「いや……ほんと……申し訳ないと思ってるんですけどね?……あの、その、なんて言うんですかね、流石にこれは、そのー「は?」なんでもないです……」
ミカとのやり取りから数日。あの後私は丸二日寝てたらしいんだけども、起きてみたらちょーびっくり。
亀甲縛りで拘束されてるんすよ?
もっとこう……あるだろ!
ぐるぐる巻きでも良かったと思うんだけどなぁ……
「乙女の顔に傷をつけたんだし、これぐらいしてもらわないと、ね?」
「迷惑かけまくったお前もなった方が良くない?」
「?」
「なんだその顔」
私のこの格好を見て笑ってるのはミカ。んにゃろ……
この場にいるのは、先生と、ミカ。あと縛られてる私の三人。
どう考えてもこれ見られたらマズいだろ教師ぃ。
部屋の扉が開いた。
「はぁい、調子いい?」
「これ見てそれ言えます?」
「元気そうで何よりです」
「待てや!目ぇ逸らしたろ今!騙されんぞ!」
「ジョージなのかペニーなのかどっちなの?……で、何の用?ゴルデカ」
入ってきたのはゴルデカさん。デカさんはおいっすといった感じで手を上げる。覚えとけ……いや勝手に先生怒らして勝手に痛い目見るからいっか。
「いえ、もうモブ子さんが自由に動いても大丈夫ということをお伝えしに来たのです。ですが……」
「なんすか?」
「駄目そうだなって……」
「そういうこった!」
「どういうこった」
いやまあスーツは着てるから自由に解けるんだけどね?せいっ!
「あ、縄が」
「あーきつかった。次やったらさすがにキレるからな?」
「怪我しないようにしたらいいんじゃないかな?」
「そっすね……」
ぐうの音も出ねぇ。げぇ。
とりあえず、ジャケットだけでも羽織ってっと……
「んー……ちっと散歩でも行ってきますわ。んなら~」
「先生は少しよろしいでしょうか?」
「チッ」
「先生のマジな舌打ち初めて見た」
「で、何?モブ子がいたらできない話?」
「そういうわけではないのですが……少々不可解なことが、一つ。
あの杭に刺さってから、モブ子さんの自己治癒力が異常に高くなっているのです」
「?どういうこと?」
「……怪、しい、か」
ふふ~ん、ひっさびさのお外~っと。どうしようかな、トリニティとか入ったことないから分かんねぇなこれ。
……あの子は……
「おーい!」
「?……あっ、あなたは!」
見たことある子だから声をかけてみた。誰かと言えば。
「あの時ちょっと協力してくれた正義ちゃんじゃん」
「どうも、こんにちは。モブ子さん……でしたよね?」
攻撃しちゃったり、情報を錯綜させてくれたりした子だ。元気そうで何より。
「おいっす。ごめんなさいね、あの時は。意味があったとはいえ……怪我とかしてないですか?」
「いえいえ、正義の為ですし、何の問題もありません!怪我も擦り傷くらいでしたし、もう治りましたし……えへへ」
「なぜ笑って?」
「えっと、正義ちゃん……って、いいな、って、思いまして」
「即興で言っただけの奴なんですけど……気に入ったなら、そう呼びましょか?」
「ぜひっ!」
あら嬉しそう。
んじゃお言葉に甘えてっと。
「モブ子さんはお散歩ですか?」
「はい。怪我も治ったみたいだし、リハビリ程度にちょっと……ん?」
全然気付かなかったけど、正義ちゃんなんか持ってるじゃん。それも結構な大きさの鞄。
「それって、なんです?身長の二倍ぐらいありません?逆になんで気付かなった私?」
「ああ、これですか?私の武器です」
「武器」
「はい」
「でかくない?」
「ちょっとだけ」
「ちょ……?なぜに?」
「えっとですね……実は今の正実は少々ガタガタでして……」
「ガタガタゴットン?」
「ズタンズタンです」
「「……」」
ぴしっ、がしっ、ぐっぐっ。
同類だったとは。運命かな?
「でですね、そのせいもあってか、不良などの問題児達が大きく暴れまわっていて……」
「で、後方担当の正義ちゃんも駆り出された、と」
「そういうことです」
「でも、そんな武器持ってなかったような?」
私がスーツで暴れまわってた時は普通のアサルトライフルだった気がするけど。
「あの時は仕方なくでして。得意なのはこれなんですよ」
「へー。……今から?」
「はい。っとと、そろそろ行かなきゃ」
んー、んなら……暇だし。
「……良かったら、お手伝いしましょか?」
「え?」
つーわけで二人でパトロール開始!
正義ちゃんもびっくりしたけど、快く快諾してくれたし。頭痛が痛いかな?
回復したばっかとはいえ、強い人にしごかれたこともあるし、そうそう負けんだろ、多分。
担当場所もそうそう暴れる奴もいないらしいしな。
「――で、あそこのケーキが美味しいんです!」
「ほー、地味子でも誘ってみようか」
正義ちゃんの観光案内を聞きながら、辺りを見る。うん、異常なし!
