虹ヶ咲ヒーローorナイト&キング 作:コントラポストは全てを解決する
部活の合宿って結構楽しいんだねー。ガチガチに運動しかしなのかと思って身構えてたけど普通に遊べて楽しかった。いや、もしかしたらそういうガチっぽいのもあるのかもしれないけどさ。
とりあえず愛さん自身はめちゃくちゃ楽しめた。りなりーの応援も出来たし。
「璃奈ちゃん、最近愛さんの膝で寝ること多いよね」
「あはは……今度はどうしたの?弟くんとのデートに行きたいけど誘い方が分からないとか?」
「…………茜くんに、かっこよさを感じて……ギャップで、死ぬ……」
「茜のかっこよさか。あるにはあるけど手放しで褒められるかっこよさじゃなかったような」
「今までのとは……レベ、ち……。多分、素の良さが若干出てきた……感じ……多分……」
「そっかそっか、どんなかっこよさだったの?」
今までにないアタックでりなりーの心がブンブンに揺さぶられて、それで色んな感情が広がり始めてる。やっぱり困ったら頼れる異性が最強だよねー。性欲まで利用しちゃう荒治療なのは少し不安だけど。
「昨日……茜くんのやりたいこと、全部終わって家に帰った……」
「ありゃりゃ。これからは普通に遊ぶだけな感じ?」
「ううん……お義父さんに私のところ行けって言われたらしくて……。でも、茜くんは自分が可愛い子といたい欲があるからって……親子揃って罪被りあってて……」
「あはは、さすが茜のお父さんだね」
弟くんがあれだからきっと父親も無理する体質というか、1人でやるのが基本で頼るのは下調べしてからってタイプなんだろうけど、そっか……自分を盾にするところまで一緒かー……。
そりゃ弟くんが悪い子演じて皆を鼓舞する子に育つわけだ。
「璃奈ちゃんと一緒にいたいから泊まって良い?みたいな誘い方してきたの?なんだか茜にしては直球というか小難しい感じが足りないね」
「家でアラジンとか……色々見ようって……誘ったら……いいよって……伝わっちゃって……」
「あー……とりあえず3年レベルで長居する約束が結べちゃったんだね。仕事終わって区切りつけたと思ったら両極端だなー弟くんは」
「帰ったあと夜中に電話が掛かって来て……初手泣いてたの気付かれて……。長電話したいって言ったら……海の感想会から始まって……」
「相変わらず嫁力高いね。璃奈ちゃん的には一緒に住む期間が3ヶ月ってどうなの?」
「……ダメ元で、8月の15日から3ヶ月ってお願いした……」
「いきなり日本に帰って来たね。三ヶ月って言うとかぐや姫が大人になるまでの期間だっけ?お月さま周りは口説きでよく使われるし確かに茜も使いそう。それで結果は……流石にダメだった?」
「いけた……」
「愛されてるね〜」
「り、りなちゃんぼーど……恥ずか死……」
なんだか一昔前の文学小説みたいなやり取りしてるね。全部自分のわがままでりなりーは付き合わされてるって体裁なのが弟くんらしい。
こういう時に主導権握らせると遠慮しちゃうりなりーの性格もちゃんとわかってる。
「茜にもやっと気を許せる人が出来たみたいで良かったよ。出会った頃なんて友達とか学校とかどうでも良いって顔してたし」
「…………前の茜くん……そんなに酷かったの……?」
「うーん、まあ……普段はいつも通りなんだけど……なんて言うんだろ、『茜のことが知りたい』って気持ちを見せると睨んで来てさ。そのあとすぐいつもの顔に戻るから多分本人も無自覚なんだと思う」
「ちょっと……いや、かなり強いね。弟くんの警戒心。りなりーの時は?」
「あんまり……。嫌そうな顔をするのと、隙あらば嫌われようとしてきたくらい……」
「璃奈ちゃんですらそれなんだ…………話しててなんとなく思ったんだけどさ、もしかして私達ってどれだけ仲良くなっても茜とお別れするのが確定してたりする?璃奈ちゃんですら長期の家政婦って感じだし」
「……多分……。でも何言ってもダメ……どこかで距離を置くのは確定、してる……」
