虹ヶ咲ヒーローorナイト&キング 作:コントラポストは全てを解決する
──弟くんと行動が揃うの珍しいな。
なんて思いながら、宮下愛は茜と一緒に体育館へと向かっていた。
肝心の茜は全く乗り気では無く、どこか気まずそうな、どこか申し訳なさそうな顔をしており愛は不思議に思う。めんどくさがるならまだ分かるのだが、なぜ昨日の菜々みたいな申し訳なさを出すのか。
「弟くん、緊張してる?」
「役に立てる事は分かってます。ただやっぱり不安が残ると言いますか」
「大丈夫だよ。練習は厳しめだけど雰囲気は明るいからさ。弟くんも『もしかしたら問題無く終わるかも』って期待があって受けたんでしょ?」
「いえ、創作に耽けすぎる人がいるためこの世を見せる必要があってですね。だからデータがいるんです。スタメンとベンチ、あとはスポーツする人の心情。ここら辺のデータが集まってやっと問題文が作れる」
「よく分かんないけど……どうやって問題文見せるの?」
「ボクが関わった範囲でバスケを見て貰います。あとは勝手に悩んで勝手に迷走して勝手に答えを出すので、最後に答え合わせをして終わりです」
「やること自体は少なそうだけど、弟くんが悪者やらなきゃダメなくらいの大事ってことだよね?大丈夫なの?」
「璃奈りーのパフォーマンスに関わるので、四の五の言ってる場合じゃない。それにこれくらいは日常ですから」
バスケをしてどこかの創作家に現実を見せると璃奈が助かる。どこがどうやって繋がるのか愛には全く想像出来ない。
だが、茜のことだし気の遠くなるような計画を立てているんだろうなと悟りながら、愛は複雑な心境で茜を見た。願う事ならライブステージの時みたいな無茶苦茶はしないで欲しい。あれは一学生がやって良いものじゃないから。
それに、きっとこの仮入部だってなにかの材料になる。純粋な気持ちで部活を体験して欲しかった愛にとっては、やっぱり複雑な心境だった。
「弟くんはスポーツ好き?」
「金がかからないスポーツなら」
「かけっことか?」
「あとは簡単サッカーとか簡単卓球とか」
「ああ、プロとか仕事としてお金が関わらないスポーツが好きなんだね」
「だってそれぐらいでしか輝けませんし」
未経験の集団を運動神経で捻り潰すのが好きと言ってるわけじゃない。おそらく『金も知名度も関係ないパーティーゲームとしてやるスポーツが1番スポーツとして真価を発揮出来る……と茜は語っている。言外に。
言っている事はわかるのだが、愛からすると夢を目指して全力を出すのもまた楽しさだと思うのだ。夢に向かって同じ方向に歩く。さすがの茜でもこれを否定するほど酷い性格はしてないと思いたい。
「あの、愛さん先輩。この先少し暇になると思うのでお城崩し引き受けてくれませんか?」
「弟くんじゃなくてアタシが暇になるの?」
「はい。多分やること無くて刺激不足になると思うので」
「よくわかんないけど……とりあえずお城崩しの内容だけ教えて欲しいな」
「そんな難しい事じゃないですよ。スクールアイドル部で部長以外と交友関係を築いて欲しいんです」
「あ、あそこ行くの?結構鬼めの部だから愛さんやって行けるかなーって不安なんだけど……」
「大丈夫です。あそこの部長は身体スペック除くと全てがベイビーちゃんなので。だから愛さんのコミュ力があれば丸め込めます。あとこの頼みを受けなくても最後にはエマ姉か愛さんが行くことになるので、余計な事は考えずにさっさとイベント入った方が良いですよ」
「き、気が向いたらで良い?」
「はい、無理強いはしません。いざとなったら部の株全部買い取って同好会の土台パーツにする保険もありますので。だからどうか深く悩まずにお願いします」
茜曰くアイドル部は株で動いてるらしい。それは部活動なのか愛にはよく分からなかった。確かにアイドル活動って結構お金が掛かるけども。
「もしかしてこの仮入部もアタシを暇にさせる準備だったりする?」
「いえ、そこら辺はただの副産物です。今ボクが欲しいのは試合のデータ。楽しむスポーツと本気でやるスポーツ。どっちが輝くかって言うデータが欲しい」
「それどっちも同じじゃない?」
「かもしれないですね。ボクの中にある仮定の話なので」
愛が望んだ結末では無いが、曲がりなりにもスポーツを楽しもうとしている茜を見て、少しは計画が上手く行ってるのかなと考える。
