歩く。ゆっくりと、しかし確かに、歩く。
『いっ、てて……ははっ』
全身の痛みに笑いが零れる。
『いやー何でこんなことになったんだったか……まあいいか思い出さなくて。あれだ、ふと思いついたネタみたいなもんだ。うん、何言ってんだ私』
歩く。どこに辿り着くかもわからないまま、歩く。
『あ"ー、いったぁ……』
片腕には切り傷に打撲に火傷、凍傷が。腕どころか全身にあるその傷は、一目見るだけで凄惨という言葉では足りない。
唯一無事なのはもう片方の、左の腕。傷一つ無い。
『傷つく腕が無いんですけどね!あははいてえ!』
笑うと腹が痛んだ。
腹はもうべちゃべちゃだった。血で。腹は腹でぱっくりいっている。横とか縦に。
さっき何か落とした気がするが、まあ気のせいだろうはははいてえ!
『こりゃお先真っ暗だな……目が見えないからホントに真っ暗だけど』
両目も無くなってしまった。熱か、ナイフか、あったかナイフか、そこら辺でやられた気がする。
頬に血が滴って涙を流している感覚がする。これって跡残るのか?シュウみたいに。
それはまあいいとして、どうしようか。どうしようも死ぬしかなさそうだけども。
声を上げて助けを呼びたいが、喉は焼かれ切られて使い物にならなくなってるし、無理。
本当に万事休す。まるで綾鷹。それは急須ってか。
『面白いほど面白くないな……あたっ』
頭が何かにぶつかった。
多分、壁。
もう歩き疲れたので手探りで壁を背にして座った。
『うーん、せっかくだからなんか言って死にたいんだけど……まあ言葉として聞こえないだろうけど』
あ"ーとかい"ーとしか聞こえないもん。うー☆
でもせっかくなら言いたいもん。
『何にしよ……母さん、僕のピアノ……駄目だ庇っては無いもん。止まるんじゃねえぞ……聞いてくれる人がいねえ。あれは、いい壺だ……壺持ってねえわ』
なぜことごとくダムネタなんだ……
『うーん……ママを大切にしろよ……我が子もいねえしママもいねえ。独りぼっちは、寂しいもんな……一人で死んでいくのに?』
どうしよう、何も思いつかん。
あ!クッソ忘れてた!死ぬ時はタバコ吸いながら死にたいって思ってたんだ!それやるまでは死ねねえ!
『でもタバコ持ってないよ~健康優良児なので。健康か?』
しゃーねーなー、見つけるまでは死ぬの耐えるかぁ……見つける目が無いんだけどな!がはは。
……ま、死ぬのは初めてだけど、案外恐怖ってのは無いんだな。
いろいろ置いていくのはあれやもしれんけども、まあ、いっか。
あばよ先生、地味子……全員言うのはあれなのであと全員。
来世があったら会おな!じゃ!
ていう感じで死んだ気がしましたが、私は元気です。
眼は見えませんし左腕もありませんし全身に痛みが走りますが私は元気です。
『あーん喉も死んでるー。喋れませーん』
「……あの、大丈夫です、か?」
『アッ大丈夫です。アイムファイン。超ファイン!』
そう言っても多分伝わってない。声が出ないからな!がはは!
私は多分気絶した後、多分誰かに助けられ、多分生きています!あと多分布団の上にいます!
えぇ……内臓とかいろいろ落とした気がするんだけど、よう生きてるな私。ポルナレフか。
そしてさっき会話……会話?した子が多分助けてくれた子です。
喋るのが苦手なのか、たどたどしく声をかけてくれ、ご飯も食べさしてくれる。天使か?
「……何かあったら、ここの、チーン、って、なるやつで、呼んで、ください」
『ワカリマシタ(^q^)』
「早く、元気に、なってください、ね?」
『善処はしますけども、この場合の元気って何なんすかね?』
「じゃないと、暴力の、しがい、ありませんから」
『ワカリマs、え?……お?ちょちょちょ待って、待って!おーい!待って!』
どれだけ声を荒げ、チーンとなるやつを叩いても、足音は止まってくれなかった。
やっばい命の危機かも!私これから、どうなっちゃうの~!?
暴力ちゃん:モブ子に暴力振るうのが大好き。でも死んでほしくはない。後遺症が残ることはしない。万が一酷い怪我になった場合一生懸命治療する。
とりあえず怪我が完治するまではモブ子には何もせずに怪我をさせた奴らに報復しに行くつもり。