虹ヶ咲ヒーローorナイト&キング 作:コントラポストは全てを解決する
まずい……うたた寝することが多くなって来た……。さすがの私でも睡眠時間3時間が6日連続で続くのはダメだったらしい。すごい眠い。
でもこれが終わればあとは明日に回せるし、明日それを片付ければ私が担当してた仕事は全部片付く。あとは寝まくって肌戻せば完璧。茜くんも堕とせる……はず。
「りなりー、ちょっとこっち来て」
「うん……どうしたの……?」
愛さんに手招きされて近づいたらそのまま膝に寝かせられた。おばあちゃん家でこんな事をしてた気がする。おばあちゃんの家行ったことないけど。
たまに愛さんから良い意味での昭和臭さを感じていたけど、家に行ったら全部謎が解けた。ものすごい木造建築。しかも大きい。
それにおばあちゃんっ子なのは知ってたけど愛さんと2人で暮らしてるのは知らなかった。
夜にはご両親が帰ってきてると良いなって思ったけど、実際は2人で暮らしてるらしい。私と一緒で当たり前の形をした家で過ごしていたわけじゃなかった。
もしかしたらここら辺が似てたから愛さんはシンパシーを感じてくれたのかも。私も愛さんの隣は安心できる。でもいきなり膝枕は流石にびっくり。
「あ、愛さん……?」
「すごい疲れてる顔してるよ。少し休も?」
「も、もうすぐ終わる……」
「もうすぐ終わるなら20分くらいは休んでも平気でしょ?それにちゃんと休まないと倒れちゃうし」
「でも、これくらい……茜くんは平気でやってる……」
「弟くんは弟くん、りなりーはりなりー。心も体も違うんだから頑張り方を真似したってカラ回るだけだよ?りなりーだってわかってるんでしょ?」
「それは……そう、だけど……」
愛さん……怒ってる……?今まで何度も徹夜でゲームを作ったりしたけど、怒られることは絶対なかった。
もしかしてクマが酷くなってる?それとも血流が悪くなってる顔色に逆戻りしてるとか。とりあえず説得しないと。
「今のりなりー、弟くんと同じ頑張り方してるよ。弟くんが倒れちゃいそうで悲しいーって嫌がってた時の頑張り方」
「私が変わらないと……茜くんがいなくなっちゃうから……」
「それってさ、弟くんがひまりーを皆に知ってもらいたいって無理しちゃうのと一緒だと思うんだけど、どう?自分の願いのために自分の全てをダメにしちゃう。健康度外視で無理しまくり。りなりーはそれが嫌だったんじゃないの?」
「ライブするまでは持つ計算……そのあと倒れても、茜くんが看病してくれる……」
「アタシは嫌だよ。りなりーが倒れるの。安静にしてれば大丈夫だとしても……何日か寝れば治るって分かっていても、りなりーが体壊すのは嫌」
私が倒れるのが、嫌。
茜くんが無理するのを許せない私みたいに、愛さんも私の無理が許せない。無理して頑張る事を受け入れているのが無理。
今までの愛さんじゃ絶対言わなかった駄々みたいな止め方。でも、多分だけどこれが愛さんの根底にあった優しさの根源。
「あんまり長く話すと弟くんに怒られちゃうからハショるけどさ、自分が嫌いだったやり方を仕方ないって受け入れて、都合よく使って、そんな弱い決意で頑張ったりなりーの頑張りって弟くんに届くの?」
「これしか、やり方がない……」
「りなりー程じゃないけどアタシだって少しくらいならパソコン使えるよ?」
「ダンスも……歌も、教えて貰った……」
「まだ全然元気だけど。その損益バランスを弟くんに言える?りなりーにはもっと欲張りになって欲しいって考えてる弟くんに、どうやってここまで来たか見せられる?」
今日の愛さん、少し怖い……けど、何となく私が茜くんに怒った時と似てるから多分今の私は相当疲れてるように見えるんだと思う。実際肌は疲れた時の色をしてるし若干荒れてる。不健康状態。
「その……10分だけ……寝ていい……?」
「40分」
「30分は……?」
「40分」
「35……」
「40。それが最低条件」
「わ、分かった……」
ゴリ押しで押し通してくる……。ノリで決めるんじゃなくてそれすら捨てた脳筋プレイ……。菜々さんが似たような事をしてるけど愛さんの場合はドリルも一緒に付いてくる。ドリル構えて螺旋直進。もしかしたら気疲れのせいで素が出てるのかも。
「愛さんと一緒に寝たい……。茜くんと……いつも布団一緒だから……」
「良いの?愛さん結構体温高いよ?」
