虹ヶ咲ヒーローorナイト&キング 作:コントラポストは全てを解決する
現時点での私の脳内ストレージ使用量は12TB中の10TB。内容のほとんどが茜くんの事で埋まってる。
あの日、教室で最初に見かけた時から何となく気になってた茜くん。
初めの頃はほんとに「おとこの娘がいる」って物珍しさだけで見てた。むしろ半分くらい女の子として見てたところもある。
ずっと見てきた。ううん、ずっとは少し言いすぎたかもしれない。でも、やっぱり私は茜くんが気になってた。というか私だけじゃない。茜くんは何もしなくても人の気を引いちゃう人だから皆の目を引いてた。
気にしてるけど、実際の茜くんは教室でいつも1人ぼっち。相変わらず何となく未練が残ってるような顔をしていて、そんな表情のままずっと本を読んでた。
茜くんの生気の無さの原因。当時はわからなかったけど今なら何となくわかる。
本当なら今頃、茜くんはお姉さんと一緒に学校行ったりスクールアイドルやるはずだった。2人の夢を目指す事が楽しみだったのにって落ち込んでたんだと思う。
事情が事情だから誰かに当たれば良いってわけでもなくて余計に塞ぎ込んじゃって。
それが関係しているのかしていないのかは分からないけど、この頃の私はもう茜くんと友達になりたいって気持ちを自覚出来てた。
茜くんに笑って欲しかっただけなのかもしれないけど、心の内は私自身よく分かってない。
表情が出なくて気持ちが伝わらない私とは違う、覇気のない死にそうなほど疲れてる顔をどうにかしたかっただけなのかもしれない。
それで色々あって、茜くんと関係が持てて、休まないし利益のためならどこまでも無理をするって性質を知った。
利益に関しても茜くん自身が納得してるから強く文句を言えないだけで、誰から見ても明らかに私達の利益の方が大きかった。
自分勝手に生きてるし自分勝手に自分の状況と利益で動いてるから、その場の気分で生まれた手助けよりずっと手厚くてずっと長期間な人助けを続ける事が出来る。
どんな善意でも感謝がなきゃやってられないのが人の性質。普通の人から見れば印象悪く見えるし、偽善とか白い目で見られるのが嫌で目を逸らしちゃう。あと無償の奉仕って疲れるから。
だから取り繕う。
目を逸らすけど、利益の一致で助けた時とか自分に都合が良かったから協力した時は『助け合い』とか『人助けが好き』とかあたかもタダの手助けが好きかのようなセリフを出す。そのセリフを吐くと気持ちよくなる。
でもこれは人の性質だから仕方がない。そうなるように人の脳は作られてるからどうにも出来ない。だからこそ茜くんはこの部分を責めないようにしてる。
どれだけ意地を張ろうと人間は欲には勝てない。でも別に自分の利益と無損傷を求める事が悪いことじゃないのは茜くんもわかってる。私達の祖先が自分を生かすために磨いて来た本能って言う宝だから。
茜くんが嫌ってるのは欲の本質を見ないで周囲の反応を伺いながら取り繕う事。自分が気持ちよくなりたいのと嫌われて迫害されたくないだけなのに、バカの1つ覚えで誰かのため人のためって中途半端に関わって失敗する頭の足りない人達が嫌い。
正直に言うと、私も最初は皆と同じで人はいざとなったら頑張って助け合いができると思ってるタイプだった。助け合うって言うか、お互い無利益で苦労し合えば自然と無償で助け合ってる風に動けるのかなって。最初期はそこだけ感覚が合わなかった。
でも、そんな茜くんだから私は今日まで一緒に要られたのかもって思う。
もしもこれが友情努力勝利タイプの感情人間だったら付き合いは続かなかった。また逃げて泣くパターンになったはず。
だけど実際には相性が良くて……相性が良かっただけで茜くんが得る利益が少ないのと、体をどんどん酷使する所は普通に見過ごせないし許せない。
失敗して考えて皆に助けて貰って、なんとか茜くんの手綱を握る事に成功した。だけど茜くんは私が笑うようになったら絶対距離を置く。契約完了だからって。全部終わったら関係を元通りにする気でいるのが嫌でもわかる。私が屋上に呼び出したあの日以前の関係に。逃がす気なんて毛頭ない。
