虹ヶ咲ヒーローorナイト&キング   作:コントラポストは全てを解決する

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72.お前は絶対で独裁の皇帝(アイドル)

 

 それは必然だった。

 

 オープンキャンパスのライブにてモニターが落ちた。

 

 そしてどこからか飛び込んで来た皇帝のようなアイドル。

 

 彼女が全てをかっさらい、皇帝は王に近づいた。

 皆の記憶に強く残った皇帝。側にいた皆が大好きな王様。かすみは粗方察し、困惑する皆を諭したあと持ち場に戻った。

 

 これは、そんなアクシデントから一日経った生徒会での出来事。

 

「はい、反省文」

「こんなにいらない……」

 

 作文用紙10枚に書き記された反省文を差し出す茜。それを眺め顔をげっそりとさせる栞子。

 確かに頼れと言われ作文の添削を頼まれたのはちゃんと覚えている。しかし、茜のことだからいつかに叶える方便だと思っていた。

 

「えっと……そもそもこれってなんの反省文なんですか……?」

「昨日嵐珠を使ってイベントを混乱させた罰。指示したのはボクだから」

「…………もしかして、モニターの電源を切ったりとか?なんのために?」

「あのままじゃノウハウがある同好会だけが目立って嵐珠が輝けんかった。華が足りなくて見応えないからちょいとテコ入れをだな」

「えっ、ゴミじゃないですか。見損ないました」

「見損なうも何も最初から好感度マイナスでしょ?」

 

 薄っすら自分の好意が気づかれそうになり、栞子は作文に逃げた。

 というより栞子自身も驚いているのだ。意識せずとも茜への好意をぶつけられるようになっていた事に。

 

「んで、どう?ボクの改新の作文は」

「嵐珠を庇う時以外曲の歌詞みたいで駄目ですね。反省文としては認められません」

「ダメかー……明日また書き直したやつを持ってくるから、添削よろしくね。じゃっ」

「反省の意思はあるようなので作文は結構です。そもそもこういうのは書いてる時の態度を見て、その後の処遇を決めるものですし」

「ほんと?栞っち大好き愛してる」

「気持ち悪いのでやめてください」

 

 キラッキラした目で栞子を見つめる茜。本当にキラキラしてたら良かったのに……なんて心の中で愚痴りつつ、眼の前の腹黒チャーミーキングに向けて溜息を吐く。

 

「それで、同好会の方々にほ謝ったんですか?部がなくなっても付き合いは残りますよね?」

「残らんよ。元々疎遠になりたくて仲を深めなかったわけだし」

「同好会になんの恨みが……」

「こっちはずーっとビジネスだって言ってるのに、向こうは勝手にボクのプライベートゾーンに入ってくる。それが許せない。その後の事をもっと考えて欲しい」

「一人ぼっちが茜さんの目指す交友関係のゴールなんですか?」

「そっちの方が璃奈りーを追っかけやすいんだよ。みんなはボクのことが好きすぎる」

「肯定感の鬼……」

「ぶっちゃけ最近の安らぎが栞っちと一緒にいる時しかない。ゆとりって大事だよね」

「……もしかしてここ喜ぶ場面だったりします?」

「ご自由にどうぞ」

 

 普段からこれ以上の殺し文句をもらっているので純粋なデレに気付けなかった。そもそもこれはデレなのだろうかと栞子は考えたが、聞き返す前に茜が寝てしまったため答えは暗闇へ消えてしまった。いや、ここは生徒会室だから寝るような場所ではないのだけど。

 

 そして、茜への対応に迷ったまま栞子は始業のチャイムを聞いてしまう。もうどうしようもなくなっな挙げ句、『自分は茜を嫌っているから』という言い訳を思いついたので栞子はその場を去った。数回体を揺らしたという証拠は作ったため文句は言われないと思う。

 

 

 ◇

 

 

 起きたら放課後になってたんだが?

 

 巡回は?先生になんて説明しよう……そもそも生徒会の方々は今日の活動をどこでしたん。だいぶヤバい迷惑をかけた可能性があるな。また徹夜で反省文を書こう。

 あと、帰りたいけど部屋のカギって開いてるのかな?施錠されてたら窓から五点着地する羽目になるんだが。ボクのキレイなバデーが傷ついてしまう。

 

「あっ、良かった。開いてる」

 

 入り口に「鍵は職員室に」ってメモが残ってる。執跡からして栞っちだな。帰ったらお礼の電話入れとこ。

 

「……ボク、どこに帰れば良いんだろ」

 

 さすがにあれだけやっておけば皆ボクの事を嫌いになるだろうし、それでノコノコ父さんのところに帰ったら家族会議だ。謝るのは良いけど仲良くしなさいとか言われたらボクはどうする事も出来ない。

 だから璃奈りーと父さんのところ以外……ホームレスか嵐珠のところが無難かな。最近は嵐珠とちょうど良い感じの友好が築けてるし。というか口が悪いだけで結構ナイーブなんだよな、あの嵐は。正直かすみさんと侑先輩がいれば全部解決したと思う。璃奈りーの時と一緒でボクが手を出す必要はなかった。

 

 ──ピコン

 

「……えっ、LINE?誰から?」

 

 嫌われ成功でルンルン気分かつ、帰る場所を探して旅するボクに連絡をよこす人。心当たりがないんだが。まず嵐珠はありえない。メアドしか渡してないし。

 怖いから開きたくないけど、ガチ目なSOS信号が来てたら嫌だし確認だけはしよう。もしもの時は既読無視をすれば良い。

 

『お腹空いた』

 

 璃奈りーからだった。

 

 えっ、こういう時の璃奈りーって部屋の隅で段ボール被ってすすり泣くんじゃないの?アクティブ過ぎない?

