なんか先生拾ったんだが……   作:紫彩

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はい。


第二話

「――いやー、ラッキーでしたね。ご飯半額とか。サンキュー地味子」

「もっと感謝しろよ非戦闘員」

「は?戦えるが?」

「嘘つけ誤射野郎が」

 

あの後、店長だかなんだかが出てきてそうしてくれた。マジラッキー。

安くなった定食を食べ終わった後、私達は歩いていた。

 

「でも、地味子さんが被害を抑えて倒したおかげでそうしてくれた訳ですよね」

「ん、凄い早撃ちだった」

「そんな、凄い事でもないよ。練習したらできることさ」

「これでSAAじゃなかったらなぁ……リロードに手間かかりすぎだろ」

「でもお前も好きじゃんそういうの」

「大好き」

 

こいつの早撃ちにはよく助けられてたなぁ……一緒にいる時に襲われたら大体何とかしてくれたし。

それよりも凄い技術をあと二つぐらい持ってるんだけどなこいつ。

 

「でも、二人も強いでしょ?なんとなく分かる」

「私はそこまでですが……シロコ先輩は、はい、とてもお強いです」

「照れる……やっぱりお腹痛くなってきた」

「なんでだよ」

 

あー……強いもんな。()()より。

 

「じゃー……ここぐらいで私は帰りますわ。あっちなんで、家」

「そうですか、では、また機会がありましたら」

「うん、また」

「おう、またね。モブ子もまた」

「ああ……またすぐ遊ぼうな、地味子」

「……おう」

 

そう言って私達は手を振り、別れた。

 

「先生には、いい人だったって伝えておこう」

「そうですね」

「そういやあんたら先生に頼まれて来たんだったな……」

 

 

 

 

 

「……」

「ごめん、さっきからこの調子で……」

 

家に帰ってきて、リビングまで行くと、口を膨らました先生が顔を背け、どこかを見ていた。

クロコさんはそれを見ておろおろしながら報告してくれる。

 

「はぁ……すいませんね、先生。晩ご飯食べてきちゃいました」

「……別に、いいし。家で食べたらいいとか思ってないから」

「めんどくせーなお前」

「先生にそうやって言う人初めて見ました」

「こうなる先生も」

「たく……他人使ってまでやることじゃないだろ。そういうことは自分でやりなさい。っても一人じゃ厳しいかぁ……しゃーない。今度会うとき紹介しましょうか?」

「いいの!?」

「あいつが良かったらですよ……何でそこまで気になんだよ」

「え”っ、それは……」

 

あ、黙った。

言えないことなら別に言わんでもいいけども……

 

「とりあえず、このまま帰ってもらうのもあれなんで……えーっと、台所か、ちょっと待っててください」

 

アビドスの二人には待ってもらって……

 

「これ、お菓子の詰め合わせです。皆で食べてください」

「え、いいですよ、奢ってもらったの「持って帰れ」はい……」

 

「あれ新手のいじめじゃ?」

「ん……まぁ……うん……先生襲ってあれなら凄い優しい、っていうか……

「?」

 

そのままシロコさんとアヤネさんは帰っていった。またねー。

 

「……そういえば、その、地味子っていう子との出会い、聞いてみたいかも」

「先生ならまだしも、クロコさんがそう言うってなんか、違和感すげーな」

「私ならまだしも……?」

「ま、話しますよ」

「確か、小学からの付き合いなんだっけ?」

「あー……実は……」

 

 

それよりも前に一回、あるんすよね。

 

 

 

あれは、小学よりも前……三、四歳の頃だったか。

あの時は妙に人が多くて多くて……うるさい日でした。今思えば祭りだったのか……

私はその時、散歩をしてたんですけど……ああ、ここら辺です。昔からここ住みなんです。

それでなんとなく歩いていると、道の端でうずくまって耳を塞いでる、妙に厚い恰好したマスクメガネっ子がいて……私とおんなじくらいの。

まあ分かってると思いますけど、あいつっす。地味子。

気になって近づいてみたんですよ、こんな風に。

 

「へーいそこのうずくまってるgirl?何してんのー?」

 

『あっ、昔からそんな感じだったの?』

 

こんな感じです。続けますよ。

そんな風に声を掛けてみたら、顔を上げて私を見たんです。

で、耳を塞いだまま話しかけてくれました。

 

「だれ……?」

「私?あー……モブだよ。ただの」

「モブ……?モブちゃんっていうの?」

「えっ?……ああ、そうだよ。イッパイアッテナかよ

「イッパイアッテナ?」

 

結構ちっさい声で言ったんすけど、聞こえたみたいで、そこでなんとなく気付いたんです。

 

「いっぱい名前がある猫の事だよ……うるさいだろ?」

「え……?」

「今日いっぱい人いるしなー。大変だな」

 

多分、耳が過敏なんだろうなーとふわっとした感じですけど。

横に座ってできるだけ小さな声で話しかけ続けました。

 

「うん…みみだけじゃなくて、はだもいたくて……」

「肌?……ああ、全体的にあれなのか。目は悪いんだな?」

「うーん、たぶんそう。めがねつけてないととおくまでみえちゃうから……」

「まさかの逆。……もしかしてだけど、濃いもの食べれる?」

「こいもの?」

「あー……チーズハンバーグとか」

「あっ、なまえだけきいたことある!わたしには、はやすぎるって……いまはしおをなめれるようになること、だって」

「塩無理はマジでヤバいじゃん。……マスクは、においが?」

「うん、ちょっとすうだけで、きもちわるくて……」

「また辛いなそれ」

 

ずーっと、話しかけました。大体一つの音に集中した方が楽かなーみたいな感じで。

そんな風にしてると、名前の話になりましてね。

 

「なんで、モブちゃんはモブちゃんっていうの?どういういみ?」

「それはね、私が目立った人間じゃないからだよ。だから、モブ。サブみたいな意味かな……」

「めだたない……?いいな、わたしもモブちゃんみたいなあだながほしいな」

「別にいい意味じゃないんだけど。みたいなったって、響きが?意味が?意味なら地味とか、そこら辺だけど……」

「じみ……?……うん、わたし、じみ!」

「凄い自信たっぷりな自虐みたいになってる……というか地味でいいの?」

「うん、じみがいい!モブちゃんといっしょがいい!」

「ええ……いやそれでいいならいいけど……でも地味はなぁ……あ。

 

地味子は、どう?」

 

「じみこ……?うん、わたしじみこ!

