虹ヶ咲ヒーローorナイト&キング   作:コントラポストは全てを解決する

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44.類い稀なる年上特効

 茜くんがまた年上を狂わせてる……というか愛さんが堕ちた。話すこと自体少ないからそこまで仲良くならないと思ってたけどダメだったみたい。年上なら自動で特攻入っちゃうから交流歴とか関係なかった。早く年下が現れて…………そういえば年下も効果範囲だっけ。抜け道がない。

 

「……愛さん先輩、なんですかその本」

「えっ、美味しい漬物の作り方。一緒に読もうかなって」

「ファッション雑誌で良くないです?」

「いや、せっかくだし弟くんとしか出来なさそうな事したいじゃん。クラスじゃこんな話できないからさ」

「はぁ、なるほど」

 

 部室に来たら部屋の隅で隣合って料理本見始めて、途中から愛さんがナチュラルにアスナロ状態に入って、それでも茜くんは気にせず一緒に見てた。お腹に腕を回されても髪の毛甘噛みされても怒らない。侑さんだったらとりあえずバック頭突き貰ってるのになんであんな大人しいんだろう。

 皆はなにか知ってるのかなって思ったけど、少なくとも果林さんと侑さんは何も知らないらしい。歩夢さんみたいにスペースキティーしてる。

 とりあえずこの場に菜々さんがいなくて良かった。いたら確実に荒れる。

 

 とは言え愛さんと茜くんがあの距離感でいる限り警戒は解けないけど。というか昨日の時点で危なかった。だって帰って来た時に茜くんからすごい愛さんの匂いがしたから。反射でキスマークないか探した程には焦った。

 愛さんにその気がなくても茜くんがその気にさせちゃうから基本年上は抗えない。冷静さを欠きすぎて寝る前にTSTを探すくらいには思考が死亡。

 

 

 とりあえず茜くんは童貞…………茜くんって童貞で良いのかな?そう呼べるほど男の子してないし。臨時呼称で性行為未経験って呼ばせて貰う。まだ未経験。一旦安心。

 

 

 それにしてもどうして急に仲良くなったんだろう。昨日までの茜くんは愛さんの事は興味無い状態だったのに。そんな1日で絆されるほど茜くんの穴は緩くないし。実は私が知らないところで交流を重ねてたとか…………茜くんにそんな暇あるわけないから違う。

 考えても分からないからまずは事情聴取。きっとなにか特別な理由があるはず。曲作りのためとか。

 

「あ、茜くん…………なにかあったの……?」

「なにか、とは」

「その……急に愛さんと仲良くなったから……」

「あー、友達?になったからだと思う」

「とも………………だち……?」

 

 ピシッ……っとどこかに亀裂が入る音がした。心じゃない頭蓋骨のどこか。多分感情司ってる領域の護衛骨にヒビが入った。あまりにも強い感情信号。電気が強すぎて骨にヒビが入った。

 茜くんが友達自称するとか絶対ありえないって思ってたのに……あとその友達はどの種類の友達?遊ぶだけなのか、付き合う前段階……とか。頭蓋骨が割れそう。

 やっぱり私じゃ素っ気ないからダメだった……?夕雲ひまりに1番性格近いのって愛さんだし姉には勝てない?やっぱり身長と胸と母性がないとダメだった……?

 

「ど、どうやって……とも、友達に……?」

「友情教えてあげるって言われたからなった。友達ごっこすれば少しは分かるよって」

「知識カードはあるに越したことないしね。これで弟くんにもたくさん友達できるかなーって」

「と、友達ごっこ……」

 

 そのセリフ裏切りシーン以外で役に立つ事あるんだ……。でも友達になりきってるだけらしいからそこまで大事にはならなそう。

 茜くんも友情のデータを欲しがってたし情報源が見つかって良かっ…………いやそれにしてもこの距離感はおかしい。バカップルでもこんなに距離近くならないと思う。

 

「友達はそんなベッタリしない…………」

「今日から1か月毎に色んなテーマで友達ごっこしようって話し合ってさ。今は『やたら距離感の近い友達』の期間。色んな種類のデータを集めて色んなパターンに適応できるようにする……らしい」

「対応はできるけど適応が出来ないからね。だからこうして仕込んでるんだー。これで弟くんも普通の生活が送れて安心安心」

 

