虹ヶ咲ヒーローorナイト&キング   作:コントラポストは全てを解決する

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43.夕know愛go

 

 最近……というかここ5日?りなりーの疲れが溜まりすぎててすごい心配。一応スケジュールは組んでるらしいけど、そもそもスケジュール帳に予定がいっぱいで弟くんみたいな忙しさになってた。弟くんの2/3くらい…………ここまでしても弟くんに届かないの、やっぱりすごい仕事量なんだね。2人一緒に休ませないとダメだ。

 

 とは言っても弟くんってどう頼めば休んでくれるんだろ……。仮に建前を用意しても小さな親切大きなお世話にしかならないし、そもそも弟くんには陰の気遣いとか思いやりが全部『自己満』って判定になるから直球勝負するしかないんだよね……。そもそも小さな親切云々を『優しさは厄災』ってバッサリ切り捨てちゃってるし。

 

 アタシはアタシで弟くんのことを勝手に面倒みようとしてる理由がわかってない。一応ふんわり気持ちでは感じ取れてるんだけど、言語化が出来てなくてね。

 りなりーが心配するから……っていうのは絶対にある。だけどもそれが全部かって言われると少し違うなーって最近思うようになった。なんというか、言葉に出来ないモヤモヤがあるんだよ。世話焼きって言われるアタシの世話焼き成分を作る原材料。

 

 

 ここで誘い文句を考えても絶対に役には立た無いし…………ノリ?ノリだね。ノリで行こう。

 

 

「弟くん!家行くよ!」

「えっ、誰のですか?」

「アタシ!」

「すみません知らない人の家には行っちゃダメって姉さんから言われてるのでごめんなさい」

 

 熊の相手をする時みたいにジリジリ距離を置く弟くん。アタシが思ってた以上に弟くんはアタシに心を開いてなかったっぽい。初っ端からミスったかも。想定の5倍距離感が遠かった。

 しかもネタとかいじりじゃなくて本当に警戒してる。オマケにひまりーからもガチで注意されてるっぽいね。弟くんってこんな子供っぽかったっけ?

 

「えーっと…………警戒させちゃった理由、聞いても大丈夫かな……?」

「だって璃奈りーがいるのに家に男呼ぶとか絶対なにかある証拠ですし……水曜日と金曜日のドラマみたいなことされる……」

「しないけど……。あとりなりー関係ある?」

「1番のプリズムフレンズである璃奈りーですらギャル子先輩の家には行ったことないのに、それ以下のボクが招待されるわけがない」

「いや…………気持ちはわかるけどさ。そのー、アタシの家って昔ながらでね?皆にどう映るのか分からないから。愛さんは好きなんだけどさ……ほら、アタシの価値観ってたまに古臭くなるでしょ……?」

「印象調査のモルモットなら最初からそう言ってくれれば良いのに」

「そんな最低な理由でも大丈夫なんだ……」

「誘い文が最低になるかどうかは扱われ方次第です。確かに実験には変わりないですけど、『皆との価値観の差を埋めたかった』って言う大義名分は既にあります。あとはボクが協力申し出たって口裏合わせとけばただのハートフルストーリーです。涙線募金特番にするか密着ポリスメン24時にするか。それを確定づける権利はギャル子先輩にあります」

「でもアタシが密着警察にしないように意識したら弟くん逃げちゃわない?」

「だから上手く騙してくださいね」

 

 全力で騙されてやるから全力で騙しに来いってこと?誘拐じゃなくて貞操を賭けた頭脳戦って思えば気が楽だけど……いや弟くんを襲うとかはしないけどさ。そんな理由で来てくれるようになるんだ…………これ他の危ない女の子が同じ手を使ったら普通に危なくない?

 

「アタシが嘘つくか分からない状況で家来るの危ないなーって思わない感じ?」

「だってそこまで行ったらどこで嘘をつかれたかを探す楽しいゲームじゃないですか。ライアーゲーム。ゲーム業界で1番売れない脳トレジャンルをプレイするマイナーイキリです。周りが小学生でも解ける謎解きやってる間にボクはルービックキューブを6面揃えて頭が良くなってる。お得では?」

「ゲーム扱いなんだ……」

「正直な嘘つきが2人揃って規約に同意したならあとはもうステージで遊ぶだけですよ。それで先輩ってどこ住みなんですか?囲炉裏住宅?」

「流石にそこまでじゃないよ」

 

 身支度して行く気満々になった。話せば話すほど弟くんの生態がわかんなくなる……。もしもアタシに人生相談をして来たらなんて答えれば良いんだろう。弟くんに合った答えを出せる自信が無い。

