リコリス・リコイル With A Masked Rider 作:論 外之助
ギーツのサブタイトルがいつもかっこいいと思う同志いますかね?
白夜が政府の男へと電話をしている最中、DA本部では先程廃工場にいた千束、たきな、フキ、サクラの四人が状況の報告をしていた。
途中から楠木は頭を抱えながら四人の話を聞いていた。
突如現れたモグラの怪物。
それとほぼ同時に現れたバッタの怪物。
その怪物同士の殺し合い。
あまりにも非現実的過ぎた内容に頭痛がしたのだ。
そして、報告が一通り終わると重たい口調で話し始めた。
「・・・正直千束の報告なら嘘だと割り切れたかもしれんが・・・他三人も同じような報告をしているとなると・・・本当のようだな・・・それにしても二体の怪物か・・・聞いたこともないな」
「確か・・・あのモグラの怪物、バッタの怪物のことを『ライダー』って呼んでたっすよね?」
「ああ。だがライダーってのはバイクに乗るやつのことを指すんだろ?あんなバケモンがバイクなんて乗れんのか?」
「その点についてはおいおい考えていくことにしよう。少なくとも、報告で分かっていることからその生き残ったバッタの怪物・・・ライダーは我々と同じ言語を喋る・・・つまり意思の疎通ができる」
その言葉に、千束の耳が反応した。
「・・・楠木さ〜ん・・・何考えてるんですか〜?少なくともライダーは私たちを助けてくれたんですよ〜?」
千束は何となくではあるが、楠木の考えを予想していた。
よく自分にリコリスとしての使命を果たせ、と言ってくる楠木の事だから何か企んでいる。そう考えたのだ。
「・・・現段階では何とも言えん・・・だが、これが上層部に知れ渡れば殺害もしくは捕獲だろうな」
「え〜?・・・正直あんなのに勝てる気しないんだけど・・・」
「あのモグラの怪物に銃が効かなかったしな・・・ライダーにも効かねえだろうな」
「・・・とりあえずラジアータも用いて分析してみよう。千束、たきな。お前たちはリコリコに帰れ」
ラジアータとは、DAが所有する高性能AIのことである。
日本のインフラの優先権を持ち、やろうと思えば日本中の情報を集めることも出来る。
「りょーかいしましたよ〜っと」
「了解しました」
場所は変わり、喫茶リコリコ。
千束とたきなが帰ると、ミカ、ミズキ、クルミの三人が待っていた。
「たっだいま〜!!」
「うぉい!!待てぃ!!何いつものノリですまそうとしてんのじゃあ!!」
「やっぱダメか〜・・・どう?クルミ、バッチリ撮れた?」
「当然だ」
そう答えたのはクルミ。
彼女の正体は、世界一のハッカー『ウォールナット』だ。
今は死んだことになっているので喫茶リコリコに匿われている。
クルミはドローンを飛ばして千束たちのバックアップを担っている。
もちろん、今回もそうしていたが、フキとサクラが居たためいつもの距離では支援できなかった。
だが幸いにも、仮面ライダーとモグラオーグの戦闘を撮ることが出来た。
「・・・事情は分かっているぞ。あのライダーとか言うやつが気になるんだろ?」
「そ!だからクルミにも手伝って欲しいの!!」
「ボクもこいつが気になる。こんな人間離れした身体能力、まさに怪物だ」
「今まで以上に危険な目にあうかもしれんぞ・・・それでもやるんだな?」
「・・・うん。やるよ」
「それが私たちの使命です」
覚悟を決めたように返答をする千束とたきな。
こうして、それぞれの夜が明けていく。
次の日の朝。
世間は何事も無かったかのように平和である。
そして、白夜は今日も今日とて、錦糸町を散歩している。
そんな彼は、少し眠たそうだった。
「(ふわあ〜・・・昨日のことが少し衝撃的であまり眠れなかったなぁ・・・それにしても、千束さんとたきなさんがエージェントだったなんて・・・しかもそれが殺しのエキスパートか・・・)」
ちなみに、千束は『いのちだいじに』を心情にしているので使う弾は『非殺傷弾』なのであるが、昨日の夜、千束は白夜の前では一発も撃たなかったので白夜には知る由もなかった。
「(それにしても・・・相変わらず世の中は平和だなぁ・・・この平和も仮初なのに・・・)」
目に映るのは当たり前の日常。
公園で遊ぶ子供の声。
道行くサラリーマンが電話をしている光景。