「りなりーが頼んでもダメ?」
「ダメ……だと思う……」
あんまり考えたくなかったけど、やっぱりりなりーと弟くんは離れ離れになっちゃうんだね。ここまで仲良くなったりなりーすら押しのけて別れる気でいるのはなんでなんだろ。一体どこにメリットがあるのか分からない。
アタシ達が苦手って言うのはわかってるからそこまでは納得できるんだよ。ただ本当にりなりーを捨てる意味が見えてこなくてさ。
海でも話してみたけどアタシじゃ軽い世間話しかできなかった。解決出来るのはもうりなりーしかいない。
「最近は結構みんなとも打ち解けてたように見えたけど……部室にだって来るようになったし。それとも男の子といさせた方が良いのかな?同性だし」
「どっちかと言うと、茜くん自身が友達作りにやる気出してない……。何か考えがあるかもだけど……単純に友達になりたいって思える人がいないから……」
「璃奈ちゃんって友達じゃないの?」
「友達じゃない……はず……。仮に友達になれると人がいるとしたら、多分自分のコピーとかそこら辺になる……」
「弟くんと友情築くのは不可能に近いってこと?」
「自分の実力に誇り持ってて……性格に癖があって……本音しか言わない人……なら……。悪口でもなんでも、言ってくれる人……。でも根は素直……」
「中々難しい条件だね……」
素の育ちは良いけど今は弟くんみたいに何でも言っちゃう子……それもうただの弟くんだね。本当に自分のコピーしか受け付けないのは笑えない冗談すぎる。
一体何がそこまで弟くんの友達拒否精神を作ってるんだろう。ここら辺を解決しないと仮にお別れを止められたとしても大きな発展ができない。でもアタシが連れ回せば解決するってわけでもないしな……。
こういう少しでも普通の道から外れた相手を見た時になんの役にも立たなくなるの、早くなんとかしないとなー……。りなりーの時だって肝心な部分はユウユと弟くん任せだったし。状況のイレギュラーならいくらでも対処出来るんだけど、イレギュラーな性格とか性質になるともう点でダメ。情けないね。
「うーん……でもさー、茜って皆が思う友達より友達っぽいことするでしょ?なんというか漫画みたいな?仮に茜が本気になれる友達を作ったとして、それって私達から見て友達に見えるのかな?璃奈ちゃんが教えてくれたまんまを通すとしたら、こう……危ない感じの子を選んじゃう可能性もあるって言うか。暴力振るわれても、思いっきり酷いこと言われても、何するにしてもお金は茜に持たせるみたいな人。9割の要素が最悪だけど、残り1割が茜にとってすっごく刺さるなら一緒に居ちゃう……みたいな」
「あー……弟くんの付き合い方が最悪の形でマッチしちゃう感じかー……。可能性は低いけど何となく想像出来ちゃうから危ないかもね」
「茜のひまりちゃん至上主義、自衛としては結構役立ってたのかもね」
「でもさ、ひまりー以上の人が出てきて、その子が実はダメなタイプでしたってなったら一気に転落しちゃうって事でしょ?部室嫌ってるのは分かるけど、やっぱりここに置いといた方が良い気が……どうする?」
「とりあえず最初はちょっとだけ居させて、それを週1でやりながら段々慣らして行く……保護猫みたいな。茜は見世物とか守られるてるって思って絶対拒否るから表向きの理由も考えないと」
弟くんって意外と純粋って言うか、知らない分野は本当に知らないからある意味騙されやすいんだよね。
男の子なのにガンダム全然知らなかったってりなりーも言ってたし。流行りの音楽も全然知らない。エマっちにも『髪型なら茜ちゃんより知ってるし、どう?』って丸め込まれてヘアスタイルのアレンジさせてた。髪と肌は可愛い人間の命って言ってたしそう簡単に触らせるないはずないんだけど、スタイルの幅が広がるって理由でほとんど他人のエマっちに触らせた。
「なんというか、友達は増やして欲しいって思うけど、好きになる人の癖が独特だから不安というか。そこ知っちゃうと余計ほっとけないし」