私のことを持ち主って認めたなら最後まで一緒に戦って欲しい。私が死ぬまで。それが剣の責任だと思う。茜くんは責任取るべき。
「茜くんに……雄を感じて鼓動が速くなった……。いつも性別感じさせないのに、いきなり異性感出さないで欲しい……心臓壊れる……」
「そっかそっか。りなりーが春を見つけてくれて愛さんも嬉しいよ。あとはスプリングの反動で天まで飛べば解決だね」
「正直に言うと……これが友達って気持ちなのか、彼女になりたい気持ち何かは……分からない……。けど、名前とか名称とか、そんなのどうでもいい……」
「うんうん、名前なんかより知った気持ちで何をするか、だよね。そのあと気持ちに名前を付ければ良いよ」
剣宣言までは普通に耐えられた。剣宣言で全部持っていかれた。そこら辺の男の子に言われたって「痛い」で済ませられるのに、悪役でも夕雲ひまりでもない新しい……私の知らない笑い方を見ちゃって頭の中がパーになった。気持ち夕雲ひまりに似てた……気がする。目元とか。
あれは私を受け入れてくれたって言う合図……?それとも何か意図があって狙ってやったのかな。どっちしろ雄だった。子供の雄。無邪気な子供っぽい男の子らしさ。
青暗さの中に外から入る夜の光で照らされたオレンジの髪と黄色い裸眼。伊達メガネもカラーコンタクトもしてない本当の目。初めて茜くんに興奮した……これは確実に異性へ向けるやつ。
「なんか、小学生の時のクラスの男の子に感じた……かっこよさだった……。子供……子供みたいな顔だったけど……雄には変わりない……。でも素材が女の子……匂いも女の子……」
「うんうん、こんがらがってるの分かるよ。もっと聞かせて?」
「朝5時に起きたら目の前に美少女がいて……一瞬誰だか分からなかった……。起きてもキャラ違くて、誰だか分からなくて……」
「低血圧で目つき鋭くなったりした?」
「なんか、お淑やかで……緩くて……おっとりした声してて……ふわふわって言うより……若干しっとりしてて……病弱の……美少女……あれは人に見せて良い姿じゃない……」
「あー、ゲームでも人気あるよね。病室のベッドで本読んでる女の子」
確実に感じる。あれは人妻未亡人。旦那を亡くして寂しさに憂いた人妻を私は抱いた(抱いてない)。
休日に私服で外出る時は「これが1番ナンパされない」とかで、三つ編み片お下げのメガネとをぶつけられた。心が行けない方向に繋がりかけた。悪いコネクトを発動するところだった。
「茜くんに、私の家にいる時はプログラミングして良いって言ったから……多分夜中までやって、そのまま泊まる事もたくさん……。性欲に負けちゃわないか不安……」
「あはは……でも、弟くんならちゃんと止めてくれるでしょ?だから間違えて押し倒しちゃうくらいなら大丈夫だよ。弟くんはりなりーのこと大好きだし。それに泊まってくれるって事は信じてるんじゃない?りなりーがスイッチ入れても止まってくれるって。それに意外と表に出しちゃった方がムラっとしないかもよ?りなりーが大丈夫だったら打ち明けちゃうのも一つの手だと思う」
「やっぱりエッチな事、茜くんは嫌がるかなって……思ってて……」
「もし本気になっても弟くんなら叱ってくれるよ。契約関係が続いてる間は絶対に関係を切るって事はしない。切るのはりなりーの敵だけだし、りなりーのために斬る。弟くんもそう言ってたんでしょ?」
「うん……。私の剣になって、一緒に戦うって……言ってくれた……」
「なら大丈夫。ね?」
私にだって人間だから性欲はある……けど、茜くんの合意なしでやるのは嫌。何とか茜くんを男の子って意識しないようにしないと……ひとまず剣だから道具として見れば興奮はしないはず。道具だから人妻でもなければ未亡人でもない。しばらくはこれで行こう。
「それでそれで?お泊まりはどうだった?」
「楽しかった……。茜くん、こないだ発売されたスプリームダイバーFの新作……買ってきてくれて……」
「おぉ、りなりーの教育が実って弟くんもゲーマーになったんだね。やったじゃん!」
