虹ヶ咲ヒーローorナイト&キング 作:コントラポストは全てを解決する
りな子が歩夢先輩の膝で沈んでる……。
いったい今度の茜丸はなにをやらかしたのでしょうか。私が知ってる範囲だと文化祭の時にロリからお姉さんまで全てを引っ掛けてた事くらいですが……これは愛先輩とイチャコラしてる茜丸を見た時と同じ沈没度。
つまり紛うことなき過去一のピンチ、ついにライバルキャラが登場したのでしょうか。仮にこの推測が正解だったとして、りな子が撃沈するほどの相手ってどれだけ強キャラなんですかね。
「り、りなちゃん……?大丈夫……?」
「茜くんが、ネコになっちゃう……」
「以前から人兼猫みたいな立ち位置で売ってませんでしたっけ」
「年下のイケメンに……だ、抱かれる……」
「あぁ、ネコってそっちの……」
「えっと……二人共なんの話してる……?」
「歩夢先輩にはまだ早いのでそのままでいてくださいね」
「私、一応年上なんだけどな……」
私や茜丸と長期間過ごしてなおこの清楚。その染まらないただ一つの可愛さ私も欲しいです。でも、茜丸に染められきってしまった私はもう綺麗には戻れない。なので茜丸は早く責任を取ってください。
「それで、茜丸の彼女候補はどんな人だったんですか?」
「すごい……ボーイッシュの擬人化……茜くんと同じバカ真面目で……かっこよさと可愛さ両立してて……理系で……胸の大きさが茜くん好み…………あと目を閉じると童顔……。漫画の主人公みたいな……」
「なんか、こう……茜丸の上位互換って感じの人ですね。茜丸が気にいるのも納得っていうか」
「私はもう、AIディストピアを作る事でしか……茜くんと対話できない……」
「お、落ち着いて……。あかねくんの事だしもう少し特別な理由があるんじゃない?」
「元々7月終わりくらいから、留学先の下見に来た相手と仲良くなってて……カラオケと食べ歩きと、お揃いのストラップ儀式までは済ませてる……」
「その推進力どうやって引き出したんですか……な、なにか弱みを握られたりしてるんじゃ?」
「茜くんから誘った……」
「……その子、催眠術師か何かだったりしません?」
「か、かすみちゃん……」
「声が、良い……茜くんの声に反抗期成分足した感じ……。多分40%くらい茜くんの雌が目覚めてる……」
「り、りなちゃんまで……」
茜丸が自分から女をデートに誘う?あげくカラオケに出店巡りに加えて、匂わせで荒れるリスクしかないお揃いのキーホルダーまでプレゼント?誰の話してます?その時の茜丸が酒チョコで酔ってたとかいうオチもなく?
「その子に茜丸渡して大丈夫なんですか?いやまったく以って大丈夫じゃないのは分かるんですけど」
「下ネタになっちゃうけど……相手の子に抱いてもらってる姿が、一番しっくりくる……。それに……みぁ、みゃーこちゃんと一緒にいる方が、幸せそうな顔して、して………ぅっ」
歩夢先輩の足にりな子が顔を埋めちゃいました。もしやこれ、りな子がひよこハートのチキりな子に逆戻りしてガチで茜丸を盗られちゃうやつでは。そうなったら皆お通夜状態で慰め合う地獄絵図が完成しちゃう。サークラ待ったナシでは。
というか一昨日に茜丸から友達申請を貰ったって、ルンルン気分でいたりな子はどこに行ったんですか。世界を牛耳った顔もしてめちゃくちゃ浮かれていたのに。いや、茜丸がちょっとミア子になびけば現実に引き戻されそうですけども。
「あの、りな子がガチで負けそうになったら茜丸貰っていいですか?そんなぽっと出の女に盗られたら皆荒れちゃいますし」
「か、かすみちゃん……言い方……」
「ど、どうやって茜くんと……つ、付き合うの……?」
「もういつ別れても良いから最後に籍だけ入れさせろって言えばいけます。大人しく看取ってやるから全部ヤらせろって」
「すごい……あの、自信だね……かすみちゃん……」
「毎日毎日会ってもラインでも電話でも60年後の予定をずっと聞かせて来ましたからね。それに比べればあれですよ、茜丸が言ってた……あの、ドガ……ダア……ダークニンジャチェイスみたいなやつ」
「ドアインザフェイス……?」
「それです」
「すごい言い間違いだね……」
茜丸との恋人関係はグレードダウンとかなんとか散々語って来ましたけど、結局理由の大部分を占めてるのはここなんですよね。付き合うだけならお互いが譲歩したあとに告れば5秒でイベントが終わる。だから今の関係の方がどう見てもロマンに溢れてるんです。
