虹ヶ咲ヒーローorナイト&キング 作:コントラポストは全てを解決する
スクールアイドル部とやらにヘドハンされたので断ろうと思っていたのだが、後輩の宮下愛が真剣な顔付きで突撃をしたので支えになれたらと一緒に突撃をした。
一体どんな軍隊練習が待っているのかと身構えたが、実際はバックダンサー業務をして終わり。刺激としてはヘッドスパくらいの威力しか無かった。
その二日後、ここにいて何になるのかと果林は少し悩み、愛に相談と目的の問いかけも兼ねて相談をした。
結果、愛の目的は内部調査と説得だと言うことが判明。調査に関しては茜の依頼らしい。特に報告義務はないが同好会にも連絡を入れているとのこと。あと茜にも。
なるほど、茜……と果林は深く思慮を巡らせた。
そして、どうせアイドル部にいても大した仕事はないからと頭の中で記憶の総集編を開始。
夕雲茜がただの可愛い弟では無いと自覚したのは出会って2週間後の事だった。
スペックがイかれてるのと動くとすぐ痩せるところ、そして璃奈に懐かれる部分は愛に似ている。違いと言えばリアリストかつ思想が強く、屁理屈で人を説き伏せられる点。愛は肯定とノリと愛嬌で円満解決させるのでそれに比べると大分危ない話術を有していたのだ。
実際果林も屁理屈悪態雑対応は受けていた。雰囲気と中身が伴ってないとか、ミステリアス気取ってる割に沼が浅いとか、不気味な未知数は知性と沈黙と底の知れなさ、そして1mmの茶目っ気だとか。
正直最初は自分から逃げるための方弁だと思いクスクス笑っていた。エマと彼方から逃げる時に雰囲気が似ていたから。
しかし、そこまでしても全く狼狽えず、見定めるように「扉の中の占い師みたい」と言われた時は何かが違うと気づいた。
要は胡散臭いと言われたため心にピシッと来たのだ。ついでに香水の匂いが昭和と言われ心の1/4が欠けた。
もしやかすみ系か?とも思ったけれど、2人を眺めた結果かすみがどんどん茜寄りに染まる現象が観測できた。おそらくかすみ系の家元なのだろう。そのせいかは分からないが、よくしずくに模造薙刀を向けられている。対する茜は信号のついた斧で対抗したり、ミカンみたいな剣がついた両剣でかち合ったりと噛みついていた。学校に玩具を持ち込むなとは思ったけれど、何故か玩具で遊ぶ姿が異様に似合う。
そうして占い師云々を語っていた時のペテン師感はどっかに行き、基本スタンスは子供っぽさを貫いていた茜。
部室で昼を食べると璃奈に呼ばれた時は一瞬で現れ、侑や菜々に呼ばれた時は10分くらい遅れてやってくる。遅刻理由もやむを得ない用事などではなく、堂々と「行く気とやる出すのに時間かかった」と2人に話していた。なんで嫌われてないのかが分からないクズ系不思議ちゃん。そして自由奔放さが子供。
いくら有能と言えどこれは無い……とも思ったが、よく見たら部屋に来たあとは嫌々言いながら手伝ってるし自然と人が寄ってくる。リーダーシップとも違う人を惹きつけ引っ張る何かを持っていた。
しかもあのせつ菜もとい菜々がデレデレに甘えているのだ。裏で交際でもしているのかと疑うほどにはデレデレで緩々だった。そして侑とセットで匂いを嗅ぎ出した時はめちゃくちゃ引いた。
と言うか彼方も吸い始めてタバコの回し吸いみたいな絵を放つのだ。今だから打ち明けるけど茜のやる気出ない云々を聞いた時より引いた。
しかも侑に関してはずっと前からやっていた常習犯らしい。確か茜が部室に来なかった原因が侑とのエンカとおもちゃ化の阻止だったはずなので、原因の半分に心を許してる謎包容力にママみを感じた。
守られるべき子供だけど、人を支える嫁力もあり、人を引っ張る優しい亭主みたいな旦那力もある。そして可愛い弟。時々荒っぽくなるワイルド成分もある。
おまけ情報として茜の手はすごいちっちゃい。以前ゴキブリを素手で捕獲し逃がしたあと、アルコール除菌で軽く済ました茜を見た事があった。その時にプライドが働き面倒を見たのだ。
