虹ヶ咲ヒーローorナイト&キング 作:コントラポストは全てを解決する
連続でパンチする。一回の拳につき相手のIQが1下がる
3日前に茜丸に連絡入れてから今日まで、マジで死ぬほど大変だった。
りな子はもう授業以外ではうつ伏せで沈んでますし、起きたかと思えばスマホを見て10分睨めっこした後にまたうつ伏せでソファーに沈む。
何してるのか気になったのですが、会う前に1度LINEか電話で良いから一言だけ謝罪を入れたかったそうです。そっちの方が気持ちに区切りが着くからって。
しかし実際にスマホを開くと嫌われてないかが頭の中をチラつき勇気が出ないらしく、話したいけど話をするのが怖いジレンマに陥って心の中がぐしゃぐしゃになりその結果撃沈。それを一昨日と昨日に何十回と繰り返し最後は気疲れで寝落ちしました。
ここまで想われてるのに茜丸からすると友達未満の少々仲良い知り合い程度でしかないの、理不尽そのものでは?
私がりな子だったら泣いてますね。警戒心高いとは言えこれはやりすぎです。
というわけで私のカワイイジャスティスに則り茜丸の正義を打ち砕きます(過激思想)。
「かすみさん……?そのバカデカいハリセンどっから持ってきたの?あなたボケキャラ志望だったじゃん。なんでツッコミキャラしか持たないデカハリセンなんか持ってるの……?構えてるのなんで?ボクのこと殴るの……?嘘でしょ……?頭強打は絵が上手くなるらしいけど脳細胞が死んでIQが下がるからボクに取ってはデメリットが多くて…………かすみさん?話聞いてる?一旦落ち着こう?ね……?ボクだよ……?才能ある優秀な脳みそを持ってるんだよ……?IQ下げたら勿体なくない……?ね?ま、待ってかすみさん!話をしよう!優秀な知能指数を誇るボクの脳に損傷を与えるのは後世への痛手がすぎるからストップ!とりあえず紅茶しばくから話し合いを──」
「このッ!!!バカヤロォッッッ!!!!(アスランパンチ)」
ふぅ…………まさか捨て忘れてた6月のカレンダーの紙がこんな形で役立つとは。どんなものでもやり方次第ではいくらでも役に立つんですね。化粧水の空き瓶もいつか役立つかもしれない。
さてと、茜丸への制裁はこれくらいにして。何故りな子の気持ちを汲み取るのをやめたのか聞かなければ。
「まーじで痛てぇ……ガチじゃん……んで、こんな昼休みに何用じゃ?わざわざハリセンで余をしばくためだけに呼んだわけじゃないんじゃろ?」
「茜丸ならわかってますよね?とりあえずりな子の家行った時の状況から話してください」
「うーん……とは言っても、今月入ってから璃菜りーがなにか悩んでたからどうしたものかなーとしか。内容が知りたくてテキトーにメンタル揺さぶってただけなんだよね」
最初から何か深い目的があってりな子の心を無視したわけではないと。茜丸にとってもだいぶイレギュラーな事態って事ですか。
「えっと、もう少し具体的にお願いします」
「表情訓練は問題ないって伝えたから一旦そこは省いて、親御さんか同好会か開発またはITのどれかで悩んでるのかなって思ってさ。そんでとりま一番事態が軽そうな工学IT関連を攻めたんだ。AI作るから技術教えてってのと、その対価に璃菜りーのこと手伝うよって。いつもなら簡単な入門書貸してくれるとかになるんだけど、実際の璃菜りーはいきなり皆が心配するとか的外れな事言って来てさ。シンプルに『ん?』ってなったんだ」
「えっと……要約すると、りな子にかかれば当たり前に察してくれる程度の事も何故か察せなくなってたからおかしいなって思ったって事ですか?」
「そうそう。最初はマジでメンタリズム封印プレイでもしてるのかと思ってたんだが、普通にガチっぽくて。挙句の果てには『お前の友達がお前の家族レベルで心配するぞ』とか言う夕雲茜の事まったく理解出来てない底辺媚び売りスクドルの無能アピみたいな文言使いだして、『あっ、これ思ってた以上にやばいな』って結論に至った。そんで侑先輩と愛さんって方から璃菜りー周りを全部聞いて」
「つまり……最初はただりな子の手伝いがしたくて、そのついでで自分のプログラム関連をやる。くらいの計画だったと?」
「うん。いやー……まさか表情作れない程度でボクが愛想尽かすやつだと思われていたとは。上手い事AI計画を璃菜りーのお悩み発見作戦に転用出来て良かった良かった」
……なんかこの男、めちゃくちゃりな子に惚れ込んでません?惚れ込んでるというかやたら解像度が高い。知り合い程度の気持ちしか持ってないと思ってましたが、思った以上にりな子への信頼が厚い。ワンチャン告ればいけるのでは?