それにこの最終手段を使うと、『茜丸に死ぬまで可愛いって言ってもらう計画』が頓挫しますし、情けで付き合ってるだけなので多分キスの一つも出来ません。主に茜丸の堅物成分のせいで。あいつ絶対に『初めてはちゃんと付き合った人のために取っておいて』とか抜かしますよ。一緒にいるためならこんな特殊環境すら受け入れるほど茜丸が好きなのに、そこが加点対象にならないのはどうかしてると思います。流石にヤらせろとまでは言わないからせめてキスはさせて欲しい。
話が逸れた。
ひとまず私の中じゃメリットが薄いので頭の片隅に追いやっていたのですが、緊急避難所としては意外とありですね。
「ひとまずこれは最終手段にするとして、早くしないと私すら超えて茜丸盗られますよ。一緒に攻略法考えるのでさっさと捕まえてください」
「茜くんの全部を引き出す……話術、ない……」
「今までも落語家みたいな語学力がなきゃ話聞いて貰えなかったんですか?」
「あれは、多分……茜くんがなにか役に立ちそうって思ったから、聞いてくれてた……」
「はぁ…………。この際だから打ち明けますけど、茜丸はりな子の事を一番大事にしていますよ。写真の時だって無理させた事をめっちゃ後悔してましたし、自分にはないものを持ってるって語ってました。というかりな子は何に対してチキってるんですか?茜丸に踏み込むと逃げられるって愚痴ってたのに」
「なんか、最近の私……面倒くさい女を地で行ってるから……。茜くんの昔の女の人と、重なっちゃわないかなって……。それ考えたら、なんか動くの……怖くなっちゃって……」
「とはいっても小学生向け迷路みたいにスラスラ進める恋路なんてないんですし、迷いながらも進んで行くしかないのでは?」
確かに面倒くさいのは否定しませんが。でもそれ言ったら私とか面倒くさいを超えてただのメンヘラですよ?自分の承認欲求のために茜丸と長い付き合いをしようと色々迫ってますし。
そもそもの話が茜丸に寄ってくる人間にめんどくさくない人なんていないんですよ。だって人間の心の面倒くさい部分を利用して事態を動かすのが茜丸のやり方なんですから。
「というかもう面倒臭いって欠点は見えてるんですし、そこを抑えて動けるように意識してみては?」
「それをやるには、茜くんへの気待ちを捨てなきゃいけない……。だから、捨てないまま、なにか誰にも負けない個性を──」
「誰にも負けない個性とか無理くないです?この世には自分に似てる人が3人はいるっていうのに」
「かすみちゃん……それ多分見た目の話だと思う……」
「でも、似たよう顔なのに片方が基本一人ぼっちで、もう片方がリーダーシップと人望の塊だったら、その二人が似てるとは到底思えなくないですか?だから見た目だけじゃなく中身のそっくりさんもあると思うんですよ」
「それ突き詰めると……自分の存在意義にぶち当たるから、やめた方が良い……。みんな自分のこと、無意識とかやんわりで特別だって思ってるから……」
「その人類は特別ーみたいな考えを捨てれば、茜丸の好みにドンピシャするのでは?あの男の好物ってこういうのですし。体一つじゃメダカ一匹捕まえられない事を受け入れてからが本番だと思うのです。ここら辺の一般人成分を捨てればめんどくさくても問題ないですよ」
「私、かすみさんほど茜くんになれない……」
「なら、りな子は面倒くさくないですよ。茜丸は面倒臭いの擬人化ですし、ここら辺は初歩の初歩です。それにすら染まれてないならりな子は全然恋する普通の乙女です。もっと攻めて大丈夫。良いですね?」
「う、うん……」
「かすみちゃん、あかねくんみたいだね」
「…………ここだけの話にしておいてください」
要約すると中坊ハートをインストールすれば済む話なのですが、多分ここまで要約できる時点でだいぶ茜丸に染まってるって事なんでしょうね。そろそろ茜丸の娘くらいは自称出来るでしょうか。したくねー……。
「というか何回も押し倒されてる茜丸が今もりな子と一緒にいるんですし、それがすべての答えでは。鎖骨噛んでもお咎め無しですし。他人を体液全般が無理な茜丸が受け入れてるって相当ですよ」
「…………そうなの?」
「茜丸から聞いてないんですか?」
「聞いてない……」
対話〜〜。
性への価値とか微塵も感じてないので本当に好きな人のブツしか受け付けないんですよあの男。
一応可愛いやらかっこいいやらは判別できるらしいのですが、どちらかと言うと孔雀の羽を見た時みたいな。だから可愛いアイドルと通話しても、可愛いだけで何も無いから茜丸は微塵も靡きません。
