リコリス・リコイル With A Masked Rider 作:論 外之助
ギーツの映画見てモチベが復活しました。
あの映画神でしょ……
遅くなりましたが番外編…というよりこの物語の少し前のお話。
なぜ自分はこんな目にあっているのだろう。
なぜこんな牢獄に閉じ込められているのだろう。
何か大きな罪でも犯したのだろうか。
僕の脳内はそんなことばかりで埋め尽くされていた。
ここに閉じ込められて半年ほどだっただろうか。
壮絶な痛みと苦しさのあまり時間の感覚など忘れそうになっている。
未だに信じたくもない現実に目を向けるのが嫌になって、僕は三秒も経たずに眠りに落ちた。
「………」
目を覚まし、立ち上がるとすぐに『ああ、ここは夢の世界なんだな』と気づいた。
だって、自分が目の前にいるんだから。
しかも夢というものはイタズラなもので、目の前の自分は恐らくこの研究所に来たばかりの自分だ。
何が何だか分からないで戸惑ってばかりいた自分。
それから待っていたのは苦痛と絶望の日々だった。
毎日毎日悲鳴をあげて、もがいて、抗った。
でも全部無駄だった。
誰か助けて、と何度も何度も懇願したが人生はそんなに甘くない。
世界はそんなに優しくない。
それから時は経ち僕の実験は成功したのか、身体に異常が見られるようになった。
人間を超越したジャンプ力。
コンクリートも軽々と破壊するほどのパンチやキック。
これを異常と呼ばずになんと呼ぶのか。
兎にも角にも、僕は人ではなくなったと理解した。
再び時は経ち、僕は研究所内にある広場に集められた。
そこには僕と同じ境遇の人達が集められていた。
総勢30人ほどだ。
突然アナウンスが始まったかと思うと、ここにいる全員で殺し合いをしろと言い出した。
もちろん僕達は猛反発した。
『ふざけるな!早くここから出せ!』
『話が違うぞ!!』
と周りの人は何度も叫んだ。
しかし、
『最後の一人となった者だけが生きて出られる。生き残りたければ戦え。戦わなければ生き残れない』
現実は残酷だ。
結局僕らは半ば強制的に殺し合いをすることとなった。
「うあぁ…………うぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
最初は中年の男性が近くにいた若い女性の人に剣を突きさした。
それは見事に女性の心臓を貫き、女性は動かなくなってしまった。
それからは周りの人も自分の身を守るために攻撃や防御を始めた。
殴る。蹴る。撃つ。斬る。裂く。ちぎる。
暴力と言う暴力が行き交った結果…生き残ったのは僕だった。
ヒットアンドアウェイで戦っていたので傷も酷くなく、多少の疲れだけで済んだ。
『おめでとう。バッタオーグ。君が勝者だ』
と僕を賞賛するアナウンスが流れた。
僕がその時幸福だと思えたのはまだ人の死を悼むという理性が残っていることだけだった。
「………」
ここで夢の世界から帰ってきた。
あの後も結局実験の繰り返しだったのは今でも覚えている。
……いけない、涙が出てきた。
とうに枯れ果てたものだと思っていたのに、まだ出てくるとは。
「泣いても……仕方が無いのに……」
ここにいる限り、誰からも手を差し伸べてくれない。
僕が手を伸ばしても、届かない。
「…………………………助けて」
小さく呟いたその時だった。
巨大な爆発音が響いたのは。
ドゴォォォォォォォォォォォォォン!!
「!?」
あまりにも急な出来事で脳が追いつくのに少し時間を要してしまった。
なんだ?今の音?
どこかで実験が失敗したのか?
いや、アイツらに限ってそんなことはありえない。
悔しいが科学技術だけで言うならばここは世界でも有数の高度を誇る。
ならなんだ?