 

 …………頑張ってたつもりだったけど、イレギュラーへの対抗手段が全然身についてないや。これじゃただの自己満足だね……。結構本とか動画で人の根底原理を調べたんだけどなぁ……。

 

「愛さん先輩急にやつれましたね。家に男呼ぶ事にビビりました?」

「弟くんのことなんもわかんないなーって」

「ちょっとクレバーなギャル如きがそう簡単にボクを理解できるわけないじゃないですか。せつ菜先輩ですら振り回されてるのに自惚れ過ぎでは。あの人がどれだけ熱意込めて日大アメフトタックルして来たか知ってます?ぶっちゃけバカの部類過ぎて引きますよ」

「いやでも、たまには一人でやんなきゃじゃん?弟くん周りだと皆も手を焼いてるっぽいし」

「?……別にかすみさんとせつ菜先輩とりなりーっていう野良猫特攻組合がいるんだからそこ頼れば良くないです?というかそこ以外でどうやって調べろと」

「本と、動画?」

「????????」

 

 弟くんにドン引かれてるんだけどなんで?すごい真面目に『何言ってんだこいつ』って顔してる。アタシそんなに変なこと言ったかな……。

 

「愛さん先輩、イレギュラーな状況は慣れてるけどイレギュラー個体には耐性ないって言ってましたよね?それで経験欲しくてボクの扱いを学んでる」

「嫌だった?」

「その経験が他に活きることはわかってるので問題ないです。でもイレギュラーを扱うのに一般人向けの人間心理解説動画見たって意味ないじゃないですか。再生数と売上出さなきゃ行けないのでパンピーが理解出来る範囲しか語りませんからね。イレギュラーの領域はその10歩先くらい先にあります。時間の無駄」

「普通から逸脱してるのに普通向けのイレギュラー解説見ても意味ないってこと?」

「そもそも『普通、一般』っていう世間の多数派からはみ出た存在がイレギュラーですよ?その動画の理論が効かないなんてザラです。むしろデフォルトと考えた方が良い。観察対象の言動をまとめてエミュった方がまだ役に立ちます。そもそもの話として愛さん先輩の周りにはイレギュラーを観察して来た人が既にいるじゃないですか?エミュレートならかすみさん、客観解説なら璃奈りー、一般人のまま対応したいならせつ菜先輩。それで解決します。意外と上っ面なんですね、愛さん先輩の対人信頼度」

「いやぁ……まぁ……弟くんから見ればそうかもだけど……」

 

 使える物使ってない時点で『やってる風』だし、自分1人で解決しようとしているのを見ると周りの人を信じてないように見える。って弟くんは言ってる。その程度のやる気しか出せない時点で理解云々語る良い人ファッションなんだろうなって。

 今日の弟くん、めちゃくちゃグサグサ刺してくるね。やっぱりどう扱って良いか分からないや……。

 

「えっと……弟くんも1人でなんでもしちゃうじゃん……?」

「えぇ、はい。だってそこまで信じれる人とかいませんでしたし。ボクは頼り慣れてないんじゃなくて頼らなくて良いから頼らなかっただけです。だから今回初めて璃奈りーとかすみさんと侑先輩を利用してこき使ってるんじゃないですか。愛さんに出来ない事をやってます。めちゃくちゃ上から目線で物を頼みましたよ?侑先輩には総合実力ボク以下だから結果じゃなくて課程で評価してやるって言いましたし。嫌われてないのが不思議っすね。ビジネスサイコー」

「もっと頼る経験して来い……ってこと?」

「正直愛さんって自分の実力で片付くことしかやってないじゃないですか?チャレンジと言えばチャレンジですけど、『失敗した経験がない人』寄りの成功経験って言うか。どちらかと言うと下々の世界で現代知識無双してる主人公系?実際は周囲の期待のせいで失敗できなくなっただけの口なんですが。なんで役に立たなくなったくらいで悪評つける人間の救援申請受けてたんですか?時間の無駄では?」

「性分……とか?昔からそんな感じだったし」

「頼まれたらなるべく答えてた、と。子供の頃から。普通にどっかでイメ損してる生き方じゃないですか。やっぱ時間の無駄では?」

「いや……さすがにもうちょっと人の心信じようよ……」

「その人の心とやらを信じた結果ボクにボロくそ言われてプライド傷ついてますけど。これ愛さんの精神衛生にめちゃくちゃ悪くないですか?場合によってはメンタル壊しますよ?もう少し人を選んでみては?」

 

