なんか先生拾ったんだが……   作:紫彩

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第五話

口で小さな呼吸をする。砂が少しだけ入り、その分だけ気分が悪くなる。

この場所には、自分の意志で来たのだからしょうがないと割り切る。

 

しかし、と周りを見回す。

 

「笑えるくらい、砂まみれですわね」

 

そう溢してしまうほど、砂漠は遠くまで広がっていた。

 

「慣れれば結構、いいもんだよ~?……いやそんなことは無いや」

 

後ろから聞こえた声と気配に反応してわたくしは回し蹴りを浴びせる。

それは簡単に受け止められ、カウンターを返されかけるも、後ろに跳んでそれを回避する。

 

「私も何度か来たことがあるけれど、いいとこを探すのは難しいわね。まあ、仕事でしか来たことないのだけど」

 

横から向かってくるLMGの雨を跳んで走って隠れて、ダメージを抑える。

 

「ミレニアムの技術を使えば何とかなりそうだが……」

「あたしが言うのもなんだが、安くねえしな。無駄な機能入れるやつも多いし」

 

砂に埋まった建物の窓ガラスを体当たりで割り、その中で態勢を立て直そうとすると、二つの銃口が私を挟むようにして見えた。

持っていた愛銃を上に投げ、両腕のエネルギー砲で牽制する。

 

愛銃をキャッチし、牽制によって後ろに下がった二人に向かって数発ずつ放つ。片方は軽やかに避け、片方はものともせず顔面で受ける。

 

「なんで銃弾を顔に受けて無傷なんですか……」

「?余裕だが?」

「それぐらい普通だよな?」

 

正実委員長と00(ダブルオー)は何をおかしなことをと言いたそうな顔で見合わせる。えぇ……?

後ろからさらに二つの気配が近づいてくる。

 

「なになに、何の話してたの?」

「ヘッドショットでノーダメはクソゲーって話ですわ」

「オセアニアとキヴォトスでは常識じゃない?」

「ワカモちゃん柔らかくなーい?」

「しまったわたくしが少数派ですわ」

 

風紀委員長と対策委員長がやれやれみたいな顔をする。ははーんさては人間じゃないですわね?

 

「……ふふっ」

「どうしたの?急に笑って」

 

つい笑いが零れたわたくしに、ヒナさんが質問する。

 

「いえ、ただ……彼女のような思考を、わたくしもよく持つようになってきたな、と思いまして」

「……ああ、モブ子みたいな、ね」

 

わたくしは近くにある机に腰掛ける。

 

「モブ子さんと関わらなければ、ゲームやアニメなんて、関わることは無かったでしょう……あなた達、とも」

「そうだな。しかも友達として、なんて、あいつがいなければ無理だった」

「……残念ながら、彼女だけが理由じゃないけれどね」

 

ツルギさんがわたくしの言葉に同意し、ヒナさんが目を伏せる。

 

「ええ。もっと根本的なことを言えば……奴のおかげ、ですわね」

「おかげ、なんて言いたくないけどねー。……心底からそう思う」

「だな。特にあたし達は、な……」

 

ホシノさんとネルさんが酷く落ち込んだような声でそう捻り出す。

 

「じゃあ早く、助け出さないとね。そういえば私達、ちゃんとした礼をした記憶無いし」

「いいですわね。ぱーっと、楽しみましょうか」

「そんな気楽な……簡単なことじゃないんだろ?」

 

終わった後のことをヒナさんと計画しあっていると、ネルさんがおいおいとツッコミを入れてきた。

気持ちは分かりますが――

 

 

「彼女なら……モブ子さんなら、そんなことを話すと思います。大事な時ほど、その先の事を考える……解決した後の事を」

 

 

――彼女がこの場にいたなら、どうせその後の晩御飯の話をするでしょうから。

そう言うと、何故か周りが固まってわたくしを見る。ただ思った事を言っただけの筈なのに……

 

「……ふふ、ふふふ……あなたそんな顔するのね」

「は、はあ?何を言って……」

「凄く穏やかな顔をしていた。まるで、トリニティの聖母像のような……」

「い、いやいや、ごくごく普通の顔で言っていましたが!?」

「もしくは、まるで恋するような、ねぇ?」

 

恋するような!?誰に!?

 

「ま、ワカモはモブ子のこと好きだもんな」

 

…………

 

「はあ!?」

「ええー?何でそんなに驚いてるの~?」

「な、何を馬鹿なことを……わたくしは彼女の事を!……かの、じょ、のこと……を……」

 

思えばわたくしは、何と思っていたのだろう。

 

最初は、ただただ打算だった。一時的しか効果がない、先生の隠れ蓑として。その筈だったのに、いつしか彼女は問題を解決し、味方を増やし。

 

その道のりの途中で、わたくしも絆されてしまった……

 

共に食べ、共に遊び、時には共に寝ることもあった。あのわたくしが、出会って数週間程の間で。

 

じゃあ、わたくしにとって、彼女は……

 

そこまで考えて、やっと気づいた。

 

彼女は……あの方は……

 

 

 

「わたくしの、初めての、心からの友達、だったんですわね……」

「あれぇ!?」

「思ってたのと違うな……」

「はっはーんさては恋だと気づくと思いましたか!?残念そう簡単じゃないんですわ!」

「こんなハイテンションなワカモ初めて見たけど滅茶苦茶ムカつくわね」

「そもそも、わたくしはあなた達と馬鹿をやるのが好き、ですから」

「へー、あんなにお熱だった先生の事も?」

「先生は、わたくしの初恋であり、今もタイプど真ん中ですが……初恋は実らない、と言うでしょう?」

 

それに……あの人が幸せそうにしているのが一番、嬉しい。

 

「ま、どこかの好きな人が複数いるくせにどちらにもアプローチ出来ていない人には分からない話ですわね?」

「……屋上に……行こうよ……久々に、キレちゃった……!」

「ホシノ、キレた!」

「あーあー、突然暴れんなよ。建物崩れるだろうが……っと。あたし達も行くか」

「ああ。待ーてー!」

 

わたくしが煽り、それでホシノさんがキレて襲い掛かり、ヒナさんが面白そうに揶揄い、ネルさんとツルギさんが後ろからついてくる。

 

 

それは、わたくしが経験してこなかった、青春だった。

まあ傍から見れば怪獣特撮レベルの砂塵が舞うんですが。

 

 

 

何故わたくしが、先生達から離れ、このメンバーで戦いあっているのか……それは

 

『出来るだけ彼女達の癖を見抜いてください。私達の考えが当たっていれば……』

 

という、ファンクラブ達の依頼があったから。それと、わたくしが大切な戦いの前に、使いこなしたいものがあったから、というのもある。

 

 

彼女から渡された、あの仮面を、わたくしはまだ完全には解放していない、そう感じて。

 

 

今のところ、上手くはいっていませんが……必ず、わたくしは、彼女を助けるために。

 

「隙あり!」

「危なっ!?」

 

……出来……ますか……?

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