虹ヶ咲ヒーローorナイト&キング 作:コントラポストは全てを解決する
はぁ………どうしてこう茜丸ってここ一番の大事な時にやらかしまくるのでしょうか。確かに肝心な時は頼りになりますよ?ほんとに死ぬか生きるかみたいな時はめちゃくちゃ出張って暴れまわります。それで気づいたら解決してる。
でもそれ以外の……というか人の好意や矢印が絡むとおかしな方向に転がっていくんです。欲望と感情の扱いならプロ級なのですが、平常時の『心』については存在すら信じてなさそうな誤解が返ってくる。あれです、王は人の心がわからないってやつ。
確認したくても茜丸と全然話せませんし。たまに会えても愛先輩か歩夢先輩、または3年組に誘拐されます。最悪私は会えなくても良いのですが、菜々先輩にはそろそろコンタクト取ってくれませんかね。夕雲ロスが酷くて筋トレ狂いになってるので止めて欲しい。多分明後日辺りに倒れる。
正直茜丸がいないと物足りないです。アイドルファイトを撮りたいのは分かりましたからそろそろ顔を出せ。私もバイトの相談とかデイズニー誘いたいとか色々やりたい事があるんですよ。それに侑先輩も全然会えてなくて寂しいらしいですし。
なんで比較的仲が良い人ほど放置されているのでしょうか。全く持って意味がわかりません。
「はああああぁぁ……」
「すごいため息だね……どうしたの?」
「茜丸関連でちょっと」
「えっ、弟くんまだなにかしてるの?」
「あ、いえ。最近会えなくなったなーくらいの悩みなのですが……侑先輩とせつ菜先輩と私って言う、最初期組だけが全然茜丸に会えてなくてですね」
「会わなくても大丈夫みたいな事思ってるんじゃない?全部終われば普通に遊びに行ったり出来るって」
「そうかもですけど、いつもだったら連絡くらいは入れてくるんですよ。それすらないので何してんのかなーって」
「心配?」
「いえ、茜丸と話したいことがいっぱいあったので物足りないだけです。一応私達ただの知り合いって関係なので、茜丸に愚痴っても友達と遊べって返って来るんですよ。かなりの確率で」
「あー…………そうだねー……」
「なんとか上手いこと言い訳を取り繕えたら解決なのですが」
あいつ友達は作らないくせに友情には憧れてるから、私達みたいな近場の人間で交友関係のデータ採集をしてるんですよ。
正確には世間一般の語る理想の友情を築いてる人が、ほんとにこの世にいるのかを知りたいと奮闘してる……といった感じです。男だったらバカやり会える腐れ縁、女だったら友情の厚み。
それを知りたいだけなので、厳密には茜丸が友達を作る必要はないんです。そこはわかってます。
でも、私だってもっと茜丸と話したいんですよ。せつ菜先輩も、侑先輩だって。だから今回だけはほんの少し情を入れて欲しい。
「愛先輩は茜丸と会えてますか?」
「結構な頻度で会えてる……かな。一緒にダンスの練習しようとか、バスケの練習をしようとか、アタシから誘ってる」
「ああ、あれからも一緒にバスケ部に行ってるんですね。そろそろベンチ入りするくらいは出来ましたか?」
「いやー……バスケ部に行けるようにするためにバスケの練習してるって言うか……」
「また茜丸がやらかしてる……」
バスケとなるとあれですか?黒子のやつ。身体小さくて小回り効きそうですし、ドリブルとレイアップでワンマン無双してそうですよね。
「茜丸はなんでも出来ちゃいますからね。でもそれならバスケ部側が扱いを決めるんじゃ?試合に出て良いのは3分までとか」
「……それがさ、弟くんってセンターラインの真ん中から投げるスリーポイントしか入らないんだ。だから扱いに困るし、相手はディフェンス決めが大変で気まずくて」
「ピーキー過ぎる……」
これってあれですかね、体育で運動が苦手だけど、コートの隅でなんとか頑張ろうとあたふたしている子が、先生にやってるフリしてサボってるって勘違いされて後で怒られるやつ。小中の何処かでそれを見たから試合中は何かしなきゃって若干焦る。
駄目な教師によくいるんですよ。私も小5の時に見ました。怒鳴る事と厳しく振る舞うのが威厳や貫禄だと思ってるタイプ。そういうのって職人並みに物事を極めないと生み出せないので、ただの教師にやられても微妙なんですよね。