いくら茜丸と言えどそこまでの策を練って挑むのはもう感情的に懐いてるとしか思えないですし。菜々先輩が荒れますよ。
「一応言っとくけど璃菜りーにはこの事内緒にしといてね」
「わかってます。それで、これからどうするんですか?」
「璃菜りーに任せるとしか。焦りが落ち着くまで一旦ボクから距離を置くのでも良いし、乗り越えた上で一緒にいて欲しいって願うならボクはそれを叶えます。どっちにしろこっちはIT技術を学ぶ時間が手に入るので損は無いですし」
「めちゃくちゃクズみたいな事言うじゃないですか」
「知り合い如きに無償の愛使うのダルいんで。さすがにこれは利害の一致でしか動けませんよ」
素直じゃないですねぇこいつ……。バチくそ愛情と理解が深い作戦使っておいてまだビジネスを気取りますか。正直もう捻くれてるとか冷めてるとか超えてただのツンデレですよ?大企業の社長みたいな冷徹さに見えた気遣い。ツンデレCEO?
男のツンとか需要が…………茜丸なら普通にバえるのひっどいですね。イケメン高身長のひねくれた男子なら男のツンデレきっしょって言えたのですが。
それにこの愚痴吐いたところで『結局世の中は見た目か金』って言う茜丸の定説確証がされるだけですし。無敵の人過ぎる。
「はい。これが1連の流れでして……そんでこっからなんですが少し愚痴吐いて良いっすか?」
「手短に」
「璃菜りーの悩みを知るためにだいぶキツい接し方したのですが、推しに厳しく説教するの辛すぎてですね。心がしんどい。姉さんにはこんな厳しくする事なんて無かったからマジのマジで初めての経験でして」
「はぁ、なるほど。そもそも茜丸ってなんでそこまでりな子激推しなんです?ロリとか無表情とか探せばそこそこいますよ?」
「あー……話すと長くなるけど」
「別に大丈夫ですよ。教室戻ってもすることないですし」
なかなか聞こうと思っても聞けなかったりな子推しのルーツ。今明かされる衝撃の真実とは。
まあ声と顔と体型が好みとかそこら辺に落ち着くのでしょうけど。
相性が良いとは言えさすがに一ヶ月では自分の人生捧げられるほどの想い入れはできない筈です。茜丸も一応体裁上では利害の一致で一緒にいると自称してますし。
「あれなのよね。昔さ、無意識の顔の動きをたくさん学んでたんだよ。見栄張ってお金持ちを自称したり、ピアノコンクールで金賞受賞したとかしょーもない嘘を看破するために。そういう人から姉さんを守りたかった」
「確かにひまり先輩から騙されやすさは少し感じますが……でも茜丸のお姉さんですし」
「そうなんだけど、好みの女に自分が女より強い事をアピールしたい男がそういう戯言抜かし続けてさ。姉さんには相槌打ってもらうくらいにして対応はボクが代わりにやってたんだ。そこで目の動きとか口の端っこの動きを見て嘘かどうかと、どこをつけばコイツのプライドへし折れるか見極めてた」
「女の子にやたら見栄張りたい男性たまにいますよね。なんというか結婚したら自分は何もしないくせに文句だけはプロ級になりそうな人」
「そうそう。亭主関白とか頑固を男の優位性示したくてやるタイプ。それでね、人って個人差はあれど嘘つく時に癖を持っててさ、目を逸らしたり唇をちょっと噛んだり、人によっては身体の重心傾いたり。嘘ついてる事を隠せるかの不安を誤魔化しすために無意識にその人が落ち着く動作を取るの」
「何となく私も知識ありますよ。一番多いのは目を左に逸らすタイプらしいですね」
「そんな感じの無意識の癖を見てきてさ。とりあえずボクの中では表情以外の顔の動き、微細な変化は人がやましいことを誤魔化すためだけにあるマイナス動作って印象を持ってたんだ」
まあ、自信持っての行動でしたらもっと大振りになるでしょうし、その小さな変化?を見分けてどんなやましい事を隠してるか推測するくらいは茜丸はやっちゃいそうですよね。実際やってますし。
しかし、りな子ってそういう小さな無意識の動きすらないイメージがあります。汗かいたり顔が赤いとかはありますが筋肉を使った動きはないって印象が染み付いてる。
ですが、実際にはあったのでしょう。茜丸視点では。
「りな子はどんな動きを見せたんですか?」
「なんかもう自分の感情伝える手段として使ってて正直初見はめっちゃビビった。表情の代替手段に選んでるのに本人無自覚でさ、マイナスな事以外でこの微細表情使えたんだって衝撃受けたよ。なんだろう、絶対似合わないって服をサイキョーコーデにのし上げるセンスした服見つけた時の感覚に似てる」