「大丈夫……。茜くんも高い方……」
「そっかそっか。じゃあお言葉に甘えちゃおうかなー」
茜くんをデータソースにした愛さんのわがまま、めちゃくちゃ効いた。やっぱり普段優しい人って怒ると怖いんだね。愛さんは怒ると言うか説教って方向に行くけど。心揺さぶられまくった。
でも、私は茜くんの心を揺さぶる事が出来なかった。改善はしてくれたけど完治はしてない。あんまり私の言葉も届いてなさそう。
やっぱり茜くんを仕留めるには年単位の準備が必要なのかな。間に合うか不安になって来た。
◇
おいおいおい帰ってきた璃奈りーからめちゃくちゃギャル子先輩の匂いが漂ってるぞ?ついに来たかホンモノを拝む時が。メモ帳……データだ……ここまでの課程をデータとしてレポートにまとめなければ。
「…………茜くん……誤解だからタンスに荷物戻して……。愛さんとは昼寝しただけ……」
「いや、これは絶対なにかあった匂いの濃さだ。ボクのデータは騙されないぞ」
「前に茜くんが愛さんの家から帰って来た時も、同じくらい匂いついてた……」
「ほーん。つまり一緒に風呂入るところまでは行ったと」
「……」
「うぃ、うぃっとに富んだジョークなのだ……ぶたないで……あ、ちょっ、待って……!服破こうとしないで!魔が差しただけだから!特に意味とかないからただの冗談だってだから待って話をさせ──とりあえず一旦止まって欲しっ……止まっ、やめっ……ヤメローッ!!!」
いや別に愛さんと混浴したくらいじゃ何も起きんて。侑先輩じゃないんだしそんなアタマのおかしいイベント早々起きんから落ち着けって。というか侑先輩も入ってる最中は気まずそうにしてたぞ。離れようとしたら抱きついて来たけど。意外とデカ……違うんすよちょっと待ってくださいベルト外そうとしないで。
前から思ってたんだけどその上書き思想みたいなの何?マーキングしたところでマーキング使って牽制する相手がいないじゃん。意味無くない?
「……ほんとに冗談……?」
「ほんとに冗談。朝香果林の魂を賭けても良い」
「とばっちり……」
「でもあの人貢ぎ癖あるから魂くらい平気で賭けると思うよ」
「貢ぎ癖……?果林さんはそんな金銭感覚緩くない……」
「けど事ある毎になにか買おうとしてくるし。前はキラデコビーズセット、その前は東大生100人に聞いた座右の哲学便覧、その前は司法試験完全解読ガイドと過去問、その前はCOCシリーズの高性能タブPC、その前はお家でカラオケパーティー──」
「茜くん……もう大丈夫……」
「そう?まだあと10個くらいあるけど」
意図はよく分からないが果林酸なりになにか考えがあったのかなって。意外とあの人も税管理と青紙に地獄を見てるだけだったり。
「茜くん……中学とかで果林さんに会ったことある……?」
「えっ、ないけど。正真正銘7月半ばが初エンカだぞ。あんな独特なセクシーお姉さんとか1回見たら絶対忘れん。だから会ったことないって断言出来る。それとこれになんの関係が?」
「果林さんだけ、茜くんに懐く速度が異常だから……」
「ボクから何かした覚えはない」
言われてみれば最初は大人の色香みたいなものでめっちゃ攻めて来たけど、気づいたら年相応というか知能相応の子供になった。
ミステリアスさをぶつけて来るのは今も変わらないから、対抗する時は変わらず不思議ちゃん気取ってる。ミステリアスっていう名の不明瞭VS電波という名の不可思議。譲れない戦いがここにはある。
「とりあえず……いつもの果林さんに比べると危ないことしてるから、次からは止めて欲しい……」
「そうは言っても週末にケーバ行く約束しちゃったし。7割出すから来いって招集された」
「ギャンブル……」
「?……あぁ、違う違う。ケーキバイキング。略してケーバ。体重と甘やかしの天秤ゲームに出兵するイマドキ女子のスラングらしいよ」
「そんなの知らない……」
璃奈りーって生クリーム苦手だしね。苦手って言うか大量に食えないから重たさで入らなくなる。そもそもケーキってチョコとかモンブラン問わず外装の味付けがやたら濃いからな。普通に若い人でも少食タイプは1切れを半分食えばお腹いっぱいになるし。
でも璃奈りー自身はめちゃんこ甘いもの食いたい一般女の子思想だから基本コンビニスイーツに入り浸りしてる。デパ地下の高いスイーツ食うと肌と口の中が荒れるから。