「やっぱりもうキス程度なら余裕で行けると思うんですよね。少なくとも事故なら確実に通ります。いつまでも鎖骨なんて噛んでないで唇噛みちぎりに行きましょうよ」
「言い方……そもそも璃奈ちゃんはどうして鎖骨を……?」
「前に茜くんへの気持ちが止められなくなった時……身体が勝手にキスしに行こうと突っ込んで……とっさにハンドル切ったらたそこにどり着いた……。それからはもう鎖骨が定位置……」
「反射でキスしに行くって茜丸は何を…………あー、いえ。だいたい察しました。というかハンドル切らずに突撃完遂すればハッピーエンドだったのでは?正直唇より癖詰まってますし鎖骨がOK=確定演出だと思うのですが」
「茜くんの性癖知らないから……唇はアウトかもしれない……」
「どうせ昔の女が強引に迫っていたでしょうし、それに比べたら可愛いものだと思いますけどね。それに早くしないとあのミアとか言う子に段々奪われていきますよ?フレンドキス的なあれで」
「ほっぺたくっつけ合うとかはやってるから、手遅れ……」
「もうミア子のこと催眠術師として扱って良いですか?」
「か、かすみちゃん……」
何をどうしたらそんなスーパースキンシップの許可が下りるんですか。もしかして茜丸って年下好きだったりします?自分はロリコンだと語っていましたが、どちらかと言うとあれは『足踏みを合わせる事にしか頭を使えなくなったつっまんねぇ大人より、不完全未完成なおかげでどんな形にもなれる子供の方が見てて楽しい』って理由があるからですし。
それ抜きで半成熟した中3少女に付き合ってるのはそういう意味だったり?なんですりな子とは遊びだったとでも?いやまあ確かにビジネスなんですけど……もっとこうあるでしょうに……。
「なんとなく思ったのですが、茜丸お墨付きのミア子がガツガツ攻めてるのに、同列のりな子がこれなの負けに行ってるようなものでは?」
「い、一緒に住んでる……アドバンテージ……」
「でも地震が来た時とかにミア子が『怖い』って連絡を入れて来たら、茜丸は風呂中でも寝る直前でも絶対にミア子のところへ行きますよね?そっちの方がアド率高くないです?ほら、茜丸って好きと豪語した相手にはすごい素直になるじゃないですか?歩夢先輩は同好会の中で一番茜丸とデートに行けてます。それにありえないほど素直です。多分ですけど茜丸から好きって言われてますよね?」
「えっ。ぁっ……あ、あれはデートとかそういうのじゃなくて……衣装に使う道具の買物を手伝ってもらっただけで……。そ、それにあかねくんの好きは友達のやつだから……多分……」
「歩夢さん……?」
「ち、違くて……」
嗚呼、やっばりやる事やってたんですね。やけに仲良いなとは思っていましたが……確かに歩夢先輩相手なら気持ちは分かりますよ?でもさぁ……攻める相手が違うというかさぁ……茜丸はさぁ……。
「で、でも!かすみちゃんは大阪に行ったし……」
「あれはコアラ化したせつ菜先輩から茜丸を助けたお礼としてなので。それにしず子はしず子でデートの発動条件みたいなのがあるっぽいです。だから純粋な好意で茜丸とデートに行けてるの、今のところだと歩夢先輩だけなんですよ」
「じゃ、じゃあ……あかねくんが私のこと好きって言ってたの、やっぱり本心……?」
「……期待してたりします?」
「ち、違くて……。本気にしてるわけじゃないんだよ?でもその……形はどうあれあかねくんが好きでいられる人を増やせたなら、私がそれを裏切らないようにしようって……」
「そういうとこー……」
「ぇ……えっ……?」
何だこの先輩聖人か?いや聖人だったな。
なんか恋愛的に見てないせいで、逆に正妻の余裕感が出ちゃってますね。りな子の顔なんてもう梅干し食べた時と同じ状態になってますよ。田舎のおばあちゃん家で食べれる、蜂蜜は甘え系のガチ塩分梅干し。それ食べた時の顔。
「りな子、これですよ」
「参考にしてみる……」
「いや……お手本みたいに言われても……」
「茜丸相手にそこまで見えてるの、大分出来上がってる証拠ですし……」
「で、でも、あかねくんは素直じゃないだけでちゃんと話せば分かってくれるから……根はちゃんと良い子なんだよ……?ほら、練習の合間に買物一緒に行った時とか重い方の袋を持ってくれるし、一緒に走った後とかはタオルくれるし……こないだも休めて無さそうって家のこと手伝ってくれたり……」
「歩夢先輩、親戚の子とごっちゃになってません?」
「あ、あかねくんの話だよ……!ちゃんと……!」
誰の話してます?ノットオブ他人体液の茜丸がタオルを貸す?自分から荷物持ちと家政婦の人助け?
