虹ヶ咲ヒーローorナイト&キング 作:コントラポストは全てを解決する
最近人気が急上昇してるという葉月ナナ美とか言うアイドルをチェックするため、菜々ちゃん先輩ご要望の下スクドルファン喫茶にやって来た。
ボクはボンゴレ、パイセンはオムライス。ドリンクはなんか知らんが飲み口が2つあるストローをぶっ刺したパーリーメロン&パーチーソフトソーダver.SP。お頭が悪い。パーリーでパーチーなのはこれ考えたやつの脳みそじゃないか?彼女とハワイ行った帰りにノリで作ったやつでしょ。
メロンソーダが苦手なボクだったからソフトクリームの部分だけ貰って後は菜々ちゃん先輩に押し付けた。
そうしてこうしてちょっと不機嫌になったパイセンを置いて行き、件のアイドルがステージに登壇。
そしてテキトーなトークをした後にライブが始まった。見た感じギャル系。アイドルを好きな人って良い人多くて〜とか低予算アニメ声で言ってたからオタクに優しいギャル路線で売ってるっぽい。とりあえず荒れないようオタクを持ち上げるバーチャルLouTuberみたいだね。
加えて優ギャル系は確認出来てる範囲でも25人ほどいるから沈まないよう願うばかり。
一応菜々ちゃん先輩が推してるし見ておくかーって思ったんだが、ギャルドルソングの序奏が終わりAパートを迎えたと同時、菜々ちゃん先輩が『茜君』と真剣な顔で話しかけて来た。
さっそくギャルドルについての見解を語られると思い心を引き締めつつ身構えて耳を澄まし──
「──茜君って復讐完遂する復讐モノと何も生まないって諭す復讐モノどっちが好きですか?」
「………………はい?」
「いや、やっぱりこういう好みは確認と共有をしとかなきゃって思ったから」
「あの……先輩イチオシのアイドルだからこのライブ見に来たんすよね……?始まった途端に関係ないオタトーク始めるのはどうかと」
「ああ、ステージ側の耳だけライブに意識してるのでお構いなく。それで、どっちが好き?」
碇ゲンドウスタイルで真面目にどっちが好きかを聞いてくるアニオタ生徒会長。ステージ片手間にアニメトーク始めたぞこの女。ライブ自体は聞いてるらしいから何も言えないだけどさ。
それで何?復讐?最近ザマぁ系流行ってるからか?
「せつ菜パイセン、ワナビ系見始めました?」
「流行りものって大事じゃないですか?それに展開は早いですが結構面白いですよ?」
「ザマぁって復讐なんですか?」
「十分復讐かと。で、どっち?」
「『やり返してもやり返さなくても何も返って来ないのは変わらない』。ハリウッドスターの言葉です」
「では、復讐派?」
「復讐が当人に対する一番の救いなので復讐派です」
「斜め上な正義感ですね……」
というかこの概念、『殴りたいけどやり返されたくないタイプの人種』が考えた感すごいんだよな。これの現実版が殴られてもぐっと堪えろって言う教師の言葉。やられてもやり返さない精神。
ぶっちゃけあれ物事を大事にしたくない大人側の事情が8割っしょ?確かにやり返さず黙って飽きるのを待てば収まるけど、その方法って時が来るまで教師が裏で支えて面倒見てこそ成り立つものだし。教育のやり方を学んでこなかった今の大人じゃ無理。
端的にまとめるとやる側の事情合わせのための概念だから復讐してくれないとしっくり来ない。
「斜め上もなにも、『正義なんて人それぞれ』は最近のトレンドじゃないですか。ボクも昔は神になって世界征服する事を正義として掲げてましたし。でもこれはせつ菜先輩からすれば悪じゃないですか?」
「な、なんのために世界征服を?」
「人間を減らすため」
「それは紛うことなき悪なのでは……?」
「ボクは生物全てを平等に扱う事を正義としています。増えすぎた生物は食物連鎖でたくさん狩られ、個体数を本来の数に戻すのが本来の仕様です。でも人間は違う」
「自然の摂理から外れてるって事ですか?」
「そうですね」
地球の生命循環システムから片足外してるバグだよ、人は。
そんでこの話を鈴木にしたら引かれた。気持ちは分かるが間違ってはないと思うんだ。今の人間が抱えてる問題があらかた解決するし、神のせいだから誰がどう責任を取るかで揉める事もない。
「えっと、神である意味は?」
「正確には人間の上位種ですね。人類の天敵。蚊に刺されると死ぬ程度の抗体しかないけど、ニンゲンを食べるとしばらく免疫力が得られるみたいな。知性が人で適応能力がゴキブリくらいならバランス良く敵をやりつつ地球保全が出来ると思うんですよ」
「人以外の生き物が可哀想だから、人の敵になる……と?」
「そんな私情は挟みません。ただシンプルに皆が幸せになれるようスペースと食料を確保したいだけです」
「人間側の被害が大きすぎませんか?」
「それってゴキブリから見ても人の被害が大きいなって思えますか?」
「…………主観だけで見るな、ということですか」
「そこまで大げさなものではありませんけど、人が完璧に分かりあうなんて無理なんですし『皆の当たり前』を脳死で語ると争いになりますよーって。復讐論もここなんですよね。根本の思想が違うから平行線」
「む、難しいですね……」
オタクになる学生って中学の時にこういうファッション哲学にハマるから菜々ちゃん先輩も理解はしてくれると思ったんだけどダメだった。やっぱり女の子は親でも噛み殺す!とか黒猫と月とかそっち方面が専門なのか?