だけどコンビニ産だと目を離した隙にエクレア2袋食ったりするから監視が必要。糖質制限しないと死ぬぞ。
「確かあの店ってクッキーとか紅茶もあったはずだし璃奈りーもどう?鳩サブレとかひよこ饅頭とか鶯餅あるよ。あと鳥米せんべい」
「バイキング……苦手……競走に勝てない……」
「あー、わかる。ボクも波が落ち着いた場所の余り物食べてるし。正直そこまで押し切って食うほどの物でもない。競り方式と同じなんだろうけど。持ち帰りできるし貰って来る?だいたいフォークで4等分できるくらいの大きさなんだけど。こんくらい」
「茜くんが前に作ってくれた……ティラミスにコーヒー餅入ったやつ、食べたい……」
「あれで良いの?普通のティラミスに黒蜜入れたコーヒー団子ぶっ込んで終わりだしなんかしょぼくない?明日ライブ明けで切り良いから盛大にクリパでもしようよ」
「…………じゃあ、あの苺のゼリーみたいなやつ、つけて欲しい……。砂糖比率6%……」
「微糖のストジュレね。場所は……ここで良いとして、せっかくだし愛さんも呼ぶ?」
「……………………2人きり、が良い……」
「り」
打ち上げは皆でワイワイより夜景ディナータイプか。プロジェクター買って映画見れるようにしとこ。流石に綺麗な夜景は準備出来んからな。
だから璃奈りーが求めるディナーが作れるかは分からないけど、大抵のことはググれば何とかなるのでそれに従って準備するのみ。
ダメだったらいつか彼ピか愛さんとの笑い話にでも使って上げて欲しい。
────
高級フレンチを極めようとググッたら怪しげな格安材料サイトしか出てこなくて萎えた。しょうがないから知り合いの金持ちを片っ端から当たって情報集めてる。
この学校のやばいところは親が防衛省で幹部やってるみたいな権力と財力のヴァイオレンスにまみれた子供がそこそこいること。
一応偏差値が60だか70ある名門私学だから納得ではあるんだけど、如何せんボクの周りにいる人間にバカが多いから忘れそうになるんよ。
いや世間一般でいうバカでは断じてないんだけど……ほら、その……しずくちゃんとか模造薙刀の刃を研いでトマトを切れる程度の凶器にしてたし、彼方先輩はケモ耳萌えに目覚めてボクに犬耳装着させるために奮闘してるし、侑先輩は段々ポム先輩そっちのけで同好会部員とボクの面倒を優先するようになったし。
みんなドンドンおかしくなって行って閉鎖村系ホラー映画みたいな風味が出てる。特におかしいのが生徒会長とか優木せつ菜とか中川菜々とか栄誉脳筋ゴリライザーとか。
簡潔に言うと頼ったあとの見返りが特殊過ぎてすごい疲れるんじゃよ。主に気疲れ。『これからは特殊報酬じゃなくて良いから回らない寿司屋に連れてって』って言われるのを心待ちにしてるくらいには疲れてる。
とりあえず昭和の魔法少女アニメに出てきそうなピンクと白のミニドレスを押し付けてくるのをやめて欲しい。正体バレ以前の問題。尊厳。
こういう事情があったから取材はなるべく一般の価値観を持った普通の金持ちにしたかった。
というわけで来たんすよ。スーパー金持ち令嬢の元に。
「松茸とトリュフとトリュフチョコあげるから高いレストランのデータくれ」
「いきなりですね……私いま生徒会選挙の準備で忙しいのですが……。あとなんでキノコばかりを?」
「フグとカニとウニも出せるけど」
「そういう事ではなく…………はぁ、分かりました。写真くらいしか出せませんけど良いですか?」
「画像で手に入るのが1番ありがたいから助かる」
さすがは栞っちだ。威厳と信頼と付き合い易さがダンチ。やっぱ一般人と付き合うならこれくらいがちょうど良いんだよな。学校で話してたまに頼み事を依頼し合いしつつも、休みの日にはお互い不干渉で自由に過ごす。そんな持ちつ持たれずの関係。
「ほーん……これがお高い飯か。肉って松阪とか黒毛だから油多い感じ?」
「そうですね。とは言ってもそんなに重くはないですよ」
「このレストランが食材仕入れてる場所ってどこかわかる?」
「一応調べてわかる範囲なら……買うんですか?茜さんがこういった値段の高い食事を買うのって珍しいですね」
「今度知り合いと豪勢に飯食おうってなってさ。それに必要なの」
変なマナーとか気にせず好きに食えるなら高い食材も美味しく食えるし買おうと思えるのよ。やっぱ命食ってるなら食の美学より獣の美学を拘らないと材料に敬意を払えん。というか死んだ命に感謝とリスペクトしてるなら普通に上品にならないか?レストランとか家とか関係なく。