「男の人にだけど海でナンパもされてたからね……アタシも出かけた回数は数回しかないけど打ち解けた雰囲気出すから勘違いしちゃったし」
「分かる。茜って距離感が独特なんだよね。絶対どこかで女の子勘違いさせてる」
「だよねー……」
アタシの友達も最近は相手の身長気にしなくなったって言ってたし。中身含めて全部トータルして魅力的に見えるならそれで良いって考えになったらしい。
やっぱり最近の流行りは見た目より中身。見てくれ一発の筋肉より経験と頼りがいっていう中身の強さが大事。
だからやっぱり弟くんは絶好の最優良物件になるわけで……どこかしらから狙われてるのは確定……
「りなりー?どこに行くの?」
「家……」
あちゃ……不安因子焚き付けちゃった……。りなりーもまだそこら辺は考慮できてなかったみたい。アタシもユウユも皆も、弟くんのやり方が上手くいったところしか見てないから気付けなかった。
ちゃんと向き合ってるつもりだったけど、全然弟くんのことを見れてなかったんだなー……。
とは言ってもどうすればかすかすと弟くんみたいになれるのかも分からないし。うーん……難しいね……。
◇
胸の内にあった違和感。かすみさんも言ってた『夕雲茜がモテない理由』、やっとわかった。
実際にはちゃんと茜くんを好きになってる人はいた。でも真正面から行ってもダメなのを察してるから水面下で冷戦してたんだと思う。そういう恋路歩むのは7割型めんどくさい女で、茜くんは危ない人にモテまくってた。そもそもSNSを見ればそんなの一目瞭然だったのに。
ネットの中だからって勝手に油断してた。画面の向こうには人がいて、そこに危ない人がいる事も分かってたはずなのに。
というかそもそもの話として私って言うめんどくさい女に懐かれてる。私自身がソースだったのに気づけなかった。
昨日までの私に聞くけど、料理ができて普通なら誰も助けてくれないような状況でも助けてくれて、可愛くて、かっこよくて、強くて病弱で悪で万能で優しくて内面がイケメンで猫で幼妻で自分のことなんでも分かってくれるように見える男の子がなんでモテないって思ってたんだろう。
どう見ても自分の価値を確立するためにスペック高い男を縛り付ける系の女を引き寄せるタイプだった。
茜くんが私と似たような女の子に騙されないためにちゃんと女の子のこと教えなきゃ。茜くんじゃ気づけない女の子にしか分からない女の子の性質。じゃないと本当に茜くんが傷物にされる。心と体どっちも傷だらけになる。
「あっ、おかえり。なんか今日は帰るの早いね。お昼できてるけど食べる?出来たて過ぎて絶賛マグマだけど」
「大事な話がある……」
「どしたん?そんなマジな顔して。お引越しでもするの?」
「女の子周りについて……茜くんの……」
「周りって名乗れるほど女子と面識ないよ?」
「私と同好会の皆だけで……10人もいる……」
茜くんの中じゃ知り合い以前の関係だと思ってるかもだけど、私や皆から見たら茜くんはだいぶ打ち解けてるように見えてるよ。少なくともエマさんと果林さんは仲良くなったと思ってるはず。
それに侑さんもかすみさんも菜々さんも愛さんも、茜くんのこと気にかけてる状態だから態度次第じゃサークル崩壊みたいな事も出来るはず。
「それで……ボクと女の子にどんな関係が?」
「同好会以外の女の子と遊びに行く時は……私に連絡入れて欲しい……」
「とりま1回相談ってこと?」
「んっ……」
「相談は良いけど何を談義するん?さすがにお出かけコース見繕って貰うのは情けなくて嫌なんだけど」
「相手がどんな子か……知りたいだけ……」
「あぁ、メンヘラ対策ね。おkおk」
「……自覚あったの……?」
「自覚というか、前に調べたらそういう系統に好かれやすいって出てきて。さすがのボクでも地雷で遊ぶのは無理だぞ」
もしかして私がヘラ系譜1歩手前なことに気づいてない……?茜くんの中の私、どれだけ美化されてるんだろう。だいぶ不安。