「自分の想定外の事態にテンションが上がった、と。嬉しい誤算ってやつですか?」
「それそれ。正直姉さん以外の人間にそこまで価値というか可能性?みたいなのを今まで感じてなかったんだけど……実際今も人間が未来に繋ぐ可能性みたいなの信じてないし。でも璃菜りーには『この人はなんかすごくドデカい事をしてくれる』って期待を持てたんだ」
「その割には関係気づくの拒否ってませんでした?」
「こっちにも事情がありまして。それにファンとして眺めてるだけで十分だったから。でも実際は関係を持っちまったわけで。だったらもう璃菜りーの傍で気が済むまでおもしれー景色見続けてやろうって思ったんだ」
「りな子は茜丸の知らない何かを教えてくれる可能性を秘めてると」
「それができるのは天王寺璃菜だけで、璃菜りーと同じ属性を持ってるだけじゃダメなんだ。……これがボクの璃菜りーを推す理由。まあ後は姉さん以外で初めて性癖に刺さったってだけなんだけど」
うーん……深いような深くないような。人間不信の自分に人を信じる理由をくれたとかそういうのとも違いますし。
茜丸が見てるのは既存の人が持つ可能性ではなく、りな子が見せてくれる規定の枠から飛び出した新しい可能性。りな子を起点に進化するみたいな期待があると。
一言で言うならりな子にデレてるで片付くのですが。
「あとはそうだな……人のためだけに怒れるところが面白いと思う」
「それって当たり前の事じゃないですか?」
「怒るって本来自分に降りかかった不利益に嘆いて鬱憤撒き散らすだけの行為だからね。正直ボクは出来る事なら怒りの感情を人間から消したいって思ってた。自分も相手も周りも嫌な気持ちにさせる終わるだけでしよ、怒りって。おまけにこれを政治規模でやったら余裕で戦争が起きる。だから無駄で邪魔」
「りな子は100%茜丸のことを考えて怒ってると?」
「いや、別に自分の鬱憤も入ってる。入ってるんだけど、その鬱憤が『私の心配を聞いてくれない茜くん』じゃなくて『忙しいくせに休まない茜くんが心配だし助けたいけど助ける力を持ってない自分』って言う部分に鬱憤貯めるから、普通に怒っただけで自動的にボクを心配してるって言う状況が出来上がる」
「えっと……つまりどういう事ですか?」
「自分のために怒ってる状態と他人を想って説教してる状態が一緒に襲って来るから面白い」
う、うーん……よく分からない……何となく感覚では理解出来るのですが……。こう……相手に不満があるけど結局はそれを止められない自分にキレてる……って感じでしょうか?怒るまでのエネルギーを相手で貯めて、でも発火する原因は自分自身。
「璃菜りーと一緒にいると人間の知らない部分が見れる。さらにそこから無表情キャラが笑う瞬間、工学関連、ゲームの知識、色んな技術や心の栄養が摂取できてお得。ギミックありまくりでプレイバリュー厨のボクとしては大満足なわけですよ。おもちゃだったらグッドデザイン賞あげてた」
「……別にりな子自身を推してるってわけじゃないんですね。能力面だけというか」
「そうは言っても璃菜りーって属性の擬人化というか、能力の概念が服着て歩いてるだけって言うか。『天才理系の無表情ロリがデレる』のをやるだけで大抵の男は沈むよ?バチくそやばい個性。一流エンジニア級のプログラミングができる無表情属性の合法ロリとかどこ探しゃいるんだって話だ。見つけたとしてもデレさせる方法がわからん。属性一覧とその組み合わせの多さなら無類の強さを誇る。人間はどこかに自分の上位互換がいるけど璃菜りーはただ唯一の別枠謎テクコンテンツ。人類個性のシンギュラリティなんだよ。戦国時代にガンダムが出てきたみたいなもん」
「なるほど……だいぶ茜丸の主観意見な気がするのですが、今言ったのも毎度おなじみ俯瞰視点から見たものなんですか?」
「えっ、そこら辺は意識してないから知らん。別に主観だろうが俯瞰だろうが属性界隈のオンリーワンなのは変わらないし。正直アイドル用の道具としてボクを堕とせるのは後にも先にも璃菜りーだけだと思ってる」
ひまり先輩は茜丸と一緒にアイドル道進んでるので正しくパートナーだから天界の関係。それはそれとしてりな子なら依頼金額問わず茜丸を自由に使う権利を勝ち取れる可能性があると。
今まで数多のスクールアイドルが茜丸と専属契約をするために猫なで声で擦り寄ったり、就活面接並のガチプレゼンしたりと策を巡らせ撃沈し続けたのに、りな子ならそんな茜丸を堕とせると。
どこかの18歳越え地下アイドルでさえプライド捨てて依頼して来たレベルで頭のおかしい技術を持つ茜丸を?