 友達ごっこシーズン1でいきなりそのシチュエーションに適応できるの、だいぶ関係性が出来上がってる証拠だと思うけど。

 茜くんが友達ごっこしてる理由って友情を学びたい以外にもあるんじゃない?愛さんに興味持ったとか。ミャーコちゃんの時みたいに。

 紛い物とは言え茜くんを友達って言えるし呼んでもらえるのズルい。私はただのビジネスなのに。

 

 ここで私がごっこ仲間に入れてって言ったら割り込めるかな?茜くんだし資料は多いほど良いって言うけど…………どうせお姫様扱いで距離置くんだろうね。はぁ……。

 茜くんが無理やり迫って来ないのは知ってるしこっちから行かなきゃいけないのだって分かってる。積極的にアタックしない私自身にも非はあるけど、しつこ過ぎて嫌われたら嫌だし……。

 そもそもそういうあからさまな態度取ると茜くんは嫌がって逃げちゃう。さらに言えば物事をそのままパクった二番煎じが嫌いだから別の方法を模索しないといけない。

 

 友達ごっこ以外で友達っぽい気持ちを教えてあげられる関係…………今の私じゃ思いつけない。言っちゃうと私が欲しかったポジションに愛さんがいる。遠慮なく触れ合えて気兼ねなく話せて、同じくらいの目線と距離感でいられるそんな立ち位置。

 

 前から言おうと思ってたけど、茜くんは私の事を大切にし過ぎ。骨董品でもないのに埃つかないよう袋被せて運ばれて、紫外線で変色しないように日光避けて保管とかそんな扱い求めてない。私はただのプラコップ。皆みたいに日用品扱いして欲しい。そもそもそんな特別扱いされる程茜くんになにかした覚えがない。

 

 

 だけど今ここで躍起になっても邪魔になるから悪印象。一旦撤退して作戦立てる。とりあえず茜くんが寝盗られる事は無さそうだからゆっくり考えれば良い。明後日には解決策を出したいところ。

 

 

 

 ◇

 

 

 

 うわぁ…………茜丸が同好会年上組をコンプリートしちゃった……。私もりな子もそんな短期間じゃなかったのですが。

 でも思い返すと侑先輩は3日で懐いてましたし、歩夢先輩ですら侑先輩の1週間後には警戒強から警戒予備にまで落ち着いてました。これがりな子の言ってた年上特攻?おねショタ漫画に発展させる以外の使い道が思いつかない。

 

「それで……どうします?このままだとワンチャン愛さんに従順になるんじゃ?」

「無意識でコロっと行くのは何度か前例あるから……茜くんが懐く前に同じポジション手に入れなきゃいけない……」

「友達ごっこが行けたなら恋人ごっこもいけるのでは?」

「そこまで好かれてない……」

「行ける気しかしませんけど」

 

 りな子の中の茜丸警戒心高すぎでは…………いやよく考えたらり茜丸がりな子の前で推しだよ云々言ってるの見た事ないですね。普通そういうのって本人の前だと好きな気持ちが溢れちゃうけど、周りには何とか隠そうとして意地を張るのが普通では?

 なのになぜりな子の前では御高説嫌われマンを気取り、私の前では推し愛垂れ流してるんですかあいつ。逆では。

 

「もしりな子が彼女だったら何したいかを聞いてみるとか?もしかしたら少しは意識するかも」

「茜くん……知識どころか子供の頃の軽い恋モドキも知らないから、そもそも付き合った後を想像するって言うのができない……。リアルタイムで分からせる以外の方法がなくて……」

「そんな4歳児メンタルでしたっけあの男。めちゃくちゃアラフィフくらいの精神持ってません?」

「知識とか理論だけなら……。でも感情で動く時の情緒は4歳児……」

「いまいち実感無いですけど……そういえば侑先輩もたまに茜丸が子供っぽくなるって言ってましたっけ。案外本性は見た目そのままなのかもしれませんね。という事は感情さえ揺さぶっちゃえば簡単に堕ちるんじゃ?」

「感情揺さぶるの……クソムズい……」

「なるほど」

 

 完全では無いですけど私と話す時の茜丸は感情揺る揺るで長ったらしいりな子論文語って来ますよ。りな子大好き過ぎて私は営業スマイル極めちゃいましたし。

 茜丸がりな子の前でデレないのには何か理由があるのでしょうか?意外と恋が分からないからりな子に性欲感じ取られないように気張ってるだけだったり。茜丸って結構ピュアだからなぁ……。

 