いや、違う。これはチャンス。私で危ない女の子を学ばせれば良い。ビジネスパートナーだし講習にすれば受け入れてくれる。友達だったら危なかった。
「私、めんどくさい女……」
「具体例の提示を願う」
「茜くんに出会う前まで……1人で頑張って三日坊主で終わって……勝手に泣いてた……。友達だと遠慮しちゃって……講師とか、アシスタントみたいな人、欲しくて……探して……茜くん見つけたけど、今度は、もっと仲良くなりたいって思っちゃって……めんどくさい……。茜くんにもダメな事言った……」
「めんどくさいはめんどくさいけど、それ璃奈りーがめんどくさいんじゃなくて自分の技術と状況がめんどくさい絡まり方してただけやん。ほんとにめんどくさい女だったらLouTubeの簡単可愛いメイク動画をそのまま引用して服は地雷とサンリオの中間、うちの学校で言う鉄研かアニ研辺りで姫張ってるぞ」
「茜くんに出会ってもしばらく成長しなかった……それで泣いた……」
「学習努力してるだけじゃん。この世にゃ小中高特に目標もなくダラダラ受け身で授業聞いて、テキトーな大学で2年遊んで3年の時に留年危機、4年で卒論と就活に追われたあと、根性会社でヒラリーマンとして17万くらい貰いながら死に顔晒す貧民で溢れ返ってるんだぞ。自分で学びに行けるんだからもっと胸張って良い。無理くり自分をめんどくさい認定するの、特別になりたいけど何者にもなれないからってパリピや異常者気取り始める陰キャやDQNと同じだぞ」
やたら火力の高い罵倒が出てくる。茜くんの表情、平凡家庭出身のくせにって思ってる時の顔だ。
でも、今までの一般人が知った様な口聞かないでって感じじゃなくて、在り来りな幸せがあって大抵の事はなんでも出来たのになんで何もしなかったのって顔。
「璃奈りーは頑張り続けてボクを見つけた。確かに遠回りな道だった事については同意見だよ。でも逆に聞くけど身体透過して光と同じ速度で瞬間移動しながら最短直線√で見つけた王剣の宝物庫になにか意味があるの?大都市や小村の人に手助けして貰いながら、ジャングルも砂漠も洞窟も超えてこその冒険じゃん。めんどくさい旅路だったのは確かだけど、めんどくさいから記憶に残る程の経験になったわけだし。苦労迷惑面倒をオールコンプした璃奈りーはもっと自分を誇るべき」
「でも、それだって聞く人によっては馬鹿らしいって思うだけ……」
「それはそうだが、そうやって上手くいかないかもって逃げてたら根性だけの人間になっちゃうよ。どの道いつかは"職につけずそこらの廃墟で野垂れ死ぬ未来"から逃げるか、"人の下で働いて失敗と叱責にストレスためながらダラダラ生き地獄味わう未来"から逃げるか、この二つの未来のどっちかから逃げるクソダサイベントを経験するんだ。失敗のダサさとか気にしてる場合じゃない」
「チャレンジしたけど上手くいかない人は……?」
「そういう奴らの計画性と資金と保険の設計って子供の衝動買いレベルでカスいんじゃん。そりゃ成功するわけないでしょ。まずは算数ドリルで基礎の脳筋を鍛えるとこから始めないとやる事なすこと取越苦労よ。璃奈りーが上手くいってるのはそこら辺ちゃんとやって来たから。人徳と努力の果てだ。誇る事を余が許可する」
主観除いたちゃんとした批評なのはありがたいんだけど、普通に全肯定が過ぎる……。承認欲求が満たされちゃって危ない気持ちが芽生えそう。
こうやってメンヘラは生まれて来るんだね。メンタル弱い人がハマる気持ちも少しだけ分かる。
だからってあんな酷いヒステリックを起こして良い理由にはならないけど。やっぱり茜くんは危険因子盛り盛りだから私が見てた方が良い。
「その……褒めてくれるのは嬉しいけど……私の場合全部が偶然……。今の私があるのは愛さんがいたからで、その愛さんと出会ったのも余ったゲーセンのチケット押し付けたから……余った原因も私が誰も誘えなくて落ち込んでただけで……」