握った茜の手はアホみたいに小さかった。思わず「ちっっっっさ」と声を零す程に。
そして柔らかい。加えて爪が綺麗。家事をしているのに水荒れも無くスベスベだった。
あまりの可愛いお手々に初めてコーギーを見た時のことを思い出した。言葉が必要無いくらい衝撃的な可愛さにぶるっと体を震わし鳥肌が立つ現象。あれが起きたのだ。
今までは無しよりの有り判定だったのに、手を触った瞬間に心が揺れ動いた。その後冷静になったら手を触っても動じない……というよりそういう感性が育って無さそうな無知顔を見た瞬間に『あれ、もしかしてこいつめちゃくちゃ可愛いのでは?』と堕ちた。
そこからはもう早かった。
異性との付き合い方に関してはまともな経験ゼロだったため難航を極めたが、なんとか物で釣れば出かけられる関係にはなれた。おじさんスタイルなのはわかっているから黙っとれ。
そして難航を極めた結果、現在では勉強を教えて貰う立場に落ち着き、威厳もへったくれもないけど関係の進展には成功したのだ。
欲を言うと彼方やエマのような姉弟関係が欲しかったのだが、思った以上に果林の異性耐性がなかったためにこんな結末へと辿り着いてしまった。
果林の予定では今頃、『がっつき過ぎのブラコン&ダメ姉属性なんだから』と2人に余裕を取るつもりだったのだが、まさか自分が1番のダメ姉適正持ちだとは誰が予想出来ようか。
しかしどんな属性持ちでも年上相手なら弟に擬態できる茜にも問題はあると思う。
果林の憶測だが、茜を全日本クソかわ弟コンテスト(略称ブラコン)に出場させれば5連覇くらいは余裕でしてくる。それくらいには圧倒的弟なのだ。
好きな人とだけ付き合いたいから全力で嫌われムーブをするけど、見た目のせいでレッサーパンダの威嚇みたいになってしまいその結果余計に人を呼ぶ可愛さの権化。
しかし肝心な時にはしっかり頼りがいを見せて女のツボを突いてくる女誑し。頼りがいと言うか経費から責任まで全部を背負うプロジェクトリーダー兼社長みたいになっていた。これ多分女じゃなくても人寄ってくるでしょと何度頭を抱えたか。
さらに言えば完璧超人に見えて自分でやった方が早い精神と期待は悪精神持ちなだけなので、片付くのはわかっていても監視が必要不可欠だった。茜の背負う明らかイカれた仕事量を見ているとついつい気にかけてしまうのだ。
考えてもみて欲しい。見た目可愛い女の子が体壊す勢いで働いてたらヤリモクパパ活関係なく気にかけるだろう。
そして家に帰っても気になってしまい、気まずいながらも連絡を入れるとすぐお礼の返信が帰ってくる。差し入れをすると一緒に食べてくれる。息抜きに出かけようと誘うと作業を中断して着いて来てくれる。どう頑張っても自分が茜を支えてると錯覚させて来るのだ。経験無い人だったら確実に恋心だと勘違してしまう。
実際果林ですら頭では理解していても、「もしかしてこの子、私がいないと生きていけない……?」と何度か沈みそうになった。と言うか本能に直接訴えかけてくる。
そしてそれがエマにも愛にも彼方にも、というか同好会全員に芽生えてしまったのだ。
言ってしまうと能力だけはあるダメンズに惹かれる気持ちを理解してしまった。ついでに不完全な方が女は燃えるということもわかってしまった。
そんなクズメンのナチュラルボーンみたいな男だけど、やっぱりみんな茜が好きだった。
そもそもの話として茜は女の目線とか評価とか至極どうでも良い人間なのだ。女どころか家族以外からの評価が全てどうでも良い人間。
されど、そんな茜でも璃奈にはとても従順だった。一応反抗はするのだが、その時間が極端に短いのだ。侑や果林の時は最低1分。対して璃奈の時は30秒持てば良いという具合。
依怙贔屓っぼくて印象が最悪だったのだが、よくよく考えれば人生のパートナーは一人しか選べない上に璃奈が準家族に入ったと思えば納得出来た。茜自身も警戒心がクソ高いので当然といえば当然の結果ではある。
