――もうすぐ、我々はあの者達との戦いになります。
――彼女達は、あなたと、私を見て、どう言うのでしょうね。
――答えません、か。
――それもそうでしょう、私がそうしたのですから。
――ただ……一つだけ、あなたの口から聞きたかった。
――どうして、あなたは、私の方へ……
ついに、その時が来た。
トリニティの大きい広場を借りて、私達は神経を研ぎ澄ませていた。
地味子は二丁の拳銃を何度も構え、正義ちゃんは正座して精神統一し、ワカモは仮面を見つめている。
私はというと、着慣れないスーツの感覚と、取り戻す彼女の事を思い浮かべていた。
モブ子……絶対、助けるから……
「……ここを指定した理由は、なんなんだろうな」
ふと突然、地味子がそんなことを言った。
「今朝、奴から突然そんなメールが届いたんだろ?プラス、手の内を明かすように配置も指定してきた」
「ええ、私も気になっていました。そして、意外にも先生がそれに従ったことも」
いつの間にか立っていた正義ちゃんが、不思議そうな顔で私を見る。
それはね……
「あいつは、もっといい策を思いつくはずだよ。なのにこんな、正々堂々……とは違うけど……説明は難しいね。まあ、あいつらしくない。からこそ、従ってみた」
「そう、ですか……」
「ですが、最大戦力を持ってこれないのは辛いですね」
ワカモの言う通り。でも、あいつが真実を言っているなら、放ってはおけない。
「……分からない事ばかりだけど、今は準備することしか出来ないか。皆、装備は大丈夫?」
「ああ、スーツも万全だ」
「同じく。いつもより動けそうです」
「わたくしもです。先生はどうですか?」
「ちょっと慣れないけど、大丈夫」
私は直接戦闘には参加しないけど、近距離にはいるからと言うと、用意してくれた装備。
私だけじゃなくて、何人かにも渡されてたけど、流石に全員分は用意できなかったらしい。
大切に、使わせてもらおう。
そんな時だった。
『皆さん、構えてください』
インカムから黒服の声が聞こえた瞬間、全員が戦闘態勢に入った。
そして次の瞬間。
空が割れた。
「……あいつなら、超獣が現れたぞ、って言うな」
「だね。バキシムかな?」
「最近出てきたバラバかもしれませんよ」
「……もう数年前ですがあの作品」
そう冗談を投げ合いながら、気を引き締める。
こつ、こつ、なぜか階段を下りるような音が聞こえ、その空間から――
「……皆さん、お揃いのようですね」
――奴があられた途端、銃声が轟いた。
……残念ながら、全てバリアのようなもので防がれたけど。
「チッ、端からやれるとは思ってなかったが」
「おやおや、野蛮ですね。まあ、親友を攫った挙句、改造した本人が目の前にいるのなら、当たり前でしょうが」
「……突っ込むか?」
「駄目。間違いなくやられる」
今にも殺さんとした声色の地味子でも、無理。
妙にさわやかに笑うあいつが腹立つ。
「流石は先生。賢明な判断です」
「よし皆、突撃用意」
「駄目と言ったのは先生でしょうが」
ワカモに止められた。
「ふふっ、愉快な方達ですね……ところで、話は変わりますが……皆さん、良く鍛えられたようで。一週間前とは見違えています」
「……何が言いたいんですか」
「いえいえ、大したことではありません……
ただ、彼女も大きく変わりまして」
嫌な予感がした。
「「全員散開!」」
私と地味子が叫ぶと同時に、全員がその場を離れると同時に、立っていた場所が吹き飛んだ。
「これは……」
「おいおいおい……!」
「想定より、難しそうです……」
「それでも、やるだけですわ」
空には、一つの影が浮かんでいた。
右手には、巨大なガトリングを三つ束ねたような、巨大な銃。
左手には、戦車の大砲より太く、先からバチバチと雷光を走らせている砲身。
背面には、二つの兵器に繋がった巨大なタンクと、火を吹かすブースターが。
何を見つめているか分からない仮面を付けたモブ子が、そこにいた。
「……了解、そっちは任せたわ」
「始まったの?アルちゃん」
「ええ、どうやら想定以上に激戦になりそう、ですって」
私達は今、ゲヘナととある区画で戦闘準備をして待っていた。
「本当に来るの?」
「嘘を吐く奴らじゃないのは私が分かってるわ」
といっても、私もまだ信じ切れていないのだけど……
……!