「ひとまずキスの練習でもしてみるとか。ビジネス装って女の真価分からせたら何とかなりません?」

「わからない……キスして良いかを聞いた後の反応が博打……。気軽にできない……」

「どう見てもりな子ならオールOKって感じですけどね、私から見た茜丸。偽装事故ちゅーしてみるのはどうですか?」

「茜くん、運動神経良いから……事故起きても綺麗に受け止めちゃう……。なんか、手慣れてる……抱きとめ方……」

「あー、プロの受け身とかすごいですしね。なるほど……経験積んだ相手には事故すら使えない、と」

 

 最悪自分も相手も最小限の衝撃と怪我で済む床ごろの仕方覚えてそうですし。やっぱり漫画だけなんですね、イケメンと事故キスできるの。

 茜丸がいないのになんで現実を見せられているのでしょうか。記憶の中にいるだけで影響を与えて来る…………これもう実質セフィロスでは?

 

「お酒チョコ食べて酔った振りとか?」

「あのチョコは……少し酔うのが限界……。どう頑張っても記憶消えるくらいベロベロにはなれない……」

「やっぱりあんな少量じゃ酔えないと。溺れた振り……はそもそも茜丸には悪印象ですし。寝ぼけてみるとか?」

「キス癖が……私にはないからすぐバレる……」

「マジでめんどくせーですねあの男……」

 

 普通だったら可愛い女の子とキスできてちょっと浮かれて終わりますけど、多分あいつ問答無用で性被害項目にぶち込みますよ。もう真正面から行く以外に手がない。

 

「1回私で実験してみます?私で行けたなら茜丸に大事にされてるりな子は確定演出だと思うのですが」

「大事にされ過ぎてて……むしろしてくれない……」

「あぁー……まあ、誰から見ても贔屓してるなってわかっちゃいますしね……。あからさまと言うか、本人的には嫌われても良いしストレスの素だからって人への態度変えまくりです。周囲の目を捨てたから無敵状態」

「八方塞がり……」

「普通の恋愛テク使えないのが1番痛手ですよね……」

 

 マジでめんどくさいですねあの男。いやその鉄壁具合があったから今まで女性が寄って来ても童貞を貫けたわけですが。おかげでりな子も浮気やいざこざを気にせず茜丸攻略に奮闘できているので。

 

「今更なんですけど、りな子って茜丸をどう思ってるんですか?あんまり好き好き言ってるのを見ないので」

「……まだ上手く言えないけど……9割自覚状態……?でも、あと1歩足りない……足りないけど、時間ないから押し進めてる……」

「確かに茜丸っていきなりふわっと消えそうですからね。私も距離が空いたまま高校出たらどうなるか全く想像出来ませんし。告知無しで消える限定品って言うか」

「いなくなったら生きていけないとか、そんな重たい事にはならないと思うけど……多分、ずっと穴が空く……」

「私も茜丸込みで人生設計してるので勝手に消えられると困るんですよね。虚無感すごいですし」

「かすみさん……茜くんに似てきたね……」

「やめてください気にしてるんですから」

 

 違うんです聞いてくださいジェネリック茜丸思考は上手く制御できるんですけど成分の制御が利かないんですよ。成分というか因子。どう頑張っても第一に損益考えるようになっちゃって……あと最初は嫌いだった『自分が得したいから助ける』って考えに嫌悪感がなくなったから。開き直ったっていうのが一番近いかも。

 

「ほら……なんて言うかその……私もうただの腹黒じゃないですか……?いやまぁ茜丸と同好会の皆のおかげで腹黒でも仲良くしてくれる存在を知れたのが救いですけど……それに女は何時でも女優ってしず子も言ってくれましたし。でもやっぱり度を越してる気がして」

「将来ファンにバレたらってこと……?」

「まあ、大雑把にまとめると。あれなんですよ、最近クラスの方々に『今の素のかすみちゃんの方が可愛い』って言われるようになりまして……壁が無くなったみたい、って」

「作り込みすぎて、本物と見間違うレベルになっちゃった……?」

「多分。これが性格茜丸寄りってバレたら荒れそうで。荒れると言うか、扱い方に迷って距離を置かれると思うんです。そうなったあとの解決法が見つからなくてですね。ここら辺は茜丸だとバッサリ切っちゃうので……」

「そんな人達捨てちゃえって言う、茜くんなら……」

「はい……孤立もネットリンチも恐れない鋼のメンタルしてますし、事が起こったら反応楽しんだあとに『やっぱり人間はクソ』って言って別のコミュニティに引っ越しですよ」

 

