の笑顔を真似てるだけの作り笑顔なので。それを参考に心の底からの笑顔を学ぼうとしてるあの子に教えて良いものかと……なんかこう、複雑。偽物が本物を教えて良いのかと」
「なるほど。意外と乗り気というか相手のことも考えてるんですね」
「まあ……相手も本気の心を見せてくれたので」
ここは偽物でも本物になれるという例のセリフを言うべきでしょうか?茜君の役に立てれば少しは仲良くなれるかもですし。
ただ少し文句があってですね、私の誘いや頼み事に関しては内容に限らず速攻断りますし、私との関係だって友達じゃなくて『お互いが相手の正体を言いふらしたりしないよう見張るための監視関係』って扱いですし。
それなのに件の子の時は渋りながらも師匠役として真剣に悩んでいるのは流石に妬ける。
以前に私が優木せつ菜です!ってバラした後『このままあなたが正体明かさないと泣きますよ!?』ってやけくそで脅して打ち明けさせたのが塩対応の原因なのでしょうが……。
いやまぁオタク特有のイベ以外で推しに会うと常時より感情爆発して勢いだけで詰め寄る癖が出てしまい迫ったのは謝ります。
でもやっぱり友達は名乗っても良いじゃないですか。こうしてよく会いますし、過去合わせたら20は会ってますよ?2ヶ月で20回以上の校舎裏密会は友達関係と呼んで良いのでは?
それとですね、私は正体隠し系アイドルやってるあなたのファンなのに、茜君は同じ正体隠し系アイドルである私のファンじゃないのがモヤる。ファンというかもっと近しい間柄になりたい。シンパシー感じて欲しい。それに知名度だけなら優木せつ菜も夕雲ひまりと同じくらいですし。声の可愛さとかフットワークの軽さとかは負けてますが。
あと身長だって一緒で、紺系の黒髪を持つ私と暖色系太陽オレンジの茜君で色合いもバッチリなんです。アニメだったらCP組まれてるパターン。貧乳と巨乳でネタも満載ですし。やりましょうよ百合営業。
「ちなみにその子の名前は?」
「天王寺璃奈って言います。ボクより身長が4,5cm低い小さい子で」
「…………なるほど。茜君、嘘発見器は本物ですし璃奈さんには100%正体バレてますね」
「ま?」
ああ、そういえば璃奈さんはよく夕雲ひまりのオリジナルMVやカバー動画を見ていましたね。スクールアイドルどころかアイドルの最推しが優木せつ菜と夕雲ひまりの2強って言ってましたし。なるほど、確かに表情を学ぶなら夕雲ひまりは適任です。茜君は民衆ウケする表情作りのプロですし。
茜君も茜君で別にファンを籠絡してやろうとか考えて表情を極めたわけじゃありません。少しでも夕雲茜を出したらその後どうなるか分からないので完璧に表情作ってるだけですからね。本人曰く姉の笑顔を再現するのに命賭けてるだけとの事ですが。
「璃奈さんはアプリケーション作成から動画編集CG合成、機械の修理から開発までなんでも出来る本物ですよ。機械IT問わず工業が関わったら右に出る者はいません」
「マジか……ボクがどんだけ意地張っても無駄ってことです?」
「えぇ、はい。なんなら否定し続けるともっとすごい装置を用意する可能性があります。記憶を映像化する装置とか」
「やば……」
「さっそくボロが出ましたし、もういっその事同好会の皆さんには正体を明かしてみては?入部するかは別として」
「嫌ですよ。正体明かした人が多いほどその分知らない所でリーチかけられる確率が上がりますし。信用できない」
「では、璃奈さんには嘘を押し通す形で行くんですか?」
「うーん……あの子は口硬そうだし、強制ポーカーフェイスっていうデバフ背負ってるからメンタリズム方式で嘘を見破るとかも無理なので……まあ、ギリギリ何とか。しゃーない、打ち明けるかぁ」
「……結構簡単に諦めますね。私の時は最後まで粘ったのに」
「ぎゃんぎゃん泣きわめいて強引に押し切った脳筋と理詰めで確固たる証拠出してくるインテリジェンス相手じゃ対応も変わります」
「むっ……もうちょっと言い方ってものがあるでしょう」
一応私だって論的証拠ありましたけど?私と同じでメガネのレンズに歪みとか虹色のテカりがなかったり、間近で見ればカラーコンタクトしてるってすぐ分かりましたから。
伊達メガネとカラコンなんてその手の人ならすぐ気づけます。後は私と同じ匂いがしたとかの勘になりますが。
「よし、バラすって決めたなら即行動。ちょっと行って来ます。次の会合は明明後日でよろ」
「え、あの、もう少しお話を──」
せっかく2日ぶりに話せたのに。そんなに私といるのが嫌なのでしょうか?やっぱり監視状況の確認し合い程度にしか思われてないのかな……はぁ……。
茜君に共感できるのは私だけと思うのは自惚れか否か。姉の真似をしている理由やそもそもなんで男ではなく女としてスクールアイドルを始めたのかなど、話してくれない情報は色々ありますけど。
ですがやっぱり茜君を1番理解してるのは私だと思うんです。関係も理想的なのになぜ逃げられるのでしょうか。謎です。
◇.
