虹ヶ咲ヒーローorナイト&キング   作:コントラポストは全てを解決する

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25.ボクは君の剣(倫理観が死んでる)

 助けて。知り合いの女の子の家泊まったらセクアピなのか添い寝すれば良いだけのかよく分からない状態になっちゃった。璃奈りーの表情もどっちとも取れる感じだから分からない。

 微細表情と現状から見たボクの予想からでも、璃奈りーの感情は『襲われても良いし一緒に寝るだけでも良い。一緒に寝る時は添い寝が良い』って言ってる。多分その内こっちの布団に入って来て良いか聞いて来ると思うぞ。

 

「あの、璃奈りー……?後でこっち入るだろうなってのは予想してたけどさ、初っ端から入られるとおじさんドキマギしちゃうと言うか……」

「入る予想出来てたなら……受け入れる気は最初からあった……私が来ることも知られてる……。だったら、最初から入らないと損……」

「布団2組用意したのは?」

「カモフラージュ……1つだと、茜くん絶対ここで寝てくれないから……」

「そっすか……」

 

 なんか懐かしい感じがするなと思ったらあれだ。初めて会った時の『積極性・極』で迫ってくる璃奈りーと同じなんだ。

 なるほど、あの時の『どんな反応されるか分からなくて怖いけど、後がないから頑張って話す』時と同じ心持ちで来てると。

 

 と言うことはまだマイナス方面の話題隠し持ってるな?

 

 それはそれとして布団の中で女の子と向かい合わせはダメな気がするから背中向けるけども。話はそれからだ。

 

「茜くん……ちゃんとこっち向かなきゃダメ……」

「いやでも一応ですね、万が一の事も考えてですね」

「そんな簡単に茜くんが……女の子襲うわけない……。あと、おちんちんおっきくしちゃうくらいなら、スルーできる……」

「いやー…………もうちょっと自分の体大事にしよう?」

「茜くんに言われたくない……」

「いやこれはベクトルが違うじゃん……。こう……ボクのは自分から苦しみに行ってるけど、璃奈さんのは受動的に負わされちゃう痛みというか」

「私のせいで茜くんが倒れるなら……それは茜くんが私から、受動的に押し付けられた苦痛……。だから一緒……。それに、私なら1つ命が増えるけど、茜くんだと命が1つ減る……どう見ても茜くんの方が悲しさ大きい……」

「確かにそうなんだけどさー ?ビジネス結婚とかダメくない…………いや待てボクも避妊の概念くらいは知ってるが?そこまで無知じゃないぞ」

「万が一……ある……」

 

 何この子、覚悟決まり過ぎてて怖い。ボクが傷負う覚悟はできてないのに自分が苦しむ覚悟だけガンギマってる。いやボクも璃奈りーに倒れられたら嫌だけどさ……。風邪引いた時とか確実に学校サボってここ来ちゃうだろうし。

 

 もしかしてあれ?自分の好きな人が外傷覚悟で嵐の中を突き進んでる気分はどうだ?ってこと?

 その分からせをするための身体の張り方がボク以上に無茶してるんだが。これブーメランに入りますかね?

 

 はぁー…………入れ込みエグ。性格が劣化するのは確定だけど、容姿ならボク以上がゴミほど蔓延ってるのに。初めて出会った相性の良い男って印象で釣ってるだけだし、目を覚ませばこの先いくらでもボク以上が出てくるはずなんだよ。ガチ恋で推してるだけのボクより将来見据えて璃奈りーのこと考えてくれる人がさ。

 なんか初めてだからって思い入れの強さを利用するの、無知に付け入るみたいで乗り気になれないんだよな。

 だから……うん、やっぱ向かい合わせはダメだわ。いくらボクが可愛いとは言っても男女の区分はしなきゃダメ。

 

「ボク達はカワイイ上澄み人間以前に異性同士であり、生物としての観点から見れば交尾したら子孫できるんですよ。そんで人間は男が興奮しやすくなっていまして。あんまり劣情するのは……というわけで背中に回した腕離して貰っていっすか?あと顔近くない?ボクの口臭平気?」

「大丈夫……。離すのはダメ……」

 

 ちっ、大丈夫って返事だけなら合意とみなして背中向けられたのに。やっぱりこの程度は読まれちゃうか。チキンデバフが外れた璃奈りーほんと手強いな。

 というか少しだけ慣れて来ちゃったし諦めるか。いい匂いするけど別にボクも同じ匂い出してるし特に興奮するとかもない。

 向こうも乱暴する気がないなら意地張ってないでさっさと寝た方が吉。璃奈りー寝かしつけた後にこっそり脱出すれば万事解決オールOKだわ。

 

