虹ヶ咲ヒーローorナイト&キング 作:コントラポストは全てを解決する
どうしよう……仮眠のつもりで寝たら1晩越えちゃった……。膝枕して貰ったのが19時、起きたのが今朝6時。何時間待たせたなんて数えるのが馬鹿らしくなるくらい茜くんに膝枕させた……。膝枕っていうか正座。11時間正座しっぱなし。修行?
「あの……茜くん……ごめんなさい……」
「こういう事もあるから限界突破はしない方が良いって言われてるんだ。突破した後のアフターケアを周りに押し付ける事になるからね。まあ、授業料浮かせたまま教訓学べたからおの字でしょ。セミナー言ったら確実に1万取られてたよ」
「歩ける……?」
「痺れは引いたけど膝の神経が復活してなくて無理。ごめんだけど先行っててくれる?一応午前だけだし行かなくても良いんだけどさ、なんか大事なプリント配られたりするだろうし。ボクの分も貰っといて欲しい」
「分かった……行って来る……」
「行ってらっしゃい」
罪悪感……。やらかしかな……?
昨日だって茜くんはあんなに気にかけてくれえたのに、私は大丈夫だって豪語して啖呵も切った。結果はこの様。茜くんの言った通り私の体は結構ダメージを受けていたらしい。
やっぱり年がら年中キリキリ生活してる人の言葉は素直に受け取っておくべきだった。
取り返しはつくけど、表情の成果も含めると印象最悪。ライブ楽しむ茜くんの熱も冷ましちゃった。アイドルとしてもパートナーとしてもダメダメ。
どうやったらこの失敗を活かせるか分からない。圧倒的発想力不足。
────
特に重要度が高い書類はなかった。課題提出も明日からだし問題ない。部活休む連絡もかすみさんに入れた。帰る。看病。
「あっ、璃奈ちゃん!ちょっと待って!」
「…………歩夢さん?どうしたの……?」
「その……あかねくんから連絡貰ってね?璃奈ちゃんのお話聞いてあげて欲しいって」
「私の……?」
「うん」
私の話……このまま罪悪感で世話焼かれても嬉しくないから一旦歩夢さんに話して頭冷やせって言う茜くんの気遣い?
でもなんで歩夢さん……?確かに看護師さんみたいな雰囲気はあるけど。カウンセラー代わり?
「えっと……買い物したくて……それしながらでも良い……?」
「大丈夫だよ。あかねくん学校休んだんだよね?かすみちゃんもお見舞いしに行くってさっき学校出たところなの」
「そっか……なら、お願い……。茜くんが好きそうな物……選びたい……」
「うん、一緒に探そ」
歩夢さんなら茜くんの事を侑さんから聞いてるはずだし、お世話の仕方が上手いから看病も慣れてるはず。だから元気になる料理だって知ってると思う。
「璃奈ちゃんはなにあげたい?」
「元気が出る物……なにか……。私、エナドリしか知らないから……」
「あはは……あかねくんは風邪?寝不足?」
「膝……」
「ひ、膝……?」
「茜くんに膝枕頼んだまま、寝ちゃって……11時間、そのまま……。紙の折り目みたいに曲がったのが、戻りにくくなってて……上手く立てない状態……」
「そ、そうなんだ。えっと、疲れて寝落ちしちゃったとか?」
「想定外だった……」
茜くん良い匂いするし、足柔らかいし、あったかいし、好きな人に甘えるの心地良いし。どこでも安眠セットみたいな身体してるから抗えなかった。11時間気絶したのはほんとに想定外だけど。
というかよくよく考えたらいつも茜くんと同じベッドで寝てるし、茜くんの匂い+過酷な疲労が合わさったらガチ睡眠入るのは当然だった。なんで気づかなかったんだろう。
「璃奈ちゃんずっと頑張ってたもんね。ちょっと頑張りすぎな気もするけど。あかねくんも頑張り過ぎって言ってた。でも、本当は何か伝えたくて頑張ったんだよね?」
「その……茜くんは、自分の事をただのトレーニング装置とか……講師としてしか思ってなくて……私との関係も、1年くらいで終わらす予定で動いてたから……。あとは、私情……」
「もう少し一緒にいたい?学校終わるまでとか」
「一生……」
「い、一生……」
だって、こんなに近づかれたら家族だって錯覚しちゃう。家庭教師はこんなサービス良くないし家政婦だってもっと業務的。というか感情入ると両者切りにくくなるから本職はそこら辺しっかりしてる。
