なんか先生拾ったんだが……   作:紫彩

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もしかして性癖歪んでる?


第五話

今私は、私史上最大に焦っている。

焦りすぎて目の前のパフェの味がしない。キャラメルマーボーサーターアンダギーパフェの味が。

いやこれ普通に味覚殺されてるだけだな?

じゃないんすよ、マジで胃が痛い。汗もびっしょり。

 

まず整理しよう、ここはどこ?カフェだね。室内だね。

何でいるんだっけ?ここに入ろうって言ってくる子がいたからね。

じゃあ、誰?入ろうって言ったの。

 

「いちごのパフェなんて久々。美味しいな……」

「……ソッスカ」

 

変装した先生だよ。

 

 

 

 

 

事の始まりは昨日の夜だった。

布団を敷いてさあ寝ようとしたときに、先生がぽつりと呟いた一言からだった。

 

「モブ子と出かけてみたいな……」

「へ?なんか言いました?」

「う、ううんなんでもない!」

 

ごめん聞こえてた。聞こえてても聞き返す時ってあるじゃん許して。

その時はすぐに布団に入ったんだけど……だから二枚敷いてるって言ってるでしょそっち行きなさいよ!……そのすぐ後に頭上に置いてあったスマホが震えた。

 

「先寝ててください」

「待ってるね」

「寝ててって言ったのに?」

 

とりあえず睡眠の邪魔にならないよう離れてから見てみると、まあやっぱりというかワカモさんからのモモトークだった。

 

『わたくしにいい考えがあります』

『気が早いよまだ行くって言ってないよ』

『は?行きませんの?』

『喜んで行かさせていただきます。でも普通に出たら即バレしそうじゃないっすか?』

『玄関まで来なさい』

 

言われた通りに玄関に行くと、二つの箱が置いてあった。

 

『扉空いた音しなかったんすけど。あと不法侵入』

『は?』

『さすがにそれは横暴ですって!……で、中身は何です?』

『知っていますか?』

『知りません』

『女は、メイクで変わるものですよ』

 

片方の箱を開けてみれば、メイク道具一式とカツラだった。

 

『出来ますか?一応説明書はついていますが』

『多少ならできますし、あるなら出来ると思います。多分。で、もう片方は?』

 

それを送ってから、後ろから何が迫ってきてることに気付いた。

 

「……トイレすか?」

「誰と連絡してるの?友達って子?」

「……まぁ、そうっすね」

「ふーん……私を差し置いて会話するくらいの仲なんだ……へー……」

 

別にそこまでの仲でもないし先生ともそういう関係じゃないでしょ、なんて言ったら死ぬなこれ。

つーかさらに子どもっぽくなってない?

どうしようか……あ、そうだ。

 

「別に、私はただの居候だし、モブ子が誰と仲良くしようと関係ないけ「先生」……ど……?」

「明日デートしません?」

「……ふぇ?」

 

 

 

 

 

というわけで、二人で出かけてる訳なんだけど……うん、普通に胃が痛てぇ!

多分キャラメルマーボーサーターアンダギーパフェが半分原因だわ。なんでこんなの頼んじゃったんだよ……

とはいえ、実際変装しているって言っても、絶対バレない訳じゃないし……

ま、目の前で美味しそうにパフェを食べてる顔見たら、いいかなって思……思う!うん!

 

その美味しそうに食べてる先生はいつもとは大分違う見た目になってる。

服装もファンシーな感じ強め、メイクとカツラで別人感アップと、やれることを全部やってる。……もしかしてカツラよりウィッグって言った方がいい?

一番違うのは、頭の上の輪っか、ヘイローだ。

そう、もう片方の箱に入っていたものは『ヘイロー偽装装置』だった。なんでこんなもんあんの?

本来はすでにあるヘイローの見た目を一時的に変更するものらしいけど、なんやかんやしてそういう風にできるようにしたらしい。すごい。

で、そうして当てのない散歩を開始して、このカフェを見つけた先生と一緒に入ってきた、というわけ。

 

思ったんだけど、先生は凝ったもの食べれないんじゃなかったけ?と思う人もいるだろう。私だ。

だから聞いてみたんだけど先生はこう言ってきた。

 

『……あーん、ってしてくれる?』

 

おかしくなーい?なんで?