が、ここである問題が茜に降り掛かった。
璃奈がめちゃくちゃ恋愛モンスターだったのだ。性欲ではなく純粋に惚れた男絶対逃さないウーマンだった。ここら辺は菜々と似たものを感じる。
茜解析担当班のかすみから聞いた話だが、茜はママ味とパパ味を同時に出せるので、甘えるべき時期に甘えられなかった女に合わせると酷いレベルで合致してしまうらしいのだ。話のレベルが高い。
確かに問答無用で頼れる相手なんて早々出てこないというのは分かる。親が相手の時ですら躊躇う時があるので。
そして親という選択肢すらなかった人の前にいくら無茶を言っても応えてくれる母親みたいなパパ兼カレシ兼友達がお出しされた。これもう全面的に茜が悪くない?と果林は訝しみながら呆れと困惑に目頭を抑えた。
誰彼構わずこんな事してるから璃奈が滾るのよとエマに愚痴った秋の果林。
よく言われるのがりなちゃんボードを使わないという点だけど、そもそも返事の時点で「んっ」って返してるので相当お察し状態だった。細かくは説明が出来ないけれど、璃奈は茜と話したい気持ちが先行し過ぎて返事の挨拶を省略してるのだ。
だって普段はちゃんと「うん」って返すから。しっかり頭で飲み込んだあとに返事をするから。
それが茜になった瞬間に食い気味の「んっ」に変わる。なるべくたくさんの会話をしたいから端折れる場所は全力で端折っているのだ。
こう言ってはあれなのだが、茜はもう璃奈から逃げられないんだなと思うとちょっと可愛そうになる。気疲れがヤバそう。自業自得だし幸せが確定してるから果林及び誰も止めないけど。それに残ったら自分が貰うし。
なにより、茜とはどんな仲になっても特に大きな態度の変化がないだろうと思えるのだ。深さはあるけど裏表がないので果林側の好意が途切れる事がない。むしろ茜が猫を被る時が来るなら、それは人の性格が終わり果てた手遅れ報告に変わりないのだ。
あと璃奈から逃げれば解決かと聞かれたらNOと答える。ガチ姉のエマと狩人シスターの彼方がスタンバっているので独身貴族は無理に等しい。
一体、何をどうしたら1ヶ月とちょっとでそこまでのめり込めるのか。何をしでかしたら1ヶ月とちょっとでそこまで女を夢中にさせられるのか。
もうお前がアイドルをやれと何度か提案しかけたけど、男のスクールアイドルは未開拓過ぎるので迂闊にアクションが起こせなかった。おそらく偶像になったら世界の男女問題がややこしくなる。あと純粋に菜々と侑のキモさが増すから女の尊厳的な意味も込めて動けなかった。
茜という人は魅力が服を着て歩いてるような物なので、どんな人からも愛されてしまうのは分かる。きっとこれから入る後輩達も、多かれ少なかれ茜に興味を持つんだろうなって。
だからこそ、そんな茜が嵐珠に狙われてる現状にとても不安を覚えた。アイドル部に勧誘され続けて入部でもしたら部室が崩壊する。物理的に。比喩でも何でもなく映画で見る紛争状態とハッカー攻撃が起こると想像出来た。
まず大前提として侑と茜は敵に回した瞬間にすべてが終わる存在なのだ。周りが燃えて勝手に終わらせるし、茜の場合は良い画を求めて便乗してくるので尚更早く片付く。あと侑が曇ると璃奈の曲を作れる人がいなくなると茜が味方になるし、茜が行き詰まると匂いを対価に侑が味方につくので対立煽りは不可能だった。
そんな相手を敵にしてみろ。土下寝くらいしかする事がなくなるぞ。それくいには無敵なのだ。
ただ、心強く頼もしい存在とはいえ……正直なところ、茜に関しては巻き込みたくないというのが果林の本音であった。自分たちの居場所は自分たちで守ってこそだし、そもそも同好会とアイドル部の問題なので立場だけなら部外者の茜を関わらせるべきではない。
そういった心情があり、アイドル部から茜を遠ざけようと果林はぼちぼち動いていたのだが……計画8日目の今日、無事に感づかれた。