りな子にベタ惚れ過ぎてお腹痛くなってきた。やっぱり職人捕まえるには才能見せるのが一番なんですね。こういうのってだいたい金積めばいくらでもやってくれる印象があったのですが……まさか本当に利益を捨てて自分の拘りを突き通す匠がいたとは。
現実じゃ生活かかってますし、「自分が認めたやつにしか刀は作らない」とか言えないのでずっとフィクションだと思ってました。こだわりはあるのでしょうが視聴率のためにかっこよく膨張されただけの存在だとばかり。
「まあ、璃菜りーが懸念してる全く表情が育たないって事態が起こるなら表情がなくても人と心が繋げられるライブの仕方考えるし、ぶっちゃけ個人的には璃菜ちゃんボード使ってる方が必死さ伝わって来て推せる。璃菜りーの一番大好きな友達が必死に考えてくれた大事な気持ちいっぱいのボードらしいしさ。でも、璃菜りーが頼ってばかりの状況から抜け出して自分の底力で頑張りたいって言うならこっちも出来る限りの全力は出す。きっとお友達さんも璃菜りー自身の力で人を動かせるって意味の自立を望んでるはずだし」
「だから茜丸もめちゃくちゃ頑張る、と」
「推しのためなら犯罪と迷惑行為以外なんでもやるのがドルオタなので。正直ボクからすると『交流を通して相手の事を知り、その先で初めて推しにする』って言う経験させて貰った時点でだいぶお釣り出まくりなんだけどさ。だから最低でも76%くらいは還元したい。あと要望なんだけどりなちゃんボードの表情資料集とか出してくれない?あれめっちゃ可愛くて好きなんよね。めちゃくちゃ書き慣れてる丸みを帯びた絵文字を見てると脳内の矢木に電流が走る」
「…………なるほど」
アホみたいに好きじゃないですか。これでもまだひまり先輩への愛には届きませんが。でも付き合うなら十分幸せになれるレベルです。
おそらくりな子を参考にして茜丸に刺さる能力……属性?を分析すれば第2第3のりな子が…………りな子とは別の全く新しい個性とか無理じゃないですか?
太陽側の明るい個性はひまり先輩で決まってて、月側はりな子が埋めました。もう太陽系外から新しい衛生か恒星持ってこないと不可能ですよこれ。しかも茜丸って言う地球を動かすには最低5個程度の何か刺さる機能を用意しなきゃ行けない。さらに言えばドラゴンとかユニコーンを差し出せばいいのか、ひみつ道具張りの科学力見せつければ良いのか、正直何が正解なのか分からない。茜丸すら自覚できてない何かを刺激しなきゃいけないので無理ゲーが過ぎる。
「これが1連の流れとボクの現在の心情。とりあえず璃菜りーの様子がおかしかったから様子を見て──」
「?……どうしました?」
「んや、LINE来ただけ。前にポム先輩のメッセージ結構放置しちゃった事があってさ、だからバイブレーションの強さ上げたのよね。ちょっとだけ良い?」
「大丈夫です。誰からですか?」
「えっと…………璃菜りーだね。放課後のことでうんたらかんたら」
「おぉ、タイムリーですね」
家に来るなら一緒に帰りたいとかご飯どうする?とかでしょうか。もしかしたらお泊まり……なんて可能性も。正直何かの弾みでキスするくらいの事はして欲しい。茜丸を分からせるにはこれくらいしないとダメですからね。
「帰りのことですよね?両親いるけど大丈夫かとかですか?」
「いや、家来るの今週の土曜以降に変更して欲しいってさ。『空いてる日決まったら教えてね』……っと」
「は?」
「えっ?」
なんですかそのキョトン顔。えっ?なに?まさかこいつ、ここまで語り明かしたあとの明らか事件性のある何かにスルーを決め込むつもりでいる……?マジ?