「作るんですか?食べに行った方が安心だと思うのですが」
「客の舌を知ってるのはシェフだけだがダチの舌ならボクの方が知ってる。費用と効率と売上特化の汎用性レシピとか要らない」
「そのお友達さんの時に限り料理人を超える、と」
「好みの味を知るのにめちゃくちゃ時間かけたからな」
「何年かけたんですか」
「4ヶ月」
「……出会って4ヶ月のお相手さんにそんなお金を……?えっと……その……DVとかは……?」
「健全な関係だから安心せい。スクールアイドルやっててファンなのよ」
「あぁ、なるほど…………いや余計不安になるのですが」
なんかやけに警戒心高いな。他人に向けるものにしてもデカすぎる。ボクらが出会ったのってついこの前だぞ?1週間前くらい。
「貢がされてるんですか?そういう職業なので仕方ない部分はありますが……ほら、CD買いすぎて破産したって人いますし」
「正直言うと金はそんな積んでない。そもそも積むためのコンテンツを先方が出してない」
「どうやって活動資金を?」
「ゲーム作ったり動画編集したり立体パーツの設計図書いたり」
「なるほど、確かに茜さんに合いそうな方ですね。ですがそこまで出来るならアイドルをしなくても大丈夫なのでは?」
「なんというか、表情が薄いせいで感情の種類が少なくてさ。アイドルやって色んな感情を見たいって理由でやってる。ほら、ライトファンガチファン合わせるとドルオタが1番人種多いしキャラ濃いでしょ?」
「理屈は分かりますけど……」
栞っちって意外とアイドルに抵抗無いんだな。金と素質が全てだし、皆を平等に輝かせたいって考えを持ってる本人様からしたら害悪そのものだと思うんだけど。
「えっと……体良く使われてるわけではないんですよね……?お相手が茜さんとの関係を保持したいから無表情を取り繕ってるとかではなく……」
「正真正銘マジモンの無だぞ。ボクと会う前から1人で訓練してた」
「1人でも出来る子なんですね」
「1人で出来るって言うか、迷惑精神が強すぎて1人で解決しようと溺れてただけって言うか。本当は誰かと一緒にやって成長するタイプなんだけど……ほら、優しい人ほど無理して一人でやろうとするじゃん?」
「茜さんも人のこと言えなくないですか?」
「無理はしてない。利益も気にしてる」
4年かけてオーバーワーク出来る体に作り替えたからな。とりあえず15分睡眠で脳はいくらでも持つように鍛えたからあとは身体の筋肉ほぐしてれば良いだけ。
出会った頃にポム先輩が勘違いしてたけど、ボクの体は鍛えた結果であって才能じゃない。
だから時間かけて作ったボクの労力と同じくらいのスペックを素で出してる璃奈りーの異常さがよく伝わってくるわけでしてね。ボクの1/5とか自虐してたけど労基に訴えたら問答無用で警告出して来る程度には酷いやり方してるぞ。休め。死ぬ。
「それで、茜さんはその子といてどんな利益を?」
「そうだねぇ……久しぶりに夢中になれる人が出来て刺激的な毎日を送れてる、とか」
「お姉さんとは話さないんですか?」
「うーん、最低限しか話せてない感じ?忙しすぎてなー」
「茜さんのワーカーホリックは姉譲りと」
「割と夕雲1家全員ワーホリよ?」
制御係がいないけど全員死ぬほど頑張ってたから結果として生活環境が向上して家庭内の雰囲気が良くなった。『人を動かしたいならまずは自分が動け』を1家総出でやれば団欒家族の出来上がり。
上から偉そうに指示出すって行為が1番効率悪いと証明されたので、これやってるやつは人を引っ張ってる優越感得たいだけのオナニストって格付けで良いと思う。お前が引っ張ってるの人じゃなくて足やぞ。現実見ろ。
これ話すと学校崩壊が起きるからまだ誰にも話してないけど。だって理論を制御出来る人がいないから。
人格問わずみんな心の中では論破してカッコつけたい欲を持ってるので、こういう斬新な話を切り出すとすぐ学校でイキりだす。能ある鷹は爪を隠すんだぞ。ひけらかすのはやめておけ。
というか能があったら自慢なんかしなくても何か完成させた達成感で満足できるから、そもそもイキるって思考に行かねぇんだよ。ここら辺は実力隠し系主人公を見習ってくれ。
