できるだけ更新速度上げようとは思っていますので、良ければお付き合いください……
あ、ちなみに次回は地味モブ回です。
私は一口、コーヒーを飲む。
苦い。
飲めないことはないけれど、別段好きではない。
でも、この苦さがないと、逃げられない。
「……はぁ……」
ため息と同時に、鼻から風味も出ていく。
「……苦い」
匂いをただ感じる。何も考えたくない。
すぐ近くにある道路を見る。前と何も変わらない。普通に車が走って、バイクが走って、人が歩いて……
でも、私達は……変わってしまった。
「……はぁ。また、前みたいに……」
「前みたいに仕事がしたい?」
後ろから私にそう言ってくる声は聞き覚えのあるものだった。
私は振り返らずに言葉を返す。
「何の用かしら?」
「用なんて無い。たまたま見かけたから近づいただけ。あなたこそ、カフェでコーヒーを飲むだけで、何もしてないように見えるけど。それともお仕事?」
その声は私の前にある椅子に当たり前のように座る。
なぜと思いつつも、その質問に答える。
「ただのお休み。悪い?」
「別に。四六時中働いてるイメージがあっただけ」
「それはこっちの言葉」
働いてるイメージしかなかったけど、めかしこんで出かけることなんてあるのね、あの風紀委員長が。
「前まではね。でも、遊ぶ心があるくらい余裕を持たないと守りたいものも守れないの」
「……そう」
「ま、仕事をぶん投げられてラッキーくらいだけど」
「えぇ……」
「そんなことより。なにか悩んでるの、便利屋の社長さん?」
いつの間にか頼んでいたコーヒーを飲みながらそう言ってくる風紀委員長……空崎ヒナは、少し笑っていた。
「……別に、あなたには関係ないでしょ」
そう悪態をつくように言うと、想像に反してそう、とだけ返ってきた。
そしてその次の瞬間、放たれた言葉を聞いた私は、叫んだ。
「じゃあ、今依頼を受けてくれるかしら?便利屋の社長さん」
風紀委員長が依頼をしてきた。
あの便利屋68に。
その内容は。
「これとこれ、どっちがいいと思う?」
「……どっちでもいいんじゃない」
「友達と遊びに行くための服選びだから真面目にしてほしいんだけど」
買い物の付き添いだった。
困惑している私をよそに、服を選び続ける空崎ヒナ。少しの前の私に言っても信じない。絶対。
……はぁ、まあ、変な事を考えなくていいんだけど……
「じゃ、あ……どっち?」
「……」
「仕事は真面目にするのがモットーじゃないの?」
「……右の方」
「じゃあ買ってくる」
そう言って空崎ヒナはレジに行った。
訳が分からない、と思いながらその背中を見つめる。
「買ってきたわよ。じゃあ次」
「まだ続くの……?」
戻ってきた空崎ヒナは私の言葉を無視して、いろんな所へ連れて回った。
靴屋や、家電、なぜかおもちゃ屋にも。
「これって……」
「プラモデル。知り合いから勧められたの。意外と暇つぶしとか、考え事するのに悪くないわよ。でも大きいのはやめたほうがいい。キレそうになるから」
へぇ、意外な趣味……
私も空崎ヒナの横に屈んで箱を見る。ほとんどロボットで、意外性が増す。
「……よし、これと、これを」
「あら、早いわね。別にもっと時間をかけてもいいのよ」
「今回は多く買いに来たわけじゃないから。じゃ、行ってくるわ。外のベンチで待ってて」
そう言って空崎ヒナは二つの箱を持っていった。私は仕方なく言われた通りに外のベンチに座って待つことにした。
……はぁ。
全く訳が分からない。なぜ彼女は私に仕事の依頼を?確かに、一度協力したとはいえ、元々は敵対関係だったし、それに……空崎ヒナは会話が得意だとは思えない。いつも静かだし。
元々そういう人だったのか、最近そうなったかは分からないし、興味も無いけれど……
「ほっ」
「ひゃっ!?冷た!」
急に何かと思ったら、後ろから頬に冷たい何かを空崎ヒナが押し付けてきたみたいだった。
「何するのよ!」
「コーヒーで良かった?」
「聞きなさいよ!」
「今聞いてるじゃない」
「そっちじゃなくて!」
怒ってる私を見ながら、けらけら笑う空崎ヒナ。キレそう。
空崎ヒナは流れるように私の横に座る。私はしぶしぶコーヒーを受け取る。
「……ねえ、親友っている?」
笑っていた空崎ヒナは真面目な顔をしてそんなことを聞いてきた。
「急に、何よ……」
「私はね、いなかったの。今まで、ずーっと。友達と言えるのも……何人かだけ」
「……」
「でも、いろんなことがあって出来た。二人、ね。初めての経験だった。自分から遊びに誘って、馬鹿なこと言いあって……」
「……それがどうしたって言うのよ」
「自分から話すつもりは無かったけど……悩んでるでしょ、あなた達の事で」
……驚きもあるし、納得もある。
でも。
「……そうだけど、何?風紀委員としてはバラバラになった方がいいんじゃないの?それとも……」
「別に恩を売ろうとか考えてない。……とある馬鹿に、染められただけ」
「染められた?」
「強くも無いくせに、体を張って誰かを助けようとする馬鹿。そっちのほうが面白そうだから、なんて理由でね。……それに、私にも親友が出来た。だから、あなたの気持ちが少しだけ分かるようになった」
「だから、私に話しかけた?」
「そういうこと」
空崎ヒナは立ち上がって、自分の分のコーヒーを一気に飲んだ。
「ぷは。……私は別に口が上手いわけじゃないから、ちゃんとしたアドバイスなんてしてあげられないけど。
ちゃんと、話し合ってみたら。四人だけじゃ難しいなら、とある馬鹿を連れてくわ」
彼女なら上手くやるでしょ。らしい。
それと、と言って丸められた紙をポケットから出し、私に投げた。
「私の電話番号。都合と内容によっては、助けてあげる」
「……ふふっ、そんな状況には一切ならないわよ。空崎ヒナ」
「そう?なら、頑張ってね、陸八魔アル」
空崎ヒナ……ヒナは、手を振りながら去っていった。
……まさか、あの風紀委員長に慰められるなんて、ね……そうね、ちゃんと話し合ってなかった。今すぐにでも会いに……あら?
「これって、ヒナが買っていたおもちゃよね?なんで置いていって……」
袋の中には一枚の紙が。
『あげるわ。話のきっかけにでもして PS.過ちを繰り返さないためのロボットよ』
「なにそれ……ま、有効活用くらいしてあげるわ」
私はモモトークを開いて、グループにこう書いた。
『社長命令よ。今すぐ事務所に集まってプラモデルを作るわよ!』
「……なんとなく、手助けしちゃった」
「いいんじゃないんですか。皆笑顔の方が面白くなるかもしれませんよ」
「ワカモ?どうしてここに……」
「後ろ姿が見えたもので。しかし……」
「なにか気になることでも?」
「あの四人組は、強い絆で結ばれている。だというのに、先生が絡んでいるとはいえ、銃を簡単に向けるものでしょうか……」
「……底知れぬ、悪意ってやつかもね」
これ以上、状況が悪くならなければいいのだけど……