けれど結局、この姉離れ計画も茜のご大層な企画の前では手の平を転がるボールにしかならないのだろう。記録として見るなら子供の妄想みたいなデタラメなのに、それを現実にしてる茜が酷く空想的に見えた。
────────
試合風景をお届けしたかった。出来なかった。いや、しちゃいけない試合だった。
これをどこかの高校とやる練習試合でやったら確実にその学校と不仲になる。身内の範囲で片付いたのが幸い。
「あー、その……夕雲くん、だっけ?今日はありがとね……その……良い試合、だったと思う」
「お世話様でした。楽しかったのでまた来ます!」
「うん……初心者だもんね。ありがと。夕雲くんが自分のスポーツマンシップを尽くせたなら言うことはないよ。またいつかやろうね」
「ありがとうございました」
あの真面目とやる気が取り柄みたいな演技を見るに、これは狙ってやった事。でもわざとではなく確かに茜は自分の出来る事しかやってない。
実際、茜はスリーポイントシュートが得意だと菜々も話していた。
得意というか、茜はゴール正面のセンターラインから撃つスリーポイントしか入らなかった。
漫画だと非常用切り札にされて持ち上げられるような特技。だけどシュート位置がわかるから簡単にシュートブロックされるし、左右どちらかに1m以上ズレると精度がガクンと落ちる。
シンプルに強いけどシンプルだから対処も簡単。何から何まで漫画みたいな特技。
そして、そのシンプルさがいけなかった。
茜の特技は、ディフェンスに入った相手をものすごく暇にする。センターラインから動けないので相手もそこまで動く必要がないし、シュートブロックの対抗手段を持ってないので実質茜の前で突っ立っていれば良いだけ。
試合後半からは茜のディフェンスを誰にするかで静かに揉めていた。相手からすればこの上無く、そして今までにないパターンのつまらなさだったので混乱したのだろう。若干雰囲気が悪くなりつつも、だけど茜は楽しそうだったので誰も文句は言えずに、そのまま現在へと至ってしまった。
「弟くん、その……おつかれ様。えっと、楽しめた?」
「予定通り事が運んで脳汁でたって意味なら楽しかったです。で、ここからが本題なんですけど、試合の感想というか……アンケート?とっても良いですか?」
「良いけど……どれくらい時間かかる?」
「そこまで掛かりませんよ。ボクにバスケの適性があるかどうかを聞きたいだけなので」
「バスケの適性……か」
悩ましい問題。今の特技を身につけた努力と根気を考慮すれば他もできそうって信頼があるし、最終手段のセンターラインシュートっていう必殺技もある。
だけど、おそらく茜の性格を考慮するとワンマンプレーで輝いて他がおまけになる確率が高い。楽しさと協力のスポーツマンシップを掲げる愛としては微妙な所であった。
「場合による……?本気でやるなら反対するけど、遊びとして楽しくやるなら適性があると思う、かな」
「うん。ありがとうございます。愛さんのおかげで良いデータになりましたよ。ものすごくものすっごい綺麗がバリ高してます。黄金比と同じ芸術性を感じる」
「そ、そっか。良かったね……」
語彙力を無くすほど茜は楽しかったらしい。どこをどれくらい楽しんでるのかが愛にはさっぱりだったが。
そうしてキラキラした様子の茜を横目に、愛は軽くため息をつきながらこの事を璃奈に相談するべきか悩んだ。
確かに表面の状況だけ見れば茜が悪いようにも見えるが、ちょっと異常な初心者が来ただけで雰囲気が怪しくなるストレスフルなバスケ部にも問題があるように見えたのだ。
とりあえず帰ったら菜々に相談しようと予定を決め、愛はアイドル部の事を片隅に思い浮かべながら帰路についた。
◇
私、少しだけ分からなくなってしまいました。人の得意不得意ってなんなのか。適性の振り分けって人の思考だけでやって良いものなのか。
「栞っち!同好会潰そうぜ!!!」
「……すみません茜さん。今ちょっと考え事をしていまして」
「どしたん?親ピと喧嘩でもしたの?地位継承の座が妹にでも移ったとか?大丈夫?妹誘拐しとく?」
「倫理観とかないんですか……?」
「優しい金持ちに買い取られた奴隷扱いでお持て成しするから大丈夫。安心安全ヨシ!」
「倫理観とかないんですか?」
何を見て良しって言ったんですか……。こんな非常識……アウトロー……蛮族?な人を頼ろうと思っていた自分に自信が無くなって来ました……。見る目がない。本当は会社のトップ向いてないのでしょうか……?