「はぁ……璃奈りーが大丈夫ならボクも口を出すのはやめるよ。さっさと寝て明日寝坊しないように気をつける」

「んっ。じゃあ、スマホ充電するから出して……」

「はいはい」

 

 璃奈りーの部屋って広いから延長コード伸ばさんと枕元に充電器持って来れんのよ。ベッド付近は備え付けがあるんだけどさ。今は布団だからね

 でもやっぱ考えることは似てるからかオフタイマー挟んでるのは同じなんだよな。ボクはAmazonでこっちは自作だけど。

 過充電の歴史知っちゃうと大丈夫になった現代でも気づかうよね。一応満了充電に給電し続けるとリチ電にダメージ入るのは今もあるし。

 

「あっ、目覚まし消し忘れた………璃奈りー?何してるの?」

「茜くんのスマホの目覚まし切ってる……」

「いやそっちじゃなくて。一緒に準備してるその透明な箱なに?横に穴空いてるけど……ゴキブリホイホイ系?」

「箱の中にスマホ入れる……」

「はい」

「横の穴から充電コード入れて、スマホに刺したら箱の蓋を閉じる……」

「はい」

「蓋にロックをかけて……解除キーは私が持つ……」

「はい…………はい?」

 

 レクチャー受けてたら流れるようにボクのスマホが封印されたんだが?しかも首にかけた鍵はパジャマの中に入れちゃったし。これ取ろうとしたら事実上の夜這いじゃないか。

 

「いや、何してるの……?LINE出れないじゃん……かすみさんとかみゃー子から1時ら辺にLINE来るし返さなきゃなんだけど」

「そんなの寝てたって返せば良い……。普通は寝てる時間……」

「地震来た時どうするん?」

「充電器外すのは変わらない……外した後、まとめて持ち運べるからむしろ効率良い……」

「で、今回の目的は?」

「茜くんからネットを奪うため……。私が寝た後……絶対抜け出してスマホやる……。4時辺りまで、ゲームの作り方からJava入って……調べて……やる……絶対……」

 

 んー、恐ろしいくらいボクへの解像度が高い。風呂前にプログラゲーム漁ってたの見られてたか。パターンロックもその時バレたんだろう。明日変えとこ。

 今回はさすがにやり過ぎだと思うから抗議させて貰うぞ。

 

「璃奈りー、いくら仲が良いからってやって良い事と悪い事があるよ。人の物は勝手に封印しちゃダメ」

「じゃあ、ちゃんと寝るって……約束できる……?」

「出来ない。やりたい事のために一刻も早く言語の知識がいる」

「AI作って……どうするの……?」

「売りつける。欲しい物がクッソ高くて買えないからそのための資金にする」

「それは……夕雲ひまりに必要……?茜くんが無理してまでするほど、価値ある……?」

「あるよ、死ぬほど。遊びでも仕事でもない本気の何か。これをやり遂げたら死んでも良いってくらい死ぬ気でやってる。夕雲ひまりに関しては無関係だけど」

 

 やっぱりボクがITエンジニア化する事をまだ受け入れきれてないっぽい。心配って言葉は使えないしハテサテどう出るか。

 ボクが倒れて璃奈りーになにか損があるのか、それともただ自分が悲しい気持ちになりたくないだけか。はたまた自分には止める力がないからとボクのスタートを阻んでるだけなのか。

 この際だから何をどう怖がってるのか聞いてみよ。

 

「このままやってもただの痴話喧嘩だし、寝落ちするまでのトークネタにして話そう。っとー電気電気……」

「…………茜くんは、自分の事……」

「フライングしないの。ほら、おいで」

「……うんっ……」

 

 スマホを封印したからかハグ体勢は取らなくなった。相変わらず同じ布団なのは変わってないし腕回した時より距離近いけど。いや近いって言ってもさっきに比べて1.5cm接近したくらいの違いしかないけどね。でも近いことに変わりないし。

 

「じゃっ、ロジカルに行こう。璃奈りーが求める情報は?」

「どうしてそんなに……無茶しようとするのか……自分の身体、生活、大切にしないのか……。お姉さんが同じ事したら、絶対止めるのに……」

「そうだね。きっと止める…………んー、ここで誤魔化すのは違うか。うん、あんまり重くならないように話すよ。ボクと姉さんの1部を話す」

「良いの……?」

「良いよ。あと、少しだけ生々しい部分があるからそこだけぼかすけど良い?」

「うん……」

 