 

じゃあ、モブちゃんはモブこちゃんだね!」

 

「モブ子?……いいな、それ。私はモブ子だよ。よろしく、地味子」

「よろしくね、モブこちゃん!」

 

これが、私と地味子のあだ名のルーツっすね。

 

『へぇ……だからどう考えてもおかしいあだ名なんだ』

『地味子って子が、モブ子の名付け親なんだね』

 

そうなりますねぇ……

後は、そこまで重要な話でもないんすけど……

その後、人の声とかが更に大きくなったんです。

 

「ひっ……!」

 

で、地味子が怯えて縮こまって、震え始めて……

 

私はすぐに抱きしめて『は?』邪魔すんな……抱きしめて……軽くですよ、肌弱いんで。で私の手を耳に当てて。

 

「大丈夫……大丈夫……」

 

小さくそう言い続けました。今思えばもうちょい良い方法あった気がしますねぇ。

 

『う、うらやま……!』

『先生……』

 

「大丈夫……大丈夫……」

「ぁ……」

 

小さく悲鳴っぽいのも出してましたし、やっぱり間違いだったのか……

 

数分ぐらいそれを続けて、やっと声が小さくなっていって、それで離れられたんですけど。

で、丁度その時遠くから高校生っぽい人がやってきて、地味子もその人の名前言ったんで、病院関係の人だったんでしょう。一人っ子らしいのに手も繋ぎましたし。

それで、ですね……

 

「……モブこちゃん」

「どうした?」

「……またあえる?」

「縁があったらな。いや、こういう時は……また会えるよ」

「!じゃあ、またね!」

「おう、また」

 

 

 

「――そう言って、手を振って別れたんです。小学生まで会わなかったですけど」

 

それで、話しは終わり。

 

「へぇ、なんだかロマンチック」

「どこがだよ……ま、この話あいつにしてないんすけどね。全然印象違ったし、あいつ覚えて無さそうだし」

「……悔しい」

「本当になんでだよ」

 

しかし……久々に思い出したなぁ。

私にとって、珍しく……

 

「重要な思い出だよ」

 

 

 

 

 

「……私にとってもだよ」

 

そう言いながら顔を俯かせる。あー暑い。

私は、近くにあった一番デカいビルの屋上であいつの方向を見ながら、声を聞いていた。

大体五㎞……それでもあいつの声は良く聞こえる。

 

「つーか、覚えてるよ。じゃなきゃ、あだ名なんて言わねーだろ……」

 

ったく、こっちが覚えてないかと思ってビビってたんだぞ。もー……言ってくれよぉ……

 

 

……はぁ、せっかくいい気分だったのに。

 

「私に何か用か?」

 

後ろに隠れてる奴にそう言う。

 

「……気付いていましたか」

「ちょっとばかり、五感が強くてね……なんでメイド服なの?」

 

振り返り、出てきた奴を見て、ちょっと……かなり引く。マジでなんでだよ。

 

「これは私の仕事着ですから」

「仮にメイド服を仕事着だとしても尾行はメイドの仕事じゃないだろ。ロベルタか何かか?」

 

あいつ全然目立ってたけど。

 

「ロべ……?いえ、あなたに何かしようというわけではありません。少しお伺いしたいことが」

「だったらおかしいことが二つあるな?まず一つ、名前を言ってない」

「それはそうですね、私は室笠アカネと申します。それで、もう一つは?」

 

「私から見て後ろ、約二キロ先」

 

「!?」

「人に銃口向けて話し合いましょう、ってのはおかしくないかい?……まだあったか。後は、横、数メートル一人」

「……どこまで気付いて」

「あんたが爆弾背負(しょっ)ってて、サイレンサータイプの拳銃を持ってる。横の奴はアサルト、G11のカスタム品か?また珍しい……後ろは対物か……いや、それにしちゃでけー口径だな?」

「……本当に、一般生徒ですか?」

「言ったろ、五感が強いんだ。文字通りな……ま、いいや。何の用だ?」

 

どうせあいつの事だろうけど。

 

「……あなたのご友人、モブ子様の事を、少々お聞きしたいのです」

 

ほらな。

 

「メイドとあいつ、関係なさそうだけどなー?」

「確かに、私達とは関係ありませんが……シロコさん、アヤネさん……アビドスの皆様が、モブ子様と突然関わり始めた……そのことをお聞きしたかったのです」

「そうか。本人に聞けよ」

「そうも思いましたが……少々、込みあった事情がありまして」

「なるほどな……で、あいつのこと聞きたいんだって?」

「ええ、良ければ……最近の変化、特に人との関わりをお聞きしたく……」

「アビドスっていうとこと関わり始めたってことしか知らねえよ。じゃあな」

 

「もしあなたの五感がその言葉通り、強いのなら……聞こえているのではないのですか?彼女の家の中まで。

もう一度言いますね。お話、お伺いしても?」

 

私はふっ、と笑い

 

「やだよ」

 

そう言ってそいつの横を通り過ぎる。

誰がモブ子の生活を壊すかよ。あいつから、壊していってるけどな……

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