なんか先生拾ったんだが……   作:紫彩

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第四話

今日はお休みの日。自由だあああああ!

まあ宿題とかあるんですけど。おクソが!

それも込みでやらないといけないことが多い。まず買い物だ。できるだけ平日に買い物しなくてもいいように買い込んでおく必要がある。

というわけで朝軽く食べ、私服に着替え、スマホをポケットに入れ、準備万端と行こうとする。

するんですけどー……

 

「……」

「……先生」

 

玄関で足にでっかいひっつき虫がくっついて動けません邪魔です。

割と弱く掴んでるからパって振り払ってもいいんだけど……待てよ。

 

「それって全力?」

「うん、絶対に離さない」

「お、おー……」

 

よ、よえぇぇぇ……

キヴォトスでは結構致命的だ。通りでポンポン犯されるわけだ……嫌だなこの言い方。

怪我させてもいけないし話し合いで解決してみるか。

 

「先生、なんで止めんの?買い物終わらせたらすぐ帰ってくるって」

「……せっかくの休みなのにいっしょにいれないのさびしいから」

「ちょっとだけ、ちょっとだけだから外居るの。すぐ帰るって」

「……ホント?」

「ほんとほんと」

 

数秒葛藤した後、大人しく手を放してくれる先生。

 

「早く帰ってきてね」

「はいはい」

「いってらっしゃい」

「いってきます」

 

ちょっとだけ先生の頭を撫でて、私は外に出た。

 

 

 

 

 

「思いましたが、やっぱり少し様子がおかしいような気がします」

「ぬるって現れるのやめません?普通に叫ぶかと思ったんですけど」

 

スーパーまで歩いていると突然横に現れたワカモさん。忍者かよ。

横並びでスーパーまで歩く。

 

「慣れなさい。いつもやってることでしょう」

「まだ三回目くらいですよ。……というか聞いてたんですね、私達の会話」

「ええ、あなたのポケットから」

「……えっ、盗聴?」

 

ポケットにはスマホが……何やってくれてんだあんた!?犯罪者かよ!犯罪者だった……

んなこたどうでもよく……よかないけど、もっと気になることがある。

 

「様子がおかしい……って言っても私あの状態しか知らないんすけど」

 

年上の妹くらいにしか感じてないぞ。一人っ子だけど。

 

「ええ、前までの先生は、もっと落ち着きを払い、論すような喋り方をし……要は大人でした。ですが、今のあの方はまるで子どものようです」

「……」

「もしかしたら、私達が思うよりも深く心を壊しているかもしれません。わたくしは精神科医ではありませんので、詳しいことは言えませんが……」

 

急にそんなシリアスなこと言われても困るぜ。結構ギャグキャラだと思ってるんだけど私。

しかし、子どもっぽい、ねぇ……なぜそうなったのか、ワカモさんの考えを聞いてみる。

 

「……一つ考えうるのは、あれのせいでしょうか」

 

あれって言うのは、性行為の事だろう。

 

「下郎どもの素性を少しでも探るため、色々見たのですが、大体はあのように無理矢理というものが多かったのです。そのような行為の連続の反動、それが今来たのではないのでしょうか」

「反動って……それがなんで子どもに」

「傷つけられ続け、なんとか逃げた先にいたあなたに、優しくされた。それが、染み渡ったのではないのでしょうか。体や、心に」

「……甘くされたから、つい子どものように、って?」

「そうです。やっと理解しましたか」

 

めっちゃむかつく。でも勝てるわけないので黙って受け入れます……

で、先生の事なんすけど……

幼児退行……とまではいかないけど、メンタルが結構ヤバいわけだ。マジでぇ?

……あ。

 

「だから朝……」

「ええ、駄々をこねたわけです。とはいえ、予想でしかないので、もっと別の理由があるかもしれませんが。もともとシャーレの仕事も大変のようでしたし、かつ子どもを助ける、ということで甘えることが出来なかったから……ということもあり得ます」

「はあ……この状態を続けるのはまずいっすよねぇ……かと言って大人として接するのは……」

「……もっとまずい」

 

だよねぇ……

今更だけど、ただの一般人の私が大変な目に遭ってなーい?