しかし拒めばどうなるか分からない。今日はワカモさんは用事があって護衛ができなかったらしく、もし万が一泣かしたり可哀そうな目に遭ったら……

『殺す』って。オブラートって百均でも売ってるんでバンバン使ってください。

としょうがないので食べさせようとしたんですけど……

 

『……ぅ』

『無理に食わなくても……体質的に無理なんでしょ?』

 

やっぱり駄目でした!近づけただけで吐き気に見舞われるみたい。

しょうがないと思いながら私が代わりに食べる。うん甘……分からんマーボーが邪魔してくる。

 

『……もう一回だけ、お願い』

 

するとそれを見てた先生がそう言ってきた。

悩んだけど先生が言うならと思ってもう一度掬って持っていくと

 

『はむっ』

『えっ、なんで?』

『……美味しい』

 

普通に食べた。んんー?

 

『大丈夫ですか?その、吐き気とか』

『……うーん、今はない、けど……次はモブ子が食べてくれる?』

『えっはい』

 

言われた通りに食べて、次は先生が食べる。

食べた。

試しに連続で食べようとすると

 

『……っ』

 

駄目だった。

つまり、なぜか私が食べた後は食べられるらしい。

外に出てから気付いたけど、結構良くないな?どうにか……たって、今のところはメンタルを回復しなきゃいけないかぁ……?メンタルがヤバいから無理なのか……

そんなことを考えながらいちごのパフェを食べたり食べさしたりサーターアンダギーを食べたりしてた。水くれ水。

 

でもせっかくこうやって来たんだから会話でもしてみる。

 

「やっぱこの店おかしくないっすか?なんだよキャラメルマーボーサーターアンダギーパフェって。キャラメルほとんど無かったぞ」

「それを頼んじゃうのもおかしくない?……ごめんね」

「どうしたんです?急に謝って」

「……めんどくさい、でしょ」

 

さっきまでニコニコしてたのに、暗い表情になる。

 

「急に押しかけて、わがまましか言わなくて、今日も、食べさしてもらったり……私は、大人で、先生なのに……」

「めんどくさっ」

「ひぅっ……」

「あっやべ……いやまあ、はい、そっすねぇ……めんどくさいっすよ。全部が全部ってわけじゃないけど」

「……」

「でも、私は好きですよ。そのめんどくさいところ。嫌じゃないです」

「……ほんと……?」

「嘘だったら構ってないですよ。それに、家ではお手伝いしてくれるし、言う事もちゃんと聞くし。全部ひっくるめて好きですよ、先生のこと」

 

そう言うと先生は俯いてしまった。

ところで焦ってるのは収まってない……え?慣れろ?はい……

 

「……ねぇ、スプーン、貸して」

「えっ、あっはい」

「……あーん」

「話の流れ的にどうなの?いやいただきますけど……あむっ」

「……どう?」

「味しないんすけど」

「それはそのパフェ食べてるからじゃないかな!?……ふふっ

 

その時、やっと先生の素の笑いが見れた気がした。

ほんの少しだけ、一秒ほどの笑い。

 

綺麗だと思った。

 

……よしっ、決めた。今までなんとなくで助けてたけど、ちゃんとした理由が思いつけた。

先生の素を取り戻す。多分、そっちの方が綺麗で、らしいから。

 

そうして、食べさしあいながら、笑いあえる会話をした。

 

 

 

 

 

「それで、飲まされたんだ。その子は紅茶って言い張ってたけど、どう考えても……お、おしっこで……」

 

笑いあう会話の筈が、先生の過去のトラウマの話を聞いています。あるぇ?

いや最初は大丈夫だったはずなんだよ、長居するのもあれだからお会計して出て、あんまり人がいないとこを歩いて話すことにした。

そしたらいつの間にかヤバい奴らの性癖聞くことになってた……

ていうか、マジでヤバいな……首輪を付けてきたり、足舐めさせたり、挙句の果てにはおしっこって……うわぁ……

 

「ごめんね……気持ちのいい話じゃないよね……でも、聞いてほしかったんだ……一人で抱えるには、ちょっとだけ、疲れちゃった……」

 

……ワカモさん経由で、動画の事とか知ってるとはいえ、本人からしたらもっときついか。

しかも先生は優しいから誰がやったかは絶対に言わない。

 

「いいですよ、全然。気が楽になるなら、喜んで……喜んで聞くのもおかしいな。変態の一員にはなりたくねぇ」

「ですが、酷い話ですね。文字通り、身を削り、自身の全てを捧げて守った存在から、その様なことをされるとは」

「だよねー、愛するにしてももっと方法が……誰だお前!?」

 

もっと分かるように出てこい!ぬるりと出てくるの流行りなの?