 いや違うな。多分これボクの死気を感知した死神が待ち伏せしていて、家に行ったら魂をスパーンされるパターンだ。

 

 OKオーライ完全に理解。ボクは賢いアイドル。

 

『おまえはだれだ』

『怒るよ』

『うい』

 

 璃奈りー本人だった。ということは復讐パターン?

 

 家に入ってご飯を食べてる途中にやかんのフエッスルが鳴り響き、悲しみの向こうに旅立ちながら怒りの奪首包丁されるやつ?

 それで中に誰もいなかったせいで一点入っちゃうんだ。こっわ、近寄らんとこ──

 

『怒るよ』

『うい』

 

 うんうん。この思考の読み具合は璃奈りーだし、返信速度から見るに泣いてるどころかいつもと同じテンションだわ。もう訳が分からないから事実確認のために璃奈りーと話し合う事にしよう。タクシーGOってどこにしまったっけ。

 

 

 ──

 

 

 めちゃくちゃ気まずい帰宅だ。璃奈りーと目を合わせられない。

 

 

「おかえり、茜くん……」

「……うん。またしばらくお世話になります。それで一応確認なんだけど……ボクの事どう思ってる?」

「今までの茜くんの方が、酷い行動してた……」

「あぁー……うん、そっすか……」

 

 なんとも思ってないし今までの方が心に来てた……って璃奈りーは言ってる。マジで言ってる?今までと今回で比べたら、今回の方が頭にくると思うんだけど。

 

 もしかしてボクがされたら嫌いな事と、普通の人がされたら嫌な事って大分ズレてるのか?過去一手応えがあった嫌われアタックだったのに。

 それにほら、エマ姉とか彼方姉さまとか果林酸、あとは歩夢先輩なんかはめっちゃ嫌悪感ある表情してたし。

 

 ほんとになんでこうなった?

 

「……ずっと前から思ってたけど、茜くんは嫌われ役向いてないよ……」

「いやでもほら、めためたに暴言吐いてますし……」

「嫌われたいなら、もっと下心を持った方が良い……」

「下心バチバチですが?推しドルのライブを見るために我道闊歩キメこんでますけど?」

「そのために自分に出来る事を全部やって、どんな手段も厭わないで……自傷覚悟で全部叶えちゃうから嫌われないんだよ……。普通の人は、そこまでしない……。でも、茜くんはいつも完璧に計画を立てちゃうから、どこかで絶対に利益が生まれて、それが相手の助けになっちゃう……」

「ならどうしろと……」

「頭使うのをやめて……根性と感情に生きる……」

「えっ、やだよ。人間が生きてこれたのは考えて研究して試行錯誤をして来たからなのに。人間の取り柄はこの知能だけ。それ捨てて獣に成り下がれとか無理オブ無理なんだが」

 

 いや違うな。獣は獣で取り柄がある。種族の取り柄を捨てた何も出来ない無能なんて、生き物の上等下等ランクにすら省かれたマジモンの劣等種だぞ。

 そんなものに成り下がったらライブなんて絶対楽しめん。だから嫌。

 

「みんなと距離を置きたくなって来たな。影に潜んで学校もやめたい」

「ダメ……」

「でもほら、3年組には絶対嫌われたから絶好の機会じゃない?このマンションの部屋を買うから璃奈りーもそれでどう?」

「守る気もない提案、しないで欲しい……。茜くんが学校辞めるなら私も辞める……」

「今結構嫌われポイント稼げそうなシチュだったんだが」

「危なっかしいからダメ……」

「ならもうなにしても駄目じゃん……」

 

 あっという間に万策尽きて笑えない。ボクに嫌われは無理なのか……。実家帰る?ライブの現地リアタイハードルが上がるの死ぬほど嫌なんだが?交通ダイヤが狂っただけで璃奈りーのライブが見られなくなっちゃうじゃん。

 

「整形してブスになればワンチャンいけるか……?」

「茜くんの顔の施術、誰もしたがらないと思う……。綺麗だから、スカウトされてモデル堕ちするのが関の山……」

「整形クリニックとしてゴミも良いところじゃん……」

「実際ある……。汚く撮ったあと軽い針治療してからまた撮って、それを載せるやつ……。処置が簡単で値段がかかってないから、費用対効果のサンプル資料として使われやすい……」

「やらしい〜」

 

 二度と行かんわあんな場所。一度も行ったことないけど。

 

 で、整形も駄目となるとボクが出来る手段がなくなるわけだが……下心?これから毎日果林酸の乳でも揉むか?それとも歩夢先輩に混浴でも迫るか……あんまり嫌ってくれなさそう。暴力は下等生物の特権だから人間らしくない。

 やっぱり、ボクのスーパー脳みそで考えても万策尽きてるあたり大分詰んでるな。もう霊体になって見守ることしか策がない。

 

「茜くんは、なんでそんなに人から嫌われたいの……?」

「そっちの方が都合が良いから。皆幸せ」

「本気で言ってる?」

「真面目も真面目のオー真面目。璃奈りー達のそばにいるべきなのは男版姉さんみたいな人だからね。スーパーハーレム主人公」

「そんな胡散臭い人……信用できない……。私は……私達は、茜くんだから友達になりたいって思った……」

「悪いがボクの自尊心に賭けて断固として拒絶する。怒るなら勝手にヒスっててくれ」

「茜くんの嫌われ仕草を知ってる人の前で、憎まれ口を叩いても、心配が勝っちゃうから意味ないよ……」

「理性のバケモンか?」

 

 わからん、ここまで言われたら普通は嫌うだろ。嫌われたがってるのも考慮したら望み通りにしてやるぜコース一択では。

 

 ほんとにほんとに訳わからん。新手のいじめか?

 

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