おそらくですが茜丸と同じくらい人間を知りつつ、話す時は侑先輩レベルのスーパーコミュ力で諭すくらいしなきゃ教師で貫禄は無理です。断言できます。
「それで茜丸は出禁と。自分のできる事をしただけで出禁になるのもおかしな話ですが」
「珍しく悪者みたいな態度も取らなかったし、本当にシュートしかできないしで何したいのかイマイチでねー……。帰る時に自分にバスケの適正はあるかって聞いて来たりさ」
「あー…………そういう」
「えっ、なにかわかるの?」
「もしこれが名声絡む部活じゃなくて、公園で遊ぶ簡単バスケだったらどうだったかってデータが欲しかっのかもしれません。一応茜丸も適正といえば適正ですが、ちょっとズレてるからっておかしな扱いをされる。状況次第でコロコロ扱い変わるんじゃ適性もクソもないねって事かと」
「アタシも遊びのバスケなら大丈夫って答えたけど……誰に言うの?」
「そこは茜丸本人にしかわからないと思います。誰にもなんにも相談してないので──はあああああぁぁ……」
「あー……ごめん」
「いえ……すみません……無意識につい……」
結局また誰も信じずに一人でやってるって結論が出ちゃって、萎えより酷い気持ちが出てきた。言葉も説明もそもそもの素面に関する情報も何もかもが全て足りてない。なんのための口と言葉なのでしょうか。
以前に比べて仲の良い人も増えましたし、なんだかんだ成長はしてるのかなって一瞬期待しましたけど……あの茜丸がそう安々と根本を変えるわけが無いですよね。
そもそも覚悟を決めたりな子でさえ新しい問題に四苦八苦してるのに、最近やっと『出会って2週間経った頃の茜丸とりな子』レベルの仲になった私達がそんなポンポン打ち解けられるわけなかった。
やっぱり記憶の濃さが全てとはいえ、一緒にいた時間には囚われちゃいますね。
「なにはともあれ、茜丸が欲しい情報は採れたと思うので、これからはもう少し行動理由がわかりやすくなるはずです。この争うためだけの適正データが何に役立つのかはほんとに分かりませんが」
「うーん……皆で競うスポーツも青春だし、プロを目指して頑張るのも綺麗な事だよって説明はしたんだけどね……なかなか理解してもらえなくさー……。本当は運動嫌いなのかな?自分は運動嫌いだけどここまで出来たぞー、みたいな」
「多分そこら辺に関しては『ドーピング無くしてから出直せ』で片付くので……"こんな戦いに適正あって何になるん?幸せか?"って話かと。ミニバスコーチやってた方が選手よりずっと長くバスケを楽しめると思うので」
「でも選手目指すのも夢だし、挑戦くらいはしても良いと思うけどね」
「茜丸もちゃんと計画と覚悟を持ってやるなら応援すると思いますよ。バスケで世界取って輝きたいという欲を捨て、企業の広告塔として怪我や泥沼のレギュラー争いに身を投げる覚悟があるなら、ですが」
「すごい……生々しいね……」
「生の肉体が考えてる事なのでそりゃ生々しいどころか新鮮そのもの──すみません今の無しで。とりあえず茜丸の中だとプロスポーツって、『娯楽や息抜きのためにあった楽しいパーティーゲームを、卑しい団体が金儲けの道具にした』って印象が強いんですよ。仕組み自体が茜丸の中じゃ汚いの代名詞だから、どのスポーツも金が絡んだ瞬間に萎えるというか」
「あー……だからお金がかからないスポーツが好きって言ってたのかー……。確かに影はあるけど、いきなりそこ考えるのって無理じゃない?」
「その程度のリスク配分に頭回らないやつの適正とかアホくさって事かと。多分プロ選手はそこら辺も計画に入れて、頭を使い算段を組んだからプロ何だぞーって。なんというか……メタ張り?ゲームと一緒です。というか太古から続く本来のゲームなのでバリバリゲーム脳使えますよ。で、これはバスケの適正か、それともゲームの適正か、はたまた営業の適正か、何をもってどの適性とするか、そもそもそれは本当に正しいのかをですね──」
「あー……うん……そうだね」
「……すいません。なんか茜丸みたいなこと言っちゃいましたね……」
「うん……ほんとに、弟くんと話してるみたいだった」
ジェネリック茜丸思考……!!!因子の制御が……制御が効かない……!!!!