でも、茜くんは違う。ビジネスなんて名ばかり。低賃金労働で詳細を見れば突撃労基レベルのやりがい搾取。
きっと茜くんの中ではこの距離感も経験のため。私と似たような人を見つけた時にちゃんと動けるようにってやってるだけ。契約期間内で経験貯めて、終わったらまた別の誰かの所に行く。
だけど、やっぱり私にはそれが嫌で、最悪友達でなくても良いしたまに家に来て一緒に遊んで行くのでも良い。生活水準が下がるのには慣れたけど茜くんがいない寂しさだけは消えなくて。
1回でもお別れをしたら二度と会えない気がして、だから必死になったけど……結局こんな有様で。
本当は一生なんて図々しい願いなのはわかってる。重いセリフ吐いてる自覚もある。
でも茜くんが好きなら、茜くんの事をちゃんと分かってるって自負してるなら、自分の気持ち全部ぶつけてワガママ上等精神で行くのが1番。
だって茜くんが見たいのは人の奥底の醜い部分だから。私利私欲に走って自分の感情ぶちまけてからが本番。そこに面白さや役に立ちそうって価値を見いだせたなら受け入れる。普通の人間が出すレベルの普通の面白さなら切る。
茜くんは猫を被らなきゃ続かない関係とか意味が無いって言ってた。だから取り繕ったところで意味がない。それに本気になれたら10年単位で付き合うつもりだし。
実際は10年先まで生きる気があるのか怪しいところだけど。だからこそ捕まえたい。
「あかねくんに好きって気持ちを伝えたかった?」
「今は……まだ、自分のこと大事にして欲しいって言うのと……普通の人より惰性で生きてて、お姉さんを世界に知って貰えたらそれで良いって気持ちで生活してるから……」
「あかねくんに自分を大事って思って欲しい?」
「思って欲しい……。欲を言うなら私のことも大事って思って欲しい……」
忙しいのに私に付き合ってくれるっていうのが始まりだった。最初は確かにビジネスらしいやり取りで、だけど段々と距離感が近くなって行って、それが本当の茜くんで。
でも、茜くんは素を抑えているつもりでいた。私がしなきゃいけなかったのは知らんふりっていう事務対応。
だけど勝手に心の中で大事な存在にして。友達みたい、家族みたいって思って、勝手に大事にして、心配して、落ち込んで、迷走してぐちゃぐちゃになって。
茜くんはずっと『人間の本質は自分勝手』って話をしてた。本気で人のために自分を犠牲に出来ると思ってる人が嫌い。なのに私は茜くんのためって建前を使っちゃった。
でも、それでも茜くんはゲームを買ってきたりご飯を作ってくれたり悪態ついて恨みを買ってでも私を元の軌道に戻そうとしてくれた。それで戻してくれた。ううん、戻ったんじゃない。進んだ。
今だってこうして一緒にいてくれる。家、一緒に住んでくれる。普通の家族の形、感情、思い出させてくれる。
「今の璃奈ちゃんは茜くんに大事にされてないって思う?」
「されてる、けど……どちらかと言うと傷物とか、お姫様……。必要以上に大事にされすぎてて、守られる側が不満持ってる……。私はもっと……近くで、隣で歩いていたいだけ……飛行機のパイロットと客みたいな関係は求めてない……」
「でも、飛行機のパイロットは空港に着いたら璃奈ちゃんを起こすと思うよ?私もそういう時はゆうちゃん起こすし」
「……うん……」
私もそこだけは本当に理由がわからなかった。なんで座禅より辛い体勢で4kgある人の頭を乗せたまま次の日の朝まで正座してたのか。こればっかりはミャーコちゃん相手でも起こすって自信を持って言える。お姫様扱いなら1回起こしてベッドに移動させるはずだし尚更だった。
「ちょっぴり不安?」
「どちらかと言うと、分からないって気持ちが強い……。なんでなのか、どう思ってたのか……どう思われてるのか……。あんまり、自信持てなくて……表情も、全然だから……」
「昨日ライブが終わったあとの璃奈ちゃんはすっごく疲れた顔をしてたよ。皆もそう言ってた。誰でも分かるくらいにちゃんと表情ができてた」
「そう……かな……?あんまり、意識できてなくて……」
「あかねくんが写真撮ってくれたから大丈夫。ほら」
…………写真?何それ知らない……。寝てる時に撮ったやつ?