「ううん……茜くん、私と一緒にやりたいからって……買って来た……。アーケードコントローラー付きの限定版買って、ソフト私にくれた……」
「おぉ……りなりーのこと大好きだ……。そういえばりなりーも格闘ゲームは専用のコントローラー使ってたんだよね?弟くんがそのコントローラーに興味持ってくれて良かったじゃん」
「茜くん……私と本気でゲームを遊びたいって……私が本気出せるようにって、アケコンプレイになってくれた……。そのためにセットで買って来たって……」
「りなりー大好きっ子だ……」
さらに言えばネット対戦でも私とできるようにってソフト単品だけを追加で買ってた。
さすがにまずいと思ってソフト分のお金だけでも返そうって財布出したけど、『璃奈りーに教えて貰うための教材みたいなものだし、教科書買ってるのと一緒だからお金出されても困る』って言われてグッっと歩みが止まった。
理屈通ってるから何も言い返せなかったけど、なんか違う。絶対に何かが違う。こういうのは一緒にお金出して買うのが良いはずなのに。私も経験がなくてどうすれば良いのか分からなかった。
「ご飯とかはどうしたの?出前取ったとか」
「作る気満々で……止められる空気じゃなかったから、できる限りの手伝いやった……。作ってる最中は何も出来なかったけど……」
「大丈夫大丈夫。弟くんは美味しいって言って貰えれば満足する人だから。アタシと一緒。実際そう言ってたから間違いないよ。それでそれで?何作って貰ったの?」
「貝の入ったパスタ……」
「あー、ボンゴレパスタか。りなりーって貝好きだったっけ?美味しく食べられるけど特別好きってわけじゃなかったよね?」
「多分……前に茜くんと食べた冷凍食品の貝のパスタを……好物だって勘違いしちゃったんだと思う……。いつも作って貰ってばかりだと悪いから、一緒にコンビニまで買いに行って……食べた……。即席でも、茜くんと一緒に私がいつも食べてるもの……食べれて、知って貰えて……気分上がってたから……その時の私の反応を……好きな物食べたのが起因って勘違いしてる……」
「おぉー…………愛されてるねー……」
「そうかもしれない……」
小学3年に上がって以降、ここまで異性にドキドキする事はなかった。
よくある心の成長の差でコミュ力高かったクラスの人気者くんとか、ドッジボールの王とか、生真面目なクラス委員の男子でさえ幼稚に見えちゃうイベントがあって萎えに萎えた。それ以降はからっきし。
中等部に上がってからは男の子と話す機会自体がさっぱりなくなって。情報処理科っていう電気系だから周りにいるのは男の子の方が多かったけど、それでも男の子と喋ることはなかった。女子は9人いたけど話題がなくて。
というより愛さんと出会うまで私の中等部生活は友達の『と』の字もなかった。先生と話してた時間の方が長い。長いって言ってもプリント出す時とテスト返される時の挨拶とお礼の時間だから5秒もない。
頑張って友達を作ろうと奮闘した時期もあった。3日くらい決意が燃えて、3日目の放課後にゆっくり消火されてくやる気の炎。2ヶ月に1回くらいの頻度で起こるけど結局何も出来ずに終わる。
それで話題を作ろうってゲームセンターの割引券……クレーン1回無料券?を出したこともあったけど立ち止まっちゃった。
ダメだって落ち込んで、嫌になってすれ違った人に券を押し付けた。それが愛さんとの出会い。あっという間に押し切られてLINEも電話番号も交換した。そのまま今も関係が続いてる。
やけくそになって動いたら上手く行っちゃう事ってたまにあるよね。それが起きた。ソシャゲの物欲センサーと同じ因果関係があると私は見てる。
愛さんに色々相談して、私もだいぶ打ち解けてそのまま進級。その数日後に茜くんがデビューして今がある。
エンカウントの時は愛さんと一緒に作った嘘発見器がすごい役に立って、これがなかったら茜くんのハッタリに流され続けたまま関係を築くまでいけなかった。
多分今が1番輝いてるのは分かる。というより人生最盛期って言っても過言じゃない。