「茜さんが無事ならそれで良いですけど。念を押すようで悪いのですが、本当に危害は加えられてないのですよね?」
「痛いのはなんの利益にもならんし」
「信頼出来る真摯なアイドルって言えますか?」
「栞っちのガちんこ主義も満たしてくれるガチガチのガチよ」
「成果を出せる見込みがあると」
「他からの意見は知らんが、ボクからすればもう成果は十分に出してる」
うーんいつ聞いてもバカ真面目な実力主義だ。実力主義というか後進制デスティニープランって言った方が良いかもしれんけど。有識者達が分析し合った結果に基づき相手に1番適性ある役職を与える。それが栞っちのやりたいこと。
出会った頃から『生徒会長になったら部活動に入ってる生徒を適性毎に振り分けて転部させたい』って言ってたし。びっくりするほどディストピア。
「……あの、聞き忘れたのですが茜さんの好きなスクールアイドルってこの学校にいますか?」
「いるけど」
「……そうですか。あの、もしもの話なのですが……もしもですよ?私が同好会を廃部にしたいって言ったらどうしますか?」
「えっ、好きにすりゃ良いじゃん」
「えっ……い、良いんですか?好きな人がいるって言ったのに……」
「ボクは別に推しっていう人間を見てるだけだし。うんこしないだの彼氏いないだの都合の良い優しさだのそういう虚構部分は見てない。あと肯定して欲しくてその質問したんじゃないの?否定されたら迷ってストレス溜まるだけだし」
「いえ……それは……ごめんなさい」
免罪符扱いだろうが罪悪感を紛らわす鎮痛剤扱いだろうが全部どうでもいい。自分が認めなきゃいけない責任を質問って形で相手に押し付けちゃうのは弱い人間の癖だし。
それに共感者って言う味方がいないと孤独から派生した異物感のせいで人の目を過度に気にしちゃうからダメ。迫害恐怖精神で皆と同じ行動以外のアクションが起こせなくなる。ちなみにこれを世間一般清潔感ワード辞書で変換すると『協調性』って出てくるぞ。明日どころか未来永劫使うことのない無駄知識だから覚えなくて良い。
早い話が自分の行いを変な目で見ない精神安定剤が欲しいだけ。
「1回思いっきりやってみればあの人たちの頭のイカれ具合が分かるよ。コンビニの新装開店みたいなノリでポンポン復活するから。あと高咲侑っていう秀才予備軍のテンプレ優男主人公みたいな女がいるんだけど、そいつだけは丁重に扱え」
「なにかすごい権力が……?」
「人望が厚すぎて曇ると周囲に狂戦士バフがかかる。とりあえずやらかしたら生徒会室にロケランがぶち込まれるくらいの覚悟はしておいた方が良い。死ぬ。最悪地獄にまでDDoS攻撃仕掛けて来るからマジで気をつけて」
「き、気をつけます……けど、茜さんは同好会にお世話になったりしたのでは……?」
「同好会の皆と話すだけで同好会っていう概念自体には愛着なんてないから平気。そもそも部員じゃないから愛着云々語るのは場違いだし。あとシンプルに絆強化イベに使えそうだから全力で潰しにかかって欲しい。味方にはならんがスポンサーにはなってやる」
「それもう味方と変わらなく無いですか……?」
大前提としてボクがあそこにいる時の扱いって『客』だからな。こっちから見ればただの休憩所とか推しの事務所。だから個人的に言えば潰れようが潰れまいがどうでも良い。璃奈りーに頼まれて初めて動けるかなって具合。
というかそもそもの話、動かない方が面白そうなんだよな。デスティニープラン三船vsスーパーフリーダム同好会の戦いとか二度と見られないもん。ポップコーン兄貴になる以外の道がない。
もうずっと前から言ってるけど、アイドル面で好きだと断言出来るのって璃奈りーだけだし。だからこうしてライブが見たくてステージの清掃ボランティアまでしたんだよ。同好会含めた有象無象のためじゃない。
やりがい搾取にも見えるけど、実際は性欲隠しながら必死こいて女に優しくしてヤる機会を伺ってる男の延長線上か亜種だからね。別に褒められたもんでも無い。ちんこで気持ちよくなるか脳汁で気持ち良くなるかの差。どっちが頭良くなるかと聞かれれば後者だけど。
そういうわけで璃奈りーがアイドル出来るなら同好会の有無は関係ない。あと潰してもすぐ生えて来るからどう頑張っても栞っちが学校卒業するのが先だぞ。
スペックじゃなくて時間制限で負けるの、ハイパームテキとゴッドマキシマムマイティみたいだな。