たまに見かける猫。
白夜はこれら全ての裏にリコリスが関わっていると思うと、なんだかおかしな気分になった。
「・・・って・・・何考えてんだろ僕・・・」
仮初の平和を作り出しているのは自分も同じだ。
仮面ライダーとして戦い、オーグメントから人々を守っている。
やっていることはリコリスたちとあまり変わらない、そう思っている矢先、
「ホントに何考えてんの?」
「わっ!?」
思い浮かべていたリコリスの一人、錦木千束が目の前に突如現れた。
「ちっ!?千束さん!?」
「白夜くん・・・大丈夫?こんな所でボーッと突っ立って・・・」
「え!?あっ・・・えっと・・・今日も変わらず平和だな〜って・・・」
「・・・あはは!!そんなこと考えてたの?」
「あはは・・・すみません・・・変なこと言っちゃって・・・(やっぱり・・・本当だって思えないよな・・・こんな明るくて優しい人が裏では秘密組織のエージェントだなんて・・・)」
人は見かけによらず。
という言葉があるが、見かけによらな過ぎないか?と白夜は思った。
「・・・よし!ちょっと着いてきて!!」
「え?・・・ちょっ!?」
そう言って、千束は白夜の腕を掴んで走り出した。
五分ほど腕を引っ張られ、たどり着いたのは誰もいない公園だった。
「あれ見て」
千束が指を指したのは、傾いている電波塔だった。
「・・・あれって確か・・・十年くらい前にテロで・・・」
「そ。でもそんな物が今じゃ平和の象徴として扱われてる。おかしな話だよね〜」
千束は笑いながらそう話す。
それはまるで、自分の事のようにも見えた。
「・・・白夜くんはさ、平和、好き?」
「え?・・・好き・・・ですけど・・・」
「だよねー!!私も好き!!・・・白夜くん、さっき変なことって言ってたけど、それは違うよ。いつまた十年前のテロが起こるかは分からない。平和なんていつ崩れるかは誰にも分からない。白夜くんの平和を感じる心はとってもいいものだと思うよ?」
「・・・そう・・・ですか・・・」
そんな会話をしていると、白夜の背中に何かが当たった。
小さなボールだ。
白夜がボールを拾った瞬間、
「すみませーん!!」
と声が聞こえてきた。
見ると、複数人の子どもが公園に遊びに来ていた。
傍には保護者であろう大人もいる。
すると、その内の一人が千束と白夜の元に近づいてきた。
「すみません・・・この子のボールが当たってしまい・・・」
「ごめんなさい・・・」
ボールを当てた子も落ち込んでいるのか、少し俯いている。
「ああいや・・・大丈夫だよ・・・君、お母さんは好き?」
「うん!大好き!!」
「それは良かった。元気なのはいい事だ。でもお母さんの心配かけちゃダメだからね?」
「うん!」
元気な返事をした後、子供はボールを持って友達の所へと走っていった。
「・・・白夜くん。楽しそうだね」
「え?」
「いや・・・なんか意外だなって。白夜くん、店だと結構大人しいっていうかさ・・・それに、今のすっごい良い笑顔だったよ?」
「・・・そう・・・ですか・・・?」
「子供好きなの?」
「・・・好きですよ・・・それと・・・少し羨ましいです」
「羨ましい?」
「僕・・・母親を知らないんです」
「・・・・・・・・・・・・・・・え?」
「母は元々体が弱くて・・・僕を産んだすぐ後に亡くなったらしくて・・・父もその二日後に事故で亡くなって・・・祖父と祖母が僕を育ててくれたんですけど・・・僕が10歳の頃に交通事故で・・・」
千束はそれを聞いて酷くショックを受けた。
つまり、白夜はいわゆる孤児だ。
しかも、今の白夜からは想像出来ないくらい重く、辛い。
よく今の温厚な性格が出来上がったものだと千束は思った。
「だから・・・母親連れを見ると・・・つい・・・」
「・・・そうだったんだ・・・」
それを聞いて、千束は申し訳なさと、ある一つのことを思いついた。
「よっし!!もいっちょ着いてきて!」
「え!?またですか!?」
白夜は再び千束に腕を引っ張られた。
そうして連れてこさせられたのは、喫茶リコリコだった。
「入って入って!」
「ええ・・・?なんです一体・・・?」
千束に半ば強制的にリコリコに連行されると、いつもの従業員たちが出迎えてくれた。