「それで、実際のところなに悩んでるの?アイドル部が出来たらしいし早い内に動かないとメタ張られるよ?同好会吸収させて穏便に潰すなら今がチャンス。起承転結株価で転上がりしてるから、栞っちの株を下げずに消すなら今しかない。サルベージするんだ!」
「廃部より酷い言い方しますね……あとサルベージじゃなくてリバレッジでは?」
「お金ないから体払いで良い?女体盛りが似合いそうな女を一人知ってる」
「最低じゃないですか……」
「マジカルパワフルキルサムオールはカードキャプターの間じゃ常識ぞ。大魔法峠もそう言ってる」
「日本語で話してくれませんか……」
「肉体言語が共通言語」
スゥ…………(冷却沈着)。
あの、もしかしてなんですけど……この人ってだいぶ頭がアレな方だったりします……?行動自体は最初からおかしかったので特に言うことはないのですが……。それと同好会の皆さんって毎日これを相手にしていたんですか?
いやそもそも茜さんがヤバいって一目置いてる同好会の人達も何者なんですか……。
「同好会潰した暁には青酸カリを進呈するので早く潰して欲しい。適性管理思想の人工知能vs自由と正義と悲しき性癖を仮面で隠す儚き少女達。新しくカメラも新調したしカット入れる予定もないから好きに突っ切って良いよ」
「いや……あの……私の気持ちを番組にしようとするのやめてくれませんか……」
「バッカお前悲しい過去持ちの新キャラとか最高のスパイスじゃんか。愛と太ももとバックボーンは重ければ重いほど良いんだよ。だから今のうちに哀しき過去で視聴者の心掴む練習をしておくのが最善。同情票も貰える」
「えっと……拒否権とかないんですか?」
「異論も意見も求めてない」
なんなんですかこの人……。昨日までアイドル全否定精神に執念燃やしてた私の本気が予定調和に見えて来ます。茜さんに全部誘導されてるみたいで怖いです……。
それに加えて自分も私も脚本の一部みたいに扱っていますし……そこら辺切り詰めると宇宙を見た時みたいな恐怖を覚えてしまうから考えたくない。自我なのか仕組まれてるのか分からなくなって来ます……。
「あの……頭がこんがらがって来たので少し時間を置きたいのですが……」
「ストーリー進行を考慮して話すけど、ボクはまだ帰りたくないって思ってるから運命上だと帰るべきではないっぽい。プログラムだとここに居座れって指示が出てる」
「それですよそれ!その私の意思か予定されたものなのか自分がなんなのか分からなくなるそれが嫌なんです!怖いから距離置きたいって言ってるのになんでわかんないんですか!」
「同好会潰してくれなきゃ今栞っちがブチギレるまでに置いた伏線を紙芝居にして持って来ちゃうぞ。ボクはアカシックレコードすら平気で音読する正義の詩人ヤンキー」
「脅し方の癖……!」
助けておねーちゃん……私このままじゃ精神崩壊して跡取りも後戻りもできなくなっちゃいます……。家に帰りたい……。
もうこうなったらやるしかない……不本意ですけど……本当はこんなよく分からないノリでやりたくなかったですけど……生徒会長業務最初の一歩をここで踏み出すしかありません……じゃないと踏み出す前に私の全てが破壊されてしまいます……。
「わかりましたよ……スクールアイドル部とスクールアイドル同好会を合併させるので今はそれで手を打ってください……」
「なら最初は両者の話し合い期間だね。アイドル部と同好会、ハートの強い方が生き残る生存競争リアリティショーだ。かすみさんとアイドル部の部長にバトル勧告出してくるね!」
「はい……次来るのは四日後とかでお願いします……」
やっと帰ってくれました……でも時間だと三十分しか経ってない……体感三時間くらいなのですが……。
しかもさっきは帰るべき時じゃないとか言ってたのにすぐ帰りましたし。これも茜さんが言う物語の進行…………やめましょう、心が壊れる。
◇
やっばー……どうしよう……。あの嵐珠とかいうアイドル部の部長が同好会を乗っ取ろうとしてる……。乗っ取りというか実質の廃部。