マジで記憶の隅で体育座りしていて欲しい。相手の事が頭から離れないのって恋愛限定じゃないんです?どうしてこんなことに?茜丸の言葉が3日放置したカレー汚れみたいにこびりついてる。
これもう実質茜丸の遺伝子を継いだようなものでは。つまりは事実上のセックスという事なので茜丸に責任取らせられますね(責任追及)
おかげで愛先輩がこの有り様ですが。こんな引いた顔した先輩とか初めて見ましたよ。あの愛先輩がドン引くって相当では?おのれ茜丸……!(責任転嫁)
「弟くんの事、よくわかってるんだね」
「わかってると言うかわからされたと言うか……」
「弟くんに合わせるコツとか聞いても良い?」
「人の考え方を捨てる……?人間じゃなくて生き物として客観視しながら……なんかこう……脳みその機能についてググったらこうなったと言うか……。あとは茜丸を観察してたら勝手に……」
「いいなー……アタシはなにしても全然駄目でねー」
「これ覚えると倫理観がなくなるので止めたほうが良いですよ」
「あぁー……しずしずにもすごい釘刺されてるよね。弟くんより酷いーって」
「違うんです……聞いてください…………」
正直に言うと倫理観については今も自覚できてないんですよ。ホントにここら辺は冗談抜きで責任を取って欲しい。
「わ、私もホントは普通に考えることが出来るんです……出来るんですけど……こっちの方が便利だからついつい使っちゃって……」
「そんなに楽なの?弟くんの考え方」
「こう……人が綺麗事や精神論で隠してる醜さを突くやり方というか。ほら、『仕事で給料の事ばかり考えるのは卑しい。やりがいこそ正義』みたいな意見がありますけど、見方を変えれば人が生きるために必須な……車にとってのガソリンみたいな物って見方が出来るじゃないですか。だから一生懸命になれるわけですし。それで守銭奴の意表をついて、周囲の善性を揺さぶり有利に事を運ぶ……そんなやり方なんです。いや、やってる事自体はただの広い視野とポジティブ変換なんですけど」
「教えて貰っただけで出来るなんてすごいね」
「いえ、ヒントだけ貰ってあとは独学ですよ。茜丸はすぐに答えを教えるのが嫌いなので──」
「おー……」
「……………ぁっ、違うんです聞いてください……」
リアリストって突き詰めると人間の思考が消えるんですよ。人間というか一般人思考。別に意識して解答を出しているわけでもないので、力んでないとポロッとボロが出ちゃう。
でも流石に茜丸以上は盛り過ぎだとかすみんは思うのです。別に私は友情も性愛もちゃんとわかってますし、茜丸みたいなちびっ子ユニバース前頭葉みたいなものだって持ってません。だから私は茜丸以下。誰がなんと言おうと茜丸以下。
「染まってるんだね〜。好きな人に染まるってやつ?」
「まぁ……好きは好きですけど、加減的には皆さんとそこまで変わりませんし。りな子と上手くいかなかったら貰おうかなって思ってるくらいで」
「あはは、ほんとに皆と同じなんだね」
「愛先輩の力で彼方先輩とエマ先輩抑えて貰えませんか?」
「エママは話せばわかってくれるけど、かなっちがねー……。普段見ない勢い出すから分からなくてさー」
「茜丸が好きっていうのは嫌でも分かるんですが、結局きっかけがちゃんと分かってませんよね」
「庇護欲?エマっちと理由は同じって言ってたよ」
「そこは同じなのになぜあそこまでの差が……」
「うーん……性格?」
ジャンヌ茜丸を披露した時とかただの野獣でしたからね、彼方先輩。そのあと茜丸が逃げ回って、エマ先輩を隠れ蓑にした時はめっちゃジェラってましたし。
ああいうおっとりした人ほど性欲が強いってよく聞くのですが、彼方先輩はもう欲望全てが強くなってます。目標が茜丸と毎日昼寝する事とはいえ暴走し過ぎでは。
「やっぱり茜丸から媚薬と同じ成分でも出てるのでしょうか?」
「いやー……出てたとしてもあれじゃない?フェロモンみたいな」
