なんか先生拾ったんだが……   作:紫彩

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遅れ遊ばせ!


第七話

――もうすぐ、我々はあの者達との戦いになります。

 

 

――彼女達は、あなたと、私を見て、どう言うのでしょうね。

 

 

――答えません、か。

 

 

――それもそうでしょう、私がそうしたのですから。

 

 

――ただ……一つだけ、あなたの口から聞きたかった。

 

 

――どうして、あなたは、私の方へ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ついに、その時が来た。

トリニティの大きい広場を借りて、私達は神経を研ぎ澄ませていた。

地味子は二丁の拳銃を何度も構え、正義ちゃんは正座して精神統一し、ワカモは仮面を見つめている。

 

私はというと、着慣れないスーツの感覚と、取り戻す彼女の事を思い浮かべていた。

モブ子……絶対、助けるから……

 

「……ここを指定した理由は、なんなんだろうな」

 

ふと突然、地味子がそんなことを言った。

 

「今朝、奴から突然そんなメールが届いたんだろ?プラス、手の内を明かすように配置も指定してきた」

「ええ、私も気になっていました。そして、意外にも先生がそれに従ったことも」

 

いつの間にか立っていた正義ちゃんが、不思議そうな顔で私を見る。

それはね……

 

「あいつは、もっといい策を思いつくはずだよ。なのにこんな、正々堂々……とは違うけど……説明は難しいね。まあ、あいつらしくない。からこそ、従ってみた」

「そう、ですか……」

「ですが、最大戦力を持ってこれないのは辛いですね」

 

ワカモの言う通り。でも、あいつが真実を言っているなら、放ってはおけない。

 

「……分からない事ばかりだけど、今は準備することしか出来ないか。皆、装備は大丈夫?」

「ああ、スーツも万全だ」

「同じく。いつもより動けそうです」

「わたくしもです。先生はどうですか?」

「ちょっと慣れないけど、大丈夫」

 

私は直接戦闘には参加しないけど、近距離にはいるからと言うと、用意してくれた装備。

私だけじゃなくて、何人かにも渡されてたけど、流石に全員分は用意できなかったらしい。

 

大切に、使わせてもらおう。

そんな時だった。

 

 

『皆さん、構えてください』

 

 

インカムから黒服の声が聞こえた瞬間、全員が戦闘態勢に入った。

 

そして次の瞬間。

 

 

空が割れた。

 

 

「……あいつなら、超獣が現れたぞ、って言うな」

「だね。バキシムかな?」

「最近出てきたバラバかもしれませんよ」

「……もう数年前ですがあの作品」

 

そう冗談を投げ合いながら、気を引き締める。

 

こつ、こつ、なぜか階段を下りるような音が聞こえ、その空間から――

 

 

 

「……皆さん、お揃いのようですね」

 

 

 

――奴があられた途端、銃声が轟いた。

……残念ながら、全てバリアのようなもので防がれたけど。

 

「チッ、端からやれるとは思ってなかったが」

「おやおや、野蛮ですね。まあ、親友を攫った挙句、改造した本人が目の前にいるのなら、当たり前でしょうが」

「……突っ込むか?」

「駄目。間違いなくやられる」

 

今にも殺さんとした声色の地味子でも、無理。

妙にさわやかに笑うあいつが腹立つ。

 

「流石は先生。賢明な判断です」

「よし皆、突撃用意」

「駄目と言ったのは先生でしょうが」

 

ワカモに止められた。

 

「ふふっ、愉快な方達ですね……ところで、話は変わりますが……皆さん、良く鍛えられたようで。一週間前とは見違えています」

「……何が言いたいんですか」

「いえいえ、大したことではありません……

 

 

ただ、彼女も大きく変わりまして」

 

 

嫌な予感がした。

 

「「全員散開!」」

 

私と地味子が叫ぶと同時に、全員がその場を離れると同時に、立っていた場所が吹き飛んだ。

 

「これは……」

「おいおいおい……!」

「想定より、難しそうです……」

「それでも、やるだけですわ」

 

 

 

空には、一つの影が浮かんでいた。

 

 

右手には、巨大なガトリングを三つ束ねたような、巨大な銃。

左手には、戦車の大砲より太く、先からバチバチと雷光を走らせている砲身。

背面には、二つの兵器に繋がった巨大なタンクと、火を吹かすブースターが。

 

 

何を見つめているか分からない仮面を付けたモブ子が、そこにいた。

 

 

 

 

 

「……了解、そっちは任せたわ」

「始まったの?アルちゃん」

「ええ、どうやら想定以上に激戦になりそう、ですって」

 

私達は今、ゲヘナととある区画で戦闘準備をして待っていた。

 

「本当に来るの?」

「嘘を吐く奴らじゃないのは私が分かってるわ」

 

といっても、私もまだ信じ切れていないのだけど……

……!