投げ出したりしないつもりだけどさ……私で守り切れるかぁ?

間違いなくヤバいやつらばっかなんでしょ、シャーレに関わってる人達って。私戦えないよ?

 

「……あなたが何を考えているか、少しは分かりますよ。あなたのやるべきことは先生の心を癒すこと。戦いは私の役目です」

「ワカモさん……今めっちゃ輝いて見えてる。超かっけーっす!」

「本当はわたくしがそちらが良かったです」

「なんですぐ素出しちゃったの?」

 

 

 

 

 

道中でワカモさんと別れた後、今日の目的であるスーパーで買い物を始める。

特に問題なく欲しいものは全てかごに入れられた。後はレジを通すだけ。なんだけど……

 

「……」

「……」

「……あのー?」

 

後ろから凄い視線が私を貫いている。冷や汗止まんないんだけど!?

でもレジの人は困惑した様子で声かけてくるし……私だけかチクショー!

かごをレジ台に置いて財布を出し、すぐに払えるようにする。

 

「――になります」

「カードで!」

「分かりました。こちらにタッチし「はい!」早っ!?えっ、えっと、はい、大丈夫です……?」

 

かごを持ってあの、袋詰めるとこ!なんていうか分かんないけどそこで袋に詰める。

何年も続けてきた袋詰めはまさに名人の所業……言うてる場合じゃねえ!すぐに入れてスーパーを出て走る。

……よくよく考えたら勘違いかも。落ち着いて周りを見てみよう。

誰もいない。いやいない事はいないんだけど私を見る人はいない。はー、良かったぁ。

 

視線はまだあるけどなぁ!

 

良くなーい!全然良くなーい!

ままっまま待って待て、まだだ、まだこの美貌に目を引かれた一般変態かもしんないから!

素数を数えようサンッ!( 0M0)「あの」

 

「ウワアアアアアァァァァァ!?」

「うわビックリしたぁ!?」

 

恐怖心、私の心に、恐怖心……

って、声をかけられただけだ私ぃ!失礼でしょうが!

頭を下げて謝罪する。

 

「すいません急に大声上げて。ちょっと最近ピリピリしてて……」

「い、いえ、こちらこそすいません、突然話しかけてしまって。気になることがあったものですから。それを聞いたらすぐに退散しますので」

 

なんだ、良かった良かった。ただの悩める人だった。悩める人ではないだろ。

そう思いながら頭を上げるとそこにいたのは――

 

「……?どうしました?」

 

――横乳を出した不審者だった。

……よし。

 

「えっと、ヴァルキューレの電話番号は……」

「なんで通報しようとしてるんですか!?」

「露出狂の変態が何の用ですか!?」

「なっ!?失礼な!私のどこが露出してるって言うんですか!?」

「下見たらわかるだろド変態!」

「下?……!む、胸のことを言ってるんですか!?た、確かに少し出てるかもしれませんが」

「少しじゃないよ!側面ガッツリ出てるよ!」

「よ、横ぐらい普通ですよ!百鬼夜行の上層部も出してるじゃないですか!なんならミレニアムに本当の露出狂がいますからね!?」

 

えっマジ?もう百鬼夜行とミレニアムに近寄らんとこ。

 

「というかあなた誰!?」

「……ん”ん、いったんお互いに落ち着きましょう」

「はい落ち着きました」

「武術の達人か何かですか?……とりあえず、自己紹介を。私の名前は天雨アコ、以後お見知りおきを」

 

天雨アコ……どっかで聞いたような……まあいいや。

 

「私はモブ子って呼んでください。お気にのあだ名なんで」

「そ、そうですか……と、お時間を取らせるつもりはありません。少し聞きたいことがあるだけです」

「そういや言ってましたね。なんです?」

 

アコさんは一呼吸置いて……最近皆一呼吸置きすぎじゃない?いいけども。

じゃなくて、アコさんは口を開いた。

 