でも、最近少し強欲なことを思うようになっちゃって、愛さんや茜くん、侑さん達にもっと早く出会いたかったって後悔しちゃう事がある。
もっと積極的に3年のクラスまで行ってたら今より早く愛さんに会えたのかなって。茜くんがお姉さんとしてアイドル始める前なら、ちゃんと茜くん自身を見てるって伝わって友情とか感じて貰えたのかなって思ったり。利害関係より友情が勝ったりしてたのかな、とか。
茜くんには色々事情を話して、もしデビュー前に私が話しかけたらどうなってたかを聞いた。そしたら『下駄箱に手紙突っ込んで屋上でお話するって言うプログラムの元動いたんだし、もしもとかクソもなくない?』って運命一本道論推しの人だった。
運命の出会いとかそういうのじゃなくて、未来も過去も起こる事象全部決まってるんだから深く考えたって意味がない。自分が進むって信じた道が全てとか身も蓋もない事言われた。
この思想持ち続けるとアイデンティティとか自分の意思が本当に自分の意思なのかを疑い初めてメンタルやるから皆持たないんだけど……茜くんは地球視点で物を見るって抜け道作ってメンタルブレイクを逃れてる。
『人類を30億人まで減らせば動植物の居住スペース増えて天然モノ増えるし石油が枯渇するまでの未来も伸びる。食料も豊富。インフラも快適で良いことばっか。雇用枠も増えて人間もそれ以外の生物も得。ツイフェミとフェミ騎士とヴィーガン優先的に消して静寂の命乞いするツイドリTLが見たい。あと密猟者も消滅リストに入れたい』って言い出した時はさすがに引いた。
ゲーム脳で人を殺すとかサイコパス気取ってナイフ舐めるとかそういうちっちゃな次元の話じゃない。地球の保全と自分の快楽を求めた結果人権が消えちゃった見るからにダメなやつ。
でも茜くんからすると地球にいる1種族の命が少し消えただけだし、自分も消える候補に入れてるから上手く否定できない。それとこの思想は覚悟とか病んだ末の結果じゃなくて、物心ついた時から当たり前としてずっとあったもの。
多分死ぬ時は全人類巻き添えにして死にたいとか思ってるタイプだし、こういう人がゲーム脳の人と同じ感覚で行動起こした結果致死性99%の無限進化ウイルスでバイオテロを完遂しちゃったりする。私が手綱握ってなきゃって余計覚悟決まった。
人間としてじゃなくて地球にいる1つの命といて考えてるから、別に自分含めた誰が死のうと全部生き物が死んだって括りに入れるし、悲しさと敬意払って弔うのをどの生物にも同じレベルで適応してるから正直何を殺しても同類を手にかけて食べてるって心持ちが続いてる。
この思想から逃げるとヴィーガン一択だったから割と危なかった。
何をどう悟って今の思想に行き着いたのかは知らないけど、とりあえず茜くんは精神年齢赤ちゃんだから心が成長し切ってない。
これからの育て方次第で全然人類滅ぼす『悪』そのものにもなれる。
弁護するとしたら女の子と男の子の気分両方味わってそこら辺の概念を超えちゃったから、それと同じ要領で人間の思考飛ばしちゃったんだろうなって理屈を示すくらい。
もし√入ったら最低でも火星に施設作って50億人をコールドスリープさせるとかはやるから私がしっかり教育してエジソンにしなきゃいけない。
愚痴を吐くとするならゲーム脳の人間を教育する方が楽だからゲーム脳になって欲しい。あの人たちはまだ人間の自覚あるし人殺してる自覚もあるから。茜くんはダメ。その原始人時代どころか最古の有機化合物まで遡って生き物見るのやめて。『元を辿れば生物みんなタンパク質』じゃないんだよ。
本物のお姉さんさえ戻ってくればこの悟り状態から戻ってくるはず。多分。おそらく。叩いて貰えば直ると思う。お姉さんが茜くんみたいに思考をユニバースさせてない限りは大丈夫。
私の持ってる剣は確かに茜くんと尊属の歴史が入った伝説と王様の剣。でも、剣に入れた知識次第では世界を守るために人類を減らす判断を下した典型的な呪いの剣にもなる。
本当に持ったのが私で良かった。責任持って最後まで面倒見る。あと茜くんにも責任取って貰うから。