 

「来るわよ!隠れて!」

 

私の号令と共に建物の物陰に隠れると、溢れんばかりの銃弾が飛んできた。

そう、溢れんばかりの。

 

「いや流石に多くない!?」

「聞いてはいたけど、想像以上の迫力だね……!」

「あ、ああアル社長、ツッコんで爆発しましょうか!?」

「意味無いからやめて!意味あってもやらせないけど!」

 

私はチラッとだけ物陰から顔を出してそいつらを見た。

 

 

それはまるで、黒い影だった。

大小いろんな形をした影が、群れを成して近づいて来ていた。

もっとも、それだけならまだやる気はもっとあった。

 

 

「……ねえアルちゃん」

「……なに?」

「あれさ、美食じゃない?」

「……」

「正実もいるみたいだね」

「あ、あれはアビドスの人達、みたいですね……」

 

 

そう、影は見たことある人達の形をしていた。

 

「あーもうやだ……見た目だけじゃなくて強さも据え置きなんて……」

「あの人達が言うには、私達の負の感情によってできた存在らしいけど……」

「いやー、そのせいでほぼ無限に出てくるなんてね」

 

考えたくない。

キヴォトスにいる大体の生徒のコピーがいるなんて考えたくない。

 

「し、しかも、見たことあるロボットまでいますし……」

「確か、アリスって子が攫われたせいで出て来れたみたいだね」

「もう聞きたくない!掘っても掘ってもろくでもない情報しか出ないじゃない!もー!ムツキ!」

「おっけー!」

 

ムツキが何が入ってるかよく分からない鞄を影達にぶん投げ、それを私が撃ち抜いた。

鞄は爆発すると同時に、クラスターが影に次々と落ちていく。

いくつかの影は粒子となって消えて行ったけど、生き残ってる方が多い。

 

「やっぱり強い……!いや爆弾まともに受けて平気っておかしいでしょ!」

「アルちゃん何言ってんの。今更でしょ」

「はぁ……そうよね、今更よね……ハルカ、いくらでも爆破しちゃいなさい!」

 

建物壊していいって許可出てるから!とは言わない。アウトローじゃないもん……

 

「わ、分かりました!ご迷惑をおかけした分、ぶっ飛ばします!」

「どれくらい?」

「全部殺してでも足りません!」

「頼もしいわね……ん?」

 

今ハルカに質問したの誰……?

どかん、どかんと爆発音が聞こえる中、その声の方へ向いてみると

 

「……」

「……ヒナぁ!?何やってるのよここで!?」

 

いたのは衣服がいつもとは違う、妙にメカニカルなスーツを着た、ヒナだった。

背中には、二枚の板みたいなのがLの字に付いてる。どこかで見たことあるわね……

 

「私もここの担当になったの。よろしくね、社長さん」

「は?いや、まあ、ヒナがいるなら助かるけど……」

「……ねえ、風紀委員長がいるってことは……」

「え?」

 

カヨコが言いづらそうな顔を浮かべて私を見る。

ヒナがいるからな……に……

 

「……まさか」

「そのまさか。

 

ここ激戦区の一つよ。

 

さ、行くわよ」

 

借りを返すために。

そう言ってヒナは銃を片手に突っ込んでいく。

 

「あーもう、ヒナを援護するわよ!」

「オッケー!爆弾の雨降らせちゃうよ!」

「殺します殺します殺します殺します殺します……!」

「……先生にも、迷惑かけたからね」

 

次々と影を蹴散らすヒナに続いて、大切な社員と共に、私も銃を構え始めた。

……過ちは、繰り返させない……!

 

 

 

 

 

「ミレニアムのセミナー……こっちはゲヘナの美食家……チッ、強さが本物と同じとは、面倒だ!」

「ツルギっ、上です!」

 

ハスミの言葉を聞くと同時に、回し蹴りで近づいてきた影を蹴り飛ばす。

蹴り飛ばされた影は、粒子となった。

 

「……スーツがあるとはいえ、長く抑えるのは厳しいぞ。各員、複数人で各個撃破しろ!」

 

「は、はいっす!……凄い、前とは戦い方が違う……」

「ええ、獣のような戦い方ではなく、理性があるような……しかし、野性味はある、まるで……思考と反射が融合したかのよう……」

「喋っている暇はありません、怪我人はすぐさま後方に!……生き残ること最優先です」

 

急接近からの格闘、ゼロ距離射撃を繰り返す。

リミッターを外せば、硬いキヴォトス人でも一撃で倒せる。……この力は、今しか使う気はない。

 

 

先生が来てから、いろんなことがあった。

 

 

私は、憧れがたくさんあった。

 

 

先生がいなくなってから、いろんなことが起きた。

 

 

私は、憧れが現実になった。

 

 

勿論、嫌な事の方が多く起きた。

だが、そこで起きた奇跡は、事実だ。

 

だから、私は、今を守るために戦う……!

 

 

「……っ!?」

 

 

突然、遠くからとてつもない()()を感じた。

嫌な汗が全身を駆け巡る。

 

「……クソッ、私は今から手を貸せない!そっちはなんとかしろ!」

「ツルギ!?」

 

本能が逃げろと言うが、あれを抑えられるのはここには私しかいない。

 

 

「……」

「やはり……か……!」

 

 

そこにいたのは、散々苦戦させられた、ミカ様の影だった。

朝と昼と夜、いつ当たり見る?

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