その正体はすぐに分かった。
「なんだここは…牢獄?」
「ッ!?」
僕のいる牢獄に一人の人間……いや、オーグメントが入ってきた。
緑色のマスク、赤いマフラー、銀色の手袋。
「……バッタ…?」
「お?人が…違うな、オーグメントか。でも他より人間味があるな…実験されたてか…」
「あ…」
「…皆まで言うな。可愛そうにな…」
声的にも男だ。
何を思ったのか、その人は僕の牢獄の鍵を拳ひとつで破壊した。
「ホラ。出てきな。いいか?すぐ近くに俺が開けた穴がある。そこから外に出るとバイクが一台止まってる。そこで待っててくれ。大丈夫だ、直ぐに迎えに行く」
そう言って次の部屋へと向かっていった。
「………………」
上手く喋れなかった。
人と話すなんていつぶりかも忘れてしまった。
でも…彼は味方だ。助けてくれる。
それが分かれば話は早い。
彼の言うとおり近くには巨大な穴があり、バイクも止まってあった。
そこで待つこと15分。
「待たせちまったな。ほんじゃ行くとしますか」
彼は約束通り帰ってきた。
それからバイクで道を走ると着いたところはとある施設。
「ただいま帰った…思いもよらない収穫だ」
僕が連れてこさせられたのは日本政府が所有する施設らしい。
SHOCKERを倒すために日々尽力しているとのこと。
そして僕を助けてくれたのは『一文字隼人』さん。
またの名を、『仮面ライダー』
本人曰く「正確に言えば『1+2号』だな」らしい。
オーグメントでありながらも打倒SHOCKERを目指している。
「俺もオーグメントだからな…分かるよ。君の辛さは」
その言葉が心からの言葉であることは簡単に分かった。
この人からは優しさを感じる。
「お互いオーグメント同士……仲良くしよう」
その言葉に僕は泣き出しそうになり、差し出された手を握った。
それから僕はその施設で暮らすことになった。
SHOCKERの研究所にいた頃の話を提供したりするなど、僕なりに彼らを手伝っていた。
アイツらに捕まっていた頃と比べると、ここは天国だ。
こんな日々が続けばいいのに…そう思った。
その日は突然やってきた。
一文字さんがSHOCKERを倒したのだ。
しかし代償として一文字さんは大怪我を負い、病院へと搬送された。
顔も体もボロボロ。
その様子に棒立ちすることしか出来なかった。
何があったのか想像にかたくない。
「一文字さん…」
この人は、僕と同じような立場でありながらも戦い続けた。
その後ろ姿に僕は憧れを抱いていた。
………………父のように思っていた。
ついにSHOCKERが滅んだというのに僕の心はぽっかりと穴が空いたように感じた。
一文字さんがSHOCKERを倒してから一ヶ月が経過したある日、政府がSHOCKERの生き残りがいることを突き止めた。
「知っての通り一文字くんはもう戦えない…そこでだ。星月白夜くん。同じバッタオーグである君に仮面ライダーを継いで欲しい」
その言葉に衝撃を受けた。
正直、反対しようとも思った。
怖かったからだ。
だがその時脳裏に浮かんだのは一文字さんの背中だった。
危険を顧みずに人のために戦う姿。
小さかった頃に憧れていたヒーローと似ていた。
正体がオーグメントでも、怪物だったとしても、彼は僕の憧れだ。
それを考えると、自然と口は動いていた。
「…やります…やらせてください………!!」
その出来事から一年が経過した。
僕は『仮面ライダー第3号』を名乗りSHOCKERの生き残りと戦っている。
一文字さんはまだ目覚めていない。
負傷があまりにも酷かったため意識を取り戻すのがいつかもすら分からない状況だ。
「……………良い景色…」
とあるビルの屋上、そこに僕は立っている。
そこから見える景色はSHOCKERの研究所の中では見ることが出来なかった。
光り輝くビル、高くそびえ立つタワー、行き交う車。
その光景を楽しんでいた時、スマホから着信音がした。
「もしもし」
『こんな夜分にすまない。仕事が入った』
政府の人だ。
一文字さんに保護してもらい、政府の施設で手伝うことになった時に一番お世話になった人。
連絡係として動いてくれている。
『オーグメントを発見した。恐らくカニオーグだ。大至急始末してくれ』
「了解しました」
手短に返答し、電話を切る。
「……………」
最後になるかもしれないので夜景を目に焼き付けて下に止めてあるサイクロン号に向かった。
ひんやりとした夜の風が、ただ気持ちいい。
そして一話に続く。