「一人で暮らしているんですか?」

 

ナンパかな?いやこれどっちかっていうと街中アンケだな。

追いかけてくるアンケって超怖いな。

 

「えっと、なんでそんなことを?」

「一人暮らしにしては、よく買ってるな、と、思いまして」

「ああ、学校とかあるんで、休みの今日に買い込んでおこうかな、と思いまして……」

「へぇ……そうなんですか」

 

なんだこの人……怪しさ百パーセント。

と、唐突にスマホが振動する。

アコさんに断りを入れてスマホを見る。

なんだなんだと思って見てみれば、ワカモさんからのモモトークだった。

届いたのは一言。

 

『敵です』

 

驚いてアコさんを見る……のを意地で我慢する。意地があんだよ、女の子にも。

ちゅーかどっから見てんだよ……しかし、敵か……

このまま会話を続けてもいいけど……やってみるか。

 

「すいません、会話止めちゃって」

「いえ、いいんですよ。失礼ですが、どなたから?」

「学校の友達です。お金貸せって言ってきたんですけど、自分で増やせって言っておきました」

「そうですか……個性的なご友人ですね」

 

あんたの見た目ほどじゃねーよとは言わない。死ぬかもしんないので。

じゃ、仕掛けるか。

 

「……で、話の続き、と行きたいんですが……」

「どうしました?」

「気付いちゃいました。あなたの質問の意味。……先生ですよね?シャーレの」

「!」

 

引くのが怖いので押してみろ!作戦だ。押すのも超怖いけどね!

だが大丈夫。プランBがある!

あぁ?内容?ねぇよんなもん。

 

「まだ見つかってないそうですね?」

「……」

「で、もしかしたらどこかの誰かに攫われてるんじゃないか……それで他の人より多く買う私が、怪しく見えた……どうです?私の推理」

 

ほぼ全部ハッタリなんすけどね!畜生この後なんも考えてねぇ!

私の推理(笑)を聞いたアコさんは数秒私のことを見つめた後、笑いだす。こわ……

 

「面白い推理です。ですが、私の所属している学園、部活も分かっていないのにそのような考えは早計ではないでしょうか」

「半分は当たってる、耳が痛い。いや半分どころじゃないな?」

「しかし、面白い話なのは間違いありません。ですから、教えてあげましょう」

 

そう言ってアコさんは名乗った。

 

「ゲヘナ学園、風紀委員行政官、天雨アコ。改めて、お見知りおきを」

「……」

「あら、驚きすぎて声も出せませんか?」

「なんでそんな偉い人がこんなとこ来てるんです?暇なんすか?」

「あなたの歯は服を着ない主義なんですか?」

 

思い出した、天雨アコってゲヘナの風紀委員会のナンバー2じゃん……

噂によれば、かなりの頭脳派とかなんとか……っは!だからか!

相手を惑わせるために、横乳を……!?もしくは脳の処理のための排熱か、どっちかだな。

趣味だったらただの変態じゃん。

 

じゃねえ!クッソ慣れない駆け引きとかするんじゃなかった、下手したら口を割りかねんぞい……!

 

「少し用事があってこの辺に来ていただけです。それで必要なものがあって、スーパーに寄っていただけです」

「へぇー」

 

見てみれば普通に袋持ってんじゃん。気付かなかった……

中の事は聞かない。動物用の首輪が必要な事象とか深淵以外の何ものでもないからね。イッツクレイジー……

だけど無理矢理切り上げて帰ったりしたら逆に怪しまれるよな……追われて先生が見つかりでもしたらまずい。

ワカモさんに殺される。

……待てよ。

 

「……もしかして、先生が好きなんですか?」

「は、はぁ!?急に何をいっ、言ってるんですか!?」

「んや、よくよく考えてみたらシャーレの先生がいないって、結構あなた達にとってきつくないですか?有能って聞いたことありますし……だから、用事って本当に先生を探すことじゃないかなーって」

 