こんな短期感で再設立と廃部を繰り返してる部活なんて早々ありませんよ。今後伝説になるかもしれません。
だいぶ横暴だったのですが、嘘かほんとか新生徒会長を味方につけてるらしいので権力的には問題ないって言ってました。近年稀に見る王道悪役。
ですが茜丸みたいな複雑さもなければ緊迫感もなかったので、正直な事を言うと『若いなー』としか思えませんでした。
そもそもあの男は悪役を買って出てるだけで、やってる事自体はだだのお悩み相談室ですからね。その悩みの調べ方が独特なのと、解決するまでは音信不通が基本、加えて解決の仕方が危なっかしいからこうして不満を買うわけでして。要はもっと連絡を寄越せと──
話を戻して。
対しての嵐珠なのですが、あれは聞いてるようで実際は了承が欲しいだけです。いわゆる『はいかYESで答えろ』を地でしてくるのでアレルギー反応がやばいんですよ。
夕雲ゼミでやった『1週間で片付く簡易裁判講座』の受講経験がなかったら崖っぷちに焦って押され来ってました。これが保険と余裕。やってて良かった夕雲ゼミ。
ですが心の余裕があるだけで状況の余裕は全くないんですよね。せつ菜先輩も本物の堅物が来たって会長を危険視してましたし。正直権力が向こうにある時点でだいぶ詰んでます。
ここまでを纏めた上で今後の目標を立てるとするなら、『何とか事を穏便に済ましつつ、その中で同好会の維持とアイドル活動』……でしょうか。
これ茜丸じゃないと処理しきれない仕事量では……?皆で役割分担するとして誰がどこを担当すれば良いのでしょうか。
あと出来ればなんですけど、嵐珠と新生徒会長とも上手く交友を持ちたくてですね。だからただ消せば良いって話でもなく……あれです、殺さないように戦うのが一番難しいってやつ。
とりあえず最初のステップとして生徒会長がなぜ私達を目の敵にしてるのか調べないと。アイドル嫌いなら嵐珠も消すはずですし。ここら辺の情報を集めれば土台を作るための材料が手に入るはず。
「かすみさん!アイドル部vs同好会で性欲おちn……勢力ガチンコ対決するからユニット編成決めといて!」
「今確実にアウトな言い間違いしかけましたよね?というかいきなり来てなんですか勢力対決って」
「アイドル部と合併後の主導権を賭けてバトルするの。バトル内容は決めてないけど多分ライブが絡むと思う」
「……なるほど。生徒会長に会えたんですか。よく取り合って貰えましたね」
「権力と知恵で脅したら勝手に泣き崩れたよ。あの人カタブツなだけで頭の動きは優秀な一般人だからゲッター線を浴びせとけば何とかなる」
「えぇ……」
おそらく権力と脅しは直列で結びついてるわけではないと思いますが、あの会長がその程度のパワープレイで屈するとは思えず。家族を人質にでも取ったとか?人質というか家政婦として入って茜丸抜きじゃ家が回らない状態にしたとか。
「えっと……確認なのですが、頑張れば同好会を残しつつアイドル部とも良好な付き合いが出来る……って考えて良いですか?」
「ゲーム開発部と第2ゲーム開発部みたいなトムジェリ関係が限界だけど、それで良いなら。仲はいいけど主従関係は間逃れない」
「それでもまだましなので大丈夫です。バトル内容って茜丸が決められるんですか?」
「同好会廃部周りの主導権は栞っちにあるけど、ちょっとした書き換え権限くらいなら持ってるよ」
何をどうやったらそのレベルまで懐に入り込めるのでしょうか。あの生徒会長ってなんかすごい財閥の娘らしいですし、指パッチンで茜丸を退場させられる権力くらいありそうなのに。
そもそも私の中の第一印象が『アニメで出てくるやたら権力持った生徒会長』ですからね。それくらい太刀打ちできない存在だったはずなのですが……どういうわけか茜丸に若干手懐けられてる。こわ……。
「やろうと思えばアイドル部自体を撤退させられたり……?」
「そこまでの都合の良さはないよ。出来たとしても地道な編集と繊細な作業がいるし、書き換えミスったら相手のメンタルが死ぬ。ギャンブル過ぎるから無茶な事はしたくない」
「ペン1本で生徒会長の精神壊せるの怖いですね……」