「つまり蒸らせば大抵の女は落とせると」
「蒸らす意味ってあるの?」
「原理はわからないですが、汗の湿気と混ぜると異性によく効くらしいですよ」
「りなりーが弟くんの湯上がり写真をいっぱい持ってたの、それが原因かー」
「そんな事してたんですか……」
攻めるのはチキるくせになぜそう変な方向には思い切りが良いのでしょう。多分許可は取ってると思いますが。
それにしても茜丸のお風呂上がりフォトですか。ちゃんとちんこが付いてるかの確認として一回見てみたい。あとはそうですね……胸のサイズ……は万が一が起こるとメンタルブレイクしちゃうのでやめておきましょう。
「はぁ……。りな子もりな子ですが、茜丸ももうちょっと恋愛に興味を持ってくれるとありがたいんですけどね―……。というかもうこっちから距離詰めて良いのでは?いつまでこのつかず離れずの距離感を続けるのかって話ですよ」
「一応……ほら、なんだかんだ手助けしてくれるし、その時に色々話せるじゃん?頼り過ぎなアタシが言うのもなんだけどさ、今くらいの自由はさせてあげても良いんじゃないかなって思うよ」
「毒虫闊歩する獣道歩いてたら、遺跡を見つけて歴史改名と大金稼げたみたいな感じなので、私としてはあんまり無茶はしないで欲しいんですよ。だから目の届く範囲にいて欲しくて……それにもっと話したいですし」
ほんとに、私が見てないと何するかわかったもんじゃない。喘息周りもありますし、やっぱり強引に接触した方が良いのかもしれませんね。また鬼電しますかー。
「………すいません、茜丸から電話来たのでちょっと出ますね」
「うんうん、行ってらっしゃい」
この若干いい感じのタイミングで連絡が入るパターン。かすみん知ってますよ、どうせまた株主総会に行くからマスコットやれとかそういう言うオチがあるんですよね?
出たくないですけど対価に茜丸とUSJ行く契約取り付けるので、仕方なく出てあげますよ。
「もしもし?今度は何やらかしたんですか?」
『アリジゴクが羽化したらコアラになってそのままエイリアンの卵産み付けようとしてくる。動機が分からず怖いから中須カスタマーセンターに問い合わせた次第』
「ただの夕雲ロスで寂しくなってるだけなので放置しとけば直りますよ」
『10秒おきに締め付ける力が強くなって息がしにくい。しかもこのデカさの割にまだ乳が成長途中っぽくて硬い。故に痛い。ヘルプ』
「つまりこれからもデカくなると」
『4日前だかに商店街のクジで当てた大阪アミューズパスの特別優待券をあげるから助けて欲しい。上限二人だからしずくちゃんでも連れてってあげて。最近あの子修羅ってるから怖い。解放されたい。なる早でよろ』
「せつ菜先輩からもしず子からも開放してあげるので一緒に大阪来てください。それが条件です」
『ボク?匂わせでは』
「大丈夫ですよ。かすみん子供の頃はよく男に間違われていたので」
『それとこれになんの関係が──』
「じゃあ、これからそっちに行くのでジッとしていてくださいね」
うーん、綺麗に事が進んだ。宝くじで十万くらい当てた気分。
そして私の予想以上に菜々先輩は茜丸への気持ちを持て余していると。
そういえば最近の菜々先輩、茜丸に会うとどこか落ち着かなくなるんですよね。前の暴走してるような態度ではなく、一端の乙女みたいな。
おそらくですが生徒会長を辞めたせいで茜丸に甘える方便がなくなり、一種のお預け状態になっているのでしょう。それで溜まったストレスが爆発。
今までの筋トレ発散に比べればだいぶ微笑ましいですが、溜まって晴らしての繰り返しじゃジリ貧ですぐ限界が来そうな気がします。少しこっちでフォローしておきますか。
それにしても、なんで茜丸ってこんなに女の情緒破壊が上手いんですか?どう見ても情緒ダム爆破工事で生計を立てていたとしか思えないほどの所業。需要あるんですかね、これ。