制服よし、鞄よし、ヨシッ!
背伸びして~っと。さ、行くかな。
行ってきまー。
私の名前はモブ子!どこにでもいるごく普通の女子高生!
強いて言うなら誰にも言えない秘密があるってとこカナ――秘密は誰でも抱えてるか。
「あ、モブ子ちゃんおはよー」
「おーっす。――さん、仕込みですか?」
「そうだよー。モブ子ちゃんは今から学校だよね、気を付けてねー」
「はーい」
「おはよーおねーちゃん」
「おうはよー。――くん朝飯食べました?」
「うん、たべた!」
「おーし偉いな~。じゃ、今日も一日元気にねー」
「はーい!」
「あ、おばちゃん大丈夫?荷物持ちますよ」
「誰がおばちゃんじゃ!まだまだぴちぴちの90じゃ!」
「へいへい、そうですか。レディ、お荷物を」
「ふん、最初からそう言っとけばよかったんじゃ。ほれ飴ちゃん」
「わーい飴ちゃんなのら!」
うーん、平和。こういうのでいいんだよこういうので「きゃー!ひったくりよー!」どうして……
「ナイフを持ってるぞ!」
「おい!嬢ちゃんがあそこに!」
「どけぇ!」
「はいわかりました……とはいかないんだなこれが」
ほい、腕持ってガっと。
「いででででで!?」
「銃弾に比べたら遅すぎるわい。それに……」
刺されても痛くないし。
ひったくりを警察に渡した後、私は急いで学校に向かう。
遅刻遅刻~!遅刻してもいっか……よかないわ、こっちには為すべきことがある。君はどうだ、戦友……
「じゃ、ねえ!急げ急げ!」
今の時間は八時半前!学校には半前につかなきゃいけない!学校までの距離は五分くらい掛かる!終わった!
歩くか。無理なもんは無理。
「おはようございます!」
「おう、おはよう。元気でいいな」
「それで遅刻は勘弁していただけないでしょうか!」
「自分の挨拶にそこまでの価値を感じてるの?とりあえず席につけ、もう始まってるから授業」
へーい。
自分の席について授業に参加する。
ふりをして一冊の本を読む。
題名『パラレルワールドの行き方』
もう既にダメそうな匂いがプンプンしますが手がかりがあるかもしれないので継続します。
ここでオリチャー発動!すぐさま本を閉じる!なんだよ初手あなたの心の中にあるとか。やる気ないんか?
駄目だなこりゃ、やっぱ真面目に研究してるとこに駆け込むのが一番かぁ?
「そこ、真面目に聞いてるかー?」
「先生平行世界の行き方知りません?」
「国語の教師に何を期待しとるんだお前は」
やーっと四時間終わった……飯食いに行こ。
「モブ子ー、どこ行くん?」
「購買。なんか買ってきましょか?」
「んー、いやついてくわ」
「さようで」
知り合い(男)がついてきた!
……うーん、何故かどこかで荒れる音がする……
「さて、何を食べようかな、っと……これにしよ」
「ん、渡してくれ。買ってくるわ」
「何でですか。別に自分で払いますよ」
「いいから、ついでだよついで」
「えー……じゃあはい。おなしゃーす」
なしてよ。
「それはだねモブ子くん」
「うわっ、びっくりした。同じクラスの知り合い(女)さん!」
「宮田です(半ギレ)。じゃなくてだね、彼、多分君の事が好きなんだよ」
「趣味悪いっすね」
「というか君はモテるんだよ」
「性癖壊れてるんすね」
「いや君……誰とでも仲良くできるし、誰にでも優しいし、面白いし、何より美人だからね。男からも女からも人気だよ?」
へー、そうなんだ。
「興味無さそうだね」
「……ま、ちょっとね」
ふとした拍子に別れることになるのは、結構辛いからね。
……あ、あの人何故かボコボコにされてる。
「ファンクラブもあるからね君。その制裁だよ」
「なんでだよ」
マジでなんでだよ。
ふぃ~、終わった終わった。下校の時間じゃ。
「ま、直帰では無いんですけども」
パッと鞄持ってと。
「さーってと。どうしたもんかねぇ」
この世界に現れ早数か月。
聞きなれた銃声なんてしない、安全な国、日本。
技術は遅れてるが、まあ困るほどでもない。
が。
「寂しく感じるもんだなぁ、会えない状態だと」
先生、地味子――口にすると、多すぎる数。
でも
私モブ子!ごく普通の拷問で死んだはずの人間!
今はキヴォトスに戻れないか模索してるところなんだ!
そして割と、会えない以外に悩みが無くて困ってないよ!
「うーん、みんな笑いあってくれたらいいんだけどねぇ」
私は、帰る道を探してみるしかないか。
その頃キヴォトスではキヴォトス存続を懸けた地味子対ヒナワカモの戦いが始まっていた。