 あんまりやりたくなかったが仕方ない。トラウマ話してヒロインの同情誘う作戦を決行しよう。

 もう璃奈りーの気持ちを治めるにはこれしかない。正直可哀想って思われるのは嫌だけど、人は自分の幸せの基準より下に生きてる人間見ると落ち着くから。非常時にパニクってる人見ると落ち着くのもここら辺が関係してるって言うし。あとこれ自体は悪い事じゃない。

 

「そうだなー……まず、ボクと姉さんが掲げる共通の願いに『2人一緒にアイドルの景色を見る』って言うのがあってさ。姉さんが表担当、ボクは裏担当。これで表裏一体のアイドル。姉さんだけの夢はアイドルで皆に笑顔を贈るヒーローになること。ボクの夢は姉さんの存在を世界に知って貰う事」

「でも、今は茜くん1人……」

「うん。母親関連で少しね」

「お義母さん……?」

 

 病名まで言って良いのか分からないが……言わなきゃ進まないし、明日帰ったら電話で事情話してごめんなさいしよう。

 

「うつ病っていうか、精神疾患を患っちゃいまして。うちの母さんさー、感受性めっちゃ豊かで人の心の風感じるのが上手いんだよ。上手いっていうかそういう能力みたいな。相手の話と人柄を覚えたらその人の立場で考えて、どんなアドバイスをしたら良いか考える人。例えばNOが言えない人がいたとして、その一瞬にかける迷惑より、NOが言えなかった時の相手の被害と迷惑の大きさを教えて、上司のために頑張ってみようってアドバイスしたあと相手の職場に突っ込んでお互いもっと気遣ってって言いに行ったりする感じ。その後NOが言えない人がNOって言えるように頼み事断る練習したり、仮に怒られたら夕雲さんの奥さんは怒りませんでしたって実例になったり。そんな人」

「…………人のネガティブ感情とか、汚い感情を受け入れちゃいそうなお義母さん、だね……」

「受け入れたよ。でもそれは相手の立場になったら自動で入って来るから止められない。それでも母さんは色んな知り合いの相談に乗って、助けて、たまに上手く行かなくて一緒に反省したり、沢山たくさん積み重ねて、最終的に自宅療養が必要なくらい病んだ」

「皆、心配したり気遣ったり……しなかった……?それとも、スマホみたいに……なった……?」

「スマホ√だな。便利なスマホが電池消費速くなったり画面にちょっとひびが入った程度で手放されないのと同じ状態。ちょっと言葉で気にかけるけど使うのは辞めない。母さんの都合の良さと便利さで生活水準が上がった人達は、自分1人で苦労して解決する知恵を忘れた寄生虫になった」

 

 母さんは優しいからなるべく断らないんだよ。体調崩したとかボクや姉さんの親が来訪できる行事の時以外は絶対断らなかった。あと華道の講師で手助けするのに慣れてたし日常化してたから余計に悪循環。

 正直それでも断る頻度上げてくれって思ってたけど、今思うと断ったらあからさまにガッカリしたり若干機嫌悪くなったりした相手に罪悪感覚えちゃってたのかなって思う。やはり人間とは愚かな者ですね。特に母さんの知り合いと姉さんの親友。

 

「それで療養のために実家にいるんだ。長崎。姉さんもそっちにいる。んで、母さんに加えて子供2人とか普通に世話大変だからさ、家事力高い姉さんに母さんを託してボクは父さんとこっちに来た。めちゃくそなタイミングで父さんの事務所が『東京行けー』って辞令出して」

「それで……お姉さんと離れ離れ……」

「要約すれば良い人が良い人らしく健常者のがめつさを浴びて損をしましたって話なんだけどさ。まあ被害者のこっちからすると恨みで各家庭に放火したいくらいの鬱憤は売られたわけで。いや恨んでるのボクだけなんだけどね?夕雲の奥さんがいなくなったからちょっと不便ねーみたいな意見がなかったのが少しの救い」

「そっか……。でも、あんまり気分、良くない……。人の楽をしたいって部分が……悪い風に働いてる……」

「人間らしくて好きなんだけどさ」

 

