なんか先生拾ったんだが……   作:かわいそうはかわいい

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おわあああああああ!?(新作見ながら)
クロコォ……クロコォ……

いや待て、あれなら……!


第十話

「ふんふふーん」

 

今日は~肉が安かったから~ミルフィーユ鍋にしよ~っと。皆にも伝えとこ。

……先生と出会って、もう一か月か……濃いな一か月……

ただの一般人だった私が先生と出会い、ワカモさんやファンクラブ、ヒナさんとも出会った。

やー、濃いな……

 

ホントに普通の女の子やぞ我!

 

なのにどうして……

 

「ふふっ……」

 

楽しいな……

 

いや先生からしたら結構苦しい状態かもしんないけど、ずっと一人だったからな……複数で暮らして遊ぶなんて初めてだしなんか、こう、いいよね?

さ、今日はファンクラブの人達も来るらしいし、さっさと帰って準備しなきゃなー。鍋ってのは自分達の手で作るから尊いんだ絆が深まるんだ。

……ん?

今前の路地んとこに誰か入らなかった……?

……見てない見てないっと。こういうのは首を突っ込まない方がいいんだ。

キヴォトスで安全に暮らすにはそれが一番なんだ。それができない人が身近にいるけど。

 

「帰ろ帰ろ」

 

そうして通ろうとすると――

 

 

「ぐぇ!?」

 

 

――引っ張られました。路地の方に。

 

「なんでだむー!?」

 

口も手で塞がれる。クッソ強すぎだろ!舐めることもできねぇ!

全力で体を動かすが、綺麗に固められて動けないてててて!

 

「むー、むー!」

「動かないで」

「む」

 

全力で力を抜きます。あっすげぇ楽。

何の用だろうなーとか思いながら相手を待ってると、私を抑えてない奴が声を出した。あっ、複数人いるのね。

 

「……簡潔に言います。先生の所へ案内してください」

 

……真面目に考えるか。

私が戦えずとも情報はいる……数は……少なくともここには二人。

先生の情報はどこから?何度か外に出たとはいえ、そうそう見破れるもんじゃないはず……

そもどこの学園だ?

 

「何のこと、すか!」

 

会話で時間稼ぎしながら、考える。

 

「分かってるで、しょ!」

「いででででで!?」

 

痛いっつの!尋問はルールで禁止っすよね!

キヴォトスはルール無用だろ(自問自答)

 

「お願いです、案内して……いえ、教えるだけでいいです。教えてください。そして、関わらないでください。そうすれば、もう痛いこともしませんし、私達もこれ以上あなたに関わりません」

 

……そうなんだ。

 

「ホント?」

「はい。本当です」

「居場所を吐いたら、もういいんだね?」

「はい、教えてくれるだけで、いいのです」

「……そっか。分かった」

「!分かっていただけましたか、それでは……」

 

 

「だが断る」

 

 

「!?」

「このモブ子の最も好きなことの一つは自分の方が上だと思ってる奴に、NOを突き付けることだ!」

 

教えてやんねー!

最悪私が死のうがファンクラブもワカモさん達もいる、なんとかなるだろ多分。

 

「……そうですか、分かりました」

「ホントはあんたに教えられなくても、知ってるの。あんたん家でしょ?」

「……へー、どうやって知ったのか、これからのために、ご教示願い、たいね!」

「次なんて無いわ。でもそうね……無いなら教えてあげる」

 

こいつアホやぞ。

 

「焼肉屋、あんたあそこでゲヘナの風紀委員長に会ってたでしょ?たまたま見かけただけなんだけど、あんな影響力が凄い奴がゲヘナじゃないとこで一人で焼肉なんておかしいと思ってね。そこから出てくるとこまで見張って、その中の三人を調べ上げて……てね。変装しても分かりやすかったって、風紀委員長は」

 

マジかよバレてたんじゃん。

ワカモさんあの日もいないって言ってたじゃん!

 

「ホント、たまたま来てただけなんだけどね……休日に見回りに来てた先輩のおかげ」

 

オーケー幸運がファンブったってことね。

責められんな、責める気ないけど。

 

「セリカちゃん」

「分かってますって。……じゃ、寝てて」

 

よしアホ二人目、名前を言うな名前を。慢心かコノヤロー!