なんかここまで来ると歩夢先輩も催眠術師なのではって疑いそうになりますね。ダークウェブ的なサイトに催眠アプリでも転がっているのでしょうか。
「ま、まぁ……茜丸ですからね。確かに行動に移しそうな気はしますが……あっ、何か悪役台詞を貰ったりはしませんでしたか?」
「特にはなかったかな?というよりあかねくんの悪役セリフ?をあんまり聞いたことがなくて──も、もしかして猫被りさせてたのかな……?」
「いや、大丈夫です」
猫被りを気遣いの善性として扱えてる時点で、茜丸の中じゃオアシスや天国扱いだと思いますよ。やっぱり歩夢先輩はすごいですね。聞けば聞くほど茜丸に好かれる要素しか出てこない。おかげでりな子が至りそうな顔をしています。
「歩夢さん……茜くんが悪い子やってる時、どんな事……考えてる……?」
「ちょ、ちょっと難しい質問だね……。えっと……大変そうだなーって思うかな。あとは、疲れそう……とか。あかねくんはすごい優しい子で、というより優しすぎるくらいで。そんな子が人から怖い視線を向けられるの、わざとだとしても辛いと思う」
「それで、デートをしたり気晴らしに運動に誘ったりした、と」
「うん。家の手伝いまでしてくれたのはびっくりしたけど……あかねくん、楽しそうだった」
歩夢先輩がめちゃくちゃ見たことない表情で微笑んでる。これ、もしかしてなんですけど……歩夢先輩の男のタイプが茜丸だったりします?いや、確かに茜丸の年上特攻が一番刺さりそうなのって歩夢先輩ですけども。
「茜丸の事、大好きなんですね……歩夢先輩……」
「す、好きとかじゃないんだよ!でも、あかねくんがそう簡単に『好き』って言葉を人に使わないのは、私でもなんとなくわかってる。だから、さっき言ったみたいにあかねくんの気持ちを裏切りたくないだけなんだ」
「結局もう告白OKって事では……?」
「ち、違くて……!こう……最近はよく甘えてくれるし、居心地も良いって言ってくれたから……。好きって言葉さえ気軽に言える、いつでも楽でいられる居場所になれたらって……ほ、ホントにそれだけだよ!」
すごいですねこの人。『私なら茜の本当の良さをわかってあげられる』と『世界全てが敵に回っても私だけはあなたの味方』を悪意も恋慕も嫌味っぽさもなく言ってのけましたよ。歩夢先輩って教会のシスター上がりだったりします?眩し過ぎて前が見えない。というよりただの恋慕よりも強い気持ちが出来上がってませんか?
「りな子、どうします?危険分子予備軍が出てきましたけど」
「歩夢さん……最初は茜くんのこと、すごい微妙な顔で見てたのに……」
「あ、あれはユウちゃんの事を取られたみたいで焦ってただけで……。ちゃんと話したらただ仲が良いだけって分かったから……。それで、段々ユウちゃんとあかねくんと3人一緒でいる事が多くなって、色々してたらそれが当たり前になっただけで──」
「…………つまりもう茜丸がいないと落ち着かない体に?」
「いや……あの……言い方……答えづらいかなーって……」
侑先輩がブレーキになっていただけで、その懸念点が消えた瞬間にこの侵食具合。やっぱり茜丸系が男のタイプなのは確定、と。
それはそれとして、茜丸はどんだけ歩夢先輩と交流を重ねたんですか。その積極性を1%で良いからりな子にも向けて欲しいのですが。
「一回、茜丸の中にある皆さんへのイメージを調べる必要が出てきましたね。大分バランスが歪んでるので。歩夢先輩、衣装用のアクセの買い出しとかで茜丸を呼べませんか?」
「で、できるけど……騙しちゃうのは嫌かな……。茜くんそういうオシャレには本気で向き合ってるから……」
「大丈夫です。嘘や方便もオシャレの内と語っていたので多分乗ってくれます」
「わ、わかった」
「これで茜丸は誘えるとして、りな子の方の方便はどうしましょうか」
「……ちょっと、クローゼットの中漁ってみる……。しばらく時間かかるかも……」
「承知しました」
とりあえず次の休みにでも茜丸を誘い、化粧売り場を彷徨いながら尋問してみますか。ミア子で頭がいっぱいだったらどうしよう。