 まあどうせ女の事だから聞こえないどこかで『夕雲さんいなくなって快適さ落ちた。早く戻って来ないかなー』とか何とか言ってるんだろうな。『よくよく考えたら勝手に足突っ込んで勝手にいなくなるの少しあれだね』みたいな会話もしてるかも。性格おかしいせいで病んだ不幸な人に仕立て上げて自分の幸福ゲージを上げてるはずだぞ。

 さすがに冗談だけど、仮にいるならそんな終わったお育ちの女に捕まった旦那さん可哀想って同情する。何度か頭の中で旦那を寝取るプランも考えたよ。

 でもこれを考えてた時にボクを察した姉さんがすごい叱ってきたんだよなぁ……妄想でもやって良い事と悪いことがあるよって。

 

「そんでこっからはボクの身勝手になるのですが。姉さんいないしずっと姉さんの傍にいた手前ひとりだとすることがなく。なので手始めに食事を作り料理の研究を始めまして。そのまま学校で自分の作った弁当食いながらツイドリに載せた自撮りのリプ見てたら流れてきたんだよ。『茜さんの笑った顔って女の子みたいで可愛い』って。はい、矢木電しました」

「…………お姉さんの存在を世界に知らせるって言う自分の夢を、自分がお姉さんになって叶える事にした……?女の子っぽい笑顔も作れるから……」

「一応体裁としては仮みたいなもんよ?母さん関連が全部片付いたら引退しようって決めてる。そのための前座。世界で2番目に可愛いボクを客に擦り付けて、そのあとに上位互換である姉さんをぶつける。夕雲ひまりが実は男でしたってショック受けてたら上位互換の女が出て来るんだ。みんな手のひら返して姉さんを崇め奉るぞ。最高でしょ?」

「茜くん……それで良いの……?なんか……違う気がする……」

「これで後任が見た目全然違うとかならアレだが、出てくるのは姉さんなので目を瞑ってくれるとありがたい。許可も取ってるので許してヒヤシンス」

 

 よし、璃奈りーの曇り顔がボクの重い過去で緩和されて来たぞ。やっぱりシリアスに困ったらテキトーに死ネタぶち込んどきゃ良いんだよ。

 けど、改めて口から話すと結構心に来るね。限界寸前の明らか辛いはずなのに子供の前では笑ってた母さんを思い出してしまう。

 何も出来なかった自分が許せんとか許しを乞う気とかないけど、無力は罪だと学んだ。力無く何も出来なかった自分が許せんなら鍛えりゃ良い。後悔してたら病んで終わりだし時間の無駄。

 

「姉さんがいつも皆の心にいるよう沢山頑張っていたい。確かに加減しろ馬鹿って自分でも思うところではあるけど……夢なんだ。だからごめんね。多分璃奈りーもさ、ボクが頑張っても評価されるのは姉さんで、ボクの存在がなくて虚しい──みたいな事思ったことあるでしょ?でもボクが目立つ部分も準備してるし、報われる準備もしてるから安心して欲しい」

「茜くんが良いならいい、けど……まだ、少し納得出来ない……。結局AI周りの理由……聞けてない……」

「今の話からすると絶対しょーもなって思われるけど……聞く?」

「聞きたい……」

「単純にボクがボク単体のわがままでやりたいって思っただけ。璃奈りーとの関係も自分の中の姉さんを守るためにやってたけど、今やってるのは死ぬほど欲しい物が出来たから……なんだけど、璃奈りーが聞こうとしてる『欲しい物の内容』が何かと聞かれると正直ボク自身も上手く答えられない」

「その欲しい物で、何ができるの……?」

「荒んだボクの心に撒くモンスターエナジー」

「肥料って事……?」

「そんな感じ。だからどれだけ止められてもやめる決断は取れない」

 

 正直びっくりだよ。まさかボクが自分の物欲のために突っ走るとは思わなかった。こんなにわがまま振りかざしたのは小学生以来。今まで自分勝手に生きて来たけどビジネスだったせいかどうしても利害って言葉が離れなくてさ。

 なんだろう、趣味?で良いのかなこれ。やっと男らしい趣味が見つかった気がする。プログラミングだぞプログラミング。IT。確実に人手不足な世界だし就職って目的果たすだけなら楽勝スキルよ。そのあとの酷さは見ないものとする。

 そういうわけでボクは誰にも邪魔されたくないんだ。これを終えたらボクはまた一つ知らない何かを知れるから。

 