もう一人が固められた私の前に来て、デカいミニガンを振り上げて……いやおっぱいでk

 

 

 

 

 

「これが、お約束の品ですよ」

「……どうも」

 

わたくしは、とあるビルの屋上で、怪しさ満点の男、黒服から例の、スマホを一回り大きくした見た目の装置を受け取っていた。

 

「これで、モブ子さんの家まで直接?」

「ええ、行けますよ」

「理屈は知りませんが……こんな小型化できるのですね」

「その分、基点を一つしかつくれませんが、今は問題ないでしょう?」

「帰りはどうするんですか」

「起動した場所が帰り用の基点になります」

 

それはまた便利な……

そういえば、聞きたいことがありました。

 

「モブ子さんの家をあなた達の技術で隠せないのですか?そうすれば、安定性が増しそうですが……」

「下手に我々の力を多用すれば、逆に探知されかねません。多少の気配遮断などは張っていますが……多くは無理ですね」

「なるほど……難しいものですね……」

「おじさん達にとっては、ありがたいけどね~」

 

わたくしはすぐさま声の方向へ銃を向ける。

 

「あなたは……!」

「やー久しぶりー……片方は、もう会いたくなかったけど」

「……お久しぶりです、ホシノさん」

 

小鳥遊、ホシノ……!

 

「何の用です?」

「まあまあ落ち着きなって。要件は今のところ一つ。……先生を渡してよ」

 

そんなことだとは思っていましたが……素直に渡すと思って?

 

「勘違いしないでほしいのは、襲うつもりはないってこと」

「……襲うつもりが」

「ない?」

「うん。……先生って、いろんな子に優しくしてさ、それで、襲われてるわけでしょ?」

「あなたを含めて……」

「……うん、分かってるよ。だから、守りたいんだ」

 

……守りたい、ですか。

 

「私達も、襲わない。ちゃんと話し合って、決めたから」

「……それがなぜ、先生を渡すことに?」

「だってさ、モブ子ちゃんだっけ?彼女、戦う力ないじゃん。なら、充分あると思う私達が、隠して守っていく方が良いと思わない?」

 

…………なるほど、一理ありますね。

 

「流石に、先生も抵抗すると思うからさ、協力してくれない?説得に」

「……そうですか。黒服さんはどう思います?」

「確かに、モブ子さんは隠し通せないでしょうし、戦う力もない。言われてみれば、合理的です」

「だったら」

 

「ですが」

 

「……ですが、何?」

「彼女はあなた達にはできないことができます。例えば、先生を笑顔にできる。例えば、先生を癒すことができる。例えば……」

「先生の心を、守ることができる。悔しいですが、彼女にしかできません」

「ええ。対してあなた達は……先生を襲い、傷つけ、あまつさえ守るという『傲慢』な考えに至った。……そんなあなた達が先生を保護したところで、結末は目に見えていますよ」

 

『先生』が死ぬ結末が。

 

「……ふーん、そっか。要件が増えちゃったかー。ま、しょうがない

 

足止め、させてもらうよ」

 

!まさか……

 

「黒服!」

「分かっています!」

「おっと、行かせないよ!」

 

黒服が先生のところへ向かおうとしましたが、ホシノが射撃し、邪魔をする。

 

「……チッ、まずはこいつを片付けませんと……戦えますか?」

「先生との取引で傷つけるなと……」

「無能!」

「ですが」

 

「!?」

 

ホシノの足元に謎の空間のようなものが現れ、さらにそこから鎖が飛び出した。

それはまるで意思を持っているかのようにホシノに絡みつく。

 

「動きを封じることはできます。作っておいてよかった特殊兵器」

「有能ですね。もっと早くできないのですか?」

「褒めるのか貶すのか……」

「……ふっ!」

「来ますよ!」

 

ホシノは力技で拘束を解き、こちらへ跳んでくる。

早く向かいます、先生……!