「ペンは剣より強いし、ボクはペンにもなれる剣だ。それに綴った物語が宇宙の深淵を追体験させるみたいなもんだからそりゃ一般人は持たん。人として生きる側面でしかもの考えられないやつらだし」
「それが普通では……」
「とは言ってもかすみさんだってクラスメイトが別の生き物に見え始めてるでしょ?人に似た日本語を話す何か」
「いや……うーん……微妙なところと言うか……」
ちょっと心当たりがあるのが嫌ですね。でも、あの可愛さ云々の件は皆が単純というより私が考えすぎてたってだけな気がするんです。いちいちそんな考えてたら疲れますし。
「この世界の9割の人は論理思考が得意らしいけど、論理に使う情報源が自分の感情しかないからすごい主観なのよ。かすみさんも化粧品の努力で脳トレしてなかったら、多分教養を保存できなくて鼻声みたいなぼったれ萌えボイスで喋る嫌われ系可愛いになってたよ。刺激いっぱいの勉強をやって来た成果だね」
「周りの人が教養ないみたいな言い方しますね……」
「パンピーって高校大学が終わったら勉強しなくても良いとか思ってそうなんだもん。学び捨てた仕事とかただの修行よ?なんでも良いから疑問を持って調べながら動かないと持たん」
「あの……私も可愛さとか化粧品抜くと何も勉強してない状態なのですが……。授業でもネットに載ってた美容法の効き目を考えながら片手間でノート取ってますし……」
「それだよそれ。メインの仕事をしながら脳内では別の事を考える。仕事ダリーって思う隙を頭に与えない」
私が正解寄りなんだ……。いやでもこれ教科書に落書きしてる人と大して変わらない気が……。確かに数学の公式と違って活用法が思いつき易いですし、バイトとかにも役立ちそうですけど……でもやっぱり私のこれは茜丸が言うほどの物じゃないと思います。
「その……メンタルケア的には正しいって分たったのですが、やっぱりテストが微妙なのでダメじゃないですか……?」
「でもかすみさん追い勉すれば平均点越えるじゃん。テストで点取るために授業受けて、その科目にしか使えない学習法で各教科ちまちまやって、そこから85点って結果を出す人よりかはずっと使いやすい」
「私もテストで点取る努力しますよ……?」
「かすみさんは良いんだよ。努力しすぎて努力の仕方が洗練されちゃってるし、一から十まで噛み砕けば一発で理解してくれる。世が世なら今頃は王の側近とかやってたと思うよ」
「いやでもかすみん的には普通の努力ですし、皆も頑張れば出来ると思います」
「頑張る姿が異次元過ぎて誰にも気づいて貰えなかった努力が普通な訳ないだろ。多分ほとんどの人はかすみさんを才能って言葉で片付けて頑張れない自分に言い訳してると思うよ。ここで感化されてめっちゃ頑張れば少しは変わったかもなのに才能って言葉で諦めたから一般人。心も体もブスと微人の中間」
「火力高っ……」
これ女の人が集まる場で言ったら陰口とか言い訳ネタ超えて物理乱闘始まりますよ。
才能あるやつを越えろなんて言ってないけど頑張れば近づけたかもねって話しなのでグサグサ刺さる。いくら頑張っても茜丸みたいになれない私にも刺さる。
「ちょっと考えれば分かることを自分で考えてる人にはさ、それ以下の無知郡が別の生き物に見えるわけよ。犬猫レベルだけど可愛くない犬猫だから嫌悪パない。下手すると童話に載ってた政治家みたいになるよ。学ばないし教育ヘッタクソだし何してもうるさい。嘆いてゴネて何もしないベイビー。そしてそれに愛想を尽かした政治家」
「それ割と政治家キャラが悪いみたいなところありませんでしたか……?」
「制度作ったり手当出したりして環境向上を目指しても、9割がそれを活かせない馬鹿だったから無駄金だったじゃん?あの数十人だけで国民全てに再教育とか無理な話だし。あと政治家は自分のサボり責任を押し付けるサンドバッグじゃない。声優とかアイドルを自分に優しくしてくれる擬似恋愛装置って捉えてた迷惑ドルオタ声豚と同じだぞ。皆人間なんだが?」
「いや……でも……それが仕事ですし……」