声の主は目の前から。

ここには私達とそいつの三人しかいないようだ。忍者でもいない限り多分そう。

そいつは黒いスーツに身を包んだ、一定のマニアに受けそうな異形の姿をしていた。

 

「……黒服……!?」

「そのまんまな名前だな……えっ、マジで?」

「お久しぶりです、先生」

 

先生は黒服さんを捉えた瞬間、私を庇うように前に出る。

 

「……何の用」

「そう焦らずとも、落ち着いてください。私は、取引をしたいだけです」

「取引?」

 

私は黒服さんの言葉をそのまま返す。

今更ながら私は武器を持たない派だ。理由は持ってても使う前にやられるから。そもそもここら辺でドンパチは少ないのもある。

何が言いたいかと言うと、戦闘できません。

先生は論外で守るべき対象なので、なんとか会話で解決したい。戦闘仕掛けてくるタイプかすら分からんけど。

 

「ええ、取引です」

「モブ子、下がって。ここは、大人の話だから」

「……いつになく真剣だ。まあ落ち着いて。先生戦う力ないんだから前出ない方がいいって」

 

自分のことは棚上げしていくスタイル。でも幾分かマシなので……

 

「……大丈夫、任せて」

 

そう言って取り出したのは、一枚のカード。

 

「……決闘(デュエル)?」

「モブ子さん今すぐそれを取り上げてください。今の先生が使えば、きっと死ぬことすら出来なくなる」

「ですって、先生。それホント?」

「……あいつのことは信用しないで。大丈夫だから、安心して?」

「ハイ没収」

「ぁっ、ああ!?」

 

すぐにパって取る。握る力もあんまりな……全く無いな。

 

「か、返して!」

「嘘分かりやす過ぎるわ。使うにしてももっと情報聞いてからにしましょ」

「……使わないから返して」

「はい」

 

渋々仕舞う先生。聞き忘れたけど、何だあれ?

 

「気を取り直して、もう一度。取引を提案しに来ました」

「内容は?」

 

「先生と、モブ子さん。あなた達をお守りします」

 

「強いの?」

「直接的な攻撃力はありませんが、対処する力はありますよ。モブ子さん」

 

ふーん……なるほどねぇ。でも、気になるのは。

 

「……対価は」

「私のやり方に口を出さないでいただきたい。それだけです。欲を言えば、あなたと語り合いたいのですが……」

 

なるほどなるほど……個人的には全然オッケーだ。

でも、取引相手は先生。私は黙っておこう。

 

「……黙ってればいい、ってこと?」

「はい。語り合ってくれてもいいですよ?」

「そう……分かった」

「決めましたか?」

 

「絶対に拒否させてもらう」

 

「……それは、何故?」

「警護とか言って、彼女達の神秘を狙ってるんでしょ。彼女達を……大切な子ども達を、絶対に傷つけさせない。断らさせてもらう。それでもやるというなら……」

 

先生は再び、カードを取り出す。

大人達は睨みあう。片方全然表情分かんないけど多分睨みあってるでしょ。

沈黙は、長く続く。

 

「牙を折られ、心を抉られ、それでもあなたは……魂から、先生であろうとするのですね。……なるほど、心と魂、似ているようでその実違う……面白い解釈です」

 

かと思ったけど、黒服が五秒ぐらいで終わらせた。

 

「分かりました、内容を変えましょう。お二人をお守りするのは変わりません。ですが、絶対にあなたの愛する子ども達を傷つけないとお約束いたしましょう」

「……虫が良すぎる話」

「もちろん、対価は別にあります。時折、私達と語り合っていただきたい」

「複数人いるのね」

「……なぜ、そこまで……」

「あなたがまだ、先生であったから、それだけです」

「……いつもの黒服なら、もっと上手く舌を回すはず……最初から、このつもりで?本当に、本心なの?ゲマトリアでしょ?」

「ゲマトリアは今は一時解散しています。今の私は違いますよ、先生。それで、どうしますか?この取引、応じていただけますか?」

「……少しでも傷つけたら、容赦はしない」

「分かっています」

 

どうやら、取引は成功みたいだ。

大人の会話だからなんとなくしか聞いてなかったけど……ま、良かった良かった。

 

「お時間を取らせてしまい、申し訳ございません。時間もよいでしょうから、送りましょう」

 

そう言う黒服さんは、怪しいながらも、頼もしく見えた。

 

 

 

 

 

「ところでゲマトリア?ってやつは解散してるらしいですけど、今何やられてるんですか?」

「ククク、こちらです」

「カード……?えーっと、『先生大好きファンクラブ』……?」

「№00です」

「……」

「ステイ、先生ステイ」

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