 うん……弟くんの言い分もわかるよ?確かに受けきれなくて断っちゃった事は何度かあったし、その人達が差別されたとか思ってるかもっていう言い分はわかる。わかるけど……ちょっと極端って言うか、皆もっと善良って言うか。

 

「愛さん先輩の忙しさとか頼る側には関係ありませんからね。切羽詰まりかけてて余裕無いから頼った訳ですし。そこ分かってない時点でボクから見た愛さん先輩はだいぶ自己中です。相手だってもう『宮下愛は良い顔しただけの媚び売り』みたいに見えてるかもしれません。とりま友達と他人毎に断った件数を9件くらい作ってみては?失敗した過去と仕返しした経験は未来の自衛に1番必要ですからね」

「えっ。うん……なんかごめん……。気遣わせちゃったみたいで……」

「その迷惑かけちゃった精神璃奈りーそっくりなのでやめてください。一応言っときますがボクは改善案出さない批評と減点方式で見る批判が嫌いなだけですよ。粗探して書き込んで炎上商法すれば良いだけの楽ちん業務ですし。得するのは閲覧数稼げた作者オンリーな上にそうやって悪評しか出回らないと作る側がやめて行って終局には批評で数字稼げる作品自体が無くなるので、結局それやってるやつはバカで単調でマダニなアメリカザリガニ。だからこうして代わりのプランを……ギャル子先輩?首絞めようとしないでくれます?」

「あっ、ごめん。無意識だった」

「怖……ストレスでも溜まってるんですか?」

「かもしれない」

 

 危ない。無意識で弟くんの頭撫でかけた。いやだってさっきまで正しい意味で使う頑固で人情な親父の説教みたいな大きさだったのに、いきなりポメサイズになるからさ。サイズ差で風邪引いちゃう。

 せっつーが言ってた『自論語って気持ちよくなってる酔っ払いジジイかと思ったら、いきなり飼い主心配するマンチカンになるせいで脳がバグる』って言ってたのこれかぁ。

 悪口言ってるだけかと思ったら相手が後悔しないように注意してくれる優しさだった。その切り替わりの瞬間にツンデレっぽさが出て一気に可愛くなる。そりゃハマる子はハマるわけだ。

 

「まあ、ギャル子先輩って1回信頼落ちると都合良く奴隷労働モドキさせられるタイプなんで、ほっとくとこっちにまで被害来そうで無視出来ないんですよね。早い話が借金の保証人になってくれって頼まれるタイプ。押せば行けるので都合が良い」

「いやさすがにそこまでじゃない」

「でもボクの電車賃出そうとしたじゃないですか。出す姿勢だけ見せときゃ大丈夫なのに。ギャル子先輩の容姿なら男は見栄張って出しますし、女だって利用しやすさを維持したいから良い顔します。400円出しゃ愛さんを永遠こき使えるので安いもんです。損得勘定薄いとこういう所で弱み握られて『あの時奢ってあげたじゃん』云々言われますよ」

「弟くんは強すぎると思うけどね。損得勘定」

「持ってるなら持ってないフリをすれば良いだけです。知識が無いふりをしとけば相手は勝手に油断してくれます。相手はボクに知識があるって知識がないので『ワンチャン騙せるかも』って思考にしか行き着きません。あとはテキトーにあしらって終わりです」

「アタシとかカリンにまで話ちゃってるのは良いの?」

「そこまでバカではないので使いにくいです。ボクが求めてるのはちょっと調べれば分かる知識を調べないか浅く理解して我がもの顔で語る人間です。自分主体で物考えることしか出来ないし、論理思考って言うんですかね?それに使うデータソースが自分の感情だけなのでめっちゃ使いやすい。楽」

 

 おーう……本当に人を道具扱いしてる……。ユウユとセッツーは丁寧に使ってくれるから安心出来るって言ってたけど、使い捨て相手の時はもうすごい雑に扱うね……。いやアタシも紙コップとか紙の箱はすぐ潰してゴミ箱に捨てるけどさ。ユニバのお菓子の箱とかじゃない限りそんな丁寧に使えないし。それと同じって考えれば少しは理解でき……でき…………うーん……。

 

「ギャル子先輩ってなんでそんな都合良いんです?えろ同人だったら筆おろし用のオタクに優しいギャルにされてましたよ」

「使い方が限定的過ぎないかな……それ他に務まる人いるの?」

「エマ姉と果林酸。彼方姉さまはこう……健全バイノーラル作品でトラックの3/5が寝息になってそうだからあんまエロに結びつかない」

「変わった目線からえっちな本見てるんだね……」

「だって3次元の人間って顔のパーツ配置が微妙であんま高ぶりませんし。リアルよりの作画だと抜けない。姉さんレベルになれとは言わないからせめてボクは超えて欲しい」

「ごめん話のレベルが高くて着いて行けない……」

 

 一旦深呼吸。えっ、弟くんって絵でしかえっちな気分になれないの?じゃありなりーどころかそもそも現実の女の子と恋愛出来ないってこと?