「来るわよ!隠れて!」
私の号令と共に建物の物陰に隠れると、溢れんばかりの銃弾が飛んできた。
そう、溢れんばかりの。
「いや流石に多くない!?」
「聞いてはいたけど、想像以上の迫力だね……!」
「あ、ああアル社長、ツッコんで爆発しましょうか!?」
「意味無いからやめて!意味あってもやらせないけど!」
私はチラッとだけ物陰から顔を出してそいつらを見た。
それはまるで、黒い影だった。
大小いろんな形をした影が、群れを成して近づいて来ていた。
もっとも、それだけならまだやる気はもっとあった。
「……ねえアルちゃん」
「……なに?」
「あれさ、美食じゃない?」
「……」
「正実もいるみたいだね」
「あ、あれはアビドスの人達、みたいですね……」
そう、影は見たことある人達の形をしていた。
「あーもうやだ……見た目だけじゃなくて強さも据え置きなんて……」
「あの人達が言うには、私達の負の感情によってできた存在らしいけど……」
「いやー、そのせいでほぼ無限に出てくるなんてね」
考えたくない。
キヴォトスにいる大体の生徒のコピーがいるなんて考えたくない。
「し、しかも、見たことあるロボットまでいますし……」
「確か、アリスって子が攫われたせいで出て来れたみたいだね」
「もう聞きたくない!掘っても掘ってもろくでもない情報しか出ないじゃない!もー!ムツキ!」
「おっけー!」
ムツキが何が入ってるかよく分からない鞄を影達にぶん投げ、それを私が撃ち抜いた。
鞄は爆発すると同時に、クラスターが影に次々と落ちていく。
いくつかの影は粒子となって消えて行ったけど、生き残ってる方が多い。
「やっぱり強い……!いや爆弾まともに受けて平気っておかしいでしょ!」
「アルちゃん何言ってんの。今更でしょ」
「はぁ……そうよね、今更よね……ハルカ、いくらでも爆破しちゃいなさい!」
建物壊していいって許可出てるから!とは言わない。アウトローじゃないもん……
「わ、分かりました!ご迷惑をおかけした分、ぶっ飛ばします!」
「どれくらい?」
「全部殺してでも足りません!」
「頼もしいわね……ん?」
今ハルカに質問したの誰……?
どかん、どかんと爆発音が聞こえる中、その声の方へ向いてみると
「……」
「……ヒナぁ!?何やってるのよここで!?」
いたのは衣服がいつもとは違う、妙にメカニカルなスーツを着た、ヒナだった。
背中には、二枚の板みたいなのがLの字に付いてる。どこかで見たことあるわね……
「私もここの担当になったの。よろしくね、社長さん」
「は?いや、まあ、ヒナがいるなら助かるけど……」
「……ねえ、風紀委員長がいるってことは……」
「え?」
カヨコが言いづらそうな顔を浮かべて私を見る。
ヒナがいるからな……に……
「……まさか」
「そのまさか。
ここ激戦区の一つよ。
さ、行くわよ」
借りを返すために。
そう言ってヒナは銃を片手に突っ込んでいく。
「あーもう、ヒナを援護するわよ!」
「オッケー!爆弾の雨降らせちゃうよ!」
「殺します殺します殺します殺します殺します……!」
「……先生にも、迷惑かけたからね」
次々と影を蹴散らすヒナに続いて、大切な社員と共に、私も銃を構え始めた。
……過ちは、繰り返させない……!
「ミレニアムのセミナー……こっちはゲヘナの美食家……チッ、強さが本物と同じとは、面倒だ!」
「ツルギっ、上です!」
ハスミの言葉を聞くと同時に、回し蹴りで近づいてきた影を蹴り飛ばす。
蹴り飛ばされた影は、粒子となった。
「……スーツがあるとはいえ、長く抑えるのは厳しいぞ。各員、複数人で各個撃破しろ!」
「は、はいっす!……凄い、前とは戦い方が違う……」
「ええ、獣のような戦い方ではなく、理性があるような……しかし、野性味はある、まるで……思考と反射が融合したかのよう……」
「喋っている暇はありません、怪我人はすぐさま後方に!……生き残ること最優先です」
急接近からの格闘、ゼロ距離射撃を繰り返す。
リミッターを外せば、硬いキヴォトス人でも一撃で倒せる。……この力は、今しか使う気はない。
先生が来てから、いろんなことがあった。
私は、憧れがたくさんあった。
先生がいなくなってから、いろんなことが起きた。
私は、憧れが現実になった。
勿論、嫌な事の方が多く起きた。
だが、そこで起きた奇跡は、事実だ。
だから、私は、今を守るために戦う……!
「……っ!?」
突然、遠くからとてつもない
嫌な汗が全身を駆け巡る。
「……クソッ、私は今から手を貸せない!そっちはなんとかしろ!」
「ツルギ!?」
本能が逃げろと言うが、あれを抑えられるのはここには私しかいない。
「……」
「やはり……か……!」
そこにいたのは、散々苦戦させられた、ミカ様の影だった。
朝と昼と夜、いつ当たり見る?
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