 

 

 

 

 

「ふんふふーん♪」

 

今日はお鍋ー久々のお鍋―♪

ファンクラブ達がいるのだけはあれだけど、せっかくなら準備しとかなきゃ……ワカモとかも、来るかな……

お鍋を出してー、調味料とかも出してー。ふふっ、早くモブ子帰ってこないかなー。

そうやって準備をしていると、突然チャイムが鳴った。

……どうしよう、モブ子は帰ってくる途中で、黒服はワカモに用事、マエストロとゴルデカは鍋のための準備しに行ってる。

つまり、私以外いない……よしっ。

 

パパっとメイクやウィッグなどを用意してすぐに着替える。

声もちょっと変えて……大丈夫、すぐに終わらせたら……うん、行こう。

 

「すいません、待たせ……て……」

「……」

 

シロ……コ……?

どうしてここが……い、いやまだ大丈夫……!

 

「ど、どうされました……?」

「……先生、だよね」

「っ……」

 

バレてる!なんで!?

 

「ち、ちがっ」

「もう知ってる、隠さなくていい。……ごめん、先生」

 

シロコは頭を下げる。なんで……?

 

「私達は……先生を傷つけた。だから……その償いをしたい」

「つぐ、ない?」

「うん。あなたを……守らせてほしい」

 

私を、守る……?

 

「私達以外にも、先生を襲い、今でもそうしようとする人はいる……だから……」

「……アビドスの皆で?」

「うん。だから……この手を……」

 

シロコは手を差し出す。

私は……私、は……

 

手を伸ばして――

 

 

 

『先生』

 

 

 

「っ!ごめん……」

 

――振り払う。

 

「……先生」

 

ごめん、私は……モブ子に……

 

「……分かった」

「うん……だから」

「ごめんね」

「え?」

 

バチッという音を捉えたすぐ次の瞬間、意識が暗闇に落ちていった……

 

 

 

 

 

「――うん、分かった。じゃ、こっちの目的は終わったから。じゃあね」

「逃がすものかっ!」

 

ホシノはビルから飛び降り、逃げる。

わたくしは追おうとするが、黒服に肩を掴んで止められる。

 

「今は、先生を」

「……分かっています」

 

黒服から渡された機械を使う。

すると、一瞬の暗転、次の視界には見知らぬ……いえ、モブ子さんの家の中が映っていた。

 

「先生!」

「先生はいない」

 

そう言ったのは、二つ頭の異形……マエストロだった。

その背には、気絶したモブ子さんが。

 

「……クソっ!」

「私が言ったところで、何の意味が無いだろうが……申し訳ない」

「取引をしたと言うのに、モブ子さんは傷つけられ、先生も奪われるとは……ファンクラブ失格、ですね」

「今は、後悔をしている暇はない、モブ子さんならそう言うでしょう」

 

そう言葉を発する写真と、それを持った頭無しが現れた。

 

「……ええ、そうですわね。先生の居場所は?」

「もう私達が調べ上げています。場所は……ここ、アビドス区域の砂漠地帯のようです」

 

写真……ゴルコンダが説明をしながら、頭無し……デカルコマニーがタブレットの地図を起動する。

 

「なるほど、ここならば他の学園の影響も受けづらい」

「では早速……!」

「待て、気が早すぎる。計画を立てねば」

「ですね……モブ子さんは、どうしますか?」

 

モブ子さん……

 

「置いていくべきです。彼女は戦えないのでしょう?なら……」

 

 

「私抜きでやるなんて、ちょっと酷くなーい?」

 

 

「……モブ子さん?」

「はいはい、モブ子ですよ。そろそろ下ろして?」

 

よいしょ、っと声を出しながらマエストロの背から下りるモブ子さん。

 

「で、状況から見るに先生攫われたんでしょ。じゃ、どうする?」

「……あなた、ボロボロになっていますよ」

「そらミニガンで殴られましたからね。胸のでけーねーちゃんに」

「助けに行けば、それ以上の痛みが感じるかもしれませんよ」

 

「同居人助けるのに痛みとか気にする必要あります?」

 

「……」

 

さらっと、何事も無いように、モブ子さんは言った。

 

「ね、言ったでしょう?精神力が凄いと」

「そういうこった!」

「あなた……本当に一般人ですか?」

「もしかして私暴言言われてる?」

 

だからこそ、先生を……

 

こうして私達は、先生救出作戦を考え始めたのだった……




モブ子のヤバイとこ:先生だからでも大切な人だからでもなく、同居人だから助けると言うところ。(本心)

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