「璃奈りーに配布ポケットティッシュを受け取る経験がなかったらそのビラを貰う確率も半減してた。そもそも普通の人間はゲーセンの無料券とか自分で使って終わるかカップル消費ぐらいでしか使わん。だから発想の勝利と見て良いよ。それにひらめきには経験が必要だってことは璃奈りーが1番わかってるでしょ?」
「そうだけど……結局私がめんどくさいのは変わらない……」
「偉人の伝記読めば分かる通り、ヤバい奴は大概拗らせてるし正気も失ってるから平気へーき。それに璃奈りーの道は物語みたいな面倒くささだからいくらでも語り継げるよ。ボクの歩んだ人の根底意識をつついて大衆にマウント取るみたいなクソコテ街道は歩いてないから自慢したって大丈夫。それに閃いたは閃いたでそれを実らせるための研究がいるし。世間一般で言う努力ってやつ。あと話の趣旨と少しズレるけど、これって別に褒めてる事にはならなくないか?人生ゲームの途中経過音読してるだけだし。カラオケ採点のリザルト画面と一緒」
褒めてる自覚なかったんだ……。茜くんのことだから女の子をおだてて好感度稼ごうとかないのはわかってたけど、そもそもおだてるどころか称えてる気すらなかった。
茜くんの言い分は結果って言う事実を声に出してるだけ。でも、なぜかは分からないけど全部プラス思考で捉えてる。これだと人は育たないし茜くんに変な女の子が寄ってくるから矯正した方が良い。
「もしかしてこれ褒め言葉にしといた方がイイ感じのやつ?」
「ううん……そうじゃなくて、悪いところも言って欲しい……って、思って……」
「璃奈りーの悪いところ……ボクより能力が下なくせにいっちょ前にこっちの迷惑考えてた事と愛さん先輩に全然頼らないところ。あと工業関連に突出してるだけで総合能力が誰よりも下なのに全部1人で解決出来るつもりでいる傲慢成分。あまりにも人らしさが無さすぎてハウトゥー本とエッセイ本と格言哲学本をそのまま引用するファッション文学系体育大学を感じたぞ。あんな音量調節できないゴミスピーカーの真似事とかしなくて良いからとりま笑ってて欲しい。それにあいつら野沢雅子に負ける程度の中途半端な声量だしcpuも股間にある。加えて性能も低いから使い道がない」
「流れるように体育会系罵倒しないで……真面目な指摘、欲しい……」
「うーん……なんて言うかこう……キラッキラな友情気取るならもっとお互いをこき使い合って何をしようとどんな難題に巻き込もうと繋がりが切れない自信を見せて欲しい。璃奈りーは愛さんの迷惑だの愛さんの時間搾取だの忠誠心高い奴隷みたいな態度してるし、愛さん先輩もりなりーの面倒みれるのはアタシだけって自分に酔ってるし。ほら、あれよ。パンピーってダメ人間養った時の人救ってる感に脳内麻薬めっちゃ出すからさ、依存するよりされる方がズブズブセックスになるってやつ」
…………茜くんの目的は分かる。もっと皆を頼れって言いたいけど温厚に言ってもどうせ忘れるからって自分を悪役にして恨み買おうとしてるだけ。そこは分かる。自分を悪く見せてでも相手を正す、いわゆる『叱る』をしてくれてるだけ。茜くんの常套手段。
けど、なんでいきなり愛さんを貶したのかが分からない。必要性を感じない。茜くんは絶対陰口なんて言わないしこんな突拍子もなく怒る人じゃない。叱りはするけど怒りはしないのが茜くん。
もしかしたら結果だけ報告してるから褒めてるつもりがないさっきの話と一緒で、結果だけ話してるつもりで貶してる自覚がないのかも。
「愛さんが……罵倒される筋合い……ない……。ちゃんと私のこと考えてくれてる……。私がダメなだけ……」
「ギャル子先輩のためにそこまで怒れるならもっと友情見せてくんね?友達関係の資料録らせてよ。グループからハブられないためにバイトして遊ぶための金を貯める絆ごっこ組合との違い。自分が楽しむためのオマケに躍起になってるおかしな人達との差別化。是非とも見てみたいね」
「友達は……そういう面倒な側面があるだけで……それ自体は本質じゃない……」