 マジで最初はかすみんの素云々言われた時に皆が何を言ってるのか理解出来ず3秒くらいフリーズしました。その後色んなコピー要素が合わさって1つの本物になったって実感して。

 でもそれと同時に、万人受けの可愛さって自分の拘りを持って全員の事を考えながら作った可愛さより、テキトーに作った一般ウけ用の作り物で良いんだって理解しちゃって。普通にクラスの女子全員の態度を足して平均すれば完成だった。

 

 なんかもうそれを悟った瞬間に『めんどくせーですし今日からこれで良いや』ってなりまして。

 だってどれだけ頑張ってもかすみんの全部は伝わらないってわかっちゃいましたし。それに現実を知ってもガッカリして終わるだけの通常メンタルとか茜丸にボコボコにされてます。

 あとあれです、『言葉で全部伝わって言外でも良い感じに意思疎通出来るなら戦争なんか起こってないんだよ。現実見ろばーーーか』って夕雲ゼミでやりました。やってて良かった夕雲ゼミ。

 

 それに加えて1番最初に貰った茜丸からの可愛いって言葉が今も響いてまして。これを繰り返し思い出すだけで40年は余裕で持ちますよ。

 なんというか、クラスメイト程度の仲の良さしかなかった茜丸から出たあの言葉が1番の刺激になってるんですよね。微妙な仲の良さと化粧に無縁の男って言う部分とのギャップで焼き付いちゃった。

 

 狙ってやったと思うのはさすがに自意識過剰ですけど、私の事ちゃんと見ててくれたのかなって思った方が浮かれる事が出来ますし……悩みどころですよね。茜丸ならやろうと思えば出来ちゃうので。

 

 それと少し臭いことを語るんですが、私の伝えたい本当の可愛さをわかってくれる人達はすでに私の手の届く範囲にたくさん居たので、そこに気づいたら満足しちゃいました。

 あとはもう純粋にあの男を逃がす気がないのでしず子達と茜丸がいれば生活面は不満なしというか。残すは私の憧れるアイドルになればやること終わって起業か就活です。

 

「こんだけめちゃくちゃ乱暴してるのにモテ続けてるの、よくよく考えると不思議ですよね。もう認識阻害系のSCPみたいなものですよ。出会う人全員おかしくなってますし」

「根が優しくて人懐っこいから……そこで気を引いちゃう……。果林さんが一番顕著だけど……最近は彼方さんも暴れるようになった……」

「のほほんとしてますけどやってる事かなり攻めてますしね。ところ構わず抱き枕にしますし、ほっぺ揉みこんでりもしてますし……あとやたら『おねーちゃん』って言わせようとしません?」

「母性……または発現……」

「目覚めたと……」

 

 姉妹だからか近江妹も即落ちしましたし。1回ハル子がクッキー作ってきた時に茜丸が突っぱねて逃げ回っていたのですが、なんかガチのアカ虐っぽくて一旦退きました。

 次の日にグミ作ったら無事に食べたので喜んでましたけど。というか明らか女の子がしちゃいけない顔をしてた。

 

 茜丸に会うためだけに週一でアポ取って虹ヶ咲に突撃して来ますからねあの人。割と危ないタイプですよ。愛玩動物扱いは慣れているので茜丸がなにか言うことはありませんが。

 彼方先輩はなんて言うか……己の獣をふんわりソフランで誤魔化してるだけと言うか。そのうち何食わぬ顔で茜丸を引き取るって言ってきそうですし。姉妹共々肉食系なの恐ろしいですね。大人しい人ほど云々言いますけど私の想定してた大人しさと違う。

 

「茜丸が姉ではなくひまり先輩に心酔してるからまだ何とかなってますけど、もし姉属性に目覚めたらどうします?同年代に包容力?感じるのは難しいって言いますし年上に勝つの無理くないです?」

「…………とりあえず、一緒に住んでるし……特別扱い、嫌だけど……特別扱い……私だけだから……もう少し攻め時待っても大丈夫……多分……」

「ガッタガタに震えてますけど」

「武者びゅ……武者震い……」

 

 めちゃくちゃ分かりやすく怯えてる。りな子って動揺するとこんな顔するんですね。恋パワーってすごい。

 友情より恋心の方が出力高いのは漫画も小説も現実も変わらないと。私も茜丸にデレれば今よりもっと魅力的な可愛さが手に入るのでしょうか?

 

 試すだけならタダですし今度やってみますか。茜丸に、女の子っぽく………………無理では?(迅速果断)

 

 

 

 

 

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