「いや……どう見ても何かあるやつじゃないですかこれ。さっき散々りな子愛語ったんですからもう少しやる気出しましょうよ……」
「これに踏み込むのって菜々ちゃん先輩の留学止める時と同じくらい身勝手な行為だと思うだけど。あと相手が嫌がってるのならちゃんとやめる。推しとか関係なく人間として当たり前の事だぞ。会えないならまた会える日まで待つ。距離を起きたいならクラスメイトAを演じる。彼氏出来たから付き合い考えたいって言うならクラスメイトBに徹する」
「いやそうですけど……そうなんですけども……!!!もっとこう……あるでしょう……!何があったのか今すぐ聞きたいくらいは……!!!」
「どうせ後で知れるし別に焦る必要ないっしょ。急がば回れって言うじゃん?あと璃菜りーのメンタル整ってない状態で会ったって泣かせちゃうだけだしね。そんなクソウザテンプレ主人公ムーブしたところで手に入るのは『ヒロイン救ったった』って言う自己満足と神経伝達物質のオーガズムだけよ。時間の無駄」
「しかし……りな子にとって茜丸はこう……王子様とか主人公同然ですし……茜丸だってわかってるはずです!」
「ボクはこの世界で可愛さを牛耳る厨二病お子様キングですが、別に主人公ではありません。きっとどこかの次元の生物には3次元もフィクションに過ぎないでしょうし、かすみさんや璃奈りーをアニメや漫画の見すぎとバカにするつもりもないです。今の時代2次元オタクの文化は肩書きファッションの華だからね。それにラブコメの理解者としてもかすみさんは正しいよ」
「そこまで肯定してるなら微量で良いから動きましょうよ……このままじゃ茜丸が口先だけのクズになりすよ……?」
「それはそれでまた味があって良さげしゃない?クズ系がボクに付与されるなら今の関係バッサリ行けるかもだし」
味ってなんですか味って。この状況でよくそんな呑気な事が言えますね。りな子の事なんだと思ってるんですか。
いやまぁ大事にしてるとは思いますが、私の目を以てしても今の茜丸は実験ラットを見る冷酷な科学者にしか見えない。
「ほら、さっさとりな子のとこ行ってください。きっと待ってますよ?それに皆も茜丸の助けを借りたいはずです」
「ラブコメ展開的には確かに『本当は止めて欲しい』パターンだけど、今必要なのはラブコメの理解者じゃなくてヒロインの理解者なんだよ。ボクが望むのは璃菜りーの理解者を気取ることであり展開の整合性なんかじゃない。たまにはキャラの気持ちも考えないとまともに物語が語れなくなるよ。あとぶっちゃけるとボクみたいな可愛いくて守られるだけの弱小ガイジ生命を頼るならまだしも縋るとか甚だ解釈違いなんだよ。璃菜りーが初詣くらいしか礼拝信仰しない日本人のご都合神頼みみたいな真似するわけないだろ」
「相変わらず性格悪いけど怒りづらい……!!!!!」
くっ……なんか微妙に自分の事も貶してるから責めにくい……!理屈わかってるのに殴れないのほんとバグでは。よくこんな性格がクソ悪いどころか話術で世界を征服しようと企む悪逆王みたいな理論発見しますよね。
ネットの知識らしいですけど本番で使える度胸には感服しますよ。しかも使用相手は茜丸の中では一応可愛い判定を入れてる女の子。
もしここがクラスか同好会の部室で、私が計算高い女だったら声を少しだけ抑えつつ涙を流し周囲を味方につけて茜丸を攻撃していました。
計算高いというか男の同情買うためのずる賢さに全振りしたパパ活スキルなのですが。
正直これ使うと私の中の可愛いランクが下がるから使った事ないんですよね。下がった挙句ブサイクゲージが上がるからデメリットしかないです。
加えてかすみんゲージ『キモい』が満たされるのでゴミの中のゴミスキルですよ。私が誇るカワイイのプライドが許してくれない。
話が逸れた。