 

「あの……答えにくいと思うから無理に言わなくて良いんだけどさ……その、1人でする時どうしてるの?」

「えっ、女型アンドロイドをネタにしてますけど」

「そもそも人ですらなかった……それでえっちな気分になれるんだ……」

「愛液精液含めて他人の体液とか気持ち悪くないですか?あと現実の人間の肌って塗りのタッチがビミョくないです?」

「レベル高……」

 

 どうしよう……前々から女の子も男の子も関係ないんだろうなってのは知ってたけど、まさか種族すら超えてるとは思わないじゃん……。ここまで拗らせてるの想定外なんだけど……本当にどうしよう……。

 

「お、弟くん、りなりーの事えっちな目で見れる……?」

「めちゃくちゃ最低な問いかけしますね」

「いや違くて。ほら、たまにりなりーがこっち見てるなーとか思ったりしない?」

「そこから自分の事が好きって結論になるの無理くないですか。イケメンでもしませんよ」

「そうじゃなくて……!弟くんにはりなりーとえっちな事ができる関係に……あの、だからあれで……!」

「めちゃくちゃ最低な計画企ててますね」

「違くて……!そうじゃなくて……!!!」

 

 これがりなりーの気持ちなんだよって言えたらどれだけ楽か。ちょっと進展遅いなーとは思ってたけど予想以上に弟くんが酷い。もっと感情で皆を見た方が良いしりなりーの気持ちに早く気づいて。冷めるまであと5年はあるけどりなりーが爆発しちゃう前に早く。

 というか一緒に住んでるのになんで襲ってないの弟くん。せめてそういう反応はしようよ。

 

「はぁー…………弟くんって昔からそうだったの?それとも酷い初恋したとか」

「普通に生きてたら人ってなんか微妙だなって感じて……解釈深めたら解釈違いで嫌いになった……感じ。もっと綺麗な物だと思ってた」

「昔は普通に話せてたんだね。友達は?」

「友達……と言えるくらい仲を深める前に卒業しちゃった。なのであんまり概念自体を理解できてません」

「弟くんがひまりーのこと考えてる時みたいに動ける人がいなかった?」

「今の所は。強いて言うなら歩夢先輩が近いですけど、それは侑先輩限定ですしやっぱりボクみたいに長年一緒にいたから芽生えたって感じで……出会って1年くらいの期間でそこまで行った人を知らなくて」

 

 昔からこうだったわけじゃないし特に苦い思い出もないと。学習能力が高すぎて知らなくていい人の根底まで学んじゃった感じかな?心を感じる前に脳機能を理解しちゃって、脳みそでしか人を見れなくなっちゃった……とか。だから一般的な人と人との繋がりが分からない。

 

「弟くんは友情が知りたいの?」

「知れるなら、ですが」

「モドキで良いならアタシが教えようか?形から入るのって大事でしょ?それに多分高校が終わったらそこまで長い付き合いする人なんて出来ないだろうし。だからさ、やってみよ?友達ごっこ」

「あんまり出かけたり出来ないですよ?」

「出かけるだけが友達じゃないよ。弟くんの友達レパートリーが少ない証拠だね。それに普通の価値観を学べばもっと上手に人が使えるようになるはずだし」

「ギャル子先輩がそれで良いなら……たまにどうぞ」

「うんうん、じゃあ今日からやってみよう!弟くんって友達の家で何かしたい事とかある?なんでも良いよ?」

「…………一緒に絵を描く、とか……ビーズを固めるやつ……とか」

 

 えっ、可愛…………そんな子供っぽい事で良いんだ。一緒に哲学賞に出す論文を書こうとか言ってきそうなのに。急に幼くなる。ギャップすごすぎて落ちる人はすぐ落ちるでしょ。もしかしてこういう部分がカリンのツボにハマったり?カリンからすれば今までにないタイプだもんね。いや誰から見ても今までにないタイプだけどさ。

 

 普段の態度からいきなりこんな言葉が出てきたら差でインフルエンザ引くよ。情緒壊すの上手いね、弟くん。

 

 

 

 

 

 

 

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