「いや……あの、余計なお世話なのはわかってるわよ……?だけど……茜にはもう大分お世話になってるから……」
「えっ、はい。果林酸がなんで頭たれてるのかはわかりませんが、お気遣いありがとうございます」
「えっと……璃奈のために何かしたかったとかはない?」
「特に……?今ボク同好会とアイドル部の感動的領土抗争ドキュメンタリーの撮影準備で忙しいので。最近やっと生徒会長から許可取れたのでてんやわんやしてるんですよ」
「あぁ……そう……」
好きな子そっちのけでそこまで出来るのもある意味すごいわね……と果林は引いた。いや確かに茜は璃奈の家でご飯を作ってるけども。家で会えるし役に立ってるからこその余裕……なのかもしれない。
とりあえず茜は傍観者でいてくれるようなので安心。
「果林酸、本当は男の世話になるのが嫌いなタイプでしたか?」
「違うわよ。あなたには迷惑かけっぱなしだからたまには私だけでやろうって」
「銀行からの融資も無しに始まる起業はありませんし、株式証券の販売も無しに栄える企業もありませんよ」
「良いの?今ならまだ無関係って言えるのよ?」
「遠い昔から闘争スクールアイドルの制作スポンサーやってますけど」
「はぁ……真面目すぎるのも考えものね……。わかったわ。なにかあったら相談する」
「はい。あと誤解しているようなので訂正しておきますが、ボクは別に真面目ってわけじゃないですよ」
果林を気負わせないための冗談か、茜はそんな事を言ってきた。内心で『いつもの悪役プレイね』と理解し、果林はエンタメ半分真面目半分で取り合った。
「真面目じゃなかったらこんな面倒事に首は突っ込まないと思うけど?」
「ボクはスポンサーですよ?金さえ出せば自由に物言えるポジを陣取ってる奴が真面目なわけないじゃないですか。ちゃんとしたやつだったら専門知識を勉強してマネージャーかプロデューサーやってます」
「むしろそっちの方が良いんじゃない?璃奈ともいやすいでしょうし」
「専属になったらハーレム築けないですし果林酸抱けないじゃないですか?どうせご都合主義で都合良い役職が手に入るなら、ハーレム王にならないと損ってもんですよ。それに昔っから枕と仕込みは局の華って言われてますし」
集光100%のブラックジョーク過ぎてクスっと笑ってしまった。あいも変わらず相手をどう思ってるのか分からない表情をしてるけど、こんな最低なジョークを言っても大丈夫だとは思ってくれているらしい。
これだけ茜と打ち解けたならちょっとくらい手放しで頼っても良いのかも。果林はそう考えながら目の前にいるミステリーチックで不可思議な不思議くんを見た。いつも通り可愛い。
「はぁ……まったく、私じゃなかったら嫌われてたわよ?」
「関係が減れぼ払うお金も減るのでどうでも良いです。復縁せがまれた時も主導権握れますし」
「相変わらず黒い部分まで女っぽいわね。友達いるの?」
「愛さん先輩」
「正直世の女のほとんどは私寄りよ。友達役、増やしてみても良いんじゃない?その方が私も頼りやすいし」
「合理的で良いですね。契約乗った」
「どこ行きたい?」
「白華のパラナ行きたいです」
「あぁ、あのアイスケーキ専門店ね。良いじゃない」
何から何まで女目線。ある意味恋愛周りまで完成してたら璃奈に振り向けず終わっていたのかも。そう思うとこの不完全さを育てるのはまだなのかもしれない。
ただ、「友達ってたまに手を繋いだりするのよ」と冗談で教えたら、疑心もなく果林の手に恋人繋ぎをして来たので情操教育が必要だと感じた。果林脳がバカ真面目に"茜が危険な目に遭う前に家に攫え"と訴えかけて来たのだ。
やはり茜には自分がいないとダメなのでは?と若干浮かれたけども、翌日どこから情報を仕入れたのか分からないエマと彼方に囲われた挙げ句、璃奈に職質張りの問い詰めを貰ったので現実に帰って来た。
こうして果林は惚れた男絶対逃さないウーマンと、茜の旦那は璃奈か自分以外許さないシスターズの怖さを知ったのだ。実質ヤクザ。