私の言葉に顔を赤くし、狼狽えて言葉が出ないアコさん。全世界の頭脳派に謝れ横乳。

この状態のアコさんにも口撃は止めない。

 

「だって、それぐらいじゃないとこんなとこ来ませんって。こんな特になんもないとこ」

「だ、だとしても私が先生を好きって証拠はないじゃありませんか!」

「探すにしたって下っ端に任せりゃよくないですか?現場指揮ならって思いましたけど、設備が整ってるとこで指揮が一番だと思いますし……どうです?今回は、知ってますよ、あなたのこと」

 

アコさんはついに顔を下に隠してしまった。マジで頭脳派とは……まるで頭悪い作者が考えた頭いいキャラみたいなことしてんな!

……なんか知らんけど今の言葉で私が痛くなったんだけど、心。

顔上げるまでそこそこ時間がかかった。

そして、顔を上げたアコさんは言う。

 

「……違います」

「何が?」

「私が好きなんじゃなくてあの人が私のことを好きなんです!ええあの人はいつもそうです私のこと分かってるふりしながらホントは私にただ会いたいだけなのがバレバレですもう仕方がない人なんですから勝負も最後の一回以外は勝ちを譲りましたがもう負けませんからええ!だというのに何処に行ったんですかあの人はもう逃げられないように繋いでおかなければ……今度は、私が」

 

……絶句。見た目だけじゃなくて中身もイカれてる……

だけどこれで確信した。こいつもあっち側だ。纏う雰囲気があの動画の奴と一緒だ。

絶対に口を割らないようにしなきゃ……

てことで、とりあえず逃げたいんだけど……どうすれば怪しまれずに逃げられる……?

 

と、考えてると、アコさんの後ろから一人の影が見えた。

誰という前にその存在は口を開いた。

 

 

「何してるの、アコ」

 

 

一人で喋ってたアコさんの動きが止まる。

ブリキみたいな動きで振り返るアコさんは、すっごい面白……ビビってる顔をしてる。

 

「ひ、ヒナ委員長……」

 

……あれが、なんて言葉は出ない。

小さい見た目だけど、分かる。あれはワカモさんと同じ、いやそれ以上の殺気を出せるんだもん。一般人つってんだろ馬鹿!

 

「あ、あのですね、怪しい奴がいまして、それでですね……」

「人のせいにするな横乳」

「言い訳は後で聞く。さっさと帰るよ。先生の居場所、分かったかもだから」

「!?」

「本当ですか!?早くいきましょう!それでは失礼しました!」

 

止める暇も無く、二人は行ってしまった。

……マジかよ……どうする……!?

再度、スマホが震える。

急いで見てみれば、また一言。

 

『あれは、味方です』

 

見てるんだったらもっと早く何とかせえや!

 

 

 

 

 

散々な目にあった……

くたくたになりながらも玄関を開ければそこにはふくれっ面の先生が。

 

「おそい」

「え?まだ昼前ですよね……」

 

スマホで時間を確認しつつ、玄関を素早く閉める。

 

「早く帰るって言ってたよね?」

「だから昼前って……何時間以内だったら良かったんです?」

「一分」

「カップラーメンお湯入れない派か?」

 

そんなことを言いながら買った物を、特に食料を仕舞っていく。

 

「……流石に一分は嘘だけど、やっぱり遅かったと思う」

「さようで……今日はもう外でないんで、ずっと一緒にいれますよ」

「ホント?やったっ……!」

「じゃ、一緒に過ごすために仕舞うの手伝ってください」

「うん!」

 

……先生のメンタル回復、先生を狙うものからの防衛。

やることは二つだけっていうのに、こんな絶望的なことある?

 

……やるけどさ。




おかしい……最初は三千文字くらいだったのに増えてってる……
あ、あと投降頻度ですがゴールデンウイーク終わるのでかなり遅くなると思うので、気長にお持ちください。

追記:露出凶のくだり、私のイメージではエイミイメージでしたが、ハナコイメージの方もいたとみたいなので好きな方でイメージしてください。
キヴォトスってクレイジーじゃね?
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