「そういうわけだ。何か見解ある?これで止めたら嫌われるとかは思わなくて良いよ。本心聞かせて?」

「…………正直に言うと……まだ怖い……。このまま茜くんの行動を黙秘して……何もしないで、倒れたりしたら、私は悲しい……何も出来なかったって後悔したくない……だから、今できる事を全部したい気持ちはある……」

「心配?」

「心配……は私の本心じゃなかった……。仮に心配をしてるなら、それは茜くんにじゃなくて……私自身に受けたやつ……。茜くんの事、気にかけてるつもりで大したこと出来なくて……それで茜くんを失う私の未来……。でも、それは心配じゃなくて不安だから、結局本心じゃない……。それに茜くんの理論に合わせるなら……辞書に載ってる意味での心配を出来る人はこの世にいない……。それを理解しないで、茜くんから離れるのが怖くて……嫌われたくない気持ち隠して……心配を語った……。そんなの、茜くんの事なんにも分かってないから……絶対に言葉は届かない……」

「焦ってド忘れてたんでしょ?ボクとの接し方。人は自分勝手で、自分を守るために何でもする。仲間と協力するのは自分を守るために役立つから。利害関係が基礎であり、自分勝手に生きるために人を助け人に協力する。それがボクの掲げる人間らしい絆」

「うん……ちゃんと思い出した……。でも、それでも私は……茜くんが体を壊すことだけは許せない……。自分自身、許せなくなる……」

 

 過保護だなぁ……。はぁ、またそんな顔して……この子やっぱ真面目過ぎるんだよなー。

 正直ボクの自論とか文系に話したら『知らん!人は人を想うからこそ強くなれる!』とか一蹴されてキャンパスからほっぽり出されるぞ。一般の文系の話だからちゃんと文芸賞取る人に話せば取り合ってはくれると思う。

 そもそもあの人たち春が来て雪が解けて地面に日が当たり冬眠から虫も爬虫類もネコ科のあいつも目覚めて食物連鎖の循環が始まり、地球の公転のおかげで気温にも恵まれて、そこから色んな作物が収穫時期を迎えるっていう''雪が解けて豊潤が広がるクソ広大な美術''を『雪溶けしたからポカポカして来たねー。春だー』で済ますからな。

 なんて言うかさ、もっとこう……あるじゃん?アリとアブラムシがてんとう虫に対抗してたり、越冬女王バチが小さな巣を作ってるのを見て微笑ましくなったり、側溝にカナブンがひっくり返っているのを助けたり。

 あとは冬眠明けで今まで会えなかった自分と同じ『動物』って括りの生き物に会える懐かしさとか。

 

 あるじゃん?ない?あっ、ない。そっすか……失礼しゃした……。

 

 話が逸れたがとりま璃奈りーはもう少しアホになった方が良い。考えすぎでいつか病みそう。もっと単純に自然体でいれば良いんだよ。弱肉強食みたいなシンプルさくらいが調度良いんだ。

 

「ボクのこと、そんなに大事?」

「大事……茜くんと離れるの嫌、だから……嫌われて離れ離れにならないように……必死になってた……」

「力みすぎるのは良くないって分かるでしょ?でも、例えこうやって間違えたとしても、ビジネス同士ならご覧の回復速度だ。激重愛情って美しいけどさ、関係冷めた時の落差激しいからやってらんないのよね。だからNTR1回食らっただけで関係が終わるわけだし。メロンみたいな見た目可憐で根が浅い関係より、寄生性雑草みたいな強かさと粘り強さみたいな関係の方が合ってるんだよ。人間には」

「ちょっと……寂しいね……」

「やってみると結構楽しいよ?マンションの裏に生えてショウリョウバッタの隠れ蓑になったり、クローバーとして生えたあと四葉を出して子供を笑顔にする。イタドリだったら嫌いな奴の家に根を張ってヘルヘイムみたいに侵食してやれば良い。ビジネス雑草ライフは楽しさ無限大だぞ──でも、それでも璃奈りーが嫌って言うならやめるよ。そこは任せる」

「…………私は、ビジネスパートナーだから、多分……お互いの利益も考えて……無理はさせない方が良い……」

「承った」

 

 ボクのやりたい事は璃奈りーがいないと始まらないし、その璃奈りーが病むほど泣きじゃくりながら『やめて』って言うならやめる。そこまで行くと好感度ダダ下がりで損だし。それに譲歩もビジネスの内。

 

 そういうわけなので、はい。一応これで話は終わったと言うことで就寝タイム。もう話す言葉も擦る御託もなくなっちゃった。

 

「でも、私の利益多くなって良い、なら……1つだけ……提案、思いついた……」

 

 流れ変わったな。

 

「ぜひ聞きたい」

「私の家にいる時だけなら、やって良いし……教えてあげる……。私の家で、私がいる時だけ、私が起きてる時だけ……それ以外は禁止……。茜くんがブレーキ無しで暴れるなら……私がハンドル持って制御する……」

「……それ、璃奈りーに利益ある?ベビーシッターやん」

「茜くんを監視出来る……。一緒にいられるから嬉しい……」

「なるほど」

 

 なるほど……?