「あ、千束。おかえりなさい・・・あれ?白夜さん?」
「おーおー!?なんだなんだ!?私への見せしめかゴラァ!!」
「ミズキ。醜いぞ」
「二人ともやめろ・・・済まないな、白夜くん」
今日も今日とてリコリコは平和なようだ。
こんな平和な喫茶店の正体が秘密組織の支部の一つだなんて、誰が想像できようか。
「はいはーい!!皆さんちゅうもーく!!今から重大発表がありまーす!!」
「え?何?まさかあんたら本気で付き合うの?」
「そこの酔っぱらいは黙っててくださーい!!・・・それで!重大発表というのは・・・・・・・・・・・・・・・」
「今日から白夜くんは喫茶リコリコの従業員の一人になりまーす!!」
「(・・・はい?)」
その時、間違いなく世界の時は止まったと白夜は感じた。
今まで本を読んできて時が止まったという表現を幾度となく見てきたが、まさか自分がそのような瞬間に立ち会うとは想像してもいなかった。
「はい皆さんはくしゅー!!パチパチパチ!!」
「うぉい!!ちょっと待てー!!」
その宣言にミズキが異議を申し立てた。
それもそうだ。事情を知る者なら誰でもこのような反応になる。
たきな、ミカ、クルミの三人はポカンとしていたがミズキの声で正気を取り戻した。
すると、五人は白夜に声が聞こえないくらいの距離まで離れてコソコソと話し始めた。
「ちょっとちょっと!何勝手に決めてんのよ!?」
「だって〜・・・白夜くんが今まですごく可哀想な人生送ってきたっぽいの。だから・・・助けてあげたくて・・・」
「可哀想?どんな?」
そうして千束は白夜との会話内容を全て四人に話した。
それが終わると四人は驚愕の表情で白夜を見た。
この時、四人の心の中は公園での千束と全く同じである。
「(え・・・?僕何かしたかな・・・?)」
するとミカは何か意を決したのか、
「・・・・・・・・・分かった。迎え入れようじゃないか」
と言った。
「ちょっ!?いいの!?」
「他でもない千束の頼みだ・・・それに白夜くんも幾分か不安や悲しみを紛らわすことが出来るだろう」
「ミカさん・・・」
「さっすがセンセー!!」
「・・・はあ・・・千束の身勝手は今に始まった事じゃないですし・・・止めても無駄ですね」
「だな」
たきなとクルミも折れ、残るはミズキだけとなった。
「えー!?・・・分かったわよ!歓迎するわ!白夜くん!」
結局、最初は反対気味だったミズキも賛成し、満場一致で白夜を迎え入れることが決まった。
「(え!?ホントに働くの!?僕まだいいだなんて一言も言ってないのに!?)」
その通りではあるのだが、相手は他ならぬ錦木千束である。
彼女のマイペースぶりには誰も抗えない。
断ろうと一瞬考えたが、
「いやったー!!白夜くん!!喫茶リコリコへようこそ!!」
千束が満面の笑みでそう言ってきた時、彼の心は決まった。
「・・・これからよろしくお願いします(こんなの断れるわけないよ・・・)」
こうして、白夜は正式に喫茶リコリコの新メンバーとなった。
それから直ぐに、白夜は働く時用の着物を選ぶことになった。
選んだのは紺色の着物。
着物に袖を通すのは初めてだが、まるで何度も着たかのように見事に着こなしている。
「おお・・・めっちゃ似合ってるよ!白夜くん!」
「・・・とても似合ってると思います」
千束とたきなにとっては高評価なようだ。
「そ・・・そうですかね・・・」
「うわぁ・・・やっぱ顔面偏差値高いやつは何着ても似合うわねぇ・・・」
「こらそこぉ!白夜くんをそんな目で見ないの!」
「白夜、お前も難儀だな」
「あはは・・・」
他愛ない会話をした後、一通り接客の仕方やレジの打ち方などを学んだ。
理解力が高いのか、白夜は全ての業務を一瞬にして覚えた。
それが終わった瞬間、店のドアが開く音がした。
「おっ!白夜くん初のお客さんだ!」
「緊張せず、焦らないで接客しましょう」
「・・・はい!」
今日も平和な喫茶リコリコ。
やってきたお客さんは常連の客か、はたまた、まだ見ぬ客か。
それは誰にも分からない。だが、どんな客であれ、元気に声を上げるのだ。
「「「いらっしゃいませ!」」」
幕間F︰
「「「喫茶リコリコへようこそ!」」」
次回はちょっとした番外編みたいなのを投稿します。