我、璃奈りーを屋上に招集す。正体バレてるし証拠もあるし、もし逆上された後に専門家の意見付きとかで嘘発見器のデータを公開されたら終わる。だったら素直に関係受け入れて向こうの要望飲めば良い。
そもそも曲作れとかユニット組んでお前の地位と利益半分よこせとかじゃなくて表情の練習だしな。
「夕雲くん……いる……?」
「おう、らっしゃい。とりま茶でも飲みながらゆっくり話そうか。午後ティーレモンで良い?」
「うん……ありがと……」
「それじゃあ昨日の結果からね」
「………うん……」
おうおうまた緊張してんな。喜怒哀楽はまだ分からないけど緊張だけは確定でわかるようになっちゃった。やっぱり表情とか出さなくても良いんじゃないこれ?
「まずだな……うん、璃奈りーの言う通りボクは夕雲ひまりだ。JKのフリしてスクールアイドルやってる」
「なんでバラす気になったの……?」
「生徒会長に璃奈りーの事聞いてさ。嘘発見器が本物だってわかったから誤魔化せないなって。シラを切り続けて半信半疑にしたあと有耶無耶にするつもりだったんだが、証拠上がっちまったからね。知ってるんでしょ?中川菜々」
「んっ……優木せつ菜さんの日常フォルム……」
「そうそう。で、璃奈りーの事よく知ってる菜々ちゃん先輩が言うなら信じるしかないなってさ。だから打ち明けた」
「……そっか……」
まさか発明王に目をつけられるとは思わないじゃん?今の璃奈りーがちょっと罪悪感持ってるところを見るとSNSにボクの正体載せる子じゃないってのは確信できたが。さっきまでは信じてる率65%くらいだったけどもう大丈夫。
「それで、依頼に関しては受けるよ。そこは確定。ちゃんと表情教えるって約束する。夕雲ひまりの笑顔も、その他全部も。でも1つだけ謝っておきたい事があるんだ。注意事項でもある」
「……うん……なに……?」
「夕雲ひまりの笑顔はさ、バッチクソに作り笑顔なのよ。ボクが夕雲ひまりとしてアイドル楽しんでる笑顔とかじゃなくて、本当に姉の笑顔を真似て再現してるだけなの。だからこれを教えて璃奈りーが本当の笑顔を出せるようになるかは分からない。最悪夕雲ひまりに似た笑顔を貼り付けただけの存在になるかもしれない。そこだけはごめんなさいだし注意して欲しい。クーリングオフするなら今が好機じゃぞ?」
「そんなの覚悟の上……夕雲ひまりの笑顔が、本心じゃないのは知ってる……。どっちかって言うと……エンドロールヒーロー歌ってる時の方が……夕雲くんっぽさ出てるし……」
「……まっ?ボクの雰囲気出ちゃってる?」
「あ、ううん……他の人は絶対分からない……。多分、夕雲君が私の感情読み取ってるみたいに……私も似た感じで読み取ってる……夕雲ひまりか、夕雲茜の本心かの違いだけなら……何となく……」
まーーーじか。やっぱりボクの私情挟んだ曲はダメだわ。そもそもあれはヒーローの1人も救えない一般人死ねぇ!ゴミカスゥ!って愚痴を燃料にPC叩き殴って作った曲だしな。YouTubeでもこれだけ100万再生されてるのなんでたろって思ってたけどそういう事か。ふざけんなクソが。
ボクがどれだけ夕雲ひまりを気取っても夕雲ひまりの歌を歌うより気持ち籠っちゃうんすねぇ。菜々ちゃん先輩の反応を見るに璃奈りーにしか伝わってないのは本当っぽいけど。
「璃奈りーはなんで覚悟決めたん?好きなアイドルとはいえ夕雲ひまりの笑顔トレースはリスキーすぎるぞ」
「夕雲ひまりの笑顔と……私の笑顔……混ぜて、相乗効果……ブースト……。夕雲ひまりみたいに、私も笑える……」
「なるほど」
ボクを進化素材にしていつか出てくる自分の笑顔を進化させると。夕雲ひまりは遺伝子的な扱いって事ね。なら平気かな?
「うん、璃奈りーがそこまで決めてるならボクは何も言わない。今日からよろしくってことで。それと1つお願いなんだけどさ、ボクのこと呼ぶ時は茜くんとひまりさんって呼んで欲しい。夕雲くん夕雲さんだと言い間違える可能性高いし」
「わかった……。よろしくね……茜くん……」
「おうさ。よろしく」
……うん、良い喜びの感情。笑ってないけどクッソ可愛いなこいつ。あぁ、めっちゃ煌びやかな目。素晴らしい……愛されキャラとして売り出そうぜ。
本音をいうとボクはこっちの無状態の方が好きだからこのままでいて欲しいけど、璃奈りーの願いが表情ならボクはボクのエゴは隠し通す。あと笑ったところはちゃんと見たいし。