 

 答えを聞いても利益なのかよく分かんなかったけど、バイクが如くハンドルグリップを握ってくれるなら安心安全。

 おそらくだけど璃奈りーに存在も所有権も握らせる事はボクからしても効率的………………これだ。璃奈りーの力になる方法見つかったぞ。どんな物になれば力になれるかが思いつきそう。

 バイクだとデカイな。ガトリング……電光璃奈ちゃんボードで攻撃力上がってるのに遠距離やってもな。銃弾の威力は変わらんし。

 となると近接武器。警棒……剣だ。剣だな、製鉄炉入ってくる。

 

「これじゃ、ダメ……かな……?」

「大丈夫。でもボクから見た璃奈りーの利益がなんか低くて微妙。だからボクも力を貸したい」

「力……?」

「剣。璃奈りーと一緒に戦う剣。嫌いな奴をぶっ潰すために斬っても良い。愛さん先輩を守るために使っても良い。料理包丁にだってなる。せっかくバフアイテムがあるんだし武器があった方が良いでしょ?素手で殴ったら璃奈りーの綺麗な手が泥だらけになっちゃうし。それに王様の歴史が乗った伝説の剣だ。遠隔操作も可。便利そうじゃない?」

「んっ……そうだね……。良いかも……」

 

 なら交渉成立だ。ボクは剣になって璃奈りーに振るって貰う。

 最初からこうすれば良かったんだ。オタクっぽい迷惑をかけずに推しの役に立てる。そんな究極のアンサーを見つけたかも。

 剣ならいらなくなったらテキトーな祠作ってそれっぽく刺しときゃ良い。処分時のコスパも良いとか最強じゃん。これもうアンサーじゃなくて真理だろ。

 ボクは剣を使う方ではなく剣になる方。劇中スケールの烈火大斬刀とブレイドブレード作って振り回してたら壁に穴を開け、その経験ゆえに剣の才能は無いと思っていたけど……そうか、剣自身になる才能があったのか。

 

「璃奈りーが本当にやりたい事のために使う力。でも、双方合意の上で斬る。ボクか璃奈りー、どっちかが納得いかないならダメ。それとボクからは絶対動かない。ボクが貸すのは力だけ」

「私の使い方次第で……綺麗か悪か決まる……。プラスの意味でもマイナスの意味でも……印象に残るのは私……。皆の心を繋げるなら……私が自分で動かなきゃダメ……」

「そういう事。更新規約、見落としない?」

「大丈夫……」

 

 迷いのないしっかりした目だ。やっぱりこの子のまっすぐで一直線な目は見てて気持ちが良い。

 表情が死んでたせいで目に映る気持ちが誰よりも強いんだよ。目は口ほどに物を言うって奴を会話じゃなくて感情表現に使ってる。微細表情とセットで見ると璃奈りーの感情が9割判別できるからありがたいんだよな。

 良いよね、顔に出さないで顔に気持ち映すの。自分のわがままを人のために自覚出来る理想の人間。この星の人間全部璃奈りーと姉さんだけになんないかな。夢で良いから見てみたい。

 

「よし……これで契約再開だ。今日からボクは君の剣」

「私は茜くんの所有主」

「ん、そういうわけでこれからよろしく。主殿」

「んっ……!」

 

 …………やっぱちゃんと表情筋できてるし笑えてるんだよなぁ……。月光の光量だけでも十分わかるし………………いやダメでしょこれ。無表情ロリキャラの初めて笑った瞬間が月明かりの下とかダメでしょ。

 オタクが妄想するヒロインとの理想のシチュエーション過ぎる。絶対にこれエモーショナルオタク殺人罪とか何らかの法に抵触してるパターンじゃん。

 どこからともなく現れた無表情ロリ警察がボク達を裁きに…………別に剣だし斬り捨てれば良いのか。

 

 これだから推し活はやめられないんだよなぁ〜。好き〜。

 

 

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