歩夢さんに見せて貰ったら全然普通に起きてる時の私が写ってた。正確には膝枕で眠るまでに話した雑談タイムの写真。めちゃくちゃ魂抜けそうな顔してる。ぐでたまみたい。
そういえば何となくのうろ覚えだけど、茜くんがスマホ構えてた記憶がある。ラインしてたんじゃなかったんだ。
「笑顔はまだ遠いかもだけど、表情はちゃんと作れてるよ。だから自信持って。それに璃奈ちゃんの事ならあかねくんはちゃんと見てくれるから。ね?」
「…………うん。歩夢さん……ちょっと……すごい急用……家、行かなきゃ行けなくなった……」
「そう?ゼリーだけで大丈夫?」
「大丈夫……」
「そっか。車気をつけてね」
「ありがと……またね……」
「うん。行ってらっしゃい」
何となくだけど。まだ確証は無いけど。自惚れかもしれない。茜くんならやりそうって主観でしかないけど。でも、信憑性はある。
あの日、焦りで茜くんの考えてる事が分からなくなった時。私は自分の判断力が鈍っただけって勝手に思い込んでた。
でも、たった今わかった。茜くんはあの時から既に何かを察して即興の計画に入って、私の声をあえて聞かないようにした。
それと茜くんが言ってた欲しい物。ソフト作っても掃除マシン作っても収まる気がなくて、ライブステージを復活さても全然晴れた顔をしない。そもそも自分自身なにが欲しいのか分からないって言ってた。
でも、今日の朝は満足言った顔をしてた。私に無理をするとどうなるかを教えられたから満足したのかなって思ってたけど……多分、そういう事だと思う。表情が出るのは確定で、『その結果から天王寺璃奈がどう成長するか』はたくさん分岐がある。分岐ガシャは景品がいっぱい。多すぎて何が欲しいかこんがらがっちゃった。
でもどんな結果であれ、ここまでされてエンジンを鎮めたままにするのは無理な話。笑顔でも泣き顔でも困り顔でも、このエンジンは絶対に吹いてた。
だから私は何も悪くない。茜くんが天然ジゴロを身体で語ったのが悪い。できれば身体だけじゃなくて言葉でも語って欲しい。
◇
歩夢先輩のフォローが完璧過ぎて好感度が上がってしまった。100点満点の言葉を璃奈りーに送ってくれて理想の嫁ポイント+100000000000点!!!!!って気ぶったぞ。まあ、こんだけ包容力と優しさがあるなら男にめちゃくちゃ狙われてるだろうなって確信を得てしまったが。時代が時代ならエッチなFAが量産されていたと思う。
一方その頃高咲侑は、十字の業を2丁持ちし己の罪を積み重ねていた。
そして件の夕雲茜は己の主に捕食されていた。
いやちょっとかなり助けて欲しい。イスの上で足を伸ばすストレッチをしていたら璃奈りーが帰ってきて、そのまま日大タックルでDIVEして来たんだよ。
そんで今は対面座位みたいな体勢でボクの鎖骨を甘噛みしてる。一瞬吸血衝動にでも目覚めたのかと思って焦った。ほら、ヴァンパイア症候群とかあるし。血が飲みたくなるやつ。あんな鉄の味しかしないクソ不味い液体飲んで何が楽しいんだろうね。胃はスカスカするし、キュルキュルお腹が鳴って恥ずかしいし。
それはそれとして璃奈りーを何とかしないとなんだけど。
突進力と言い突拍子の無さと良い優木せつ菜を感じる。熱にやられて頭せつ菜になっちゃったのか?優木一族の血液を無しにせつ菜細胞はあまりにも危険過ぎる。ぺっしなさい、ぺっ。
菜々ちゃん先輩は奇跡の体育会系であってその細胞を移したとしても出来上がるのはデカいウザいうるさいの三拍子揃った一般根性体育会系だけ。菜々ちゃん先輩は親の教育が成功してるから善玉体育会系になってるだけで他は当然ダメ。まずうるさいけどウザくは無いっていう決定的な差がある。魅力でも知名度でも社会貢献度でも負けてて恥ずかしくないの〜?(CKMB部)
いやそんな呑気な事言ってる場合じゃねーんだって。
何これ?なぜに鎖骨?噛み砕くにしては噛みにくいし抵抗されながら噛み続けるの難易度高いでしょこの骨。全日本整骨協会で折られた被害が4番目に少ないって報告される骨やぞ鎖骨って。噛みつきアタックしたいならフェラで釣ったあと亀頭噛みちぎる方がまだ現実的。
一応璃奈りー本人に危害を加える気は無さそうだから、なんとか和平交渉は出来そうだけど。理由はなんだろう……やっぱりブラック労働過ぎたか?大丈夫?裁判する?
「えーーーーっと……璃奈りー?どうしたの?何か嫌な事あった?」
「うみ……」
「膿……?」
えっ、何、ボクの鎖骨から膿出てるの?炎症?切開手術の経験とか無いんだけど。と言うかなんで人の膿甘噛みしてるの?異状性癖?カサブタ食べたいって女になら会ったことあるけど……それの同類?大人になれない私の願いを1つ聞いてくれってポエム吐く系?やかましゃ。
「り、璃奈りー?まだ眠かったなら一緒にベッド行く?えっと、あの……璃奈りー……?聞こえてる……?」
「…………ゼリーあげるから、少しだけこうさせて……」
「ストレス?何が原因?」
「……………………茜くん……」
「えっ、ボク?詳しい罪状聞かせて欲しいんだけど……」
「うみ……」
「いや膿じゃなくて……」
この後も話を聞こうと思ったけど1時間甘噛みされ続けたから諦めてゼリーを飲んだ。時間が経つ事に抱きしめる力が強くなるから、頭がレイプ警告を出しかけたけど何も出来なかった。何も起こらなかったから問題ないけど。
甘噛みが終わった後も5割増しでピッタリだし、懲罰でもないのに混浴迫って来たし、寝る前はボクの鼻の頭……唇?辺りをじーっと見続けてたし。入眠5秒前までめちゃくちゃ抱きついて来て匂いも嗅いで来たりでワケワカメの阿波踊り。
どうしよう。璃奈りー壊れちゃった。