「少し話を戻しますがボクは復讐派です。やられたら等倍にしてやり返します」
「何も生まないしあの子は戻ってこない、それに望んでないって諭されたとしてもですか」
「やり返してくるっていう実績は安心と平穏、そして残った大切な物を危険な未来から守ってくれる。こうして可能性を生み出してるので『復讐は何も生まない』は間違い」
「望んでない云々は?」
「復讐側が満足ならその道が正解としか。外野が知った口を聞くのはお門違い。以上がボクの見解です。菜々ちゃん先輩は?」
「私は……やっぱりしない派です。理想は押し通したいので」
「なるほど」
やっぱり分かり合えなかった。菜々ちゃん先輩ってボクが絡まなきゃただの常識人だからね。だから仕方ないと言えばそれまでだけど……ちょっと残念。
「これって皆に聞いてるんですか?」
「茜君ってこういうの好きそうだなって思って。いつも難しそうな本を読んでますし」
「あれ音楽理論が書いてあるだけの本ですよ。絵の書き方とかDIYのやり方とかが載ってる本と同じジャンルです」
「哲学は専門外でしたか」
「好きですけど」
厨二病が哲学書を読まないわけ無いだろう。宝に等しい一冊が家にありますよ。それはもうすんごいやつが。
やっぱり道徳を学ぶなら正義と正義のぶつかり合いやトロッコ問題は外せないでしょ。延々議論できる。
「でもぶっちゃけるとカフェで哲学を語っても盛り上がらないじゃないですか?ゲーセンで教科書を開いても捗らないのと同じです」
「茜君ってムードへの気づかいとか出来たんですね」
「ラウンドワンに行けば皆に合わせて馬鹿騒ぎしますし、夢の国ならマウンテンに乗って叫び散らかしますよ。それくらいの合わせなら人の基礎スキルとして備わってます。あと相手に悪い印象を与えないようにするための必須処理でもありますから」
「では何故私の時はムードもへっくれも無い乱雑な対応を?」
「面倒くさいから」
「…………茜君、異性と同性に関する付き合い方の区別ってついてますか?」
「彼女も友達もいらないと思ってる人間にその区別いります?性も情も無価値なので道理として件の2つに対して無関心になります」
「もうちょっと噛み砕いて説明していただけると助かるのですが」
「話してるステージの違いですね。菜々ちゃんが話してるのは『スケベ』『可愛い』『好き』とかのどういう関心を抱くか。対するボクは関心を抱けるかどうか……興味を持てるか持てないかという話です。そして今は無関心にしかなれない」
「つまり……今は全部どうでも良いと……?」
「はい。どうでも良いです。ボクは仲良しクラブに対する認識が一般より下ですからね」
怪訝深そうにしつつも興味深そうな顔を見せる菜々ちゃん先輩。
この人がこの顔をする時は大抵めんどくさい計画を宣言してくるので会計の準備をしておこう。
「とどのつまり……このまま攻め続ければ茜君の『おもしれー女枠』として興味を勝ち取れる可能性があると……?」
「その枠はもう璃奈りーで埋まったから無理っすね。大人しく監視対象に落ち着いてください」
「嫌です。茜君とはもっと仲良くなりたいので」
「ボクは望んでない」
「私は望んでます」
相変わらず勢いと熱意が強いんだよなこの人。何がそこまでして菜々ちゃん先輩を突き動かすのか回目検討もつかん。
いや別にさ、誰かと一緒にいるのは良いんだよ。でも相手がこれだよ?勢いが濁流してきて世話が大変なんじゃ。贅沢は言わないから制御役に侑先輩を同伴させて欲しい。
「茜君は私の何が嫌なんですか」
「単純な相性の悪さ。ボク以外なら誰でも射止められるんですしさっさと引っ越しした方が将来のためですよ。ボクもそういう賢い人の方が好きです」
「じゃあ賢くなれるように茜君で勉強しますね!」
「嫌がらせがよぉ……」
小学生バリアみたいな屁理屈をこねやがって……。
人が増えるのが嫌だから間引こうとしてるのに捨てる段階で失敗して増える。ボクは善人さを利用されて捨てペットを押し付けられるバカか何かなのか?
そもそもアイドルが男と一緒にいるなよバカ。ボクじゃなかったら燃えてたぞ。
「……一応確認なんですけど、この忍者デートって誰にも行ってませんよね?ネット含めて」
「ツイドリ垢には載せましたが」
「薄々前から感じてましたけど、さてはお前頭良いだけのバカだな?」
確認したらちゃんと載せてた。でもリプ欄のファンは皆応援してる。うーん素晴らしい紅葉絶景。
そしてボクの垢は「優木せつ菜似の女とつるんでた」って微弱で燃えてた。この民度の差is何。