「まあ、究極言っちゃうと璃菜りーが多少苦しんだところでボクやカスミ節にはなんの被害もないですし。だからラブコメ作品としても傍観が一番だよ。おそらく何もしなくても侑先輩か愛さんパイセン辺りがフォローしてくれる。ポテチより薄い女の友情、どこまで厚くなるか見てみたくない?」
「…………いくら笑い方が終わってるからって悪役ロールプレイを極めなくても良いと思いますよ。何も知らない人が見たらきっと殴りかかります。前から思っていたのですが、ひまり先輩に何か言われないんですか?」
「演技力なら誰にも負けないので。ボクは姉さんみたいにまっすぐなヒーローにはなれないし、そもそも力がない。一般人がヒーロー気取ったところで、待っているにはごっこ遊び扱いで笑われるか憧れに近づくことすらできない劣等感で闇堕ちする結末だけ。それと悪役だって悪いことばっかじゃないんだよ?一般的正義も同調圧力も気にしなくて良いし、気に入らないものを殴っても悪だからで皆諦めてくれる。あとはヒーローに成敗されるまでは自由に生きてれば良いだけの楽な仕事。報酬は心の中の爽快感」
「……………………そうなると茜丸の人生はクッソ短くなるってことですけど良いんですか?」
「何となく70歳くらいで寿命迎えそうな気がしてさ。100年生きた人にはボクの人生は短く見えるでしょ」
「……そうですか」
やたらと死相漂わせる演技上手いですね。正直可愛子ぶりながら泣かれるより効果があってタチが悪い。男らしくないって言えばそうですが、茜丸らしさは感じてしまうので理解者を名乗るなら目を瞑るべきなのでしょう。
今までひまり先輩は本心でなんて思ってるのかなって度々考えてたけど、茜丸が猫被ってるって回答を得て解決しました。表向きは。
これあれですね、ひまり先輩は茜丸のこういうところも含めて溺愛してます。茜丸がワルぶるのはひまり先輩のためって妥協してるんじゃなくて、マジで『愛情』として受け取ってる。
茜丸のことは全部わかるからって言うシンプルな証拠で受け入れた。私やりな子以上に茜丸を理解ってる。これが姉ですか。
えぇ、まあ、さすがに今回はガチの拳を発動しかけましたとも。もちろん茜丸の理解者にはなりたいですよ?でもそれ以前に私はりな子の友達なんだよ。
茜丸がりな子の理解者として不干渉で見守るって行動を選んだなら、私はりな子の友達として勝手に行動します。
ああ、なるほど。別に理解者気取ってりゃ良いってわけでもないんですね。言葉の耳あたりは良いですけど、どちらかと言うと精神科の先生みたいな客観的な理解しかして貰えない。自分の価値観で『どうにかしたい』って正義を働かせて動くならそれはもう『友達』の領域ですし。
茜丸は一貫してファンや知り合いで関係を通して来た。
どこかで見た在り来りなクズ人間にある散々仲良いアピールしてたのに、いざ事があったらチキンと面倒くささで相手を切り捨てるみたいな選択は取ってない。
理屈上では何も間違いはないですね。この状況と茜丸の話を聞いてなおりな子が可哀想って声を上げたら、『相手に同情してる素敵な自分』を見てもらいたいだけの自尊信者に見えちゃいます。
そんな偽善にすらならないザコい正義感なんて茜丸の良い餌になって終わりです。
だからここは正直に『私の友達助けてくれない茜丸とかマジどこからも切れないマジックカット。大っっっっっ嫌い』で良いでしょう。
いつも通り私の正義に則りバカ正直に生きるだけで解決でした。
「茜丸の意見はわかりましたよ。理解ある彼くんを演じるならそれで良いです。はい。茜丸がやりたいようにやるなら私も諦めて自分のやりたいようにやります」
「うん、よろしく。とりあえず中須カスタマーセンターでも開いてあげて」
「かすみん相談教室で良いじゃないですか。あと滅茶苦茶にイラついたので1回殴りますね」
「はい?」
茜丸のIQを6個下げた。スッキリ。