「証明出来るの?璃奈りーの友情」
「一緒に水着買いに行った……」
「そうかい。まあ、せいぜい余にあざ笑われないよう関係構築を頑張りたまえよー……っと。よしよし、ちょうど30分経ったぞ。いい感じに冷めたからご飯にしよう。そんで見てこれ、天才的なかき揚げ。料亭で出せる」
………………ご飯冷ますついでで私と愛さんの関係強化しようって思ってたんだ。だからこんな突拍子もない突貫工事の罵倒を言い放った。最早最安値で恨みを買おうとしたらこうなっただけで本心じゃない。効率厨と悪役らしい考えだと思う。
でも、関係を強く見せたいから躍起になって関係続けたら死ぬほど笑うぞって言うのは本気で言ってると思う。そういう顔をしてた。
だってそれだと仲間はずれを怖がって、諸々費用を使う基準が友達になってる一般的友情と同じになるから。
愛さんに頼るのがメインじゃなくて関係の深さを証明するために愛さんに無理くり頼ったら茜くんはゲラゲラ笑ってバカにしてくる。結局自分の想像通りだったって。
多分茜くんも自分の知らない「友情」っていうのを見たいだけなんだと思う。ただの電気信号から生まれた司令で未知の輝きが起こせるかを知りたいだけ。
茜くんが今まで見てきたのは多分、おもちゃ箱に乱雑におもちゃを片付けたり、部屋の隅にまとめて放っぽっただけの行動を掃除って言って綺麗さを主張するみたいな人間関係だった。
でも、求めてるのは機能美でも様式美でも良いから『らしさ』がある完成された美麗。殴り合いしてでも自分の意見主張し合ったり、どんな悪印象抱かれても良いから相手の悩みや悪行を止めたり、学生終わった程度で切れる腐りの縁とは別の鎖縁とか。
…………今までの茜くんの方が本物の友情っぽい事してる。侑さんの言ってること当たってた。
もしもこれで茜くんの求めるものをそのまま出したら『ボクのビジネス関係で事足りるじゃん』ってなるからもっと別の答えを見せなきゃいけないのかも。方向性が違うやつ。
いや、そうじゃない。答えを出すのに尽力したら嘲笑いルートに行っちゃうからダメ。答えなんていつもの私達を見せれば解決。ビジネス関係に似通ってても本人達が本気で信じあってるならそれが正解。
茜くん、ここまでの事を一括で私に教えたかったのかな。あとは友情のふわふわさには気を付けるんだよって事も。
実際はどこまで考えてるのかなんてよく分からないけど、きっと茜くんの事だからこれくらいは考えてるよね。いつもこんな感じだし。
やっぱりもう少し素の部分を見せたほうが茜くんも安全に過ごせると思う。
「……茜くん……このお寿司のキーホルダー、どうするの……?売るやつ……?」
「ん?あー、それね。みゃー子が明明後日にバックステイツしちゃうから土産にあげようと思って。明日一緒に遊びに行くしそこで渡そうと思ってさー。寿司屋めぐりする予定。編入は9月頭らしいけどまあそこそこ間空くからね。寂しいじゃん。あとそれ持ってれば目印になるし」
「………………ハンドメイドなんだ……」
「蝋と液体プラの配合にめっちゃ時間かけた志向の逸作だぞ。一貫の2つがドッキングして江戸時代サイズにもなる。もしかしたら古の板前パワーで磁石みたいに引き寄せ合うかもしれないし。知らんけど」
「………………………………そっか……」
何も知らなければただのお寿司一貫のストラップだけど、事情聞いたら割れハートのカップルネックレスに見えてきた。
これ、相手が女の子だったら絶対そういう気起こしちゃうよね。そもそも茜くんが物送るほど気に入った相手ってなんだろう。何したの?
情報科でも一二を争う性格の悪さを持つ茜くんがそこら辺の人より煌びやかな友情出してるの、普通になにかのバグを疑っちゃう。こんな感じでお姉さんとか地元の子を狂わせて来たんだろうね。
やっぱり茜くん、友達周りだけは本気で管理しないとダメな人かも。当初の予定通り私と侑さんと愛さんで監視する。