「ドルと声は仕方ない部分があるけど、国会に関しては選んだの話の中の国民じゃん。縋ってないで選んだ責任果たすくらいの対応は心がけた方が良い。皆の心にノブレス・オブリージュ」
「意識高っ……」
「何しても叩かれる政治家にちょっと同情しちゃう時がある。正直大統領やめろって言ってる暇があるなら代役立てれば良いじゃんって……いやまぁ7割くらい相手に非がある気がするけども。あの話だとよくわからん税収がいっぱいあって糞だなって思ったし」
だいぶ話が逸れてますし与太話の中身も長いですが、茜丸的にはそれだけ心に残るダラシなさって事だったのでしょう。確かに文句を言うくらいなら自分でやるって言うのが茜丸のスタンスですが……でも意識高いし厳しすぎますよ。
「IQの差故に天才方は別生物を見てると」
「バカはバカでぶっ飛んだ頭良い奴を別生物扱いしてるからお相子だよ。お互いがお互いを別種だと思ってるし、別生物を敬えない一般人が自分に害をもたらす熊やイノシシを見つけたらそりゃ猟銃構えて対抗する。平気で死ねとか言えちゃうのもこのせい」
「視野が狭いって事ですか?」
「小学校で習った尊重や助け合いや思いやり。全部茶番だったってことだね。幼稚〜」
「結局視野が狭いって事では……?」
「そうとも言う」
ただ一言教養がないって言えば済む話なのに何故この男はこんな過剰攻撃を……。私以外にやったら確実に嫌われているところです。しかも利益になんて絶対ならない無駄な嫌われ。
相変わらず危なっかしい言動しかしませんし、今してる話にいたっては茜丸の愚痴でしかないです。完全に気が抜けている時の顔をしてるから間違いない。だから他に人がいなくて内心すごいホっとしています。
そもそも気休めの談笑でする話なんですかねこれ。授業のグループワークでする話題では?
「……あんまりショック受けないんだね」
「これでどうショックを受けろと。正論で殴ってるだけなのに」
「ボクに崇拝とか心酔とかは?」
「そんな気持ち悪いことしませんよ……」
「それはそれでなんか傷つくな」
えっ、なんですか急に……気持ち悪い……あっ、今のやつ全部嫌われのための方便ですか。
「茜丸、前に優しさも思いやりも結果が全てって言ってたじゃないですか?過程とかどうでも良いって」
「うん。仮に人のためが動機だったとしても、相手のためになってないならそれはただの迷惑だ」
「それと一緒で、感情だの政治だの才能だの、結果に繋がらないなら全部必要ないかなと。だから自分の好きなようにやって勝手に結果を作ります」
「ほーん」
あぁ、茜丸が良くないことを考えてる時の顔をしています……おそらく私は何かしらのパシリにされる……。次はどこの企業でビーコンをやらされるのでしょうか……。
「その答えが出せるなら部長も生徒会長もどうにか出来るよ。かすみさんの方があの2人よりずっと頭が良いし。勉強と超越肉体しかない雑魚なんて超人ビリーバーで轢き殺せば解決だ」
「ぇ……あ、はい。頑張ります……?」
「なんで疑問形なの?」
「いえ……つい咄嗟に……」
茜丸って人を褒めて進ませる手段が取れるんですね。びっくりしました。
でも、なんでしょうかこの……やたらフィットする感じ。せつ菜先輩や侑先輩を純粋に心配してた時と同じ感覚です。やはり茜丸は素直に人の世話を焼いてるのが1番向いているのでは?このまま余計な悪態をつかず真っ直ぐでいればもっと──
「……あの、そのビデオカメラ何に使うんですか?」
「アイドル同好会vsアイドル部&生徒会長の戦いを撮影するために使うの。家のプロジェクターで映画鑑賞するんだ。徳用キャラメルポップコーンとファミリットルコーラは買ったから準備万端。抜かりなし」
「マジでさぁ……」
今ちょっと茜丸への印象がアップしそうだったのに……なんでこいつはいつもいつも良さげな雰囲気をぶち壊すのでしょうか。肝心な時にキメられない俺様系のテンプレウィークポイントを積んだところで今更なにか起きるとでも?
だと言うのにこの男は毎回毎っ回……たまには茜丸の純粋なかっこよさをですね…………
はぁ…………(クソデカため息)。