……話のタネに、ちょっと聞いてみるか。
「聞きたいことがあるんですけど、いいです?」
「なんですか?」
「正実に入ってる理由について。ふと、気になりまして。言いたくなければ……」
「いえいえ、大丈夫ですよ。……入った理由ですか」
近くのベンチに座って、正義ちゃんは話し始める。
「一言で言えば、確認のため、です」
「確認」
「はい。……私は、正義、という言葉を大事にしているんです。行い、思想、立場……それによって、正義とは変わります」
「……」
「だから、私は気になったんです。正義実現委員会という存在が。……構いはしません。自身の正義だと言うのは。ですが……」
「正義を理由にして、他者の正義を踏みにじるのは、許せない」
「……驚きました、考えを当てられるなんて。そうです。正義が正義とぶつかるのは仕方がありませんが、それだけはいけない。そう思って……」
「で、どうでした?」
「ギリギリ、という所でしょうか。特に、ハスミ先輩は……」
私は隣にあった自販機から、缶ジュースを二本買って、一本渡す。
「ありがとうございます……いつもは大丈夫なんですが、ゲヘナ相手だったりすると、なんとも……前の、モブ子さんの事もありますし……」
「あれは、洗脳だかなんだかが関係してるとか聞きましたけど」
「……そうだったんですか。それならよかっ……よくはないですけど。……ともかく、その確認のため、入ったんです」
なるほど、ね……何とも意外だ。
「正義ちゃんの前だから言えるけど、私はあんまり、正実って名前嫌いだったんだよね」
「そうだったんですか」
「一方から正義、って言うのは、良くないだろ。ってね。でも、正義ちゃんがいるなら、問題ないかな。ツルギさんもいますしねー。
……その考え、よく分かりますから」
そう言うと、唖然とした顔で、しかしすぐにうれしそうな顔になった。
「嬉しいです!あんまり、理解されなかったもので……そもそも他人と関わることが少ないのも、ありますが」
「そりゃよかった。今日やっと、ちゃんと会話しましたけど、結構私達、相性いいかもしれませんね!」
「ですね」
いい友人になれそうだなー、なんて。
爆発音がした。
「……うん、まあ、そうなるやろな、って思ってた」
「っ、急いで向かいましょう!」
二人で走って音の場所まで走っていく。
着いてみれば、それはもー大惨事。
「げぇ、戦車……流石に二人の火力で行けるか……?いや、正義ちゃんはデカいし、多分火力あるでしょ」
「はい、ぶん殴るのは任せてください!」
「おう、任せました。……ぶん……?」
えっ……?
私の困惑をよそに、鞄から取り出したのは、馬鹿でかいライフルでも、クソでかいミニガンでもなく――
「ふんっ!」
――持ち手の長ーい、斧みたいな武器だった。
「待て待て待て、なにそれ?」
「トマホークです!名前はジャスティストマホーク」
「いやっ、人っ、死なない!?」
「刃は潰してますから!任せてください!」
「違う違うそうじゃな「行ってきます!」いってらっしゃーい」
じゃ、ねぇ!あーもう、行っちゃった……
……いや、言えなかったけど、あれ、ゲッター……まあ、いいか。
私も後ろからガトリングで牽制しながらついてく。
「ふんっ!はっ!」
「がはぁっ!?」
「げほぉっ!?」
「んほぉっ!?」
「一人おかしいぞ」
「あ、慌てるなっ!遠くから撃てばっ!?」
おうおう、遠くから撃たれてるのもぶん回して弾いてるわ……あれだわ、傘回して雨防ぐのと同じやり方だわ。
「ぐっうぅ……!」
でも結構な数通してるな、まっずいか。
「ほいっ、バリア展開」
「モブ子さんっ!」
「ぱっと行きましょ」
だから、バリア展開できるスーツを持ってくる必要があったんですね。私が正義ちゃんの盾になる。
「あいつを狙え!」
戦車の重砲がこっちを向く。
「撃てぇ!」
そして、砲弾が飛んでくる。
が。
「なっ?き、効いてない!?」
センキューファンクラブ&エンジニア部。
『バリアの強化をしておいたよ。戦車の砲弾程度なら、通常展開でも弾ける。……とはいえ、君の体は病み上がりなんだ。無理をしていいわけじゃないから、休んでくれよ?』
『分かってますよ、ウタハさん』
『……言っておくけど、使ったことは私達にも、先生のタブレットに届くようになってるからね?分かってるかい?』
『わーってます、わーってますって!』
……ヨシッ!
バリアで攻撃を防ぎながら、雑魚はガトリングでぶっ飛ばしーの、戦車まで走る。
「出番だっ!」
「はいっ!」
そして――
「はぁっ!」
――戦車の上半身が、ひしゃげた。
「……脱出、脱出だ!」
慌てて中の不良達が出てくる。
「悪いけっ、ど!」
「ぐへぇ!?」
が、その隙をレーザーブレードで気絶させる。
仕事、おーわりっと。
不良を適当に縛り上げて、端に投げたあと、正義ちゃんと話す。
「ありがとうございました!私一人だったら、どうなっていたか……」
「んやんや、力になれてよかったです」
「……モブ子さんって、自分の正義がしっかりしてますね」
「そうですかねぇ?自分に嘘を吐かないようにしてるだけですよ」
「……」
正義ちゃんは急に静かになる。何か考えてる様子。
黙って待ってると、急に私の手を握ってきた。
「決めました!あなたの正義、近くで見せてください!」
「ごめん意味わかんないわ」
そう言う正義ちゃんの顔は、屈託のない笑顔だった。
もしかしてだけどさぁ……私の周りってさ、濃い……?
普通枠の私つれぇわ~
というわけで、新メンバー、正義ちゃん回でした。
周りとどう変えるかなー、って考えたら後方支援ゲッターになっちゃいました。
も、モブでも地味とも言ってないから……何も嘘ついてないから……